ポケットモンスターブラウン   作:光宙

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35話 相棒対決!マサヒロvsリョウ!

グレンタウン。

 

七つ目のクリムゾンバッジを手に入れたマサヒロは、イーブイたちとともに街を出ていた。

 

「よし!」

 

マサヒロはバッジケースを取り出す。

 

「これでバッジは七つ!」

 

「ブイ!」

 

イーブイが嬉しそうに鳴く。

 

「あと一つだ!」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「最後のジムに勝てば、ポケモンリーグに挑戦できる!」

 

「ブイ!」

 

「……とはいえ」

 

マサヒロは後ろを見る。

 

腰には六つのモンスターボール。

 

その中の一つ。

 

ギャラドスのボールを見つめる。

 

「こいつをどうするかな……」

 

マサヒロはため息をついた。

 

「捕まえてから、全然言うことを聞いてくれないんだよな」

 

ギャラドス。

 

ポケモン保護区で捕まえた、巨大なポケモン。

 

「出したら暴れるし……」

 

マサヒロは苦笑する。

 

「バトルでも俺の指示を無視するし」

 

「ブイ……」

 

イーブイもギャラドスのボールを見る。

 

「別に嫌いなわけじゃないんだけどな」

 

マサヒロは呟く。

 

「ただ……また暴れたらって考えると」

 

そのとき。

 

「マサヒロ!」

 

「え?」

 

聞き覚えのある声。

 

振り返ると――。

 

「やっぱりマサヒロだ!」

 

「リョウ!」

 

そこにはリョウが立っていた。

 

そして、その肩には小さなサンドが乗っている。

 

「久しぶりだな!」

 

「久しぶり!」

 

マサヒロは笑う。

 

「また会ったな!」

 

「そうだな」

 

リョウが笑う。

 

「……ん?」

 

マサヒロはリョウの肩を見る。

 

「そのサンド……」

 

「こいつか?」

 

「うん」

 

マサヒロはサンドを見る。

 

「サンドパンには進化させないの?」

 

「……」

 

リョウは少しだけサンドを見る。

 

サンドもリョウを見上げる。

 

「こいつはな」

 

リョウは優しく言う。

 

「サンドのまま強くなることを望んでるんだ」

 

「サンドのまま……」

 

「だから、俺はその気持ちを尊重したい」

 

「……そっか」

 

マサヒロはイーブイを見る。

 

「俺も、似たような経験があるんだ」

 

「ブイ?」

 

「こいつもイーブイのまま強くなる事を決めたんだ」

 

「ブイ!」

 

イーブイが胸を張る。

 

「だから俺も、サンドがそう望んでるなら、それでいいと思う」

 

「マサヒロ……」

 

リョウが笑う。

 

「ありがとう」

 

「いや!」

 

マサヒロも笑った。

 

「俺とイーブイも一緒だからな!」

 

「ブイ!」

 

二匹のポケモンが顔を見合わせる。

 

「サンド!」

 

「ブイ!」

 

* * *

 

「そういえば」

 

リョウがバッジケースを取り出す。

 

「マサヒロは今、バッジ何個だ?」

 

「七個!」

 

マサヒロが胸を張る。

 

「お前は?」

 

「俺も七個だ」

 

「本当か!?」

 

「ああ」

 

リョウがバッジを見せる。

 

「次のジムが最後だな」

 

「……!」

 

マサヒロの目が輝く。

 

「だったら!」

 

「ん?」

 

「最後のジムに向けて、特訓しようぜ!」

 

リョウが笑う。

 

「そう言うと思った」

 

「やっぱり分かってるな!」

 

「俺も同じことを考えてた」

 

リョウはボールを取り出す。

 

「だったら、3対3でどうだ?」

 

「望むところだ!」

 

マサヒロもボールを取り出す。

 

「やろう!」

 

* * *

 

「最初はこいつだ!」

 

マサヒロがボールを投げる。

 

「行け、イーブイ!」

 

「ブイ!」

 

リョウもボールを投げる。

 

「行け、サンド!」

 

「サンド!」

 

「イーブイ対サンド!」

 

マサヒロは笑う。

 

「相棒同士の勝負だ!」

 

「負けないぞ、マサヒロ」

 

リョウも構える。

 

「こいつは厳しい特訓を続けてきた」

 

「特訓?」

 

「ああ」

 

リョウはサンドを見る。

 

「進化先のサンドパンすら凌ぐパワーを手に入れた」

 

「……!」

 

マサヒロは驚く。

 

「サンドのままで、そこまで強くなったのか?」

 

「嘘じゃない」

 

サンドが地面を踏みしめる。

 

「サンド!」

 

