森を抜けたマサヒロたちは、ようやく次の町へとたどり着いた。
「やった! シオンタウンだ!」
マサヒロは嬉しそうに町へ入っていく。
「ここまで来るの、結構かかったな!」
隣を歩くイーブイが、
「イーブイ!」
と元気よく鳴く。
「そうだな!」
マサヒロは笑う。
後ろからはフシギソウ、スピアー、ハクリュー、バルキーもついてきている。
ハクリューは進化したばかりだ。
マサヒロは何度見ても嬉しくなる。
「それにしても……」
マサヒロはハクリューを見る。
「ミニリュウがハクリューになったんだよな」
「ハクリュー!」
「すごいよな!」
ハクリューが嬉しそうに鳴く。
「フシギソウもソーラービームを覚えたし、みんな強くなってきた!」
「フシギソウ!」
「スピアー!」
「バルキー!」
仲間たちがそれぞれ声を上げる。
「よし! この調子で次のジムも――」
マサヒロはそこで言葉を止めた。
「……」
ふと、イーブイを見る。
「イーブイ?」
イーブイが首をかしげる。
「……いや、なんでもない」
マサヒロは前を向いた。
しかし、頭の中には昨日の出来事が残っていた。
『そのイーブイは、普通のイーブイではない』
『ロケット団が作ろうとしていた実験体だ』
『その個体は失敗した』
ランスの言葉。
「……」
マサヒロは黙って歩き続ける。
* * *
シオンタウンの中を歩いていると、マサヒロは周囲の様子に気づいた。
「……なんか、静かな町だな」
これまで訪れた町とは違う。
人の数も少なく、町全体がどこか落ち着いている。
「ここには何があるんだろう?」
マサヒロが周囲を見回していると、一人の町の人が話しかけてきた。
「君、この町は初めてかい?」
「はい!」
「それなら、あまり驚かないでくれよ」
「え?」
町の人が町の奥を指差す。
「あそこにはポケモンタワーがあるんだ」
「ポケモンタワー?」
「亡くなったポケモンたちが眠る場所さ」
「……!」
マサヒロは驚いた。
「ポケモンのお墓……」
イーブイもポケモンタワーの方を見る。
「イーブイ?」
しかし、マサヒロはその変化に気づかなかった。
「そういう場所があるんだ……」
マサヒロはポケモンタワーを見つめる。
「……なんか、ちょっと怖そうだな」
「イーブイ……」
「ん?」
イーブイがマサヒロの服を引っ張る。
「どうした?」
イーブイは何も言わず、ポケモンタワーを見つめている。
「……あそこが気になるのか?」
「イーブイ……」
イーブイ自身にも理由が分からないようだった。
「まあ、今日は疲れたし、ポケモンセンターに行こうぜ」
「イーブイ!」
二人は歩き出す。
* * *
ポケモンセンター。
仲間たちを休ませた後、マサヒロはベンチに座っていた。
イーブイも隣にいる。
「……なあ、イーブイ」
「イーブイ?」
「昨日のことなんだけどさ」
イーブイがマサヒロを見る。
「俺……ずっと考えてたんだ」
マサヒロは少し俯く。
「お前がロケット団に作られたポケモンだったってこと」
「……」
「実験体って言われても、俺にはよく分からない」
マサヒロは自分の手を見る。
「俺が小さい頃にお前と出会った時、お前は普通にポケモンだった」
「一緒に遊んで、一緒に走って……」
「俺が落ち込んでる時には、いつもそばにいてくれた」
イーブイが静かにマサヒロを見つめる。
「だから……」
マサヒロはイーブイの頭に手を乗せる。
「お前が何者なのか、俺にはまだ分からない」
「……」
「でもさ」
マサヒロは笑う。
「俺が知ってるイーブイは、お前なんだ」
「イーブイ……」
「ロケット団に作られたとか」
「失敗作だとか」
「そんなの、俺には関係ない」
イーブイの目が少し大きくなる。
「お前は俺の仲間だ」
「イーブイ!」
イーブイがマサヒロへ飛びつく。
「うわっ!」
マサヒロは驚きながらも、イーブイを抱きしめる。
「ははは!」
「イーブイ!」
「それに、俺たちはまだまだこれからだろ?」
「イーブイ!」
「ロケット団が何度来たって、俺が守ってやる!」
イーブイが嬉しそうに鳴く。
「よし!」
その時だった。
「フシギソウ!」
「スピアー!」
「ハクリュー!」
「バルキー!」
仲間たちがこちらへやって来る。
「お前たちも来たのか!」
マサヒロが笑う。
「そうだよな」
マサヒロはみんなを見渡す。
「俺たちには、こんなに仲間がいるんだ」
フシギソウがマサヒロの隣に立つ。
スピアーがその肩の近くを飛ぶ。
ハクリューが長い体を揺らし、バルキーも元気よく拳を上げる。
「イーブイも!」
「フシギソウも!」
「スピアーも!」
「ハクリューも!」
「バルキーも!」
「みんな、俺の大切な仲間だ!」
「イーブイ!」
「フシギソウ!」
「スピアー!」
「ハクリュー!」
「バルキー!」
マサヒロは笑った。
* * *
その日の夕方。
マサヒロたちはポケモンセンターの外に出た。
夕日に照らされたシオンタウンは、昼間よりもさらに静かだった。
マサヒロは遠くに見えるポケモンタワーを見る。
「……ポケモンタワーか」
イーブイも同じ方向を見る。
「なあ、イーブイ」
「イーブイ?」
「さっき、あそこを見てたよな?」
「……」
イーブイはポケモンタワーを見つめる。
「何か気になるのか?」
「イーブイ……」
イーブイ自身にも理由は分からない。
ただ、なぜか目を離すことができなかった。
「……」
マサヒロは少し考える。
「じゃあ、明日行ってみるか?」
イーブイがマサヒロを見る。
「イーブイ!」
「よし、決まりだ!」
マサヒロが笑う。
「明日はポケモンタワーだ!」
その瞬間――
ポケモンタワーの一番上。
暗くなり始めた窓の向こうに、何かの影が映った。
「……?」
イーブイが振り返る。
「どうした、イーブイ?」
しかし、そこにはもう何もなかった。
「……気のせいか?」
マサヒロは首をかしげる。
イーブイはしばらくポケモンタワーを見つめていた。
そして――
静かなシオンタウンの夜が始まった。