ポケットモンスターブラウン   作:光宙

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29話 イーブイ4兄弟!進化するかしないか!

グレンシティへ向かうため、マサヒロとイーブイは旅を続けていた。

 

「グレンシティまで、あとどのくらいかな?」

 

「ブイ!」

 

「七つ目のバッジか……」

 

マサヒロは腰につけたバッジケースを見る。

 

「ここまで来たんだ。絶対に取ってやるぞ!」

 

「ブイ!」

 

その途中――。

 

「ん?」

 

道の先に町が見えてきた。

 

「町だ!」

 

「ブイ!」

 

「ちょっと休んでいこうぜ」

 

マサヒロとイーブイは町へ入っていく。

 

すると――。

 

「マサヒロ!」

 

聞き覚えのある声がした。

 

「え?」

 

振り返る。

 

そこにいたのは――。

 

「サトシ!」

 

「久しぶりだな!」

 

サトシが手を振っている。

 

その隣にはカスミとタケシもいた。

 

「サトシ!」

 

マサヒロは嬉しそうに駆け寄る。

 

「カスミ、タケシさんも!」

 

「久しぶりね、マサヒロ」

 

「元気そうだな」

 

「はい!」

 

マサヒロは笑う。

 

「こんなところでまた会えるなんてな!」

 

「ああ!」

 

サトシが頷く。

 

「ところで、マサヒロは今どこへ向かってるんだ?」

 

「グレンシティです」

 

マサヒロは答える。

 

「七つ目のバッジを取りに行くんだ!」

 

「そっか!」

 

サトシも嬉しそうに笑う。

 

「俺たちもグレン島を目指してるんだ!」

 

「本当!?」

 

「でも、その前にやることがあってな」

 

タケシが言う。

 

「実は、森で迷子になっていたイーブイを見つけたんだ」

 

「イーブイ!?」

 

マサヒロが驚く。

 

「もう一匹いるの?」

 

「うん」

 

カスミが抱えていたイーブイを見せる。

 

「この子、首輪をつけていてね」

 

「首輪?」

 

マサヒロが見る。

 

「住所が書いてあるの」

 

カスミが説明する。

 

「だから、そこまで送り届けようとしてるのよ」

 

「へぇ……」

 

マサヒロはイーブイを見る。

 

「俺もイーブイを使ってるし、面白そうだな!」

 

「ブイ!」

 

マサヒロのイーブイも嬉しそうに鳴く。

 

「じゃあ、一緒に行こうぜ!」

 

「いいぞ!」

 

こうして、マサヒロもサトシたちと一緒にイーブイの飼い主を探すことになった。

 

* * *

 

森を抜けると、一軒の大きな家が見えてきた。

 

「ここみたいね」

 

カスミが首輪を確認する。

 

「この住所で間違いないわ」

 

「じゃあ、行こう!」

 

サトシが扉を叩く。

 

「すみませーん!」

 

扉が開く。

 

「はい?」

 

中から少年が顔を出した。

 

「あなたがタイチ?」

 

カスミが尋ねる。

 

「そうですけど……」

 

少年はイーブイを見る。

 

「イーブイ!」

 

タイチの表情が明るくなる。

 

「見つかったんだ!」

 

「森で迷子になってたの」

 

カスミがイーブイを渡す。

 

「ほら、タイチ」

 

「ありがとう!」

 

タイチは嬉しそうにイーブイを抱きしめる。

 

しかし――。

 

「イーブイが帰ってきたぞ!」

 

家の奥から声が聞こえた。

 

「タイチのイーブイだ!」

 

「今日は進化パーティーだな!」

 

何人かの少年たちが現れる。

 

「進化パーティー?」

 

サトシが首を傾げる。

 

タイチの顔が曇った。

 

「……」

 

マサヒロもその様子に気づく。

 

「どうしたんだ?」

 

タイチは黙っている。

 

すると、兄の一人が嬉しそうに言った。

 

「今日はタイチのイーブイを進化させるんだ!」

 

「サンダースになるんだろ?」

 

「いや、シャワーズもいいぞ!」

 

「ブースターもかっこいいぞ!」

 

兄たちは楽しそうに話している。

 

「……」

 

タイチはイーブイを抱きしめる。

 

「どうしたの?」

 

マサヒロが尋ねる。

 

タイチは俯いた。

 

「僕……」

 

「うん」

 

「イーブイを進化させたくないんだ」

 

「え?」

 

サトシたちが驚く。

 

「だから森に隠してたんだ」

 

タイチは小さな声で話す。

 

「兄ちゃんたちは、イーブイは進化させたほうが強くなるって言うけど……」

 

