タマムシシティを出たマサヒロとイーブイは、次のジムがあるセキチクシティを目指して歩いていた。
「セキチクシティか……」
マサヒロは前を見ながら呟く。
「次のジム戦も絶対に勝つぞ!」
「ブイ!」
「そのためにも、もっと強くならないとな!」
マサヒロが拳を握る。
その時だった。
「……ん?」
前方から、一人の少年が歩いてくる。
茶色の髪。
自信に満ちた表情。
そして、その後ろには何匹ものポケモンを連れた姿があった。
「……あれは」
マサヒロの足が止まる。
「シゲル!」
「……マサヒロ?」
シゲルも立ち止まった。
そして、口元に笑みを浮かべる。
「久しぶりだな」
「シゲル、お前もセキチクシティに行くのか?」
「ああ。もちろんジム戦さ」
シゲルはマサヒロを見る。
「君も同じ目的みたいだね」
「ああ!」
マサヒロが笑う。
「次のジムでも勝って、カントーリーグ制覇に近づくんだ!」
「ふっ……相変わらずだな」
シゲルが笑う。
マサヒロはそんなシゲルを見て、ふと思い出した。
「そうだ!」
「ん?」
「この間、サトシとも再会したんだぜ」
「サトシ?」
シゲルの表情が変わる。
「君が?」
「ああ。タマムシシティのデパートで偶然会ったんだ」
「へえ……」
シゲルは少しだけ驚いたような顔をした。
「まだあいつ、旅を続けてるのか」
「もちろんだよ」
マサヒロは笑う。
「ピカチュウと一緒に頑張ってたぞ」
「そうか」
シゲルは鼻で笑った。
「相変わらず、あいつは身の程知らずだな」
「……何?」
「君も知ってるだろ?」
シゲルがマサヒロを見る。
「サトシなんかが僕たちと同じ場所を目指しているんだ。少し無理があるんじゃないか?」
マサヒロの表情が変わる。
以前なら――。
マサヒロ自身も、サトシのことを小馬鹿にしていた。
だが、今は違う。
「……シゲル」
「なんだ?」
「サトシを馬鹿にするのはやめろよ」
「……え?」
シゲルが目を丸くする。
「どうしたんだ、急に?」
「俺は前まで、サトシのことを馬鹿にしてた」
マサヒロは拳を握る。
「でも、旅をして、何度もあいつと会って、バトルもして……考えが変わったんだ」
「……」
「サトシは強い」
マサヒロは真っ直ぐシゲルを見る。
「それに、俺にとってサトシは本気で負けたくないライバルだ」
シゲルの表情から笑みが消える。
「……君が、あのサトシをライバルだと?」
「ああ!」
マサヒロは迷わず答える。
「サトシは俺と対等なライバルだ!」
「ふっ……」
シゲルが再び笑う。
「面白いことを言うようになったじゃないか」
「何だよ」
「そこまで言うなら――」
シゲルがモンスターボールを取り出す。
「君がどれだけ強くなったのか、僕にも見せてもらおうじゃないか」
「……!」
マサヒロの目が輝く。
「バトルするのか?」
「もちろん」
シゲルが笑う。
「6対6のフルバトルだ」
「望むところだ!」
二人は少し離れた場所へ移動する。
そして、向かい合った。
「マサヒロ!」
「シゲル!」
「6対6フルバトル!」
「行くぞ!」
シゲルがボールを投げる。
「カメックス!」
「カメェ!」
巨大なカメックスが姿を現した。
マサヒロは一瞬、驚く。
「カメックス……!」
「どうだ?」
シゲルが笑う。
「僕のカメックスは最終進化までしている」
シゲルはマサヒロを見る。
「それに対して君は……」
マサヒロもボールを投げる。
「フシギソウ!」
「ソウ!」
フシギソウが戦場へ飛び出した。
シゲルが笑う。
「まだ一回しか進化していないフシギソウか」
「それがどうした!」
「いや……」
シゲルは肩をすくめる。
「最終進化したカメックスとフシギソウじゃ、ずいぶん差があると思ってね」
「そんなの関係ない!」
マサヒロが叫ぶ。
「フシギソウは俺の仲間だ!」
「なら、見せてもらおうか」
シゲルが腕を組む。
「その仲間が、僕のカメックスにどこまで通用するのかをね」
「いくぞ、フシギソウ!」
「ソウ!」
「カメックス、こうそくスピン!」
「カメェ!」
カメックスが高速で回転しながら突っ込んでくる。
「フシギソウ、つるのムチ!」
「ソウ!」
伸びたつるがカメックスへ向かう。
しかし――。
「からにこもる!」
「カメ!」
カメックスが甲羅へ身を隠す。
つるが甲羅を叩く。
「効いてない!」
「そのまま、かみつく!」
「カメェ!」
カメックスが甲羅から飛び出し、フシギソウへ食らいつく。
「フシギソウ!」
「ソウッ!」
フシギソウが吹き飛ばされる。
「まだだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「はっぱカッター!」
「ソウ!」
鋭い葉が大量に飛んでいく。
「カメックス、こうそくスピン!」
カメックスが回転する。
飛んできた葉を弾き飛ばしながら、フシギソウへ迫る。
「たいあたり!」
「ソウ!」
フシギソウも正面からぶつかっていく。
「カメェ!」
「ソウッ!」
二匹が激突する。
「フシギソウ、まだいける!」
「ソウ……!」
フシギソウは踏ん張る。
「なかなかやるじゃないか」
シゲルが言う。
「でも、これで終わりだ」
シゲルが指を向ける。
「カメックス、ハイドロポンプ!」
「カメェェェ!」
強烈な水流が放たれる。
「フシギソウ、ソーラービーム!」
「ソウッ!」
