ポケットモンスターブラウン   作:光宙

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39話 ゴーストの恐怖!最強ゲンガー登場!

「そうさ」

 

キクコは新しいモンスターボールを手に取る。

 

「アタシのポケモンは、まだ二匹いるんだからねぇ」

 

マサヒロは笑った。

 

「望むところです!」

 

「ギャア!」

 

ギャラドスも力強く鳴く。

 

「じゃあ、次のポケモンを出すよ」

 

キクコがボールを投げる。

 

「出ておいで、ゴースト!」

 

「ゴース!」

 

紫色の身体をしたゴーストが、フィールドへ現れた。

 

「ゴーストか……!」

 

マサヒロは身構える。

 

「ギャラドス、気をつけろ!」

 

「ギャア!」

 

キクコが指示を出す。

 

「ゴースト、さいみんじゅつ!」

 

「ゴース……!」

 

ゴーストの目が怪しく光る。

 

「ギャラドス、目を合わせるな!」

 

「ギャア……」

 

しかし。

 

ギャラドスの動きが止まる。

 

「ギャラドス?」

 

「ギャア……」

 

ゆっくりと目を閉じる。

 

「しまった!」

 

「ゴース!」

 

ギャラドスが眠りに落ちる。

 

「ギャラドス、起きろ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

しかし、ギャラドスは目を覚まさない。

 

「今度は、ゆめくい!」

 

「ゴース!」

 

ゴーストから怪しい光が伸びる。

 

眠っているギャラドスから、力が吸い取られていく。

 

「ギャラドス!」

 

「ギャア……」

 

ギャラドスの身体から力が抜けていく。

 

「くそっ……!」

 

マサヒロは歯を食いしばる。

 

「ギャラドス、起きろ!」

 

しかし。

 

「ゴースト、もう一度ゆめくい!」

 

「ゴース!」

 

再び力を吸い取られる。

 

「ギャラドス!」

 

「ギャア……」

 

ギャラドスは苦しそうに唸る。

 

マサヒロは拳を握る。

 

「ギャラドス……!」

 

そのとき。

 

マサヒロは、ギャラドスと初めて心が通じた瞬間を思い出した。

 

『俺もお前を信じるから』

 

『お前も俺を信じてくれ!』

 

「……そうだ」

 

マサヒロはギャラドスを見る。

 

「俺は、お前を信じるって決めたんだ!」

 

「ギャア……」

 

「ギャラドス!」

 

マサヒロは叫ぶ。

 

「俺の声を聞け!」

 

「ギャア……」

 

「お前なら起きられる!」

 

「……」

 

「俺と一緒に戦おう!」

 

ギャラドスの身体が、わずかに動く。

 

「ギャア……」

 

「そうだ!」

 

マサヒロはさらに声を張る。

 

「戻ってこい、ギャラドス!」

 

「ギャ……」

 

ゆっくりと。

 

ギャラドスの目が開いた。

 

「ギャアアアアア!」

 

「ギャラドス!」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「起きた!」

 

キクコが目を細める。

 

「ほう……」

 

ギャラドスがゴーストを睨む。

 

「ギャア!」

 

「よし!」

 

マサヒロは指を伸ばす。

 

「ぼうふう!」

 

「ギャアアアア!」

 

ギャラドスが翼を大きく振る。

 

猛烈な風が巻き起こる。

 

「ゴース!」

 

ゴーストの身体が風に巻き込まれる。

 

「そのまま押し切れ!」

 

「ギャアアア!」

 

巨大な竜巻がゴーストを吹き飛ばす。

 

「ゴース……!」

 

ゴーストが地面へ落ちる。

 

「ゴースト、戦闘不能!」

 

「やった!」

 

マサヒロが拳を突き上げる。

 

「ギャラドス!」

 

「ギャア!」

 

しかし。

 

キクコは笑っていた。

 

「……惜しかったねぇ」

 

「え?」

 

「ゴーストは、ぼうふうを受ける直前に技を使っていたのさ」

 

「何を……?」

 

キクコが告げる。

 

「みちづれだよ」

 

「……!」

 

マサヒロの顔が固まる。

 

「まさか……」

 

ギャラドスの身体が、ぐらりと揺れる。

 

「ギャア……」

 

そして。

 

ドォン!