タイチはイーブイを見る。

 

「僕は、このイーブイがこのままでいてほしいんだ」

 

「そうだったのね」

 

カスミが優しく言う。

 

「だったら、お兄さんたちにちゃんと話せばいいじゃない」

 

「でも……」

 

タイチは兄たちを見る。

 

「怒られるかもしれない……」

 

「そんなこと言ってたら何も変わらないぞ」

 

サトシが言う。

 

「ちゃんと自分の気持ちを伝えないと!」

 

「……」

 

タイチは黙り込む。

 

マサヒロは自分のイーブイを見る。

 

「なあ、タイチ」

 

「え?」

 

「俺もイーブイと一緒に旅してるんだ」

 

「そうなの?」

 

「ああ」

 

マサヒロはイーブイの頭を撫でる。

 

「こいつは進化してないけど、今までいろんな強いポケモンと戦ってきた」

 

「……」

 

「進化してるから強い、進化してないから弱いっていうのは、俺は違うと思う」

 

タイチの兄たちがマサヒロを見る。

 

「じゃあ、どれくらい強いんだ?」

 

兄の一人が尋ねる。

 

「見てみます?」

 

マサヒロは笑う。

 

「俺のイーブイと、あなたたちのポケモンでバトルしましょう!」

 

「バトル?」

 

「はい!」

 

マサヒロは前へ出る。

 

「俺のイーブイが、進化したポケモンたちとどこまで戦えるか見てください!」

 

「面白そうだな!」

 

兄たちも乗ってくる。

 

「俺はサンダース!」

 

「俺はシャワーズ!」

 

「俺はブースター!」

 

三人がそれぞれポケモンを繰り出す。

 

「サンダース!」

 

「シャワーズ!」

 

「ブースター!」

 

「イーブイ!」

 

マサヒロもイーブイを出す。

 

「ブイ!」

 

「一匹で三匹と戦うのか?」

 

「大丈夫です!」

 

マサヒロは自信満々に笑う。

 

「こいつは俺の一番の相棒ですから!」

 

「ブイ!」

 

* * *

 

「始め!」

 

「サンダース、でんきショック!」

 

「シャワーズ、みずでっぽう!」

 

「ブースター、ひのこ!」

 

三匹が一斉に攻撃する。

 

「イーブイ、かげぶんしん!」

 

「ブイ!」

 

イーブイの姿が一気に増える。

 

三つの攻撃が次々と空を切る。

 

「今だ!」

 

「イーブイ、でんこうせっか!」

 

「ブイ!」

 

イーブイが一気に駆ける。

 

「速い!」

 

「サンダース、避けろ!」

 

しかし遅い。

 

イーブイがサンダースの懐へ飛び込む。

 

「アイアンテール!」

 

「ブイ!」

 

ガキン!

 

イーブイの尻尾が鋼のように輝く。

 

「サンダース!」

 

サンダースが吹き飛ばされる。

 

「まだだ!」

 

「シャワーズ、みずでっぽう!」

 

「ブースター、ひのこ!」

 

二匹が同時に攻撃する。

 

「イーブイ、かげぶんしん!」

 

「ブイ!」

 

イーブイが分身する。

 

水と炎が分身を次々と消していく。

 

「そこだ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「イーブイ、でんこうせっか!」

 

イーブイが一気に距離を詰める。

 

「アイアンテール!」

 

「ブイ!」

 

ガキン!

 

鋭い一撃がシャワーズに直撃する。

 

「シャワーズ!」

 

シャワーズが吹き飛ばされる。

 

「そんな……!」

 

残ったブースターが前へ出る。

 

「ブースター、ひのこ!」

 

「イーブイ、避けろ!」

 

イーブイが炎をかわす。

 

「今だ!」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「エボルブラスト!」

 

「ブイィィィ!」

 

強烈な光がイーブイから放たれる。

 

分身したイーブイたちとともに、巨大な光が三匹のポケモンを包み込む。

 

「うわぁっ!」

 

「きゃあっ!」

 

「ブースター!」

 

ドォォン!

