「久しぶりだな、マサヒロ」
「……リョウ?」
マサヒロは驚いて振り返った。
そこに立っていたのは、かつてマサヒロと戦った少年――リョウだった。
「どうしてここに?」
「俺もジム戦をしに来たんだよ」
リョウはそう言って、マサヒロの隣にいるイーブイを見る。
「でも、お前……なんか元気ねぇな」
「……」
マサヒロは俯いた。
「俺……初めてジム戦で負けたんだ」
「初めて?」
リョウが驚く。
「うん」
マサヒロは拳を握る。
「今までジム戦では一度も負けたことがなかった」
「……」
「でも、キョウさんには負けた」
イーブイも心配そうにマサヒロを見る。
「それだけじゃない」
マサヒロは続ける。
「この前、バルキーをシバさんに預けたんだ」
「バルキーを?」
「ああ」
マサヒロはバルキーと別れた時のことを思い出す。
「バルキーはもっと強くなりたいって、シバさんのところで修行することを選んだんだ」
「……そうか」
「だから俺も、もっと強くなるってバルキーに約束した」
マサヒロは悔しそうに唇を噛む。
「なのに……その直後に初めてジム戦で負けた」
「……」
「俺、何やってるんだろうな」
リョウはしばらく黙っていた。
そして――。
「俺だって負けてるぞ」
「え?」
マサヒロが顔を上げる。
「最初のニビジム戦で負けた」
「リョウが?」
「ああ」
リョウは笑う。
「それだけじゃねぇ」
「え?」
「タマムシジムでも負けた」
「……!」
マサヒロは目を見開く。
「じゃあ、リョウも……」
「何度も負けてるってことだ」
リョウは肩をすくめる。
「でも、そのまま終わったわけじゃねぇ」
「……」
「負けたから特訓した」
リョウは自分のポケットからバッジケースを取り出す。
そして、その中から一つのバッジを取り出した。
「これを見ろ」
「……!」
マサヒロの目が輝く。
そこにあったのは、キョウに勝利した証――ピンクバッジだった。
「ピンクバッジ……!」
「そうだ」
リョウはバッジを握る。
「俺は一度負けたけど、特訓してもう一度キョウさんに挑んだ」
「そして……勝った」
「ああ」
リョウはマサヒロを見る。
「俺はお前と違って、ジム戦で何度も負けてる」
「……」
「でも、努力してきた」
リョウは拳を握る。
「だから今は、お前より先に進んでる」
「……!」
「落ち込んでる暇なんてねぇぞ」
リョウはニヤッと笑う。
「お前が本当に強くなりたいなら、特訓してもう一度キョウさんに挑め」
「……」
「負けたままで終わるのか?」
マサヒロは黙っていた。
そして――。
「……ありがとう、リョウ」
顔を上げる。
「そうだよな」
マサヒロの目に、再び力が戻っていく。
「俺はまだ負けたままなんだ」
「そういうことだ」
「だったら!」
マサヒロが拳を握る。
「俺も特訓して、絶対にキョウさんにリベンジする!」
「その意気だ」
リョウが笑う。
「……それと」
マサヒロはリョウを見る。
「キョウさんに勝ったリョウの実力も見てみたい!」
「何?」
「俺と勝負してくれ!」
リョウは一瞬驚いた。
そして、楽しそうに笑う。
「いいぜ」
二人はセキチクシティの外れにある空き地へ移動した。
「一対一でいこう!」
「分かった」
マサヒロとリョウが向かい合う。
「行くぞ、ガーディ!」
「ワン!」
ガーディが飛び出す。
「こいつでいくか」
リョウもボールを投げる。
「出てこい、サワムラー!」
「サワムラー!」
細長い足を持つサワムラーが姿を現した。
「ガーディ、負けるなよ!」
「ワン!」
「いくぜ、サワムラー!」
リョウが叫ぶ。
「とびげり!」
「サワァ!」
サワムラーが一気に飛び上がる。
「速い!」
マサヒロが驚く。
「ガーディ、避けろ!」
「ワン!」
ガーディが横へ飛ぶ。
しかし――。
「そのまま回り込め!」
サワムラーが空中で身体をひねる。
「サワッ!」
「ガーディ!」
ドォン!
