サファリゾーン。
広大な自然が広がる場所へ、マサヒロとイーブイはやって来た。
「すげぇ……!」
マサヒロは辺りを見回す。
「いろんなポケモンがいるんだな!」
「ブイ!」
その時だった。
「おや?」
一人の老人がマサヒロに近づいてきた。
サファリゾーンの管理人、カイザーだった。
「君、見ない顔だな」
「こんにちは!」
マサヒロが挨拶する。
「俺、マサヒロっていいます!」
「そうか」
カイザーはマサヒロを見る。
そして――。
マサヒロの腰にあるボールへ目を向けた。
「……ん?」
「どうしたんですか?」
マサヒロが首を傾げる。
カイザーの顔色が変わった。
「そのポケモン……!」
「え?」
次の瞬間。
カイザーは銃を取り出した。
「動くな!」
「うわぁっ!?」
マサヒロは慌てて両手を上げる。
イーブイも驚いて飛び上がった。
「な、なんですか!?」
「そのポケモンをどこで手に入れた!」
カイザーは銃を向けたまま叫ぶ。
「そのポケモンって……?」
「ハクリューだ!」
「ハクリュー!?」
マサヒロは慌ててボールを取り出す。
「こいつのことですか!?」
「そうだ!」
「待ってください!」
マサヒロは必死に説明する。
「こいつは無理やり捕まえたんじゃありません!」
カイザーの表情が険しくなる。
「……本当か?」
「はい!」
マサヒロはハクリューを見る。
「こいつは俺が釣り上げて出会ったんです!」
「釣り上げた……?」
「それからずっと一緒に旅をしてきた、大切な仲間なんです!」
「シャア……」
ハクリューもマサヒロの隣に立つ。
カイザーはハクリューとマサヒロを交互に見た。
そして、ゆっくりと銃を下ろした。
「……そうだったのか」
「びっくりしました……」
マサヒロは胸を撫で下ろす。
「いきなり銃を向けるなんて、怖いですよ!」
「すまなかった」
カイザーは頭を下げる。
「私には、そうせざるを得ない理由がある」
「理由……ですか?」
「ああ」
カイザーは遠くを見る。
「昔、このサファリゾーンでミニリュウが発見されたことがあった」
「ミニリュウが?」
「ああ」
カイザーは話し始める。
「その噂を聞きつけた人々が、一斉にミニリュウを捕まえようとした」
「……」
「ポケモンの乱獲が始まったんだ」
マサヒロはハクリューを見る。
「そんなことがあったんですか……」
「私はミニリュウたちを守るため、ここから逃がした」
「どこへ逃がしたんですか?」
「竜の谷だ」
カイザーは答える。
「そこなら人間の手が届きにくい。ミニリュウたちが安心して暮らせると思った」
「じゃあ、ハクリューも……?」
「ああ」
カイザーはハクリューを見る。
「その中の一匹が今ではハクリューとなり、竜の谷で暮らすミニリュウたちを守っている」
「……!」
マサヒロは驚いた。
「そうだったんですね」
「だから私は、君がそのハクリューを連れているのを見て……」
カイザーは申し訳なさそうに頭を下げる。
「無理やり捕獲したのではないかと思ってしまった」
「……」
「本当にすまなかった」
「もう大丈夫です」
マサヒロは笑う。
「ハクリューが俺と一緒にいることを選んでくれたんですから」
「シャア」
ハクリューもマサヒロに寄り添う。
「そうか……」
カイザーは少しだけ笑った。
その様子を――。
物陰から覗いている三人組がいた。
「なるほどねぇ」
ムサシがニヤリと笑う。
「ミニリュウがいる場所が分かったわね」
「しかもハクリューまでいるとは!」
コジロウも嬉しそうに笑う。
「これは大もうけニャ!」
ニャースが舌なめずりする。
「決まりだわ!」
「行くぞ!」
「ニャ!」
三人はこっそりとその場を離れていった。
「……?」
マサヒロは一瞬だけ物音に気づいた。
「今、何か聞こえませんでした?」
「ブイ?」
「気のせいかな」
マサヒロは気にせず歩き出す。
その頃――。
ロケット団は竜の谷へ向かっていた。
竜の谷。
そこにはたくさんのミニリュウとハクリューが暮らしていた。