フシギソウの頭上に光が集まる。
「いけぇぇぇ!」
「ソウウウウ!」
「カメェェェ!」
ソーラービームとハイドロポンプが正面からぶつかる。
激しい衝撃が戦場を包む。
「負けるな、フシギソウ!」
「ソウウウッ!」
だが――。
「カメックス!」
シゲルの声に応えるように、カメックスがさらに力を込める。
「カメェェェッ!」
ハイドロポンプがソーラービームを押し返す。
「なっ……!」
水流がフシギソウを直撃した。
「フシギソウ!」
「ソウ……」
フシギソウが倒れる。
「フシギソウ、戦闘不能!」
マサヒロは拳を握る。
「くそっ……!」
シゲルはカメックスを見ながら言う。
「これが僕と君の差だよ」
「……!」
マサヒロは悔しそうに歯を食いしばる。
「まだ終わってない!」
マサヒロはボールを取り出す。
「次はこいつだ!」
「バルキー!」
「バル!」
バルキーが戦場へ飛び出した。
シゲルも次のボールを取り出す。
「行け、キングラー!」
「キングラー!」
巨大なハサミを持ったキングラーが姿を現す。
「よし!」
マサヒロが構える。
「バルキー、素早さで翻弄するぞ!」
「バル!」
「キングラー、バブルこうせん!」
「キン!」
大量の泡が飛んでくる。
「バルキー、避けろ!」
「バル!」
バルキーが素早く横へ跳ぶ。
泡をかわしながら走り回る。
「そのまま、かわらわり!」
「バル!」
バルキーがキングラーへ迫る。
「キングラー、メタルクロー!」
「キン!」
鋭い爪が振り下ろされる。
「バルキー、避けろ!」
「バル!」
バルキーは素早くかわす。
「今だ! からてチョップ!」
「バル!」
攻撃がキングラーへ命中する。
「よし!」
マサヒロが拳を握る。
「このまま押し切るぞ!」
「……」
シゲルは冷静にバルキーを見る。
「確かに素早いな」
そして――。
「でも、動き続ければ隙も生まれる」
「え?」
「キングラー、クラブハンマー!」
「キングラァァァ!」
キングラーが巨大なハサミを振り上げる。
「バルキー、避けろ!」
「バル!」
バルキーが動こうとした、その瞬間。
キングラーのハサミが振り下ろされた。
ドォン!
「バルキー!」
「バル……」
バルキーがその場に倒れる。
「バルキー、戦闘不能!」
「そんな……!」
マサヒロが驚く。
「一撃で……」
シゲルが静かに言う。
「これが力の差だよ」
「……」
マサヒロは悔しそうに拳を握った。
「まだだ……!」
マサヒロは次のボールを握る。
「次はお前だ!」
ボールを投げる。
「スピアー!」
「シュア!」
スピアーが戦場へ飛び出した。
シゲルはユンゲラーのボールを取り出す。
「行け、ユンゲラー!」
「ユンゲラー!」
三戦目が始まった。
「スピアー、こうそくいどう!」
「シュア!」
スピアーが一気に加速する。
「ユンゲラー、サイコキネシス!」
「ユン!」
見えない力がスピアーを捉える。
「スピアー!」
スピアーの動きが止まる。
「どくづき!」
「シュアッ!」
無理やり身体を動かし、ユンゲラーへ突っ込む。
「サイケこうせん!」
「ユン!」
光線がスピアーを直撃する。
「シュアァ!」
スピアーが吹き飛ぶ。
「スピアー!」
マサヒロが叫ぶ。
「かわらわり!」
「シュア!」
スピアーが再び突っ込む。
しかし――。
「サイコキネシス!」
「シュアッ!」
またしても見えない力に捕らえられる。
スピアーの身体が宙へ浮く。
「くっ……!」
マサヒロは拳を握る。
「スピアー、負けるな!」
「シュア……!」
「これで終わりだ」
シゲルが言う。
「ユンゲラー、サイケこうせん!」
「ユン!」
光線がスピアーへ迫る。
その瞬間だった。
スピアーの身体から、何かが飛び出した。
「……え?」
マサヒロが目を見開く。
「今のは……?」
スピアーの周囲に無数の針が浮かぶ。
「まさか……!」
マサヒロが叫ぶ。
「ミサイルばり!」
「シュアアアアッ!」
無数の針が一斉にユンゲラーへ飛んでいく。
「ユンゲラー!?」
「ユンッ!」
針が次々と命中する。
「まだだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「スピアー、こうそくいどう!」
「シュア!」
スピアーが一瞬でユンゲラーへ接近する。
「ミサイルばり!」
「シュアアッ!」
至近距離から大量の針が放たれる。
「ユンゲラー!」
ユンゲラーが大きく吹き飛ばされる。
そして――。
「ユンゲラー、戦闘不能!」
「やったぁ!」
マサヒロが拳を突き上げる。
「スピアー、よくやった!」
「シュア!」
スピアーも嬉しそうに羽を大きく動かす。
「新しい技を覚えたんだな!」
「シュア!」
スピアーが力強く鳴く。
スピアーは嬉しそうにマサヒロを見る。
マサヒロも笑う。
「いいぞ!新しい技で勝ったんだ!」
「シュア!」
スピアーが胸を張る。
「よし!」
マサヒロが拳を握る。
「シゲル!」
「なんだ?」
「ここからだ!」
マサヒロは残りのボールを握りしめる。
「俺たちは、ここから巻き返す!」
「ブイ!」
イーブイも声を上げる。
シゲルは黙ってマサヒロを見つめる。
6対6のフルバトル。
まだ勝負は終わっていない。
マサヒロたちの反撃が、ここから始まる。
なんかシゲルがめっちゃ嫌な奴になってない?
ここから巻き返せるかしら()