サワムラーの蹴りがガーディを吹き飛ばす。
「ガーディ、大丈夫か!?」
「ワン……!」
ガーディはすぐに立ち上がる。
「よし!」
マサヒロが叫ぶ。
「かみつく!」
「ワン!」
ガーディがサワムラーへ飛びかかる。
「サワムラー、かわらわり!」
「サワァ!」
サワムラーが足を振り下ろす。
ガキィン!
ガーディの攻撃とぶつかり合う。
「ガーディ!」
「ワンッ!」
ガーディが押し返される。
「すげぇ足技だ……!」
マサヒロは驚く。
「まだまだいくぜ!」
リョウが叫ぶ。
「サワムラー、もう一度とびげり!」
「サワァ!」
サワムラーが高速で飛び込んでくる。
「ガーディ、かえんぐるま!」
「ワン!」
ガーディが炎をまとって突っ込む。
「正面から受けるのか!?」
リョウが驚く。
ドォン!
炎をまとったガーディと、サワムラーの蹴りが激突する。
「ガーディ!」
「ワンッ!」
両者が吹き飛ばされる。
「まだだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「立て、ガーディ!」
「ワン……!」
ガーディが立ち上がる。
サワムラーも立ち上がる。
「へぇ……」
リョウが笑う。
「根性あるな、お前のガーディ」
「当たり前だ!」
マサヒロが叫ぶ。
「こいつは絶対に諦めない!」
「なら、最後の一撃だ!」
リョウが叫ぶ。
「サワムラー、かわらわり!」
「サワァァ!」
「ガーディ!」
マサヒロも叫ぶ。
「かえんぐるま!」
「ワンンン!」
ガーディが全身に炎をまとって突っ込む。
サワムラーの蹴りと、ガーディの炎がぶつかる。
ドォォン!
大きな衝撃が空き地を包む。
砂煙が晴れていく。
「……」
マサヒロとリョウは戦場を見る。
そこには――。
倒れたガーディと、倒れたサワムラーがいた。
「ガーディ、戦闘不能!」
「サワムラー、戦闘不能!」
「相打ちか……」
リョウが呟く。
マサヒロはガーディのもとへ駆け寄った。
「ガーディ!」
「ワン……」
ガーディは疲れながらも、嬉しそうに尻尾を振った。
「よく頑張ったな!」
マサヒロが頭を撫でる。
「……すげぇな」
リョウがガーディを見る。
「何が?」
「こいつの潜在能力だよ」
「ガーディの?」
「ああ」
リョウは真剣な表情になる。
「今のこいつなら……」
リョウはポケットから何かを取り出した。
「進化しても、自分の力をコントロールできるんじゃねぇか?」
「……!」
マサヒロが目を見開く。
リョウの手にあったのは――。
「ほのおのいし……?」
「ああ」
リョウはそれをマサヒロへ差し出す。
「これを使え」
「いいのか?」
「俺には必要ねぇからな」
リョウは笑う。
「それに、こいつなら大丈夫だ」
マサヒロはガーディを見る。
ガーディもマサヒロを見つめている。
「……ガーディ」
「ワン!」
マサヒロはほのおのいしを受け取る。
「ありがとう、リョウ!」
「礼なんていい」
リョウは背を向ける。
「その代わり――」
振り返る。
「キョウさんにリベンジするんだろ?」
「ああ!」
マサヒロは力強く頷く。
「絶対に勝つ!」
そして、マサヒロはほのおのいしをガーディへ向ける。
「ガーディ!」
「ワン!」
ほのおのいしが輝く。
ガーディの身体が光に包まれていく。
「うおっ……!」
マサヒロが目を見開く。
身体が大きくなっていく。
足が伸び、たてがみが広がる。
そして――。
強い光が弾けた。
「……!」
そこに立っていたのは、ガーディではなかった。
大きな身体。
立派なたてがみ。
力強い四本の足。
「ウインディ……!」
マサヒロは驚きながら名前を呼ぶ。
「ウインディ!」
「ワォォン!」
ウインディが力強く吠える。
「すげぇ……!」
マサヒロはウインディに駆け寄る。
「強そうだ!」
ウインディは嬉しそうにマサヒロへ顔を近づける。
「これからもよろしくな、ウインディ!」
「ワォン!」
リョウはその様子を見て笑った。
「これなら、キョウさんとの再戦も楽しみだな」
マサヒロはウインディを見る。
そして、拳を握る。
「待ってろよ、キョウさん!」
初めて味わった敗北。
そこから始まった新たな特訓。
そして――。
マサヒロは新しい仲間と共に、再びセキチクジムへ挑む決意を固めた。