 

三匹が同時に吹き飛ばされた。

 

「……」

 

その場が静まり返る。

 

三匹のポケモンは倒れていた。

 

「勝った……」

 

タイチが呟く。

 

「進化してないイーブイが……」

 

マサヒロはイーブイを抱き上げる。

 

「な?」

 

「ブイ!」

 

「進化してるかどうかなんて、大した問題じゃないんだ」

 

タイチは自分のイーブイを見る。

 

「僕のイーブイも……」

 

その時だった。

 

「なーんて、いい話をしてるところ悪いけど!」

 

突然、空から声が響いた。

 

「!?」

 

全員が空を見上げる。

 

巨大な気球が降りてくる。

 

「なんだかんだと聞かれたら!」

 

「答えてあげるが世の情け!」

 

「世界の破壊を防ぐため!」

 

「世界の平和を守るため!」

 

「愛と真実の悪を貫く!」

 

「ラブリーチャーミーな敵役!」

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「銀河を駆けるロケット団の二人には!」

 

「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ!」

 

「ニャーんてニャ!」

 

「ロケット団!?」

 

サトシが叫ぶ。

 

「そうよ!」

 

ムサシが笑う。

 

「今日はポケモンだけじゃないわ!」

 

コジロウが続ける。

 

「進化の石も、料理も、全部いただく!」

 

「家にあるものを根こそぎいただくニャ!」

 

ニャースが叫ぶ。

 

「そんなことさせるか!」

 

マサヒロが前へ出る。

 

「イーブイ!」

 

「ブイ!」

 

「行け!」

 

イーブイが飛び出す。

 

「ニャース、捕まえろ!」

 

「ニャ!」

 

ニャースが飛びかかる。

 

「かげぶんしん!」

 

「ブイ!」

 

イーブイが分身して逃げる。

 

「こっちだ!」

 

サトシもピカチュウを繰り出す。

 

「ピカチュウ、でんきショック!」

 

「ピカ!」

 

電撃がロケット団へ飛んでいく。

 

「そんなもの!」

 

「避けるわ!」

 

しかし――。

 

「ギャアアアアア!」

 

突然、マサヒロの腰のボールが揺れた。

 

「え?」

 

「まさか……」

 

ボールからギャラドスが飛び出した。

 

「ギャアアアアア!」

 

「ギャラドス!?」

 

マサヒロが驚く。

 

「おい、ギャラドス!」

 

ギャラドスは返事をしない。

 

「落ち着け!」

 

「ギャア!」

 

ギャラドスが大きく身体を振り回す。

 

ドォン!

 

近くの木が倒れる。

 

「うわぁ!」

 

「危ない!」

 

カスミたちが逃げる。

 

「ギャラドス、やめろ!」

 

しかしギャラドスはマサヒロの言うことをまったく聞かない。

 

「ギャアアア!」

 

そのままロケット団へ突進していく。

 

「こっちに来たぁ!」

 

「うわぁぁぁ!」

 

「ニャァァァ!」

 

ギャラドスが尻尾を振り回す。

 

ドォォン!

 

ロケット団の気球が大きく揺れる。

 

「なんなのよ、このギャラドス!」

 

「見境なく狙ってくるぞ!」

 

「ニャー!」

 

「ギャラドス!」

 

マサヒロは頭を抱える。

 

「俺の言うことを聞いてくれよ!」

 

「ギャアアア!」

 

ギャラドスはさらに暴れる。

 

「こうなったら!」

 

マサヒロがボールを構える。

 

「戻れ、ギャラドス!」

 

赤い光がギャラドスを包む。

 

しかし――。

 

「ギャア!」

 

ギャラドスが光から抜け出した。

 

「ええっ!?」

 

「まだ戻ってくれないの!?」

 

ギャラドスはロケット団へ向かって突進する。

 

「もう知らないぞ!」

 

マサヒロは叫ぶ。

 

ギャラドスが大きく口を開ける。

 

「ギャアアアアア!」

 

ロケット団の気球が吹き飛ばされる。

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

「結局こうなるのかぁぁ!」

 

「ニャァァァァ!」

 

「「「やなカンジー!」」」

 

ロケット団は空の彼方へ飛んでいった。

 

「……」

 

マサヒロたちは呆然と見送る。

 

「すごい……」

 

タイチが呟く。

 

しかし――。

 

「ギャアアアアア!」

 

ギャラドスはまだ暴れていた。

 

「えっ!?」

 

マサヒロが振り返る。

 

「ギャラドス、もういいだろ!」

 

「ギャア!」

 

ギャラドスが身体を振り回す。

 

ドォン!

 

また近くの木が倒れる。

 

「危ない!」

 

マサヒロたちは慌てて逃げる。

 

「ギャラドス! 戻ってくれ!」

 

マサヒロがボールを構える。

 

「戻れ!」

 

赤い光がギャラドスへ伸びる。

 

しかし――。

 

「ギャア!」

 

ギャラドスは光を振り払ってしまう。

 

「ダメだ……!」

 

マサヒロは焦る。

 

「どうすれば……」

 

その時。

 

「……僕がやる!」

 

タイチが前へ出た。

 

「タイチ!?」

 

サトシが驚く。

 

「危ないぞ!」

 

「分かってる!」

 

タイチは震えている。

 

それでも、自分のイーブイを抱きしめる。

 

「僕だって……」

 

タイチはギャラドスを見る。

 

「僕だって、できるんだ!」

 

イーブイを前へ出す。

 

「イーブイ!」

 

「ブイ!」

 

「たいあたり!」

 

「ブイィ!」

 

イーブイがギャラドスへ向かって走り出す。

 

「ギャア!?」

 

ドンッ!

