ポケットモンスターブラウン   作:光宙

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4話 ハナダジム!VS美人三姉妹!

ハナダシティ。

 

おつきみやまを抜けたマサヒロたちは、ようやく街の中へ入っていた。

 

「着いたぁー!」

 

マサヒロは両手を大きく伸ばす。

 

「ハナダシティ!」

 

「ブイ!」

 

隣ではイーブイが嬉しそうに跳ねている。

 

「いやー、長かったな」

 

マサヒロは振り返る。

 

その後ろにはフシギダネとコクーン。

 

「フシギダネもお疲れ様!」

 

「ダネ!」

 

「コクーンも!」

 

「……」

 

コクーンはいつものように動かない。

 

「……お前、本当に生きてるよな?」

 

「ブイ」

 

「なんだよ、その反応」

 

イーブイが笑ったように鳴く。

 

「まあいいか」

 

マサヒロは苦笑する。

 

そして、街の奥へ視線を向けた。

 

「次は――」

 

ポケットから地図を取り出す。

 

「ハナダジム!」

 

「ブイ!」

 

「ダネ!」

 

マサヒロは拳を握る。

 

ニビジムで手に入れたグレーバッジ。

 

それは、マサヒロにとって初めてのジムバッジだった。

 

だからこそ。

 

「二個目も絶対取るぞ!」

 

「ブイ!」

 

「ダネ!」

 

「……」

 

コクーンも、ほんの少しだけ身体を揺らした。

 

「おっ、コクーンもやる気だな!」

 

「……」

 

「……気のせいか」

 

* * *

 

ハナダジム。

 

大きな水槽とプールが設置された、明るい雰囲気のジムだった。

 

「ここがハナダジムか……」

 

マサヒロは目を輝かせる。

 

「ニビジムとは全然違うな」

 

「ブイ」

 

「水タイプのジムなんだろ?」

 

「ブイ!」

 

マサヒロは頷く。

 

「だったら、フシギダネの出番だな!」

 

「ダネ!」

 

フシギダネが嬉しそうに鳴いた。

 

そのままジムの奥へ進んでいく。

 

「こんにちはー!」

 

マサヒロの声が響く。

 

すると。

 

「はーい!」

 

奥から三人の女性が現れた。

 

「挑戦者?」

 

「男の子じゃない」

 

「かわいい~!」

 

三人とも、どこか似た雰囲気をしている。

 

「俺はマサヒロ!」

 

マサヒロは胸を張る。

 

「ポケモントレーナーです! ジム戦をお願いします!」

 

「まあ、元気ね」

 

真ん中にいた女性が笑う。

 

「私はサクラ」

 

右にいた女性が続く。

 

「私はアヤメ」

 

左の女性も名乗る。

 

「私はボタン」

 

三人は顔を見合わせた。

 

「私たちはハナダジムの三姉妹よ」

 

「三姉妹……」

 

マサヒロは三人を見比べる。

 

「じゃあ、誰と戦えばいいんですか?」

 

「もちろん――」

 

サクラが笑う。

 

「私たち三人よ」

 

「え?」

 

マサヒロの目が丸くなる。

 

「三人?」

 

「そう」

 

アヤメが頷く。

 

「ハナダジムでは、三対三のバトルをするの」

 

「三対三……」

 

マサヒロは自分のポケモンを見る。

 

イーブイ。

 

フシギダネ。

 

コクーン。

 

「……ちょうど三匹いる」

 

マサヒロは笑った。

 

「望むところです!」

 

「ふふっ」

 

サクラが笑う。

 

「それじゃあ、始めましょうか」

 

* * *

 

「これより、ハナダジムのジム戦を開始します!」

 

審判が声を上げる。

 

「使用ポケモンは三匹ずつ!」

 

マサヒロはボールを握る。

 

「よし……!」

 

サクラたちも、それぞれモンスターボールを取り出した。

 

「最初は私ね」

 

アヤメが前へ出る。

 

「行って、トサキント!」

 

「トサー!」

 

水槽から勢いよくトサキントが飛び出す。

 

「よし!」

 

マサヒロもボールを投げる。

 

「行け、フシギダネ!」

 

「ダネ!」

 

最初のバトルが始まった。

 

「トサキント、みずでっぽう!」

 

「フシギダネ、避けろ!」

 

「ダネ!」

 

フシギダネが横へ飛ぶ。

 

