「こいつは俺の最高の相棒ですから!」
「ブイ!」
マサヒロとイーブイは笑い合う。
そんな二人を、カツラはじっと見つめていた。
「……マサヒロ」
「はい?」
「君は、もう十分にジムへ挑む資格がある」
「え?」
「先ほどの戦いを見せてもらった」
カツラは笑う。
「ポケモンを信じる心。そして、ポケモンから信頼される力」
「……!」
「その両方を、君は持っている」
カツラはグレンジムのバトルフィールドを見る。
「マサヒロ」
「はい!」
「グレンジムのジムリーダーとして、君の挑戦を受けよう」
「本当ですか!?」
「ああ」
「やったー!」
マサヒロは拳を突き上げる。
「イーブイ! 七つ目のジム戦だ!」
「ブイ!」
* * *
グレンジムのバトルフィールド。
マサヒロとカツラが向かい合う。
「今回のルールは3対3だ」
カツラが告げる。
「先に三匹を倒された方が負けだ」
「分かりました!」
マサヒロはボールを握る。
「絶対に勝つぞ!」
「ブイ!」
「では、始めよう!」
カツラがボールを投げる。
「行け! サイホーン!」
「サイ!」
大きなサイホーンが現れる。
「サイホーン!?」
マサヒロは驚く。
「ちょっと待ってください!」
「ん?」
「ここ、ほのおタイプのジムですよね!?」
「そうだが?」
「なんでいわ・じめんタイプのサイホーンなんですか!?」
カツラはニヤリと笑う。
「ほのおタイプの弱点を知っているのは、ほのおタイプの使い手だけではないぞ」
「なるほど……」
マサヒロは少し納得する。
「って、やっぱりズルくないですか!?」
「ズルではない。戦略だ」
「そういうものなの!?」
カツラは笑った。
「さあ、君もポケモンを出したまえ」
「分かりました!」
マサヒロはボールを投げる。
「行け、ウインディ!」
「ワウ!」
ウインディがフィールドへ飛び出す。
「最初から全力でいくぞ!」
* * *
「ウインディ、かえんほうしゃ!」
「ワウ!」
ウインディが強烈な炎を放つ。
「サイホーン、とっしん!」
「サイ!」
サイホーンは炎の中を突き進む。
「ウインディ、かわして!」
ウインディが横へ飛ぶ。
サイホーンの突進が空振りする。
「今だ! しんそく!」
「ワウ!」
ウインディが一気に加速する。
「サイホーン、ストーンエッジ!」
「サイ!」
地面から岩が次々と飛び出す。
「避けろ!」
ウインディが岩の間を駆け抜ける。
「かみくだく!」
ガブッ!
ウインディがサイホーンに噛みつく。
「よし!」
「サイホーン、ドリルライナー!」
サイホーンの角が激しく回転する。
「ウインディ、かえんぐるま!」
ウインディが炎をまとって突撃する。
ドォン!
二匹がぶつかり合う。
「まだだ!」
マサヒロは叫ぶ。
「しんそくで距離を取れ!」
ウインディが素早く離れる。
「かえんほうしゃ!」
再び炎を放つ。
しかし――。
「サイホーン、地面に潜れ!」
サイホーンが地面へ潜る。
「え!?」
炎が空を焼く。
「どこから来る!?」
「下だ!」
「!」
サイホーンが地面から飛び出した。
「ドリルライナー!」
「ウインディ!」
ドォン!
ウインディが吹き飛ばされる。
「まだだ!」
ウインディは立ち上がる。
「かみくだく!」
「サイホーン、受け止めろ!」
ウインディが飛びかかる。
しかしサイホーンは角と身体を使って攻撃を受け止めた。
「今だ、とっしん!」
「ワウッ!」
ウインディが弾き飛ばされる。
「ウインディ!」
「サイホーン、ストーンエッジ!」
「サイ!」
無数の岩がウインディへ飛んでいく。
「しんそくで避けろ!」
ウインディは高速で走る。
しかし――。
「そこだ!」
カツラの指示。
「サイホーン、ドリルライナー!」
「サイ!」
サイホーンがウインディの進路を先読みして突撃する。
ドォン!
