「マサヒロたちの反撃が、ここから始まる」
マサヒロは残りのボールを握りしめる。
シゲルも黙ってマサヒロを見ていた。
「……なるほど」
シゲルが呟く。
「まさか、ここまでやるとはね」
マサヒロが笑う。
「俺達は絶対に最後まで諦めない!」
「ふっ……」
シゲルもボールを取り出す。
「なら、次の勝負といこうか」
「望むところだ!」
マサヒロがボールを投げる。
「行け、ハクリュー!」
「シャアア!」
青い身体のハクリューが戦場へ飛び出した。
シゲルはハクリューを見る。
「……ハクリュー?」
珍しく、シゲルの表情に驚きが浮かぶ。
「君、こんな珍しいポケモンまで捕まえていたのか?」
「へへっ!」
マサヒロが笑う。
「前に釣り対決をしただろ?」
「ああ」
「お前が帰った後、俺は諦めず釣りを続けてたんだ」
マサヒロはハクリューを見る。
「そしたら、こいつが釣れたんだ!」
「……なるほど」
シゲルは少し考える。
「君があの時釣り上げたポケモンだったのか」
「そういうこと!」
シゲルはハクリューを見つめる。
「しかし、ミニリュウからここまで育てたのか」
「うん!」
「大したものだな」
シゲルは素直に言った。
「希少なドラゴンタイプを捕まえただけじゃない。ちゃんと強く育てている」
「……!」
マサヒロは嬉しそうに笑う。
「ありがとな!」
「勘違いするなよ」
シゲルはボールを構える。
「褒めたのは事実だが、勝負は別だ」
「分かってる!」
シゲルがボールを投げる。
「行け、カイロス!」
「カイロォ!」
巨大な角を持ったカイロスが姿を現した。
「ハクリュー!」
「シャア!」
「カイロス、はさむ!」
「カイロ!」
カイロスがハクリューへ突っ込む。
「ハクリュー、たつまき!」
「シャアア!」
竜巻がカイロスを包み込む。
だが――。
「かたくなる!」
「カイロ!」
カイロスが身体を硬くする。
竜巻の中を強引に進んでいく。
「そんな!」
「そのまま、シザークロス!」
「カイロォ!」
両腕を交差させ、ハクリューへ斬りかかる。
「ハクリュー、避けろ!」
「シャア!」
ハクリューが横へ飛ぶ。
しかし、カイロスはすぐに追いつく。
「はさむ!」
「シャアッ!」
ハクリューの身体が挟まれる。
「ハクリュー!」
「シャアアア!」
「カイロス、そのままじごくぐるま!」
「カイロォォ!」
カイロスがハクリューを投げ飛ばす。
ドォン!
「ハクリュー!」
「シャア……!」
ハクリューが地面に叩きつけられる。
「くっ……!」
マサヒロは歯を食いしばる。
「ハクリュー、りゅうのはどう!」
「シャアアア!」
強烈な波動がカイロスへ飛んでいく。
「カイロス、シザークロス!」
「カイロォ!」
カイロスが攻撃を正面から叩きつける。
ドォン!
二つの技がぶつかり合う。
「負けるな、ハクリュー!」
「シャアア……!」
だが、カイロスのパワーは強かった。
「カイロス、じごくぐるま!」
「カイロォォ!」
カイロスが再びハクリューを捕まえる。
「ハクリュー!」
そのまま地面へ叩きつけられる。
「シャア……!」
「ハクリュー!」
マサヒロが叫ぶ。
「まだだ!」
ハクリューがゆっくりと立ち上がる。
「シャア……」
身体は傷ついている。
それでも、目は諦めていない。
「そうだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「ハクリュー、まだ終わってないぞ!」
「シャア……!」
カイロスが迫る。
「カイロス、シザークロス!」
「カイロォ!」
「ハクリュー、避けろ!」
「シャア!」
ハクリューが身体をひねる。
ギリギリで攻撃をかわした。
「今だ!」
マサヒロが叫ぶ。
「りゅうのはどう!」
「シャアアア!」
波動がカイロスへ直撃する。
「カイロ!」
カイロスがよろめく。
「よし!」
マサヒロが拳を握る。
だが、カイロスは倒れない。
「カイロス、はさむ!」
「カイロ!」
再びハクリューへ迫る。
「ハクリュー!」
その瞬間だった。
ハクリューの身体が淡い光に包まれる。
「……え?」
マサヒロが目を見開く。
「ハクリュー?」
ハクリューの身体から力があふれていく。
「まさか……!」
マサヒロは叫ぶ。
「りゅうのまい!」
「シャアアアア!」
ハクリューが身体を大きくしならせる。
力がみなぎる。
動きも、これまでとは明らかに違っていた。
「すごい……!」
マサヒロの目が輝く。
「攻撃も速さも上がったんだ!」
「シャア!」
ハクリューが一瞬でカイロスの横へ回り込む。
「カイロス、かたくなる!」
「遅い!」
マサヒロが叫ぶ。
「ハクリュー、たたきつける!」
「シャアアアッ!」
ハクリューの尾が勢いよく振り下ろされる。
ドォン!