水流が地面を濡らす。

 

「今だ! はっぱカッター!」

 

「ダネ!」

 

背中のつぼみから、鋭い葉が飛び出す。

 

「トサー!」

 

トサキントが水中へ飛び込んでかわした。

 

「水槽を使うのか!」

 

マサヒロは驚く。

 

トサキントは水槽の中を自由に泳ぎ回っている。

 

「なるほど……」

 

マサヒロは考える。

 

「だったら、出てきたところを狙う!」

 

トサキントが水面から飛び出した。

 

「今だ!」

 

「フシギダネ、つるのムチ!」

 

「ダネ!」

 

二本のツルが伸びる。

 

しかし。

 

「トサキント、かわして!」

 

トサキントが空中で身体を捻る。

 

「なっ!」

 

つるのムチが空を切った。

 

「まだだ!」

 

マサヒロは叫ぶ。

 

「フシギダネ、やどりぎのたね!」

 

「ダネ!」

 

口から種が飛び出す。

 

「トサー!?」

 

種がトサキントに絡みつく。

 

「よし!」

 

「トサキント、振り払って!」

 

トサキントが暴れる。

 

しかし、やどりぎのたねが身体に絡みつき、動きを少しずつ奪っていく。

 

「今度こそ!」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「はっぱカッター!」

 

「ダネ!」

 

無数の葉が飛ぶ。

 

トサキントは避けようとする。

 

だが、やどりぎのたねによって動きが鈍っていた。

 

「トサーッ!」

 

葉が次々と命中する。

 

トサキントが水面へ落ちた。

 

「トサキント、戦闘不能!」

 

「よし!」

 

マサヒロが拳を突き上げる。

 

「フシギダネ、やったな!」

 

「ダネ!」

 

アヤメは微笑む。

 

「なるほど。ちゃんと技を使い分けるのね」

 

「もちろん!」

 

マサヒロは胸を張る。

 

「次も勝つぞ!」

 

* * *

 

「次は私!」

 

ボタンが前へ出る。

 

「行って、タッツー!」

 

「シュー!」

 

小さなタッツーが姿を現した。

 

「フシギダネ、そのまま行けるか?」

 

「ダネ!」

 

フシギダネは元気よく返事をする。

 

「よし!」

 

「タッツー、みずでっぽう!」

 

「フシギダネ、避けろ!」

 

水流が飛んでくる。

 

フシギダネが横へ飛ぶ。

 

「今度は、はっぱカッター!」

 

「ダネ!」

 

しかし。

 

「タッツー、えんまく!」

 

「シュッ!」

 

黒い煙が広がる。

 

「しまった!」

 

一瞬で視界が奪われた。

 

「フシギダネ! どこだ!」

 

「ダネ!」

 

声だけが聞こえる。

 

「タッツー、みずでっぽう!」

 

「ダネッ!」

 

水流が直撃する。

 

「フシギダネ!」

 

煙の中からフシギダネが転がってくる。

 

「大丈夫か!?」

 

「ダネ……」

 

「立てるか?」

 

「ダネ!」

 

フシギダネが立ち上がる。

 

「よし!」

 

マサヒロは周囲を見る。

 

煙はまだ消えない。

 

「だったら……」

 

マサヒロは考える。

 

「やどりぎのたね!」

 

「ダネ!」

 

種が煙の中へ飛んでいく。

 

「シュッ!」

 

タッツーの鳴き声。

 

「当たった!」

 

マサヒロは喜ぶ。

 

「そのまま引っ張れ!」

 

やどりぎのたねがタッツーの身体へ絡みつく。

 

「タッツー、振り払って!」

 

タッツーが暴れる。

 

「フシギダネ、今だ!」

 

「ダネ!」

 

はっぱカッター。

 

しかし。

 

「シュッ!」

 

タッツーが煙の中を移動する。

 

葉が空を切る。

 

「くそっ……!」

 

その直後。

 

「みずでっぽう!」

 

「ダネッ!」

 

フシギダネが吹き飛ばされた。

 

「フシギダネ!」

 

「ダネ……!」

 

「もう一度、はっぱカッター!」

 

「ダネ!」

 

攻撃。

 

しかし、またかわされる。

 

「だったら、つるのムチ!」

 

「ダネ!」

 

ツルが伸びる。

 

だが、煙の中では狙いが定まらない。

 

「もう一度!」

 

「シュッ!」

 