「ウインディ!」
ウインディが倒れる。
「……!」
マサヒロは拳を握る。
「ウインディ、立て!」
「ワウ……」
ウインディは立ち上がろうとする。
だが――。
「もう一度、ドリルライナー!」
「サイ!」
ドォン!
ウインディが地面に倒れた。
「ウインディ、戦闘不能!」
カツラが告げる。
「戻れ、ウインディ……」
マサヒロはウインディをボールへ戻す。
「よく頑張った」
マサヒロは次のボールを握る。
「ここからだ!」
「行け!」
「フシギソウ!」
「ソウ!」
フシギソウがフィールドへ出る。
「相性なら、こっちが有利だ!」
* * *
「フシギソウ、つるのムチ!」
「ソウ!」
二本のつるがサイホーンを捕らえる。
「そのまま投げ飛ばせ!」
フシギソウがサイホーンを地面へ叩きつける。
「はっぱカッター!」
「ソウ!」
無数の葉が飛んでいく。
「サイホーン、耐えろ!」
「サイ……!」
サイホーンが耐える。
「ソーラービーム!」
フシギソウの頭上に光が集まる。
「サイホーン、避けろ!」
しかし間に合わない。
「ソウ!」
ドォォン!
強烈な光がサイホーンを直撃する。
「サイホーン!」
サイホーンが大きく吹き飛ぶ。
「よし!」
マサヒロが喜ぶ。
「このまま押し切るぞ!」
「ソウ!」
「たいあたり!」
フシギソウが突撃する。
「サイホーン、とっしん!」
「サイ!」
二匹がぶつかる。
フシギソウが押し勝った。
「もう一度、つるのムチ!」
「ソウ!」
つるがサイホーンを絡め取る。
「これで決める!」
「ソーラービーム!」
「今だ!」
カツラが叫ぶ。
「サイホーン、メガホーン!」
「サイィィィ!」
サイホーンの角が輝く。
「えっ!?」
フシギソウが一瞬動きを止めた。
その隙に――。
ドォォン!
「ソウッ!」
メガホーンが直撃する。
「フシギソウ!」
フシギソウが吹き飛ばされる。
「立て!」
「ソウ……」
フシギソウは立ち上がる。
しかし、身体は傷だらけだった。
「もう一度、メガホーン!」
「サイ!」
サイホーンが突っ込む。
「フシギソウ!」
その瞬間――。
フシギソウの身体が光り始めた。
「え……?」
「ソウ……!」
光がフシギソウを包み込む。
「これは……!」
カツラも目を見開く。
「進化だ!」
光が消える。
そこに立っていたのは――。
「フシギバナ!」
「バナァ!」
「フシギソウが……!」
マサヒロは驚く。
「フシギバナに進化した!」
フシギバナが力強く吠える。
「バナァァ!」
「しかも……」
マサヒロはフシギバナを見る。
「つるのムチが……」
フシギバナがつるを振るう。
「パワーウィップ!」
「バナ!」
つるがサイホーンを強烈に叩き飛ばす。
「サイホーン!」
さらに――。
「たいあたりも!」
フシギバナが口を開く。
「ヘドロばくだん!」
ドンッ!