 

ギャラドスが地面へ倒れた。

 

「ギャラドス!」

 

「ギャラドス、戦闘不能!」

 

「……!」

 

マサヒロはギャラドスへ駆け寄る。

 

「そんな……」

 

キクコは静かに笑う。

 

「これがゴーストタイプの怖ささ」

 

「……」

 

「最後まで何をするか分からない」

 

キクコは倒れたゴーストを見る。

 

「眠らせることもできる」

 

「……」

 

「夢を食らうこともできる」

 

「……」

 

「そして、自分が倒れるときでさえ、相手を道連れにできる」

 

キクコはマサヒロを見る。

 

「それがゴーストタイプの強みなのさ」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「……すごい」

 

悔しい。

 

けれど。

 

「でも、ギャラドスは勝ったんだ」

 

マサヒロは倒れたギャラドスを見る。

 

「四天王のポケモンを2匹も倒したんだ」

 

「ギャア……」

 

「よくやったな」

 

マサヒロはギャラドスのボールを握る。

 

「ありがとう」

 

ギャラドスはボールの中へ戻っていった。

 

キクコは最後のモンスターボールを取り出す。

 

「さて……」

 

マサヒロが顔を上げる。

 

「これがアタシの最後のポケモンだよ」

 

ボールが開く。

 

「出ておいで、ゲンガー!」

 

「ゲンガァ!」

 

黒い影のような身体。

 

鋭い目。

 

そして、不気味な笑み。

 

「ゲンガー……!」

 

マサヒロは息を呑む。

 

キクコは笑った。

 

「こいつはねぇ」

 

ゲンガーの肩に手を置く。

 

「アタシが持っている中で、最強のポケモンさ」

 

「最強……!」

 

「そうさ」

 

ゲンガーがマサヒロを見る。

 

「ゲンガァ……」

 

その笑みを見ただけで、背筋が寒くなる。

 

「……強そうだ」

 

マサヒロはボールを握る。

 

「でも、俺だって負けない!」

 

次のボールを投げる。

 

「行け、スピアー!」

 

「スピアー!」

 

スピアーがフィールドへ飛び出す。

 

「スピアー、こうそくいどう!」

 

「スピアー!」

 

一瞬でスピアーの姿が消える。

 

「速い!」

 

キクコは笑う。

 

「ほう」

 

「右だ!」

 

スピアーがゲンガーの横へ回り込む。

 

「ミサイルばり!」

 

「スピアー!」

 

無数の針が飛んでいく。

 

「ゲンガー!」

 

しかし。

 

ゲンガーは身体を動かす。

 

「速い……!」

 

針を次々とかわしていく。

 

「スピアー、もう一度!」

 

スピアーが高速で移動する。

 

右。

 

左。

 

後ろ。

 

一瞬も止まらない。

 

「ミサイルばり!」

 

「スピアー!」

 

しかし。

 

「ゲンガー!」

 

ゲンガーがスピアーの動きを追う。

 

「えっ!?」

 

スピアーが驚く。

 

「シャドーボール!」

 

「ゲンガァ!」

 

黒い球体が放たれる。

 

「スピアー、避けろ!」

 

「スピアー!」

 

ギリギリでかわす。

 

「よし!」

 

マサヒロは拳を握る。

 

しかし。

 

「ゲンガー、あくのはどう!」

 

「ゲンガァ!」

 

黒い波動が広がる。

 

「スピアー!」

 

直撃。

 

「スピアー!」

 

スピアーが吹き飛ばされる。

 

「まだだ!」

 

「こうそくいどう!」

 

スピアーが立ち上がり、再び走る。

 

「速さなら負けない!」

 

「スピアー!」

 

ゲンガーの周囲を高速で回り続ける。

 

「ミサイルばり!」

 

「スピアー!」

 

針が飛ぶ。

 

しかし。

 

「ゲンガー、サイコキネシス!」

 

「ゲンガァ!」

 

ゲンガーの目が光る。

 

「スピアー!?」

 

空中にいたスピアーの身体が止まった。

 

「なっ……!」

 

「そのまま!」

 

ゲンガーがスピアーを地面へ叩きつける。

 

ドォン!

