ポケットモンスターブラウン   作:光宙

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16話 ポケモンタワー!仲間を守るゴーストポケモン!

ポケモンタワー。

 

その最上階へ続く階段を、マサヒロたちはゆっくりと上っていた。

 

先頭を歩くのはイーブイ。

 

その後ろを、フシギソウ、スピアー、ハクリュー、バルキーが続いている。

 

「……さっきのゴースト、どこ行ったんだ?」

 

マサヒロは辺りを見回した。

 

さっきまで姿を見せていたゴーストの姿は、どこにもない。

 

その時だった。

 

「……グルルル……」

 

低い声が、階段の上から聞こえてきた。

 

「え?」

 

マサヒロが顔を上げる。

 

暗闇の中から、大きな影がゆっくりと現れた。

 

赤い目。

 

大きな口。

 

そして、全身から漂う不気味な気配。

 

「……ゲンガー!」

 

「ブイ……!」

 

イーブイが警戒する。

 

ゲンガーは何も言わず、こちらを睨んでいた。

 

「こいつ……さっきのゴーストとは違う……」

 

マサヒロが一歩下がる。

 

すると、ゲンガーの周りに黒い影が集まり始めた。

 

「来るぞ!」

 

ゲンガーが地面を蹴った。

 

「イーブイ、避けろ!」

 

イーブイが横へ飛ぶ。

 

ゲンガーの攻撃が床をえぐった。

 

「危なっ!」

 

「ブイ!」

 

イーブイも反撃しようとする。

 

しかし――

 

「待て!」

 

マサヒロは手を上げた。

 

「まだ攻撃するな!」

 

ゲンガーは、なぜかこちらを攻撃し続けようとはしなかった。

 

その視線は、イーブイではなく――

 

その後ろにいる仲間たちへ向けられている。

 

「……?」

 

マサヒロは首をかしげた。

 

その時。

 

「ゴース!」

 

「え?」

 

先ほどのゴーストが姿を現した。

 

さらに、その後ろから別のゴーストたちも現れる。

 

「ゴース……ゴースト……」

 

何匹ものゴーストタイプのポケモンが、ゲンガーを取り囲んだ。

 

「なんだ……?」

 

マサヒロには、何が起きているのか分からない。

 

だが、ゴーストたちはゲンガーを攻撃しているわけではなかった。

 

むしろ――

 

何かを伝えようとしているように見えた。

 

「もしかして……ゲンガーを止めようとしてるのか?」

 

「ブイ?」

 

イーブイも不思議そうにゴーストたちを見る。

 

その時だった。

 

「グアアアアッ!」

 

突然、ゲンガーが怒ったように叫んだ。

 

「うわっ!」

 

黒い影が一気に広がる。

 

「みんな、避けろ!」

 

フシギソウたちが散開する。

 

ゲンガーの攻撃が床を走り抜けた。

 

「こいつ、本気だ!」

 

マサヒロはボールに手を伸ばした。

 

しかし、その前に――

 

「ゴース!」

 

先ほどのゴーストがゲンガーの前に飛び出した。

 

「えっ?」

 

ゲンガーの動きが止まる。

 

ゴーストはゲンガーを見つめている。

 

そして、ゆっくりと首を振った。

 

「……何してるんだ?」

 

マサヒロには、やっぱり分からない。

 

するとゲンガーが、今度はイーブイを見た。

 

「……ブイ」

 

イーブイもゲンガーを見返す。

 

二匹の間に、奇妙な空気が流れた。

 

「……イーブイ?」

 

マサヒロが声をかける。

 

その瞬間。

 

ゲンガーが動いた。

 

「イーブイ!」

 

「ブイ!」

 

ゲンガーがイーブイへ向かって突っ込んでくる。

 

「かげぶんしん!」

 

イーブイの姿がいくつにも分かれる。

 

ゲンガーの攻撃が空を切った。

 

「今だ!」

 

「でんこうせっか!」

 

イーブイが一気に距離を詰める。

 

「かみつく!」

 

ゲンガーへ飛びかかる。

 

しかし――

 

「グッ!」

 

ゲンガーは体を影のように変化させ、攻撃をすり抜けた。

 

「なっ……!」

 

イーブイの攻撃が空振りする。

 

ゲンガーはそのままイーブイの背後へ回った。

 

「イーブイ、後ろ!」

 

イーブイが振り返る。

 

「ブイッ!」

 

間一髪で攻撃を避けた。

 

「強い……!」

 

マサヒロは歯を食いしばる。

 

イーブイなら、エボルブラストがある。

 

けれど――

 

「……いや」

 

マサヒロは首を振った。

 

「まだ使わない」

 

エボルブラストは強力だ。

 

だけど、イーブイの体への負担も大きい。

 

相手が何者なのか分からない今、簡単に使うわけにはいかなかった。

 

「イーブイ! 自分の力でいくぞ!」

 

「ブイ!」

 

「かげぶんしん!」

 

再びイーブイが分身する。

 

ゲンガーが周囲を見回す。

 

「今だ!」

 

「でんこうせっか!」

 

分身の一匹が走る。

 

ゲンガーがそちらへ攻撃する。

 

しかし、それは分身。

 

「こっちだ!」

 

本物のイーブイが反対側から飛び出した。

 

「かみつく!」

 

ガブッ!