毒の塊がサイホーンを直撃する。
「サイ……」
サイホーンが倒れた。
「サイホーン、戦闘不能!」
「やった!」
マサヒロが拳を握る。
「フシギバナ!」
「バナ!」
「よく頑張ったな!」
* * *
「見事だ」
カツラは次のボールを取り出す。
「ならば、こちらもキュウコンでいこう」
「来い!」
「キュウコン!」
「コン!」
九本の尾を持つキュウコンが現れる。
「キュウコンか……!」
マサヒロはフシギバナを見る。
「フシギバナ、いけるか?」
「バナ!」
「よし!」
「キュウコン、かえんほうしゃ!」
「コン!」
炎が飛んでくる。
「フシギバナ、かわして!」
フシギバナが横へ飛ぶ。
「はっぱカッター!」
「コン!」
キュウコンが軽やかにかわす。
「速い!」
「かえんほうしゃ!」
「フシギバナ、パワーウィップ!」
炎とつるがぶつかり合う。
しかし――。
「フシギバナ!」
「バナ……!」
フシギバナが押されていく。
「キュウコン、もう一度!」
「コン!」
炎がフシギバナを包む。
「くっ……!」
マサヒロは歯を食いしばる。
その時。
キュウコンの身体から光が放たれた。
「これは……?」
「日本晴れだ」
カツラが言う。
「キュウコンの日本晴れによって、炎の力はさらに強くなる」
「だったら……!」
マサヒロの目が輝く。
「その晴れを、こっちも利用する!」
「何!?」
「フシギバナ、ソーラービーム!」
「バナ!」
フシギバナが太陽の光を吸収する。
「日本晴れなら、ソーラービームの溜め時間も短くなる!」
「なるほど……!」
カツラが笑う。
「考えたな!」
「いくぞ!」
「バナァァ!」
「ソーラービーム!」
ズドォォォン!
強烈な光線がキュウコンを直撃する。
「コンッ!」
キュウコンが吹き飛ばされる。
「キュウコン!」
「まだだ!」
「コン……!」
キュウコンが立ち上がる。
「かえんほうしゃ!」
「フシギバナ、もう一度ソーラービーム!」
「バナ!」
二つの技がぶつかる。
しかし――。
「ソーラービームの方が速い!」
ズドォォン!
キュウコンが吹き飛ばされる。
「キュウコン、戦闘不能!」
「よし!」
マサヒロが叫ぶ。
「これで残り一匹だ!」
「見事」
カツラは最後のボールを取り出した。
「だが私には、まだ切り札が残っている」
「行け!」
「ブーバー!」
「ブー!」
赤い身体のブーバーが現れる。
「最後はブーバーか!」
「そうだ」
カツラは静かに構える。
「勝負を決めよう」
* * *
「ブーバー、だいもんじ!」
「ブー!」
巨大な炎が放たれる。
「フシギバナ、避けろ!」
しかし――。
日本晴れによって強化された炎は、あまりにも速かった。
「バナ!」
ドォォォン!
「フシギバナ!」
フシギバナが倒れる。
「フシギバナ、戦闘不能!」
「……!」
マサヒロはフシギバナのボールを握る。
「よく頑張ったな」
そして――。
最後のボールを手に取る。
「イーブイ!」
「ブイ!」
イーブイがフィールドへ飛び出す。
「お前が最後だ」
「ブイ!」
「俺たちの全部をぶつけよう!」
「ブイ!」
「バトル開始だ!」
* * *
「ブーバー、かえんほうしゃ!」
「ブー!」
「イーブイ、かげぶんしん!」
「ブイ!」
イーブイの姿が増える。
炎が次々と分身を消していく。
「本物はどこだ!」
カツラが叫ぶ。
「そこだ!」
「イーブイ、アイアンテール!」
「ブイ!」
ドンッ!