「カイロォォ!」
カイロスが地面を転がる。
そして――。
「カイロス、戦闘不能!」
「やったぁ!」
マサヒロが拳を突き上げる。
「ハクリュー、よくやった!」
「シャア!」
ハクリューも嬉しそうに鳴いた。
シゲルはカイロスをボールへ戻す。
「……強くなったな」
「へへっ!」
マサヒロが笑う。
「ハクリューのおかげだ!」
シゲルはマサヒロを見る。
そして、次のボールを取り出した。
「……ここまでとは思わなかったよ」
「え?」
「正直に言おう」
シゲルは真剣な表情になる。
「僕は君のことを少し甘く見ていた」
「……」
「さっき、サトシのことを馬鹿にした時もそうだ」
シゲルがマサヒロを見る。
「君まで、僕たちと同じ場所を目指すには力不足だと思っていた」
マサヒロは黙って聞く。
「でも、今の戦いを見て分かった」
シゲルが拳を握る。
「君は想像以上に強い」
「シゲル……」
「さっきの発言は謝る」
シゲルははっきりと言った。
「悪かった」
マサヒロは少し驚く。
そして――。
「……分かった!」
笑顔になる。
「だったら、ここからは本気で来いよ!」
「もちろんだ」
シゲルも笑う。
「ここからは、僕も本気でいく」
「俺もだ!」
二人は同時にボールを投げる。
「行け、ガーディ!」
「ワン!」
「ドードリオ!」
「ドードリオ!」
三つの頭を持つドードリオが姿を現した。
「よし!」
マサヒロが構える。
「ガーディ、いくぞ!」
「ワン!」
「ドードリオ、トライアタック!」
「ドードリオ!」
三つの頭から光が放たれる。
「ガーディ、避けろ!」
「ワン!」
ガーディが横へ飛ぶ。
「かえんぐるま!」
「ワン!」
炎をまとって突っ込む。
しかし――。
「ドードリオ、はがねのつばさ!」
「ドードリオ!」
鋭い翼がガーディを迎え撃つ。
「ガーディ!」
「ワンッ!」
ガーディが吹き飛ばされる。
「速い……!」
マサヒロが驚く。
「ドードリオ、ドリルくちばし!」
「ドードリオ!」
ドードリオが高速で突っ込んでくる。
「ガーディ、かみつく!」
「ワン!」
ガーディが飛びかかる。
だが、ドードリオは素早くかわす。
「トライアタック!」
「ドードリオ!」
再び攻撃が飛んでくる。
「ガーディ!」
「ワンッ!」
ガーディは必死に耐える。
「とっしん!」
「ワン!」
ガーディが真正面から突っ込む。
ドォン!
「ドードリオ!」
「よし!」
マサヒロが喜ぶ。
だが、ドードリオはすぐに立ち上がった。
「まだだ!」
シゲルが叫ぶ。
「ドードリオ、はがねのつばさ!」
「ドードリオ!」
「ガーディ、避けろ!」
「ワン!」
ガーディが避けようとする。
しかし――。
「ドリルくちばし!」
「ドードリオ!」
別の頭から攻撃が飛んでくる。
「ガーディ!」
「ワンッ!」
ガーディが吹き飛ばされる。
「ガーディ、ひのこ!」
「ワン!」
小さな炎が飛んでいく。
ドードリオは軽々とかわす。
「速すぎる……!」
マサヒロは歯を食いしばる。
「ガーディ、もう一度ひのこ!」
「ワン!」
炎が放たれる。
その瞬間だった。
ガーディの身体から、炎が一気に膨れ上がる。
「……え?」
マサヒロが目を見開く。
炎が大きく伸びていく。
「ガーディ!」
「ワンンン!」
「ひのこが……!」
マサヒロは叫ぶ。
「かえんほうしゃになった!」
「ワンンン!」
巨大な炎がドードリオへ向かって放たれる。
「ドードリオ!」
「ドォォ!」
炎が直撃する。
「やった!」
マサヒロが拳を握る。
だが――。
「ドードリオ、まだいける!」
シゲルが叫ぶ。
「トライアタック!」
「ドードリオォ!」
三つの頭から強烈な光が放たれる。
「ガーディ!」
「ワンッ……!」
攻撃がガーディを直撃する。
ガーディはその場に倒れた。
「ガーディ、戦闘不能!」
「ガーディ……!」
マサヒロは悔しそうにボールを握る。
「よく頑張った」
ガーディをボールへ戻す。
「ありがとうな」
マサヒロは次のボールを手に取った。
「よし……最後だ」
そして――。
「行くぞ、イーブイ!」
「ブイ!」
イーブイが戦場へ飛び出す。
「最後の一匹か」
シゲルも最後のボールを取り出す。
「僕も最後の一匹だ」
「行け、ゴローン!」
「ゴロォン!」
巨大な岩の身体を持つゴローンが現れた。
「イーブイ!」
「ブイ!」
マサヒロはイーブイを見る。
「イーブイは俺の最強の相棒だ!」
「ブイ!」
「いくぞ!」
「ゴローン、ころがる!」
「ゴロォン!」
ゴローンが身体を丸めて突っ込んでくる。
「イーブイ、かげぶんしん!」
「ブイ!」
イーブイが何匹にも分身する。
ゴローンは次々と分身を弾き飛ばしていく。
「本物はどこだ!」
シゲルが叫ぶ。
「イーブイ、でんこうせっか!」
「ブイ!」
本物のイーブイが高速で走り抜ける。
「そのまま、かみつく!」
「ブイ!」
イーブイがゴローンへ飛びかかる。
「ゴロッ!」
「よし!」
マサヒロが叫ぶ。
「エボルブラスト!」
「ブイイイイ!」
強烈な光がゴローンを包み込む。
ドォォン!