 

イーブイのたいあたりがギャラドスに命中する。

 

「ギャアア……!」

 

ギャラドスの動きが一瞬止まった。

 

「今だ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「戻れ、ギャラドス!」

 

赤い光がギャラドスを包み込む。

 

今度こそ――。

 

「ギャアアア!」

 

ギャラドスの身体が光に包まれていく。

 

「よし!」

 

マサヒロがボールを握る。

 

ギャラドスがボールの中へ吸い込まれる。

 

ボールが地面に落ちた。

 

「……」

 

全員が息をのむ。

 

カチッ。

 

ボールが一度揺れる。

 

カチッ。

 

もう一度。

 

そして――。

 

カチッ!

 

ボールが動かなくなった。

 

「……戻った」

 

マサヒロがほっと息を吐く。

 

「やった!」

 

サトシが喜ぶ。

 

「タイチ、すごいぞ!」

 

「え?」

 

タイチは驚いた顔をする。

 

「僕が……?」

 

「ああ!」

 

サトシが笑う。

 

「ちゃんと勇気を出したじゃないか!」

 

「……」

 

タイチは自分のイーブイを見る。

 

「ありがとう、イーブイ」

 

「ブイ!」

 

マサヒロも笑う。

 

「タイチ、お前すごいよ!」

 

「マサヒロ……」

 

「俺だけじゃ、ギャラドスを止められなかった」

 

マサヒロはギャラドスのボールを見る。

 

「お前のイーブイが作ってくれた隙があったから、戻すことができたんだ」

 

「……うん!」

 

タイチは嬉しそうに頷いた。

 

「よくやったな、イーブイ!」

 

「ブイ!」

 

その様子を見ていた兄たちは、静かにタイチを見つめていた。

 

そして――。

 

タイチがゆっくりと兄たちの前へ出る。

 

「兄ちゃんたち……」

 

「ん?」

 

「僕、イーブイを進化させたくない」

 

タイチは震えながらも、しっかりと口にする。

 

「この子は、このままがいいんだ」

 

兄たちは黙ってタイチを見る。

 

「さっきのバトルを見て分かったよ」

 

兄の一人が笑う。

 

「進化してなくても、あんなに強くなれるんだな」

 

「それに……」

 

別の兄がタイチのイーブイを見る。

 

「お前がその子を大切にしてるのも分かった」

 

「じゃあ……」

 

タイチが顔を上げる。

 

「進化パーティーは中止だ!」

 

「本当!?」

 

タイチの顔が明るくなる。

 

「よかったな!」

 

「ありがとう、兄ちゃん!」

 

タイチはイーブイを抱きしめる。

 

「イーブイ!」

 

「ブイ!」

 

マサヒロはその様子を見て笑う。

 

「よかったな、タイチ」

 

「うん!」

 

タイチはマサヒロを見る。

 

「ありがとう、マサヒロ!」

 

「俺は何もしてないよ」

 

マサヒロは笑う。

 

「お前が自分の気持ちをちゃんと伝えたんだ」

 

「……うん!」

 

タイチは力強く頷いた。

 

サトシがマサヒロの肩を叩く。

 

「やったな、マサヒロ!」

 

「へへっ」

 

マサヒロは笑い、自分のイーブイを見る。

 

「俺たちも一緒に、もっともっと強くなろうぜ!」

 

「ブイ!」

 

マサヒロとイーブイは顔を見合わせる。

 

そして――。

 

「じゃあ、俺たちはグレンシティへ行くよ!」

 

「俺たちもグレン島を目指すから、また会うかもな!」

 

「その時はバトルしようぜ、サトシ!」

 

「もちろん!」

 

マサヒロとサトシは拳を合わせる。

 

「じゃあな!」

 

「またな!」

 

マサヒロとイーブイは、グレンシティへ向かって歩き出した。

 

腰には――。

 

まだ言うことを聞かない、ギャラドスのボール。

 

「ギャラドス……」

 

マサヒロはボールを見る。

 

「いつか絶対、仲良くなってやるからな!」

 

「ブイ!」

 

マサヒロとイーブイは、次の目的地へ向かって歩いていった。

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