「シャア!」
ハクリューたちが楽しそうに遊んでいる。
「かわいいなぁ」
マサヒロは笑う。
「こんな場所があったんですね」
「シャア」
マサヒロのハクリューも嬉しそうに仲間たちを見ている。
その時だった。
「待ちなさい!」
「!?」
マサヒロが振り返る。
ロケット団が姿を現した。
「誰なんだ一体!」
マサヒロが驚く。
するとムサシが前へ出る。
「誰なんだ一体と聞かれたら!」
コジロウが続く。
「答えてあげるが世の情け!」
「世界の破壊を防ぐため!」
「世界の平和を守るため!」
「愛と真実の悪を貫く!」
「ラブリーチャーミーな敵役!」
「ムサシ!」
「コジロウ!」
「銀河を駆けるロケット団の二人には!」
「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ!」
「ニャーんてニャ!」
「ロケット団!?」
マサヒロが驚く。
「その通り!」
ムサシが笑う。
「この竜の谷にいるミニリュウとハクリューを、全部いただくわよ!」
「そうはさせるか!」
マサヒロが前へ出る。
「ここにいるポケモンたちには絶対に手を出させない!」
「砂利ボーイ一人で何ができるっていうの?」
「やってみろ!」
ロケット団が攻撃を仕掛ける。
「行け、ウインディ!」
「ウォン!」
「イーブイ、援護してくれ!」
「ブイ!」
マサヒロと仲間たちはロケット団と戦い始めた。
「ウインディ、かみくだく!」
「ウォン!」
ウインディがロケット団へ飛びかかる。
「ニャース、避けろ!」
「ニャニャ!」
ニャースが慌てて逃げる。
「イーブイ、でんこうせっか!」
「ブイ!」
イーブイが高速で駆ける。
「よし!」
マサヒロは叫ぶ。
しかし――。
「ミニリュウたちを捕まえるのよ!」
「了解!」
ロケット団はマサヒロとの戦いだけではなく、ミニリュウたちにも狙いを定めていた。
「くっ!」
マサヒロはミニリュウたちを守る。
「イーブイ、右!」
「ブイ!」
「ウインディ、あっちを頼む!」
「ウォン!」
ウインディが別の場所へ走る。
だが――。
「今だ!」
「えっ!?」
別の方向から攻撃が飛んでくる。
「ウインディ!」
ドォン!
ウインディが吹き飛ばされる。
「ウォン……!」
「ウインディ!」
マサヒロが駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
「ウォン……」
ウインディは立ち上がる。
その間にもロケット団が迫ってくる。
「くそ……!」
マサヒロは歯を食いしばる。
「守りながら戦うのは難しい……!」
ミニリュウたちを背中にかばう。
イーブイも隣に立つ。
「ブイ……!」
「絶対に守るぞ!」
「ブイ!」
その時だった。
マサヒロのハクリューが前へ出た。
「シャア!」
ハクリューはミニリュウたちの前に立つ。
「ハクリュー!」
マサヒロが叫ぶ。
ロケット団の攻撃が迫る。
「やっつけろ!」
ハクリューは動かない。
ミニリュウたちを守るように、じっと立っている。
「シャア……!」
その身体が光り始めた。
「え……?」
マサヒロが目を見開く。
「ハクリュー!?」
「シャアアアア!」
光がどんどん強くなる。
身体が大きくなっていく。
翼が生え、身体の形が変わっていく。
「まさか……!」
マサヒロが叫ぶ。
「進化するのか!?」
強い光が弾けた。
「……!」
そこに立っていたのは――。
大きな身体。
白い翼。
力強い手足。
「カイリュー……!」
マサヒロは驚く。
「ハクリューが……カイリューに!」
「ウォォン!」
カイリューが力強く吠える。
「すごい……!」
マサヒロは笑う。
「でも、今は喜んでる場合じゃない!」
ロケット団が再び攻撃を仕掛ける。
「捕まえろ!」
「させるか!」
マサヒロが叫ぶ。
「カイリュー!」
「ウォン!」
「はかいこうせん!」
カイリューの口に強烈な光が集まる。
「ウォォォン!」
ドォォォン!
