「……やっぱり、お前は俺の最高の相棒だよ」
「ブイ!」
マサヒロはイーブイの頭を撫でる。
しかし――。
「ならば、そのイーブイを私に渡せ」
「……え?」
ランスが静かに言った。
「何を言ってるんだよ」
「私は、そのイーブイのエボルブラストを解析したい」
ランスはイーブイを見る。
「お前のイーブイが使うエボルブラストには、通常のイーブイにはない特殊な性質がある」
「だからって……」
「私に渡せばいい」
ランスは続ける。
「そうすれば、お前の身の安全は保証しよう」
「……」
「お前自身には危害を加えない」
マサヒロはイーブイを見る。
イーブイは不安そうにマサヒロを見上げている。
「ふざけるな!」
マサヒロは叫んだ。
「絶対に渡さない!」
「マサヒロ……」
カツラがマサヒロを見る。
「こいつは俺の家族なんだ!」
マサヒロはイーブイを抱き寄せる。
「実験体だった過去なんて関係ない!」
「……」
「こいつはイーブイだ!」
「ブイ!」
イーブイも強く鳴く。
カツラは静かに頷いた。
「……そうか」
カツラが前へ出る。
「ならば、私もこの子を守ろう」
「カツラさん!」
「ロケット団の幹部が、私の前で子供のポケモンを奪おうとしている」
カツラはランスを睨む。
「見過ごすわけにはいかんな」
ランスは小さく笑った。
「ならば、力ずくで奪うまでだ」
ランスがモンスターボールを取り出す。
「行け!」
ボールから二匹のポケモンが飛び出す。
「ゴルバット!」
「マタドガス!」
「カツラさん!」
「分かっている」
カツラもボールを構える。
「キュウコン!」
「コン!」
マサヒロもイーブイを見る。
「イーブイ!」
「ブイ!」
「俺たちも行くぞ!」
* * *
「ゴルバット、つばさでうつ!」
「マタドガス、ヘドロばくだん!」
二匹が同時に攻撃する。
「キュウコン、かえんほうしゃ!」
キュウコンの炎が二つの攻撃を迎え撃つ。
ドォン!
爆発が起きる。
「イーブイ、でんこうせっか!」
「ブイ!」
イーブイが煙の中を駆け抜ける。
「ゴルバット、かわして!」
ゴルバットが空中へ逃げる。
「今だ!」
「アイアンテール!」
イーブイの尻尾がゴルバットを捉える。
「ゴルバット!」
「まだだ!」
ランスは冷静だった。
「マタドガス、ヘドロばくだん!」
「キュウコン、避けろ!」
「コン!」
キュウコンが横へ飛ぶ。
しかし――。
「ゴルバット、もう一度!」
ゴルバットが急降下する。
「キュウコン!」
「コンッ!」
キュウコンは攻撃を受け、地面へ落ちる。
「まだ立てるか!?」
「……コン」
キュウコンは立ち上がる。
だが、かなり苦しそうだ。
「カツラさん!」
「心配するな!」
カツラはキュウコンを見る。
「まだ戦える!」
「ならば……」
ランスが腕を上げる。
「一気に決めるぞ!」
ゴルバットとマタドガスが同時に動く。
「ゴルバット、つばさでうつ!」
「マタドガス、ヘドロばくだん!」
「キュウコン、かえんほうしゃ!」
三つの技がぶつかり合う。
ドォォン!
