「見えた!」
マサヒロが前を指差した。
道の先に、大きな街が広がっている。
高い建物。
たくさんの人。
道を行き交うトレーナーたち。
「ここがタマムシシティか!」
マサヒロは目を輝かせた。
「すげえ……!」
「ブイ!」
イーブイも街を見回す。
その後ろでは、ガーディが少し不安そうにしていた。
「ガウ……」
「ガーディ?」
マサヒロが振り返る。
ガーディは周囲の人間を警戒している。
まだ、人間がたくさんいる場所には慣れていないようだ。
マサヒロはしゃがんだ。
「大丈夫だぞ」
ガーディの頭を優しく撫でる。
「俺たちが一緒だからな」
「ガウ……」
ガーディはマサヒロを見る。
そして、ゆっくりとその隣へ歩いてきた。
「よし!」
マサヒロは笑った。
「じゃあ、まずはジムだ!」
「ブイ!」
「フシ!」
「ハチ!」
「シャア!」
「バル!」
「ガウ!」
マサヒロたちは街の中へ入っていった。
* * *
「タマムシジムは……ここだ!」
緑に囲まれた大きな建物。
マサヒロは扉を開けた。
「こんにちは!」
中へ入ると、たくさんの草花が目に入った。
「うわ……」
「ブイ……」
「ジムの中なのに森みたいだ」
その時、奥から一人の女性が歩いてきた。
「こんにちは」
穏やかな笑顔。
「ようこそ、タマムシジムへ」
「俺、マサヒロです!」
マサヒロは元気よく頭を下げる。
「ジムバッジを集めています! ジム戦をお願いします!」
「まあ」
女性は微笑んだ。
「私はエリカ。このタマムシジムのジムリーダーです」
「エリカさん!」
マサヒロは嬉しそうに声を上げた。
「よろしくお願いします!」
「こちらこそ」
エリカはマサヒロの後ろを見る。
そして、ガーディに目を止めた。
「そのガーディは……?」
「昨日、仲間になったんです」
マサヒロはガーディの隣にしゃがんだ。
「道で傷だらけになっているところを見つけました」
「まあ……」
エリカの表情が曇る。
「最初は俺にも近づかせてくれませんでした」
マサヒロはガーディを見る。
「でも、少しずつ俺を信じてくれて……」
ガーディがマサヒロを見る。
「最後には、自分からモンスターボールに入ってくれたんです」
「素敵ですね」
エリカは優しく微笑む。
「ポケモンとの信頼は、とても大切なものです」
「信頼……」
「ポケモンは、トレーナーとの心が通じている時こそ、本当の力を発揮します」
マサヒロはガーディを見る。
「……俺も、ガーディを信じます」
「ガウ」
ガーディが小さく鳴いた。
「では、始めましょう」
エリカがバトルフィールドへ向かう。
「あなたとポケモンたちの絆、見せてください」
* * *
「ジム戦、開始!」
審判の声が響く。
エリカがモンスターボールを投げる。
「お願いします、ウツドン」
「ウツ!」
ウツドンが現れた。
マサヒロもボールを構える。
「行け、スピアー!」
「ハチ!」
スピアーが飛び出した。
「スピアー、頼むぞ!」
「ハチ!」
「それでは……」
エリカが手を上げる。
「ウツドン、つるのムチ!」
「ウツ!」
二本のつるが伸びる。
「こうそくいどう!」
「ハチッ!」
スピアーが一瞬で駆け抜ける。
つるが空を切った。
「そのまま、ダブルニードル!」
「ハチィ!」
スピアーがウツドンへ突撃する。
二本の針が命中した。
「ウツ!」
ウツドンがよろめく。
「もう一度だ!」
「ハチ!」
スピアーが再び突撃する。
「ウツ……!」
ウツドンが倒れた。
「ウツドン、戦闘不能!」
「よし!」
マサヒロが拳を握る。
「スピアー、ナイス!」
「ハチ!」
エリカはウツドンを戻した。
「見事な連携ですね」
そして、次のモンスターボールを取り出す。
「では、ラフレシア」
「ラフ!」
大きなラフレシアが現れた。
「でかい……!」
マサヒロは少し驚く。
「スピアー、まだいけるか?」
「ハチ!」
スピアーは羽を動かし、戦う意思を見せる。
「なら行くぞ!」
「ラフレシア、はっぱカッター!」
「ラフ!」
無数の葉が飛んでくる。
「こうそくいどう!」
「ハチッ!」
スピアーが高速で走る。
葉を次々とかわしていく。
「そのまま、どくづき!」
「ハチィ!」
スピアーがラフレシアへ迫る。
毒の力を込めた針がラフレシアを捉えた。
「ラフ!」
ラフレシアが後ろへ下がる。
「いいぞ!」
マサヒロが叫ぶ。
「もう一度――」
「ねむりごな」
「ラフ!」
ラフレシアから粉が広がった。
「スピアー、避けろ!」
スピアーは横へ飛ぶ。
しかし、少しだけ粉を浴びてしまった。
「ハチ……」
動きが鈍くなる。
