ヤマブキシティを出発して、しばらく。
マサヒロたちは、シオンタウンへ向かう道を歩いていた。
「バルキー、こっちだぞ!」
「バルキー!」
バルキーは元気よく走り、マサヒロの前を行ったり来たりしている。
「ずいぶん元気な奴だな」
マサヒロは笑った。
「イーブイ!」
イーブイも楽しそうに鳴く。
その後ろでは、フシギソウ、スピアー、ミニリュウも歩いていた。
「これで仲間は五匹か……」
マサヒロはモンスターボールを見渡す。
「みんなで力を合わせれば、もっと強くなれるな!」
「バルキー!」
バルキーが拳を突き上げる。
「お前もやる気満々だな!」
マサヒロが頭を撫でる。
しかし――
「バルキー!」
突然、バルキーが道の脇へ走り出した。
「おい、バルキー!」
マサヒロが慌てて追いかける。
バルキーが向かった先には、木の根元に落ちた木の実があった。
「それが欲しかったのか?」
「バルキー!」
バルキーは木の実を両手で抱えると、マサヒロたちに背を向けた。
「こらこら。みんなで分けて食べような」
「バルキー!」
バルキーは木の実を抱えたまま、首を横に振る。
「……もしかして、独り占めするつもりか?」
「バルキー!」
バルキーは胸を張った。
「まったく……」
マサヒロが困っていると、イーブイがバルキーの前へ歩み寄った。
「イーブイ」
イーブイは自分の持っていた木の実を、バルキーの前へ置いた。
「イーブイ?」
バルキーが驚いたようにイーブイを見る。
イーブイは木の実をバルキーへ押し出した。
「みんなで食べようってことだな」
マサヒロが笑う。
「バルキーも、仲間なんだからさ」
「バルキー……」
バルキーはしばらく木の実を見つめていた。
やがて、抱えていた木の実を地面へ置いた。
「バルキー!」
「よし!」
マサヒロは木の実を分け、仲間たちへ配った。
「これからは、何でもみんなで分けるんだぞ」
「イーブイ!」
「バルキー!」
バルキーは元気よく返事をした。
* * *
しばらく歩いたところで、マサヒロたちは小さな川を見つけた。
「ちょっと休憩するか!」
「イーブイ!」
みんなが川辺へ集まる。
フシギソウは水を飲み、ミニリュウは川の中を気持ちよさそうに泳いでいる。
「ミニリュウ、楽しそうだな!」
「ミニ~!」
その様子を、バルキーは少し離れた場所から見ていた。
「バルキー?」
マサヒロが声をかける。
「どうした?」
「バルキー!」
バルキーは腕を組み、そっぽを向く。
「……まだみんなと仲良くする気はないのか?」
「バルキー!」
「そうか……」
マサヒロは苦笑する。
その時、スピアーがバルキーの前へ飛んできた。
「スピアー!」
「バルキー?」
スピアーは両腕の針を構える。
「スピアー!」
まるで「勝負しよう」と言っているようだった。
「おっ、スピアーが誘ってるぞ」
「バルキー!」
バルキーの目が輝く。
「やる気になったか?」
「バルキー!」
バルキーも拳を構える。
「スピアー!」
「バルキー!」
二匹が向かい合う。
しかし――
「待て待て!」
マサヒロが慌てて二匹の間に入った。
「ここでバトルしたら川に落ちるぞ!」
「バルキー……」
バルキーは残念そうに拳を下ろした。
スピアーも少し困ったように羽を動かす。
「まあ、いつかちゃんとバトルしような」
「バルキー!」
バルキーは笑顔になった。
* * *
その日の夕方。
マサヒロたちは森の中で野営することにした。
「今日はここで休もう」
マサヒロが薪を集めていると、バルキーが近くの木を見上げていた。
「どうした?」
「バルキー……」
木の枝には、木の実がいくつも実っている。
バルキーは木へ向かって拳を振った。
「バルキー!」
しかし、木の実には届かない。
「もう少しだ!」
バルキーは何度も跳び上がる。
だが、なかなか届かなかった。
「バルキー!」
ついに足を滑らせ、地面へ尻もちをつく。
「大丈夫か!?」
マサヒロが駆け寄る。
「バルキー……」
バルキーは悔しそうに拳を握った。
「無理に一人で取らなくてもいいんだぞ」
「バルキー!」
バルキーは首を横に振る。
「自分で取りたいのか?」
「バルキー!」
マサヒロは少し考えた。
「じゃあ、みんなで協力しよう」
「イーブイ!」
イーブイが木の根元へ走る。
フシギソウがつるを伸ばし、枝を引き寄せる。
「スピアー、枝を切ってくれ!」
「スピアー!」
スピアーが枝の近くへ飛び、針で細い枝を切り落とす。
木の実が地面へ落ちてきた。
「今だ、バルキー!」
「バルキー!」
バルキーが跳び上がり、落ちてきた木の実を受け止める。
「やったな!」
「バルキー!」
バルキーは木の実を抱え、仲間たちのところへ戻ってきた。
「今度はちゃんと、みんなに分けるんだぞ」
「バルキー!」
バルキーは木の実を一つずつ仲間たちへ渡していった。
「ずいぶん成長したな」
マサヒロは嬉しそうに笑った。
「バルキー!」
* * *
夜。
焚き火を囲みながら、マサヒロは空を見上げていた。
「ヤマブキシティでは、いろいろあったな」
「イーブイ」
「ナツメとのバトルに、格闘道場の師範代。それに……」
マサヒロはバルキーを見る。
バルキーは焚き火のそばで、スピアーの動きを真似して拳を振っていた。
「新しい仲間か」
「バルキー!」
「お前もいつか、ジム戦で活躍できるようになるかな?」
「バルキー!」
バルキーは力強く拳を突き上げた。
「そうだな。俺たちももっと強くならないとな」
マサヒロはミニリュウのボールを見る。
「ミニリュウも、リョウとのバトルで負けたままだ」
「ミニ……」
ボールの中から、ミニリュウの声が聞こえた。
「次に会った時は、絶対に勝つ」
「イーブイ!」
「スピアー!」
「バルキー!」
仲間たちが声を合わせる。
マサヒロは拳を握った。
「次のジムも、その次のジムも、全部勝ってやる!」
* * *
翌朝。
マサヒロたちは再び道を歩き始めた。
「次の目的地は……」
マサヒロは地図を広げる。
「シオンタウンだ!」
「イーブイ!」
「バルキー!」
バルキーはマサヒロの隣を歩いている。
昨日までよりも、少しだけ仲間たちとの距離が近くなっていた。
その時、森の奥から大きな音が聞こえた。
ドンッ!
「なんだ!?」
マサヒロたちが振り返る。
木々の向こうから、何かがこちらへ近づいてくる。
「イーブイ!」
「バルキー!」
マサヒロはモンスターボールへ手を伸ばした。
「みんな、気をつけろ!」
森の中から姿を現したのは――
大きな影だった。
「……あれは、何だ?」
影はゆっくりとこちらへ近づいてくる。
マサヒロたちは身構えた。
新たな町へ向かう旅の途中で、またしても事件が起ころうとしていた。
「よし……!」
マサヒロは拳を握る。
「みんな、行くぞ!」
「イーブイ!」
「バルキー!」
「スピアー!」
森に、仲間たちの声が響き渡った。
次回へ続く。