「キュウコン!」
爆風の中から、キュウコンが飛び出す。
しかし――。
「ゴルバット!」
ゴルバットの攻撃がキュウコンを直撃した。
「コン……」
キュウコンが倒れる。
「キュウコン!」
カツラが駆け寄る。
「よく頑張った」
「……コン」
カツラはキュウコンをボールへ戻す。
「ここからは君一人だ」
マサヒロは歯を食いしばる。
「……強い」
ロケット団幹部。
その肩書きは伊達ではなかった。
ジムリーダーのポケモンでさえ倒されてしまった。
マサヒロの手が、腰のモンスターボールへ伸びる。
そこに入っているのは――。
ギャラドス。
「ギャラドスを出せば……」
一瞬、考える。
ギャラドスは強い。
だが、今のギャラドスは言うことを聞かない。
もし暴れ始めたら――。
味方も敵も関係なく攻撃するかもしれない。
「どうする……」
その時だった。
「ブイ……」
イーブイがマサヒロを見る。
「……イーブイ?」
イーブイはじっとマサヒロを見つめている。
まるで――。
自分を信じてくれと言っているようだった。
「……そうだな」
マサヒロは拳を握る。
「お前を信じる」
「ブイ!」
「ギャラドスは出さない!」
マサヒロはイーブイと向き合う。
「俺たち二人で勝つぞ!」
「ブイ!」
* * *
「イーブイ、かげぶんしん!」
「ブイ!」
イーブイの姿が一気に増える。
「マタドガス、たいあたり!」
マタドガスが突っ込む。
しかし――。
「右!」
マサヒロの指示で、イーブイが攻撃をかわす。
「今だ! アイアンテール!」
「ブイ!」
ドンッ!
マタドガスが吹き飛ぶ。
「マタドガス!」
「まだだ!」
ランスは冷静に指示を出す。
「ゴルバット、つばさでうつ!」
「イーブイ、でんこうせっか!」
二匹が高速でぶつかり合う。
「そこだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「エボルブラスト!」
「ブイィィィ!」
イーブイの身体から、強烈な光が放たれる。
ゴォォォン!
「ゴルバット!」
ゴルバットが吹き飛ばされる。
「まだ終わっていない!」
ランスが叫ぶ。
「マタドガス、もう一度攻撃だ!」
「イーブイ、アイアンテール!」
ドンッ!
マタドガスが弾き飛ばされる。
「ブイ!」
「エボルブラスト!」
「ブイィィィィ!」
再び強烈な光が放たれる。
ゴォォォン!
ゴルバットとマタドガスが同時に吹き飛ばされた。
二匹とも地面に落ちる。
「ゴルバット……」
「マタドガス……」
ランスは二匹を見る。
戦える状態ではない。
「……見事だ」
ランスはマサヒロを見る。
「まさか、ここまでとはな」
「俺とイーブイは、ずっと一緒に戦ってきたんだ!」
「ブイ!」
ランスはモンスターボールを握る。
「だが、私もここで捕まるわけにはいかない」
ランスは背を向ける。
「逃げる気か!」
マサヒロが追おうとする。
その時――。
「待ちなさい!」
外から声が響いた。
「!」
グレンジムの入口から、ジュンサーが駆け込んでくる。
「ランス! あなたをロケット団の幹部として逮捕します!」
「……!」
ランスが立ち止まる。
「くっ……」
逃げ道はなかった。
ジュンサーがランスを取り押さえる。
「離せ!」
「大人しくしてください!」
ランスは抵抗するが、ついに動きを止める。
こうして――。
マサヒロとランスの戦いは終わった。
「イーブイ!」
「ブイ!」
マサヒロはイーブイを抱きしめる。
「ありがとう!」
「ブイ!」
カツラも二人を見て微笑んだ。
「見事だったぞ、マサヒロ」
「カツラさん……」
「そして、そのイーブイもな」
「ブイ!」
マサヒロは笑う。
「こいつは俺の最高の相棒ですから!」
* * *
――その頃。
ロケット団本部。
「ランスが……逮捕されただと?」
巨大な机の前で、一人の男が報告を聞いていた。
ロケット団ボス――サカキ。
「はい」
部下が答える。
「E-01の確保にも失敗しました」
「……」
サカキはしばらく黙っていた。
「ランスほどの男が失敗したか」
「はい」
「それほどまでに、あのイーブイを守る者がいるということか」
サカキは椅子に深く座る。
「……E-01から手を引く」
「よろしいのですか?」
「構わん」
サカキは冷静に答える。
「ランスを失った以上、これ以上追う価値はない」
「承知しました」
部下が頭を下げる。
サカキは目を閉じる。
「E-01……」
そして――。
「好きに生きるがいい」
ロケット団によるE-01の追跡は、ここで終わった。
ランス戦決着!イーブイもロケット団に狙われる事が無くなって一件落着ですね(^ω^)