巨大な光線がロケット団を吹き飛ばす。
「うわぁぁぁ!」
「なんでこんなに強いんだぁ!」
「ニャァァァ!」
三人は空高く吹き飛んでいく。
「「「やなカンジー!」」」
ロケット団は空の彼方へ消えていった。
「やった!」
マサヒロが拳を握る。
「カイリュー、すごいぞ!」
「ウォン!」
ミニリュウたちもカイリューの周りへ集まる。
「シャア!」
「よかった……」
マサヒロは笑った。
しかし、カイザーは険しい表情をしていた。
「……まずいな」
「どうしたんですか?」
マサヒロが振り返る。
「ロケット団に、この竜の谷の場所を知られてしまった」
「……!」
「これからも奴らがここを狙ってくるかもしれない」
カイザーはカイリューを見る。
そして――。
「カイリュー」
「ウォン?」
「頼みがある」
カイザーは真剣な表情で言った。
「ここにいるミニリュウとハクリューたちを守ってくれないか?」
「……!」
マサヒロが驚く。
カイリューはミニリュウたちを見る。
そして、マサヒロを見る。
「ウォン……」
カイリューは寂しそうな声を出す。
「カイリュー……」
マサヒロはその気持ちを感じ取った。
「俺と……別れるのが嫌なのか?」
「ウォン……」
カイリューが頷く。
マサヒロの胸が痛くなる。
「俺だって……嫌だよ」
マサヒロはカイリューの身体に手を置く。
「ミニリュウの頃からずっと一緒に旅してきたもんな」
「ウォン……」
「一緒にご飯を食べて、バトルもした」
マサヒロは笑う。
「いっぱい思い出がある」
カイリューは静かにマサヒロを見る。
その時、マサヒロの頭にシバの言葉が浮かんだ。
――ポケモン自身の望みを尊重することも、トレーナーの大切な役目だ。
「……そうだ」
マサヒロは呟く。
「俺はバルキーの時にも、同じことをした」
マサヒロはカイリューを見る。
「カイリューも、ここに残ってミニリュウたちを守りたいんだな?」
「ウォン!」
カイリューは力強く頷いた。
マサヒロは少しだけ寂しそうに笑った。
「分かった」
「ウォン……?」
「俺はカイリューの気持ちを大切にする」
マサヒロはカイリューを抱きしめる。
「ここに残って、みんなを守ってくれ」
「ウォォン……」
カイリューの目から涙がこぼれる。
「泣くなよ……」
マサヒロも目に涙を浮かべる。
「俺だって寂しいんだから……」
カイリューはマサヒロを強く抱きしめる。
「ウォォォン……!」
マサヒロもカイリューの身体を両腕で強く抱きしめた。
「今までありがとう、カイリュー」
「ウォン……」
「ずっと大切な仲間だぞ」
「ウォォン……!」
二人はしばらく離れなかった。
やがて、マサヒロがゆっくりと身体を離す。
「じゃあな、カイリュー」
「ウォン……」
「ミニリュウたちを頼んだぞ」
カイリューは涙を拭い、力強く頷く。
「ウォン!」
マサヒロは笑う。
「じゃあ、俺も負けないように頑張るからな!」
「ウォン!」
イーブイがマサヒロの隣に立つ。
「ブイ!」
マサヒロは最後にもう一度、カイリューを見る。
「行こう、イーブイ」
「ブイ!」
マサヒロは歩き出す。
後ろを振り返る。
そこには、ミニリュウたちに囲まれたカイリューがいた。
「カイリュー!」
「ウォン!」
マサヒロは手を振る。
カイリューも大きく手を振り返す。
やがてマサヒロの姿が見えなくなる。
カイリューは竜の谷を振り返った。
そして――。
ミニリュウたちを守るように、その前へ立った。