「ゴローン!」
砂煙が上がる。
「やった!」
マサヒロが拳を握る。
しかし――。
砂煙の中からゴローンが姿を現した。
「ゴロォン……!」
「えっ!?」
マサヒロが驚く。
「耐えたのか!?」
「これがゴローンのタフさだ」
シゲルが笑う。
「まだ戦えるぞ!」
「ゴロォン!」
「そんな……!」
ゴローンが反撃する。
「いわおとし!」
「ゴロォン!」
大量の岩が飛んでくる。
「イーブイ、避けろ!」
「ブイ!」
イーブイが走り回る。
「マグニチュード!」
「ゴロォン!」
地面が激しく揺れる。
「イーブイ!」
「ブイイ!」
イーブイの足元が崩れる。
「ころがる!」
「ゴロォン!」
ゴローンが勢いよく転がってくる。
「かげぶんしん!」
「ブイ!」
イーブイが分身する。
しかし、ゴローンは次々と分身を吹き飛ばす。
「イーブイ!」
「ブイッ!」
本物のイーブイも攻撃を受ける。
「くっ……!」
マサヒロが拳を握る。
「どうすれば……」
その時だった。
マサヒロの頭に、さっきの戦いが浮かんだ。
ドードリオの鋭い翼。
「……そうだ!」
マサヒロが顔を上げる。
「イーブイ!」
「ブイ?」
「さっきのドードリオの技だ!」
マサヒロは叫ぶ。
「はがねのつばさみたいな攻撃……!」
イーブイの目が輝く。
「ブイ!」
「イーブイ、いくぞ!」
ゴローンが再び迫ってくる。
「ころがる!」
「ゴロォン!」
「イーブイ、でんこうせっか!」
「ブイ!」
イーブイが高速で走る。
ゴローンの攻撃をギリギリでかわす。
「そのまま!」
マサヒロが叫ぶ。
「アイアンテール!」
「ブイイイイ!」
イーブイの尻尾が銀色に輝く。
「……!」
シゲルが目を見開く。
「アイアンテールだと!?」
「ブイッ!」
イーブイが身体をひねる。
輝く尻尾がゴローンへ叩きつけられる。
ドォン!
「ゴロォォン!」
ゴローンが大きく吹き飛ばされる。
そして――。
「ゴローン、戦闘不能!」
「やったぁぁぁ!」
マサヒロが拳を突き上げる。
「イーブイ、勝ったぞ!」
「ブイ!」
イーブイも嬉しそうに跳ねる。
シゲルはゴローンをボールへ戻す。
「……参ったな」
そして、マサヒロを見る。
「まさか最後の最後で、新しい技まで覚えるとはね」
「俺もびっくりした!」
マサヒロは笑う。
「でも、イーブイが頑張ったから勝てたんだ!」
「ブイ!」
二人は向かい合う。
「これで……」
マサヒロが指を立てる。
「3勝3敗!」
シゲルが頷く。
「ああ」
「引き分けだな!」
「ああ。今回はね」
シゲルは笑う。
マサヒロも笑った。
「だったら、次に会う時は絶対に決着をつけよう!」
「望むところだ」
シゲルが拳を握る。
「ポケモンリーグで、どちらが上なのか決めようじゃないか」
「ポケモンリーグ……!」
マサヒロの目が輝く。
「そこで勝って、俺がカントーチャンピオンに近づくんだ!」
「その前に、僕が勝つけどね」
「絶対負けないぞ!」
「僕もだ」
二人は互いに笑う。
「じゃあな、シゲル!」
「ああ、マサヒロ」
シゲルは歩き出す。
マサヒロも反対方向へ歩き出す。
「イーブイ!」
「ブイ!」
「俺たちも行こう!」
「ブイ!」
マサヒロは前を向く。
次のジム。
そして、その先にあるポケモンリーグ。
そこで、シゲルとの決着をつける。
二人の勝負は――まだ終わっていない。
ちょっとはシゲルの株を戻せたと信じたい…