ポケットモンスターブラウン   作:光宙

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23話 バルキーとの別れ!さらなる強さを求めて!

シゲルとの激闘から数日後。

 

マサヒロとイーブイたちは、セキチクシティへ向かって歩いていた。

 

「セキチクまで、もう少しだな!」

 

マサヒロが前を見ながら言う。

 

「次のジム戦に向けて、もっと鍛えないと!」

 

「ブイ!」

 

マサヒロたちは街道の広い場所で立ち止まった。

 

「よし!」

 

マサヒロがボールを取り出す。

 

「今日はみんなで特訓だ!」

 

「ブイ!」

 

「フシギソウ!」

 

「ソウ!」

 

「スピアー!」

 

「シュア!」

 

「ハクリュー!」

 

「シャア!」

 

「ガーディ!」

 

「ワン!」

 

そして最後に――。

 

「バルキー!」

 

「バル!」

 

六匹のポケモンが並ぶ。

 

「みんな、シゲルとのバトルでは頑張ってくれた」

 

マサヒロが笑う。

 

「でも、まだまだ強くなるぞ!」

 

「バル!」

 

バルキーが元気よく返事をする。

 

「まずはバルキーからだ!」

 

「バル!」

 

マサヒロが指を向ける。

 

「かわらわり!」

 

「バル!」

 

バルキーが大きな岩へ向かって走る。

 

「せーの!」

 

ドォン!

 

バルキーの手刀が岩を叩き割る。

 

「すごいぞ、バルキー!」

 

「バル!」

 

「次は、からてチョップ!」

 

「バル!」

 

バルキーが次の岩へ向かって走る。

 

「もっと速く!」

 

「バルッ!」

 

ドォン!

 

岩が大きく揺れる。

 

しかし――。

 

岩は割れなかった。

 

「……!」

 

バルキーが岩を見る。

 

そして、悔しそうに拳を握る。

 

「バル……」

 

「大丈夫だ!」

 

マサヒロが駆け寄る。

 

「少しずつ強くなればいいんだ!」

 

「バル……」

 

バルキーは俯く。

 

その様子を見ていたマサヒロは、少しだけ不思議そうな顔をした。

 

「どうしたんだ?」

 

「バル……」

 

バルキーは拳を見つめる。

 

そして、もう一度岩へ向かって走り出した。

 

「バルキー!」

 

「バル!」

 

ドォン!

 

何度も何度も岩を叩く。

 

「バル!」

 

ドォン!

 

「バル!」

 

ドォン!

 

マサヒロは黙って見つめる。

 

「……バルキー」

 

バルキーは諦めない。

 

何度失敗しても、拳を振り続ける。

 

その時だった。

 

「ほう……」

 

突然、後ろから声が聞こえた。

 

「なかなかいい根性をしているな」

 

「え?」

 

マサヒロが振り返る。

 

そこには――。

 

大きな身体をした男が立っていた。

 

鍛え上げられた肉体。

 

そして、腰にはモンスターボール。

 

「……誰だ?」

 

男は笑う。

 

「俺はシバ」

 

「シバ……?」

 

マサヒロは目を見開く。

 

「まさか……」

 

シバは頷いた。

 

「そうだ」

 

「四天王のシバさん!?」

 

「その通りだ」

 

「すげぇぇぇ!」

 

マサヒロの目が輝く。

 

「本物だ!」

 

「元気な少年だな」

 

シバは笑う。

 

そして、バルキーを見る。

 

「だが、俺が気になったのは君ではない」

 

「え?」

 

「そいつだ」

 

シバがバルキーを指差す。

 

「バルキー?」

 

「バル!」

 

バルキーが顔を上げる。

 

「さっきから見ていたが……」

 

シバは岩を見る。

 

「何度失敗しても、拳を止めなかった」

 

「……」

 

「強くなりたいという気持ちが、身体から伝わってくる」

 

バルキーはシバを見る。

 

「バル……!」

 

シバが笑う。

 

「いい目だ」

 

「バルキーが?」

 

「ああ」

 

シバはバルキーの前にしゃがむ。

 

「お前、もっと強くなりたいんだな?」

 

「バル!」

 

バルキーが力強く頷く。

 

「だったら、俺と少しだけ修行してみるか?」

 

「バル……!」

 

「いいんですか!?」

 

マサヒロが驚く。

 

「ああ」

 

シバは立ち上がる。

 

「俺はかくとうポケモンを専門に鍛えている」

 

「……!」

 

「お前のバルキーなら、もっと伸びるかもしれん」

 

マサヒロはバルキーを見る。

 

「バルキー……どうする?」

 

バルキーは嬉しそうに頷いた。

 

「バル!」

 

「よし!」

 

マサヒロも笑う。

 

「じゃあ、お願いしてみるか!」

 

「バル!」

 

シバは少し離れた場所へ移動する。

 

「まずは俺の言う通りに動いてみろ」

 

「バル!」

 

「走れ!」

 

「バル!」

 

バルキーが走り出す。

 

「もっと速くだ!」

 

「バルッ!」

 

バルキーがさらに速度を上げる。

 

「次は、からてチョップ!」

 

「バル!」

 

大きな岩へ向かって拳を振り下ろす。

 

ドォン!