「スピアー!」
ラフレシアが近づく。
「つるのムチ!」
「ハチッ!」
つるがスピアーを捉えた。
「スピアー!」
そのまま地面へ叩きつけられる。
「ハチ……」
スピアーは立ち上がろうとする。
だが、体がふらついている。
「……戻れ」
マサヒロはボールを向けた。
「よく頑張った」
スピアーがボールへ戻る。
「次は……」
マサヒロはガーディを見る。
「ガーディ!」
「ガウ」
ガーディが前へ出る。
「お前にお願いしたい」
ガーディはラフレシアを見る。
少しだけ体が震える。
マサヒロはその様子に気づいた。
「……怖いか?」
「ガウ……」
「無理に戦わなくてもいいぞ」
マサヒロはしゃがんだ。
「俺は、お前を無理やり戦わせたくない」
ガーディはマサヒロを見る。
「一緒に戦いたいなら、来てくれ」
ガーディはしばらく黙っていた。
そして――
「ガウッ!」
自分からフィールドへ走り出した。
「……!」
マサヒロは笑った。
「よし!」
「ガウ!」
「一緒に勝とう!」
* * *
「ラフレシア、つるのムチ!」
「ガウ!」
ガーディが走る。
つるが迫ってくる。
「右だ!」
ガーディが横へ飛ぶ。
つるが地面を叩いた。
「そのまま、かみつく!」
「ガウッ!」
ガーディがラフレシアへ飛び込む。
鋭い牙がラフレシアを捉えた。
「ラフ!」
ラフレシアがよろめく。
「いいぞ、ガーディ!」
「ガウ!」
エリカが指示を出す。
「はっぱカッター!」
「ラフ!」
葉が一斉に飛んでくる。
「走れ!」
ガーディが走る。
葉をかわしながら、ラフレシアとの距離を詰める。
「かえんぐるま!」
「ガウウッ!」
ガーディの体が炎に包まれる。
そのまま一直線に突っ込む。
「ラフ!」
炎の攻撃がラフレシアに命中した。
「ラフ!」
ラフレシアが大きく後ろへ吹き飛ぶ。
「まだです!」
エリカが叫ぶ。
「ラフレシア、つるのムチ!」
「ラフ!」
つるが伸びる。
「避けろ!」
ガーディが飛び上がる。
しかし――
つるが後ろ足に絡みついた。
「ガウッ!」
ガーディが地面へ倒れる。
「ガーディ!」
ラフレシアが引っ張る。
「ガウ……!」
ガーディが苦しそうに声を上げる。
マサヒロは拳を握った。
「ガーディ!」
ガーディが顔を上げる。
「俺を見ろ!」
ガーディがマサヒロを見る。
「お前は俺を信じてくれた!」
マサヒロは叫ぶ。
「だから、俺もお前を信じる!」
ガーディの目に力が戻る。
「ガウッ!」
ガーディが力を込める。
つるを引っ張る。
「そのまま!」
「ガウウウッ!」
ガーディがつるを振りほどいた。
「今だ!」
ガーディが走る。
「とっしん!」
「ガウッ!」
ガーディが全力でラフレシアへ突っ込む。
「ラフ!」
ラフレシアが大きく吹き飛ぶ。
そのまま地面に倒れた。
「ラフレシア、戦闘不能!」
審判が宣言する。
「勝者、マサヒロ!」
「やったあああ!」
マサヒロが拳を突き上げる。
「ガーディ、やったな!」
「ガウ!」
ガーディがマサヒロへ駆け寄る。
マサヒロはしゃがみ、ガーディの頭を撫でた。
「すごかったぞ!」
「ガウ!」
ガーディは嬉しそうに尻尾を振る。
「ガーディ……」
エリカが微笑む。
「素晴らしい戦いでした」
マサヒロが振り返る。
「ありがとうございます!」
エリカはバッジを取り出した。
「あなたに、これを」
「これは……!」
マサヒロが両手で受け取る。
「タマムシジムのバッジです」
「やった!」
マサヒロはバッジを高く掲げた。
「これで四つ目だ!」
「ブイ!」
「フシ!」
「ハチ!」
「シャア!」
「バル!」
「ガウ!」
仲間たちが一斉に喜ぶ。
マサヒロはバッジを大切そうにしまった。
「みんな、ありがとう!」
* * *
タマムシジムを出る。
夕方の街を、マサヒロたちは歩いていた。
ガーディはマサヒロのすぐ隣を歩いている。
「ガーディ」
「ガウ?」
「今日はすごかったな」
「ガウ!」
「自分から戦いたいって出てきてくれた」
マサヒロは笑う。
「嬉しかったぞ」
ガーディはマサヒロを見上げる。
そして、尻尾を振った。
「これからも一緒に頑張ろうな」
「ガウッ!」
イーブイもガーディの隣に並ぶ。
「ブイ!」
ガーディも嬉しそうに鳴いた。
「ガウ!」
マサヒロは仲間たちを見る。
イーブイ。
フシギソウ。
スピアー。
ハクリュー。
バルキー。
そしてガーディ。
「よーし!」
マサヒロは前を向いた。
「次のバッジも絶対取るぞ!」
「ブイ!」
「ガウ!」
夕暮れのタマムシシティを、マサヒロたちは歩いていった。
その足取りは、どこまでも力強かった。