バルキーと別れてから、数日。
マサヒロとイーブイたちは、ついにセキチクシティへ到着した。
「着いたぞ、セキチクシティ!」
「ブイ!」
大きな街を見渡しながら、マサヒロは笑う。
「ここが次のジムか……!」
マサヒロは拳を握る。
「バルキーに負けないくらい、俺たちも強くなってるって見せてやる!」
「ブイ!」
マサヒロはセキチクジムへ向かった。
そして――。
「ここがセキチクジム……」
マサヒロが扉を開ける。
「誰かいませんかー!」
「……来客とは珍しいな」
奥から声が聞こえる。
「!」
現れたのは、忍者のような格好をした男だった。
「俺はセキチクジムのジムリーダー、キョウ」
「俺はマサヒロ!」
マサヒロは元気よく名乗る。
「カントー地方のジムバッジを集めてるんだ!」
「ほう」
キョウはマサヒロを見る。
「では、ジム戦を希望するということだな」
「ああ!」
「よかろう」
キョウが頷く。
「今回は2対2のバトルとしよう」
「2対2……!」
マサヒロがボールを握る。
「絶対勝つぞ!」
「ブイ!」
キョウとマサヒロは向かい合う。
「それでは――」
キョウがボールを投げる。
「行け、モルフォン!」
「モルフォォン!」
大きな羽を持ったモルフォンが姿を現す。
「よし!」
マサヒロもボールを投げる。
「行け、スピアー!」
「シュア!」
スピアーが戦場へ飛び出す。
「スピアーか」
キョウが静かに言う。
「高速で動き回る、素早いポケモンだな」
「そうだ!」
マサヒロが構える。
「スピアー、こうそくいどう!」
「シュア!」
スピアーが一瞬で走り出す。
「速い!」
マサヒロが叫ぶ。
「そのまま、どくづき!」
「シュアアッ!」
スピアーがモルフォンへ突っ込む。
しかし――。
「モルフォン、右へ!」
「モル!」
モルフォンが急に横へ動く。
「何!?」
スピアーが空振りする。
「スピアー、戻れ!」
「シュア!」
スピアーが方向を変える。
「もう一度、こうそくいどう!」
「シュア!」
スピアーがモルフォンの周囲を高速で飛び回る。
「どくづき!」
「シュアッ!」
しかし――。
モルフォンは上下左右に不規則に動く。
「なっ……!」
マサヒロが目を見開く。
「スピアーの動きを読んでる!?」
「違う」
キョウが答える。
「モルフォンには、決まった動きなどない」
「……!」
「予測できない動きこそ、忍の戦いだ」
「スピアー、もう一度!」
「シュア!」
スピアーが突っ込む。
モルフォンは突然上へ跳ねる。
「なに!?」
スピアーが通り過ぎる。
「モルフォン!」
「モル!」
モルフォンがスピアーの背後へ回り込む。
「スピアー、後ろだ!」
「シュア!?」
「サイケこうせん!」
「モルフォォン!」
光線がスピアーを直撃する。
「スピアー!」
「シュアア!」
スピアーが吹き飛ばされる。
「立て、スピアー!」
「シュア……!」
スピアーが立ち上がる。
「よし!」
マサヒロが拳を握る。
「こうそくいどう!」
「シュア!」
再びスピアーが加速する。
「今度こそ、ミサイルばり!」
「シュアアアッ!」
無数の針がモルフォンへ飛んでいく。
しかし――。
「モルフォン、避けろ」
「モル!」
モルフォンが不規則に動き回る。
針が次々と地面へ突き刺さっていく。
「そんな……!」
マサヒロが驚く。
「スピアーの攻撃が当たらない!」
「そして――」
キョウが指を向ける。
「サイケこうせん!」
「モルフォォン!」
再び光線が放たれる。
「スピアー、避けろ!」
「シュア!」
スピアーが横へ飛ぶ。
だが――。
「そこだ」
「モル!」
モルフォンが進路を変える。
光線がスピアーを追いかける。
「スピアー!」
ドォン!