 

岩が大きくへこむ。

 

「……!」

 

マサヒロが驚く。

 

「すごい!」

 

シバが笑う。

 

「いいぞ。その調子だ!」

 

「バル!」

 

バルキーはさらに拳を振るう。

 

「かわらわり!」

 

「バル!」

 

ドォン!

 

今度は岩の一部が崩れ落ちた。

 

「やった!」

 

マサヒロが喜ぶ。

 

「バルキー、すごいぞ!」

 

「バル!」

 

バルキーも嬉しそうに拳を握る。

 

しかし――。

 

その後も特訓は続いた。

 

走り込み。

 

攻撃の練習。

 

体力作り。

 

シバの指示に、バルキーは必死についていった。

 

そして夕方。

 

「はぁ……はぁ……」

 

バルキーが地面に座り込む。

 

身体は泥だらけ。

 

それでも、その顔には笑顔が浮かんでいた。

 

「バル……!」

 

シバが頷く。

 

「よく頑張ったな」

 

「バル!」

 

マサヒロも駆け寄る。

 

「すごかったぞ、バルキー!」

 

「バル!」

 

バルキーが拳を突き上げる。

 

「今日はここまでにしよう」

 

シバが言う。

 

「バルキーも休ませてやれ」

 

「はい!」

 

マサヒロはバルキーの隣に座る。

 

「疲れただろ?」

 

「バル……」

 

バルキーは頷く。

 

マサヒロは笑った。

 

「でも、楽しそうだったな」

 

「バル!」

 

その夜。

 

マサヒロは焚き火の前で、シバと話していた。

 

「シバさん、今日はありがとうございました」

 

「礼を言う必要はない」

 

シバは炎を見つめる。

 

「俺もいい経験をさせてもらった」

 

「え?」

 

「バルキーは面白いポケモンだ」

 

シバはバルキーを見る。

 

「強くなりたいという気持ちが、とても強い」

 

「……うん」

 

「だからこそ――」

 

シバがマサヒロを見る。

 

「一つ、君に提案がある」

 

「提案?」

 

「ああ」

 

シバは真剣な表情になった。

 

「バルキーを、俺に預けてみないか?」

 

「……え?」

 

マサヒロの表情が固まる。

 

「バルキーを……?」

 

「ああ」

 

シバは続ける。

 

「俺のもとで、もっと本格的に鍛えるんだ」

 

「……」

 

マサヒロはバルキーを見る。

 

「それって……」

 

「しばらくの間、俺がバルキーを預かるということだ」

 

「嫌だ!」

 

マサヒロはすぐに答えた。

 

「……」

 

シバは黙ってマサヒロを見る。

 

「バルキーは俺の大切な仲間です」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「ヤマブキシティからずっと一緒に旅してきたんだ」

 

「……」

 

「一緒に戦って、一緒に負けて……」

 

マサヒロの声が少し震える。

 

「それなのに、離れるなんて……」

 

「気持ちは分かる」

 

シバは静かに言った。

 

「大切な仲間と離れたくないのは当然だ」

 

「だったら……」

 

「だが」

 

シバがマサヒロを見る。

 

「君はまだ旅に出たばかりのトレーナーだ」

 

「……!」

 

「これから先、ジム戦もある。旅も続く」

 

シバは言葉を続ける。

 

「君は六匹すべてを大切にしている」

 

「当たり前です!」

 

「だが、それと同時に――」

 

シバはバルキーを見る。

 

「六匹全員を同じように鍛えるのは、今の君には難しい」

 

マサヒロは黙る。

 

「バルキーはかくとうタイプだ」

 

「……うん」

 

「そして俺は、かくとうポケモンを鍛えるプロフェッショナルだ」

 

シバは拳を握る。

 

「俺のもとなら、バルキーをもっと効率よく鍛えることができる」

 

「……」

 

「今日の特訓を見ただろう?」

 

マサヒロはバルキーを見る。

 

バルキーはまだ疲れている。

 

それでも、シバを見つめる目には強い意志があった。

 

