「……あれは、何だ?」
森の奥から、巨大な影がゆっくりと姿を現す。
ズシン……!
木々が揺れ、地面まで震える。
「イーブイ!」
イーブイが怯えたようにマサヒロの足元へ駆け寄る。
「大丈夫だ、イーブイ!」
マサヒロはイーブイを抱き寄せた。
そして、巨大な影が木々の間から完全に姿を現す。
「な、なんだよ……これ……!」
そこにあったのは、巨大なロケット団のメカだった。
巨大な腕。
鋭い爪。
そして、胸の部分にはロケット団のマークが刻まれている。
「ロケット団……!」
マサヒロは拳を握る。
「……またお前たちか!」
メカの上から、一人の男が姿を現した。
「その通りだ」
黒い服を身にまとった男。
冷たい目でマサヒロたちを見下ろしている。
「俺はロケット団幹部、ランス」
「幹部……?」
マサヒロが驚く。
ランスはイーブイへ視線を向けた。
「目的は一つだ」
「イーブイを渡してもらおう」
「……嫌だ!」
マサヒロは即答した。
「イーブイは俺の仲間だ!」
「そう言うと思ったよ」
ランスが手を上げる。
「なら、力ずくで奪うまでだ」
「みんな!」
マサヒロがモンスターボールを取り出す。
「イーブイを守るぞ!」
「フシギソウ!」
「スピアー!」
「ミニリュウ!」
「バルキー!」
仲間たちが一斉に飛び出した。
「行くぞ!」
* * *
「フシギソウ、つるのムチ!」
「スピアー、ダブルニードル!」
「ミニリュウ、りゅうのいかり!」
「バルキー、からてチョップ!」
四匹が一斉に攻撃する。
ドドドドッ!
しかし――
ガキンッ!
巨大メカの装甲には傷一つつかない。
「そんな……!」
マサヒロが驚く。
「この程度か?」
ランスが笑う。
「反撃しろ!」
巨大な腕が振り下ろされる。
ドゴォン!!
「みんな!」
フシギソウたちが吹き飛ばされる。
「まだだ!」
「バルキー!」
バルキーが立ち上がり、再びメカへ向かっていく。
「バルキー!」
拳を振るう。
しかし――
ガンッ!
「バルキー!」
弾き飛ばされる。
「バルキー!」
マサヒロが駆け寄る。
「大丈夫か!?」
バルキーはふらつきながら立ち上がった。
「……まだやるのか?」
ランスが呆れたように言う。
「しぶといな」
「当たり前だ!」
マサヒロは叫ぶ。
「俺たちはイーブイを守るんだ!」
「イーブイ……!」
イーブイもマサヒロの隣に立つ。
「イーブイ!」
「無理だ!」
ランスが叫ぶ。
「そのポケモンを渡せば、全員傷つかずに済む!」
「絶対に渡さない!」
マサヒロが叫び返す。
「イーブイは俺の仲間だ!」
「ならば終わりだ!」
巨大メカの腕が再び振り上げられる。
「危ない!」
ドゴォン!!
大地が大きく揺れる。
フシギソウたちは倒れ、スピアーも飛ぶ力を失っている。
「みんな……!」
マサヒロは悔しそうに拳を握る。
「このままじゃ……!」
その時だった。
フシギソウがゆっくりと立ち上がる。
「フシギ……」
「フシギソウ!?」
フシギソウの体から、強い光があふれ始める。
「なんだ……この光……!」
頭の上のつぼみへ、光がどんどん集まっていく。
「フシギソウ!」
マサヒロが目を見開く。
「まさか……新しい技か!?」
フシギソウが空を見上げる。
太陽の光が、その体へ集まっていく。
「フシギソウ……!」
「ソーラービームだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「フシギソウ、ソーラービーム!」
「フシギソォォォ!」
集めた光が一気に放たれる。
ズドォォォン!!
巨大メカに直撃する。
「なに!?」
ランスが驚く。
しかし――
「ぐっ……!」
メカは攻撃を受け止めていた。
「惜しいな!」
ランスが叫ぶ。
「だが、その程度ではこのメカは止められん!」
「くっ……!」
マサヒロが歯を食いしばる。
その時――
「ミニ……!」
ミニリュウが震え始める。
「ミニリュウ?」
ミニリュウの体が、まばゆい光に包まれる。
「まさか……!」
「ミニリュウ!」
光の中で、その姿が大きく変わっていく。
長い体。
大きくなった角。
そして、頭の左右に伸びる翼のような耳。
「ハクリュー!」
光が消える。
「ハクリュー……!」
マサヒロは目を輝かせた。
「ミニリュウが進化した!」
「ハクリュー!」
ハクリューが力強く鳴く。
その瞬間、ハクリューの口元に青いエネルギーが集まり始めた。
「これは……!」
「ハクリュー、りゅうのはどう!」
「ハクリュー!!」
青白い波動が巨大メカへ向かって放たれる。
ドォォン!!