「……分かった」

 

マサヒロも構える。

 

「その強さ、見せてもらうぞ!」

 

* * *

 

「サンド、こうそくスピン!」

 

「サンド!」

 

サンドが高速回転しながら突っ込んでくる。

 

「イーブイ、避けろ!」

 

「ブイ!」

 

イーブイが横へ飛ぶ。

 

「今だ!」

 

「サンド、あなをほる!」

 

サンドが地面へ潜る。

 

「来るぞ!」

 

マサヒロが周囲を見る。

 

「イーブイ、動き続けろ!」

 

「ブイ!」

 

イーブイが走り回る。

 

「そこだ!」

 

サンドが地面から飛び出す。

 

「イーブイ、かげぶんしん!」

 

「ブイ!」

 

イーブイの姿が一気に増える。

 

「サンド、ジャイロボール!」

 

「サンド!」

 

サンドが高速回転しながら分身へ突っ込む。

 

次々と分身が消えていく。

 

「本物を探してる!」

 

「そのまま攻めろ!」

 

サンドが地面を蹴る。

 

「10まんばりき!」

 

「サンド!」

 

強烈な突進。

 

「イーブイ、避けろ!」

 

イーブイが飛び上がる。

 

しかし――。

 

「サンド、こうそくスピン!」

 

サンドが空中へ跳び上がる。

 

「ブイ!?」

 

回転しながらイーブイへ迫る。

 

「イーブイ!」

 

ドォン!

 

イーブイが地面へ叩きつけられる。

 

「ブイ……!」

 

「まだだ!」

 

マサヒロは叫ぶ。

 

「でんこうせっか!」

 

「ブイ!」

 

イーブイが立ち上がり、一気に走る。

 

「アイアンテール!」

 

「ブイ!」

 

尻尾が鋼のように輝く。

 

「サンド、あなをほる!」

 

サンドが地面へ潜る。

 

「またか!」

 

マサヒロは周囲を見る。

 

「イーブイ、動きを止めるな!」

 

「ブイ!」

 

その瞬間。

 

「サンド、10まんばりき!」

 

「サンド!」

 

地面からサンドが飛び出す。

 

ドォン!

 

「ブイッ!」

 

イーブイが吹き飛ばされる。

 

「イーブイ!」

 

イーブイは何とか立ち上がる。

 

しかし――。

 

サンドはまだ余裕を残していた。

 

「すごい……」

 

マサヒロは息を呑む。

 

「本当にサンドパンに負けないくらい強い」

 

サンドが地面を踏みしめる。

 

「サンド!」

 

「だったら……!」

 

マサヒロはイーブイを見る。

 

「俺たちも負けてられない!」

 

「ブイ!」

 

「強くなってるのは、お前たちだけじゃない!」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「イーブイ!」

 

「ブイ!」

 

「エボルブラスト!」

 

「ブイィィィ!」

 

強烈な光が放たれる。

 

「サンド、避けろ!」

 

サンドが横へ飛ぶ。

 

「まだだ!」

 

マサヒロは叫ぶ。

 

「もう一度、エボルブラスト!」

 

「ブイィィィ!」

 

「なに!?」

 

二発目の光が放たれる。

 

サンドが避けようとする。

 

しかし――。

 

「サンド!」

 

光が直撃する。

 

「まだだ!」

 

「エボルブラスト!」

 

「ブイィィィ!」

 

三発目。

 

「サンド!」

 

今度はまともに直撃する。

 

サンドが吹き飛ばされる。

 

「サンド……!」

 

リョウが叫ぶ。

 

「立て!」

 

サンドは立ち上がろうとする。

 

しかし。

 

身体が動かない。

 

「サンド、戦闘不能!」

 

「……!」

 

リョウは驚く。

 

マサヒロはイーブイを見る。

 

「やったな!」

 

「ブイ!」

 

「一発だけじゃない」

 

マサヒロは笑う。

 

「俺たちは、エボルブラストを何度も使えるようになったんだ!」

 

「ブイ!」

 

* * *

 

「次は俺だ!」

 

リョウがボールを投げる。

 

「行け、パルシェン!」

 

「パル!」

 

マサヒロもボールを取り出す。

 

「よし!」

 

「次はこいつだ!」

 

「行け、プテラ!」

 

「プテラァ!」

 

大きな翼を広げ、プテラが飛び出す。

 

「プテラ!」

 

プテラは嬉しそうに空を飛び回る。

 

「初めてのバトルだもんな」

 

マサヒロが笑う。

 

「思いっきりいけ!」

 

「プテラ!」

 

プテラが勢いよく飛び出す。

 

「パルシェン、みずでっぽう!」

 

「パル!」

 

水流が飛んでくる。

 

「プテラ、避けろ!」

 

プテラが空中で旋回する。

 

「つばさでうつ!」

 

「プテラ!」

 

翼を大きく振るう。

 

「パル!」

 

パルシェンが吹き飛ぶ。

 

「よし!」

 

「パルシェン、まもる!」

 

「パル!」

 

殻が光り、攻撃を防ぐ。

 

「プテラ、かみつく!」

 

「プテラ!」

 

プテラが飛びかかる。

 

ガブッ!