タッツーの攻撃が直撃する。

 

フシギダネが地面へ倒れた。

 

「フシギダネ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「立て!」

 

「ダネ……」

 

フシギダネはゆっくりと立ち上がった。

 

身体は傷だらけ。

 

それでも、目だけは諦めていない。

 

「……そうだ」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「俺たちは、まだ負けてない!」

 

「ダネ!」

 

その瞬間だった。

 

フシギダネの身体が光り始める。

 

「え?」

 

「ダネ……!」

 

眩い光が広がる。

 

フシギダネの身体が大きくなっていく。

 

背中のつぼみも開いていく。

 

「な、なんだ!?」

 

光が収まる。

 

そこにいたのは――。

 

「……フシギソウ」

 

マサヒロは目を見開いた。

 

「フシギダネが……進化した!」

 

「フシギソウ!」

 

新たな姿となったフシギソウが、力強く鳴く。

 

「すごい……!」

 

マサヒロは嬉しそうに笑った。

 

「フシギソウ! 行くぞ!」

 

「ソウ!」

 

「タッツー、みずでっぽう!」

 

「フシギソウ、避けろ!」

 

フシギソウが横へ飛ぶ。

 

「今だ! はっぱカッター!」

 

「ソウ!」

 

大量の葉が飛んでいく。

 

「タッツー!」

 

タッツーに命中。

 

「もう一度!」

 

さらに葉が飛ぶ。

 

「タッツー、戦闘不能!」

 

「やった!」

 

マサヒロが拳を握る。

 

「勝った!」

 

フシギソウも嬉しそうに鳴いた。

 

「ソウ!」

 

「すごいぞ、フシギソウ!」

 

マサヒロが駆け寄る。

 

「ダネ……じゃないな」

 

「ソウ!」

 

「ははっ!」

 

マサヒロは笑った。

 

「これからもよろしくな!」

 

「ソウ!」

 

* * *

 

「これで最後ね」

 

サクラが前へ出る。

 

「行って、スターミー!」

 

「スタッ!」

 

巨大な水槽の中央から、スターミーが現れた。

 

「スターミー……」

 

マサヒロは息を呑む。

 

今までの二匹とは明らかに違う。

 

ただ立っているだけなのに、強い圧力を感じる。

 

「フシギソウ!」

 

「ソウ!」

 

「行くぞ!」

 

「スターミー、サイケこうせん!」

 

「フシギソウ、避けろ!」

 

フシギソウが飛び退く。

 

しかし。

 

「速い……!」

 

スターミーが水槽を利用して移動する。

 

「はっぱカッター!」

 

「ソウ!」

 

葉が飛ぶ。

 

だが、スターミーは水中へ潜ってかわした。

 

「なら、つるのムチ!」

 

「ソウ!」

 

ツルが水面へ伸びる。

 

「スターミー!」

 

サクラが指示を出す。

 

スターミーが水中から飛び出し、ツルをかわす。

 

そして――。

 

「サイケこうせん!」

 

「ソウッ!」

 

光線が直撃。

 

フシギソウが吹き飛ばされた。

 

「フシギソウ!」

 

「ソウ……」

 

「まだだ!」

 

マサヒロは叫ぶ。

 

「はっぱカッター!」

 

「ソウ!」

 

攻撃。

 

しかし、またかわされる。

 

「そんな……」

 

何度攻撃しても当たらない。

 

スターミーは強かった。

 

そして。

 

「スターミー、みずでっぽう!」

 

「ソウ!」

 

水流が直撃する。

 

フシギソウが倒れた。

 

「フシギソウ、戦闘不能!」

 

「……!」

 

マサヒロは息を呑む。

 

フシギソウが、ゆっくりとボールへ戻っていく。

 

「……負けた」

 

残るポケモンは二匹。

 

イーブイとコクーン。

 

マサヒロはイーブイを見る。

 

「イーブイ……」

 

「ブイ!」

 

イーブイが前へ出た。

 

「……よし」

 

マサヒロはボールを握る。

 

「行くぞ!」

 

* * *

 

「イーブイ!」

 

「ブイ!」

 

イーブイがフィールドへ飛び出す。

 

「スターミー、いくわよ!」

 

「スタッ!」

 

「イーブイ、にどげり!」

 

「ブイ!」

 

イーブイが一気に距離を詰める。

 

「スターミー、かわして!」

 

スターミーが横へ移動。

 