「なに!?」
ランスが再び驚く。
「進化したばかりだというのに……!」
メカが大きく揺れる。
「今だ!」
マサヒロはイーブイを見る。
「イーブイ!」
「イーブイ!」
イーブイが前へ出る。
「お前の力も貸してくれ!」
「イーブイ!」
イーブイの尻尾に、強烈なエネルギーが集まっていく。
マサヒロは三匹を見る。
「フシギソウ!」
「ハクリュー!」
「イーブイ!」
三匹が並ぶ。
「一緒に決めるぞ!」
「ソーラービーム!」
「りゅうのはどう!」
「エボルブラスト!」
「フシギソォォォ!」
「ハクリュー!!」
「イーブイィィィ!!」
三つの技が同時に放たれる。
緑色の光。
青白い波動。
そして、イーブイから放たれる強烈な衝撃波。
三つの技が一つになり、巨大メカへ直撃する。
ドォォォォォン!!
「ぐあああああっ!!」
巨大メカの装甲が大きくひしゃげる。
「まだだ!」
マサヒロが叫ぶ。
三匹も力を振り絞る。
「いっけぇぇぇ!!」
ドガァァァァン!!
巨大メカが大爆発する。
「うわぁぁぁぁ!!」
ランスは操縦席から飛び出し、地面へ転がる。
「くっ……!」
ランスは立ち上がると、マサヒロたちを睨みつけた。
「覚えていろ!」
「ロケット団は、必ずそのイーブイを手に入れる!」
「待て!」
マサヒロが追いかけようとする。
しかし、ランスは振り返った。
「……最後に教えておいてやる」
「何を……?」
ランスはイーブイを指差す。
「そのイーブイは、普通のイーブイではない」
「……!」
マサヒロの表情が変わる。
「そいつは、かつてロケット団が作ろうとしていた実験体だ」
「実験……?」
「自在に進化と退化を繰り返すイーブイ」
ランスは淡々と話す。
「我々は、あらゆる進化の可能性を持つイーブイを作ろうとしていた」
「でも……」
ランスはイーブイを見る。
「その個体は失敗した」
「……!」
マサヒロは言葉を失う。
「進化することができなくなったんだ」
「そんな……」
イーブイが不安そうにマサヒロを見る。
「研究所から逃げ出した後も、失敗作だったそいつをロケット団は放置していた」
ランスは口元を上げる。
「だが……」
「エボルブラスト」
「その未知の技を習得したと知って、話が変わった」
「……!」
マサヒロはイーブイを抱きしめる。
「だから、ずっとイーブイを狙ってたのか……」
「そういうことだ」
ランスは背を向ける。
「その力が偶然なのか、それとも我々が求めていたものなのか……」
「いずれ確かめさせてもらう」
「待て!」
マサヒロが叫ぶ。
「イーブイは渡さない!」
ランスは振り返らない。
「好きにしろ」
「だが、我々は諦めない」
そう言い残し、ランスは森の奥へと消えていった。
* * *
静かになった森。
マサヒロはイーブイを見つめていた。
「……イーブイ」
「イーブイ……」
イーブイは少し不安そうにマサヒロを見る。
「お前が……ロケット団に作られたポケモンだったなんて……」
マサヒロは拳を握る。
「でも……」
イーブイの頭を優しく撫でる。
「そんなこと、関係ないよな」
「イーブイ……」
「お前は俺の仲間だ」
「イーブイ!」
イーブイが嬉しそうに鳴く。
「それに……」
マサヒロはフシギソウとハクリューを見る。
「みんなも、また強くなったな!」
「フシギソウ!」
「ハクリュー!」
「スピアー!」
「バルキー!」
仲間たちが声を上げる。
マサヒロは笑った。
「よし!」
「シオンタウンへ行こう!」
「イーブイ!」
マサヒロたちは再び歩き始める。
しかし――
マサヒロの頭から、ランスの言葉が離れることはなかった。
イーブイはなぜ作られたのか。
なぜ進化できなくなったのか。
そして――
エボルブラストとは、一体何なのか。
まだ、その答えは分からない。
マサヒロたちは、シオンタウンへ向かって歩き続けた。