 

「パル!」

 

しかし。

 

「まだだ!」

 

「プテラ、もう一度!」

 

「プテラ!」

 

連続で攻撃する。

 

「パルシェン、耐えろ!」

 

パルシェンは攻撃を受けながらも耐え続ける。

 

「決めろ、プテラ!」

 

「ストーンエッジ!」

 

「プテラァ!」

 

巨大な岩が次々と飛んでいく。

 

「パルシェン!」

 

ドォン!

 

岩が直撃する。

 

「やった!」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「プテラの勝ちだ!」

 

しかし。

 

「まだだ」

 

リョウが静かに言う。

 

「え?」

 

パルシェンが倒れている。

 

だが――。

 

「パル……」

 

殻の一部が動く。

 

「……?」

 

マサヒロが目を見開く。

 

「まさか……」

 

「パルシェン!」

 

その瞬間。

 

パルシェンが殻を脱ぎ捨てる。

 

「えっ!?」

 

「からをやぶるだ!」

 

リョウが叫ぶ。

 

「技を受ける直前に、からをやぶるを使ったんだ!」

 

「じゃあ……!」

 

マサヒロが見る。

 

倒れていたのは――。

 

「脱ぎ捨てた殻!?」

 

「そうだ!」

 

殻の中から、身軽になったパルシェンが現れる。

 

「パル!」

 

「しまった!」

 

マサヒロは叫ぶ。

 

「プテラ、気をつけろ!」

 

「プテラ!」

 

だが。

 

「パルシェン、つららばり!」

 

「パル!」

 

無数の氷の針が飛んでくる。

 

「プテラ、避けろ!」

 

「プテラ!」

 

プテラが飛び回る。

 

しかし、連続攻撃で疲れていた身体は思うように動かない。

 

「プテラ!」

 

つららばりが直撃する。

 

「プテラァ!」

 

プテラが地面へ落ちる。

 

「立て!」

 

「プテラ……」

 

プテラは立ち上がろうとする。

 

しかし――。

 

「プテラ、戦闘不能!」

 

「……」

 

マサヒロはプテラを見る。

 

「初めてのバトル……」

 

プテラは悔しそうに鳴く。

 

「プテラ……」

 

「よく頑張ったぞ」

 

マサヒロはボールを向ける。

 

「戻れ」

 

光がプテラを包み込む。

 

「次は勝とうな」

 

* * *

 

「これで一勝一敗だな」

 

リョウが言う。

 

「最後の一匹だ」

 

マサヒロはボールを取り出す。

 

「じゃあ、最後はスピアーで――」

 

その瞬間。

 

「ギャアアアア!」

 

「え?」

 

マサヒロの腰から、一つのボールが勝手に飛び出した。

 

「ギャラドス!?」

 

ボールから巨大なギャラドスが現れる。

 

「ギャアアアアア!」

 

「ちょっと待て!」

 

マサヒロが慌てる。

 

「俺が出したのはお前じゃない!」

 

「ギャアアア!」

 

ギャラドスはマサヒロの言葉を無視する。

 

「またかよ……」

 

リョウは少し驚いた顔をする。

 

「マサヒロ、こいつ……」

 

「うん」

 

マサヒロは困ったように笑う。

 

「まだ全然言うことを聞かないんだ」

 

「なるほどな」

 

リョウはカビゴンのボールを取り出す。

 

「だったら、こいつでいく」

 

「行け、カビゴン!」

 

「カビ!」

 

巨大なカビゴンが現れる。

 

「ギャアアアア!」

 

ギャラドスが突っ込む。

 

「ちょっと待て!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「ギャラドス、止まれ!」

 

聞く耳を持たない。

 

「ギャアアア!」

 

ギャラドスがカビゴンへ突進する。

 

「カビゴン、受け止めろ!」

 

「カビ!」

 

ドォン!

 

カビゴンがギャラドスの攻撃を受け止める。

 

「ギャラドス、落ち着いてくれ!」

 

「ギャアアア!」

 

しかしマサヒロの指示は通らず再び突進。

 

「カビゴン、メガトンパンチ!」

 

「カビ!」

 

ドォン!