 

「スピアー!」

 

「もう一度、シャドーボール!」

 

「ゲンガァ!」

 

黒い球が直撃する。

 

「スピアー!」

 

スピアーが地面へ倒れた。

 

「スピアー、戦闘不能!」

 

「……!」

 

マサヒロは息を呑む。

 

スピアーの最大の武器。

 

高速戦闘。

 

それすらも。

 

「……通じない」

 

キクコは笑う。

 

「速いだけじゃ、アタシのゲンガーには勝てないよ」

 

「くっ……!」

 

マサヒロは次のボールを握る。

 

「だったら……!」

 

ボールを投げる。

 

「行け、ウインディ!」

 

「ウインディ!」

 

ウインディがフィールドへ現れる。

 

「スピードがダメなら……!」

 

マサヒロはウインディを見る。

 

「パワーで押し切る!」

 

「ウインディ!」

 

キクコが笑う。

 

「いいねぇ」

 

「ウインディ、かえんほうしゃ!」

 

「ウオオオオ!」

 

巨大な炎がゲンガーへ向かう。

 

「ゲンガー、避けろ!」

 

ゲンガーが横へ飛ぶ。

 

「しんそく!」

 

「ウインディ!」

 

ウインディが一気に距離を詰める。

 

「かみくだく!」

 

「ウインディ!」

 

鋭い牙でゲンガーに噛みつく。

 

「ゲンガー!」

 

「よし!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「そのまま押せ!」

 

「ウインディ!」

 

「かえんぐるま!」

 

炎をまとったウインディが突進する。

 

「ゲンガー!」

 

ゲンガーが吹き飛ぶ。

 

「やった!」

 

しかし。

 

キクコは冷静だった。

 

「まだまだだよ」

 

「え?」

 

「ゲンガー、サイコキネシス!」

 

「ゲンガァ!」

 

ゲンガーの目が光る。

 

「ウインディ!」

 

ウインディの身体が宙へ浮く。

 

「動け!」

 

「ウインディ……!」

 

身体が動かない。

 

「くそっ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「ウインディ、負けるな!」

 

しかし。

 

「シャドーボール!」

 

「ゲンガァ!」

 

黒い球体がウインディへ直撃する。

 

「ウインディ!」

 

ドォン!

 

ウインディが地面へ叩きつけられる。

 

「ウインディ、戦闘不能!」

 

「……!」

 

マサヒロは唇を噛む。

 

ギャラドス。

 

スピアー。

 

ウインディ。

 

そしてフシギバナとプテラ。

 

五匹が倒れた。

 

残るのは――。

 

「……イーブイ」

 

マサヒロは、最後のモンスターボールを見る。

 

そして。

 

「……」

 

イーブイを見る。

 

イーブイもマサヒロを見る。

 

しばらく。

 

二人は何も言わなかった。

 

やがて。

 

イーブイが一歩前へ出る。

 

「ブイ」

 

「……イーブイ」

 

イーブイはマサヒロを見つめる。

 

その目には、迷いがなかった。

 

「……そうだな」

 

マサヒロは笑う。

 

「俺たちなら、やれるよな」

 

「ブイ!」

 

イーブイがバトルフィールドへ飛び出す。

 

「ブイ!」

 

キクコはイーブイを見る。

 

そして。

 

「おやおや」

 

静かに笑った。

 

「とうとう最後の一匹だねぇ」

 

マサヒロは頷く。

 

「はい」

 

「五匹も倒されて、随分と追い詰められたじゃないか」

 

「……」

 

「怖くはないのかい?」

 

マサヒロは少し考える。

 

そして。

 

笑った。

 

「不思議です」

 

「ほう?」

 

「怖くない」

 

マサヒロはイーブイを見る。

 

「むしろ……」

 

拳を握る。

 

「ワクワクしてます!」

 

「ブイ!」

 

キクコは目を細める。

 

「ワクワク……ねぇ」

 

「はい!」

 

マサヒロはゲンガーを見る。

 

「だって、ここまで強い相手と戦えるんです!」

 

イーブイも構える。

 

「ブイ!」

 

キクコは不敵に笑った。

 

「……いいねぇ」

 

ゲンガーが笑う。

 

「ゲンガァ……」

 

マサヒロとイーブイ。

 

キクコとゲンガー。

 

最後の一匹同士が向かい合う。

 

決着の時は――。

 

もう、すぐそこまで迫っていた。

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