「シュアア……!」
スピアーが地面へ落ちる。
「スピアー、戦闘不能!」
「そんな……!」
マサヒロが拳を握る。
「スピアー!」
スピアーは悔しそうにマサヒロを見る。
「よく頑張った」
マサヒロはボールを取り出す。
「戻って休んでくれ」
スピアーがボールへ戻る。
マサヒロは次のボールを握った。
「……よし」
「次はお前だ!」
ボールを投げる。
「行け、ガーディ!」
「ワン!」
ガーディが戦場へ飛び出す。
「ガーディか」
キョウが見る。
「相性はこちらが有利だと思うか?」
「もちろん!」
マサヒロが叫ぶ。
「ガーディ、かえんぐるま!」
「ワン!」
ガーディが炎をまとって突っ込む。
「モルフォン、避けろ!」
「モル!」
モルフォンが横へ逃げる。
「ガーディ、追いかけろ!」
「ワン!」
ガーディが追いかける。
「かえんぐるま!」
「ワン!」
再び炎をまとって突撃する。
「モル!」
モルフォンは空中へ逃げる。
「ガーディ、上だ!」
「ワン!」
ガーディが上を向く。
「かみつく!」
「ワン!」
ガーディが飛び上がる。
「モルフォン、サイケこうせん!」
「モルフォォン!」
光線がガーディへ迫る。
「ガーディ、避けろ!」
「ワン!」
ガーディが空中で身体をひねる。
光線をかわす。
「今だ!」
マサヒロが叫ぶ。
「かみつく!」
「ワン!」
ガーディがモルフォンへ食らいつく。
「モルフォン!」
「モルッ!」
モルフォンが地面へ叩き落とされる。
「よし!」
マサヒロが拳を握る。
「ガーディ、もう一度かえんぐるま!」
「ワン!」
炎をまとったガーディが突っ込む。
「モルフォン、避けろ!」
「モル!」
モルフォンが不規則に動く。
しかし――。
「そこだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「ガーディ、とっしん!」
「ワン!」
ガーディが進路を変える。
ドォン!
「モル!」
モルフォンに直撃する。
モルフォンが大きく吹き飛ぶ。
「今だ!」
マサヒロが叫ぶ。
「かえんぐるま!」
「ワンンン!」
炎がモルフォンを包み込む。
「モルフォォン!」
モルフォンが地面へ落ちる。
「モルフォン、戦闘不能!」
「やったぁ!」
マサヒロが拳を突き上げる。
「ガーディ、よくやった!」
「ワン!」
ガーディが嬉しそうに吠える。
「これであと一匹だ!」
マサヒロが笑う。
しかし――。
キョウは静かに最後のボールを取り出していた。
「よくやったな」
「……!」
「だが、ここからが本番だ」
キョウがボールを投げる。
「行け、ゴルバット!」
「ゴルバット!」
大きな翼を持ったゴルバットが姿を現す。
「ゴルバット……!」
マサヒロが息を呑む。
「ガーディ、いくぞ!」
「ワン!」
「ゴルバット、超音波!」
「ゴルバット!」
大きな音波が飛んでくる。
「ガーディ、避けろ!」
「ワン!」
ガーディが横へ飛ぶ。
「かえんほうしゃ!」
「ワンンン!」
巨大な炎がゴルバットへ飛んでいく。
「ゴルバット、避けろ!」
「ゴル!」
ゴルバットが空中で身体をひねる。
炎をかわす。
「速い……!」
マサヒロが驚く。
「ゴルバット、つばさでうつ!」
「ゴルバット!」
ゴルバットが一気に下降する。
「ガーディ、かみつく!」
「ワン!」
ガーディが飛びかかる。
だが――。
ゴルバットが上へ逃げる。
「ガーディ!」
「ワン!?」
「そのまま、エアカッター!」
「ゴルバット!」
鋭い風の刃が飛んでくる。
「ガーディ!」
「ワンッ!」
ガーディが吹き飛ばされる。
「立て!」
「ワン……!」
ガーディが立ち上がる。
「まだだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「かえんほうしゃ!」
「ワンンン!」
巨大な炎が放たれる。
ゴルバットは素早く上昇する。
炎が空を通り過ぎる。
「また避けられた!」
マサヒロが歯を食いしばる。
「ゴルバット、つばさでうつ!」
「ゴルバット!」
ゴルバットが高速で突っ込む。
「ガーディ、かえんぐるま!」
「ワン!」
ガーディが炎をまとって迎え撃つ。
ドォン!