イーブイの攻撃がブーバーを捉える。
「ブーバー!」
「まだだ!」
「だいもんじ!」
「イーブイ、でんこうせっか!」
イーブイが炎をかわして駆ける。
「アイアンテール!」
「ブー!」
再びブーバーに命中する。
「互角……!」
マサヒロは驚く。
ブーバーも強い。
だが、イーブイも負けていない。
「エボルブラスト!」
「ブイィィィ!」
強烈な光が放たれる。
ブーバーは直撃を受ける。
「ブー!」
しかし――。
「立て!」
「ブー……!」
ブーバーが立ち上がる。
「イーブイ、もう一度エボルブラスト!」
「ブイ……!」
イーブイの身体がふらつく。
「……!」
マサヒロは息をのむ。
やはり、今までは一度しか使えなかった。
エボルブラストを使った直後は、身体への負担が大きすぎる。
「イーブイ……」
ブーバーが迫ってくる。
「だいもんじ!」
「イーブイ、避けろ!」
炎をかわす。
「もう一度!」
「でんこうせっか!」
イーブイが走る。
しかし――。
「ブーバー、追い込め!」
「ブー!」
イーブイが追い詰められていく。
「イーブイ!」
マサヒロは叫ぶ。
「まだ終わってない!」
「ブイ……!」
イーブイが立ち上がる。
「俺たちは、今まで何度も強い相手と戦ってきた!」
マサヒロはイーブイを見る。
「だから、もう一回だけ頑張ってみよう!」
「ブイ!」
イーブイの身体から、再び光が漏れ始める。
「……!」
カツラが目を見開く。
「まさか……」
イーブイの身体が震える。
苦しそうにしながらも、光はどんどん強くなっていく。
「頑張れ……!」
「ブイィ……!」
光が弾ける。
そして――。
「ブイ!」
イーブイが力強く立ち上がった。
「イーブイ!」
マサヒロは驚く。
「もう一度……使えるのか!?」
イーブイはマサヒロを振り返る。
「ブイ!」
その目には、強い意志が宿っていた。
「そうか……!」
マサヒロは笑う。
「今、限界を超えたんだな!」
「ブイ!」
「なら、最後までいくぞ!」
「ブイ!」
「エボルブラスト!」
「ブイィィィィィ!」
二度目のエボルブラストが放たれる。
「ブーバー!」
「ブー……!」
強烈な光がブーバーを包み込む。
ドォォォン!
煙が晴れる。
そこには――。
倒れたブーバーがいた。
「ブーバー、戦闘不能!」
静寂が広がる。
そして――。
「マサヒロの勝ち!」
「……勝った」
マサヒロは呟く。
「俺たち……勝ったんだ!」
「ブイ!」
マサヒロはイーブイを抱き上げる。
「やったぞ、イーブイ!」
「ブイ!」
カツラも笑顔で近づいてくる。
「見事だった」
「カツラさん……」
「最後の戦い、素晴らしかったぞ」
カツラはイーブイを見る。
「エボルブラストを……二度」
「はい!」
マサヒロは嬉しそうに答える。
「こいつ、今まで一度使ったら暫くは使えなかったんです」
「だが、今の戦いでその弱点を克服した」
「ブイ!」
イーブイが胸を張る。
「すごいぞ、イーブイ!」
マサヒロは強く抱きしめる。
* * *
カツラは懐から一つのバッジを取り出す。
「これを受け取れ」
「これは……!」
「クリムゾンバッジだ」
カツラからバッジを受け取る。
「七つ目のバッジ……!」
マサヒロはバッジケースへ大切にしまう。
「ありがとうございます!」
「いや」
カツラはイーブイを見る。
「礼を言いたいのはこちらの方だ」
「え?」
「君のおかげで、私も一つ気づかされた」
カツラは静かに話し始める。
「私は昔、ジムリーダーになる前はポケモン研究者だった」
「研究者……?」
「ポケモンの進化についても研究していた」
カツラはイーブイを見る。
「だからこそ、ランスという男の話を聞いて考えた」
「……」
「ロケット団は、このイーブイを『失敗作』と判断した」
マサヒロはイーブイを見る。
「でも……それは違う」
カツラは首を横に振る。
「進化できなくなったのではない」
「え?」
「進化しないという道を、このイーブイは選んだのだ」
「……!」
「進化することだけが、成長ではない」
カツラは微笑む。
「この子は、進化しないという進化をした」
「ブイ……」
イーブイがマサヒロを見る。
「そして、それによって誰にも真似できない力を手に入れた」
「……」
「今日、その力はまた一つ先へ進んだ」
カツラはイーブイを見る。
「エボルブラストを連発できるようになったのも、その証だろう」
「ブイ!」
マサヒロはイーブイを抱きしめる。
「そうだよな」
「ブイ!」
「お前は失敗作なんかじゃない」
マサヒロは笑う。
「世界で一匹だけの、俺の最高の相棒だ!」
「ブイ!」
カツラは二人を見ながら、静かに笑った。
「その絆がある限り、君たちはもっと強くなれるだろう」
「はい!」
マサヒロはクリムゾンバッジを握りしめる。
「あと一つ……!」
カントーリーグまで、残り一つ。
マサヒロとイーブイの旅は、まだ終わらない。