 

拳がギャラドスへ命中する。

 

「ギャアッ!」

 

「ギャラドス!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「もうやめろ!」

 

しかし。

 

「ギャアアア!」

 

ギャラドスはさらに暴れる。

 

「カビゴン、のしかかり!」

 

「カビ!」

 

カビゴンが飛び上がる。

 

「ギャラドス!」

 

ドォン!

 

ギャラドスが地面へ叩きつけられる。

 

「まだだ!きあいだま!」

 

カビゴンが気弾を放つ。

 

「ギャアア!」

 

直撃。

 

それでもギャラドスは立ち上がる。

 

「すごい……」

 

マサヒロは驚く。

 

「ギャラドスも、まだ倒れない」

 

「カビゴン!」

 

リョウが叫ぶ。

 

「ギガインパクト!」

 

「カビィィ!」

 

カビゴンが全力で突進する。

 

「ギャラドス!」

 

ドォォン!

 

ギャラドスが大きく吹き飛ばされる。

 

「ギャア……」

 

そのまま動かなくなった。

 

「ギャラドス、戦闘不能!」

 

「……」

 

マサヒロは呆然とする。

 

「終わった……」

 

カビゴンは静かに立っている。

 

リョウがボールを向ける。

 

「戻れ、カビゴン」

 

「カビ」

 

カビゴンがボールへ戻る。

 

「……」

 

マサヒロはギャラドスを見る。

 

「ごめん、リョウ」

 

「ん?」

 

「せっかくの特訓だったのに……」

 

マサヒロは頭を下げる。

 

「ギャラドスが勝手に出てきて、勝手に暴れて……」

 

「別にいいさ」

 

リョウは笑う。

 

「でもな」

 

「え?」

 

リョウはギャラドスを見る。

 

「ギャラドスが言うことを聞かないのって、お前が必要以上に怯えてるのが原因じゃないか?」

 

「……!」

 

マサヒロは言葉を失う。

 

「怯えてる……?」

 

「ギャラドスが暴れるのが怖い」

 

リョウは続ける。

 

「だから、ボールから出すのを避けてる」

 

「……」

 

図星だった。

 

マサヒロはギャラドスを捕まえてから、できるだけボールから出さないようにしていた。

 

暴れ出したらどうしよう。

 

また言うことを聞かなかったらどうしよう。

 

そんなことばかり考えていた。

 

「でも、それじゃあギャラドスも」

 

リョウはギャラドスを見る。

 

「お前に信じてもらえてないって感じるんじゃないか?」

 

「……」

 

マサヒロはギャラドスのボールを握る。

 

「俺が……」

 

マサヒロは俯く。

 

「こいつを怖がってたから……」

 

「たぶんな」

 

リョウは静かに笑う。

 

「もう少しギャラドスを信じて使ってやれよ」

 

「……信じる」

 

マサヒロはギャラドスのボールを見る。

 

「俺が……」

 

拳を握る。

 

「俺が変わらないといけないんだ」

 

「そういうことだ」

 

リョウは背を向ける。

 

「じゃあな、マサヒロ」

 

「リョウ!」

 

「次に会うときは、お互い最後のバッジを持ってようぜ」

 

「……ああ!」

 

マサヒロは頷く。

 

「絶対だ!」

 

「じゃあな!」

 

リョウは歩き出す。

 

肩にはサンド。

 

その姿が少しずつ遠ざかっていく。

 

「……」

 

マサヒロはギャラドスのボールを見つめる。

 

「今まで……」

 

マサヒロは呟く。

 

「俺はギャラドスが暴れるのが怖くて、ずっとボールから出すのを避けてた」

 

「ブイ……」

 

イーブイが隣に寄り添う。

 

「それじゃ、ギャラドスだって俺を信じられないよな」

 

マサヒロはボールを強く握る。

 

「ごめんな」

 

ボールの中にいるギャラドスへ語りかける。

 

「これからは……ちゃんと向き合う」

 

「ブイ!」

 

マサヒロはイーブイを見る。

 

「俺ももっと強くならないとな」

 

「ブイ!」

 

「最後のジムまで、あと一つ」

 

マサヒロは前を向く。

 

「ギャラドスとも、ちゃんと仲間になってみせる」

 

そして。

 

マサヒロはイーブイとともに歩き出した。

 

その腰には。

 

まだ言うことを聞かないギャラドスのボールがあった。

 

だが――。

 

マサヒロの中には、今までとは違う気持ちが生まれていた。

 

「待ってろよ、最後のジム!」

 

「ブイ!」

 

少年とイーブイは、最後のバッジを目指して歩いていく。

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