二匹が激突する。
「ガーディ!」
「ワンッ!」
ガーディが踏ん張る。
しかし――。
ゴルバットが力で押し切る。
「ガーディ!」
ドォン!
ガーディが地面を転がる。
「まだだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「立ってくれ!」
「ワン……」
ガーディが震えながら立ち上がる。
「よし!」
マサヒロが拳を握る。
「もう一度、かえんほうしゃ!」
「ワンンン!」
炎がゴルバットへ向かう。
「ゴルバット、避けろ!」
「ゴル!」
ゴルバットが急上昇する。
そして――。
「エアカッター!」
「ゴルバット!」
無数の風の刃が飛んでくる。
「ガーディ!」
「ワンッ!」
ガーディが必死に耐える。
「もう一度だ!」
マサヒロが叫ぶ。
「かえんほうしゃ!」
「ワンンン!」
炎が再び放たれる。
しかし、ゴルバットは炎の上を飛び越える。
「なっ……!」
「ゴルバット、つばさでうつ!」
「ゴルバット!」
ゴルバットが急降下する。
「ガーディ、避けろ!」
「ワン!」
ガーディが動こうとする。
だが、間に合わない。
ドォン!
「ガーディ!」
「ワン……!」
ガーディが倒れる。
「ガーディ、戦闘不能!」
「……」
マサヒロは言葉を失った。
これまで――。
ジム戦で負けたことは一度もなかった。
「……俺が……負けた?」
マサヒロは俯く。
キョウはゴルバットを戻す。
「今回の勝負、俺の勝ちだ」
「……」
マサヒロは返事ができない。
「ポケモンセンターで、ポケモンたちを休ませるといい」
キョウはそう言い残し、ジムの奥へ戻っていった。
マサヒロはスピアーとガーディのボールを握る。
「……ごめんな」
声が震える。
「俺がもっと上手く指示できてたら……」
「ブイ……」
イーブイが心配そうにマサヒロを見る。
「……」
マサヒロは何も言わず、ジムを出た。
* * *
セキチクシティの外れ。
マサヒロはベンチに座っていた。
「……」
隣にはイーブイがいる。
「今まで、ジム戦は全部勝ってきた」
マサヒロは俯く。
「どんな相手でも、最後には勝てた」
「ブイ……」
「なのに……」
マサヒロは拳を握る。
「今日は、全然ダメだった」
初めてだった。
自分の力が通じないと思ったのは。
「俺……もっと強くならなきゃ」
マサヒロは呟く。
「でも、どうすればいいんだ……?」
イーブイは何も言わず、マサヒロの隣に座っている。
「……」
その時だった。
「ずいぶん落ち込んでるじゃないか」
「……え?」
後ろから声がした。
マサヒロが振り返る。
そこに立っていたのは――。
「……お前は!」
かつてバトルしたことのあるライバル。
「リョウ……!」
リョウはマサヒロを見て、静かに笑った。
「久しぶりだな、マサヒロ」
「……」
マサヒロは驚いたまま、リョウを見つめる。
初めてのジム戦敗北。
そして――。
思いがけないライバルとの再会。
マサヒロの新たな戦いが、始まろうとしていた。