 

ゲンガーの腕に攻撃が入った。

 

「グッ……!」

 

ゲンガーが後ろへ下がる。

 

その瞬間。

 

「ゴース!」

 

ゴーストがゲンガーの前に飛び出した。

 

「……?」

 

マサヒロは目を見開く。

 

ゴーストはゲンガーを攻撃しない。

 

ただ、ゲンガーの前に立っている。

 

まるで――

 

何かからゲンガーを守っているようだった。

 

「お前……ゲンガーを守ってるのか?」

 

ゴーストが振り返る。

 

「ゴース……」

 

小さく鳴いた。

 

すると、今度は他のゴーストたちもゲンガーの周りに集まった。

 

「……そういうことか」

 

マサヒロはようやく気づいた。

 

「こいつら、ゲンガーと戦ってたんじゃない」

 

「ブイ?」

 

「ゲンガーを止めてたんだ」

 

ゲンガーはじっとマサヒロを見る。

 

その目には、先ほどまでの敵意とは違う何かがあった。

 

「……お前、何かを守ってるのか?」

 

ゲンガーは答えない。

 

ただ、ポケモンタワーの奥を振り返った。

 

「……?」

 

マサヒロもそちらを見る。

 

そこには、たくさんのポケモンたちが眠っている。

 

「ここにいるポケモンたちを……守ってるのか?」

 

ゲンガーが静かに頷いた。

 

「……そうだったのか」

 

マサヒロはゆっくりと笑った。

 

「だったら、最初からそう言ってくれよ」

 

「ブイ……」

 

イーブイも少し安心したようにゲンガーを見る。

 

すると――

 

ゲンガーがイーブイへ近づいてきた。

 

「イーブイ!」

 

マサヒロは思わず身構える。

 

だが、ゲンガーは攻撃しなかった。

 

イーブイの前で立ち止まる。

 

そして――

 

「……ゲンガー」

 

ゆっくりとイーブイの目を見る。

 

「ブイ……」

 

イーブイもゲンガーを見る。

 

二匹の間に、しばらく沈黙が流れた。

 

するとゲンガーは、イーブイの胸元へ視線を向けた。

 

「……?」

 

そして、何かを伝えるように一度だけ鳴いた。

 

「ゲン……」

 

「イーブイに何か言ってるのか?」

 

マサヒロは耳を澄ませる。

 

だが、やっぱり意味は分からない。

 

イーブイも首をかしげている。

 

「……分からないな」

 

マサヒロは苦笑した。

 

「でも……いつか分かるのかもしれないな」

 

ゲンガーはその言葉を聞くと、少しだけ笑ったように見えた。

 

そして――

 

暗闇の中へ消えていった。

 

「……行っちゃった」

 

「ブイ……」

 

「まあ、いいか」

 

マサヒロはイーブイの頭を撫でる。

 

「俺たちも行こう」

 

* * *

 

ポケモンタワーを出ると、シオンタウンには夕方の光が差し込んでいた。

 

「今日は色々あったな……」

 

マサヒロは振り返る。

 

巨大なポケモンタワーが、静かにそびえている。

 

「イーブイのことも、ゲンガーのことも……まだ分からないことだらけだ」

 

「ブイ!」

 

「でも――」

 

マサヒロは笑った。

 

「少しずつ分かっていけばいいよな」

 

イーブイが頷く。

 

その後ろでは、フシギソウたちも待っている。

 

「よし! 明日は次の町へ出発だ!」

 

マサヒロが歩き出す。

 

その背中を、ポケモンタワーの最上階から見つめる影があった。

 

「……」

 

ゲンガーだった。

 

そして、その隣には――

 

さっきのゴースト。

 

ゴーストは窓の外を見ながら、静かに呟くように鳴いた。

 

「ゴース……」

 

ゲンガーは答えない。

 

ただ、遠ざかっていくマサヒロたちを見つめていた。

 

その視線は――

 

イーブイへ向けられていた。

 

静かなシオンタウンの夜。

 

その塔の中で、まだ誰も知らない何かが動き始めていた。

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