「バルキーは、もっと強くなりたいんだ」

 

「……!」

 

「大切なポケモンと離れたくない気持ちは分かる」

 

シバは優しく言う。

 

「だが、トレーナーにはポケモンの意思を尊重することも必要だ」

 

「ポケモンの……意思」

 

「ああ」

 

シバは頷く。

 

「バルキーが本当に望んでいることを聞いてやれ」

 

「……」

 

マサヒロはバルキーの前に座る。

 

「バルキー」

 

「バル……?」

 

「俺は、お前とずっと一緒にいたい」

 

マサヒロの目に涙が浮かぶ。

 

「これからも一緒に旅したい」

 

「バル……」

 

「でも……」

 

マサヒロはバルキーの拳を見る。

 

「お前がもっと強くなりたいなら……」

 

声が震える。

 

「俺は、お前の気持ちをちゃんと聞きたい」

 

バルキーは黙ってマサヒロを見る。

 

「シバさんのところで……」

 

マサヒロは涙をこらえる。

 

「もっと強くなりたいか?」

 

「……」

 

バルキーは長い間、何も答えなかった。

 

マサヒロも急かさない。

 

ただ、じっと待つ。

 

やがて――。

 

バルキーが拳を握った。

 

「バル……」

 

そして、シバの方を向く。

 

「バル!」

 

強く頷く。

 

「……そうか」

 

マサヒロは目を伏せる。

 

「お前は……」

 

涙が一粒、頬を伝った。

 

「シバさんのところで、強くなりたいんだな」

 

「バル……」

 

バルキーは申し訳なさそうにマサヒロを見る。

 

マサヒロは涙を拭う。

 

そして、無理やり笑った。

 

「……分かった」

 

「バル?」

 

「お前がそうしたいなら……」

 

マサヒロはバルキーを抱きしめる。

 

「俺は応援する!」

 

「バル……!」

 

バルキーもマサヒロにしがみつく。

 

「いっぱい鍛えてもらえよ」

 

「バル……」

 

「もっともっと強くなってさ」

 

マサヒロの涙が止まらない。

 

「いつか、また俺と一緒に戦おうな」

 

「バル……!」

 

「約束だぞ」

 

「バル!」

 

バルキーが力強く頷く。

 

シバは二人を静かに見守っていた。

 

翌朝。

 

マサヒロたちは街道の分かれ道に立っていた。

 

「ここから俺はセキチクへ向かう」

 

マサヒロはバルキーを見る。

 

「そして、お前はシバさんと一緒に修行だ」

 

「バル……」

 

「寂しいけど……」

 

マサヒロは笑う。

 

「頑張ってこい!」

 

「バル!」

 

バルキーが拳を突き上げる。

 

「シバさん」

 

「ああ」

 

マサヒロはバルキーのボールをシバへ渡す。

 

「バルキーを……よろしくお願いします」

 

シバはボールを受け取る。

 

「ああ」

 

そして、バルキーを見る。

 

「任せておけ」

 

「バル!」

 

バルキーはマサヒロを見る。

 

「……」

 

マサヒロもバルキーを見る。

 

何も言えない。

 

ただ、涙が次々とこぼれていく。

 

「……じゃあな、バルキー」

 

「バル……」

 

「元気でな」

 

「バル……!」

 

バルキーが一歩、シバの方へ歩く。

 

そして――。

 

もう一度だけ振り返った。

 

「バル!」

 

「……!」

 

マサヒロは笑顔を作る。

 

「また会おうな!」

 

「バル!」

 

バルキーが拳を突き上げる。

 

シバとバルキーが歩き出す。

 

「……」

 

マサヒロはその背中を見つめ続ける。

 

やがて、二人の姿が遠くなっていく。

 

「……バルキー」

 

マサヒロは涙を拭う。

 

「絶対、強くなれよ」

 

「ブイ……」

 

隣にいたイーブイがマサヒロに寄り添う。

 

マサヒロはイーブイを抱き上げる。

 

「寂しいな……」

 

「ブイ……」

 

「でも……」

 

マサヒロは前を向く。

 

「バルキーが強くなりたいって言ったんだ」

 

涙を拭う。

 

「だったら、俺も負けてられない!」

 

「ブイ!」

 

マサヒロが拳を握る。

 

「俺ももっと強くなる!」

 

「ブイ!」

 

「いつかまた会った時に――」

 

マサヒロは笑った。

 

「バルキーに、俺も強くなったって見せてやる!」

 

「ブイ!」

 

マサヒロとイーブイは、セキチクシティへ向かって歩き出す。

 

離れ離れになった二人。

 

それでも――。

 

強くなりたいという想いは、同じだった。

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