しかし。

 

「追え!」

 

イーブイが方向を変える。

 

「にどげり!」

 

二本の後ろ足がスターミーを蹴り飛ばす。

 

「スタッ!」

 

「やった!」

 

マサヒロは喜ぶ。

 

「続けて、かみつく!」

 

「ブイ!」

 

イーブイが飛びかかる。

 

しかし。

 

「スターミー!」

 

スターミーが身体を回転させる。

 

イーブイの攻撃をかわした。

 

「しまった!」

 

「みずでっぽう!」

 

「ブイッ!」

 

イーブイが吹き飛ばされる。

 

「イーブイ!」

 

それでも立ち上がる。

 

「もう一度、にどげり!」

 

「ブイ!」

 

接近。

 

攻撃。

 

しかし、スターミーがかわす。

 

「かみつく!」

 

またかわされる。

 

「速い……!」

 

マサヒロは歯を食いしばる。

 

イーブイの攻撃が当たらない。

 

それどころか。

 

「サイケこうせん!」

 

「ブイッ!」

 

直撃。

 

「イーブイ!」

 

イーブイが地面を転がる。

 

「大丈夫か!?」

 

「ブイ……!」

 

イーブイは立ち上がる。

 

「よし……!」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「だったら……!」

 

エボルブラスト。

 

それしかない。

 

しかし。

 

マサヒロは一瞬、ためらった。

 

これまでのバトルでエボルブラストを使った後のイーブイが、ひどく疲れていたことを思い出す。

 

「……」

 

イーブイを見る。

 

呼吸が荒い。

 

「イーブイ……」

 

「ブイ!」

 

それでもイーブイは頷く。

 

「……分かった」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「でも、これで決めるぞ!」

 

「ブイ!」

 

「エボルブラスト!」

 

イーブイの尻尾が光る。

 

白いエネルギーが集まっていく。

 

そして。

 

「ブイイイイイ!」

 

ドォンッ!

 

凄まじい衝撃波が放たれる。

 

「スターミー!」

 

衝撃波がスターミーを直撃する。

 

「スタッ……!」

 

スターミーの身体が大きく吹き飛ぶ。

 

「やった……!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

しかし。

 

「……スターミー!」

 

スターミーが立ち上がった。

 

「嘘だろ……」

 

マサヒロの顔が固まる。

 

エボルブラストは確かに効いている。

 

それなのに。

 

スターミーはまだ戦える。

 

「イーブイ……」

 

「ブイ……」

 

イーブイの身体がふらつく。

 

「もう一度……!」

 

マサヒロは言いかける。

 

しかし。

 

イーブイは動かない。

 

「……」

 

エボルブラストを連続で使えば、イーブイの身体が耐えられない。

 

それはマサヒロにも分かっていた。

 

「……そうだよな」

 

マサヒロは歯を食いしばる。

 

「無理させちゃ駄目だ」

 

「ブイ……」

 

その瞬間。

 

「スターミー、みずでっぽう!」

 

「ブイッ!」

 

水流がイーブイを直撃する。

 

「イーブイ!」

 

イーブイが地面へ倒れた。

 

「立て!」

 

「ブイ……」

 

イーブイは立ち上がろうとする。

 

しかし、足に力が入らない。

 

「イーブイ……!」

 

そして。

 

「イーブイ、戦闘不能!」

 

「……」

 

マサヒロは動かなかった。

 

初めてだった。

 

イーブイが負けた。

 

今までどんな相手でも。

 

どんなに苦しい戦いでも。

 

最後にはエボルブラストで勝ってきた。

 

そのイーブイが。

 

「……負けた」

 

マサヒロは拳を握る。

 

悔しかった。

 

「俺たちの……負けだ」

 

サクラは静かに頷く。

 

「あなたたちは強いわ」

 

「……」

 

「でも、まだスターミーには届かないみたいね」

 

「……そうです」

 

マサヒロは俯いた。

 

そのとき。

 

「……?」

 

後ろから、小さな音が聞こえた。

 

「カサッ」

 

マサヒロが振り返る。

 

そこにはコクーンがいた。

 

「コクーン?」

 

いつも動かないコクーン。

 

その身体が――。

 

淡く光っていた。

 

「え……?」

 

光がどんどん強くなる。

 

「コクーン!」

 

「ブイ!?」

 

倒れているイーブイも顔を上げる。

 

光の中で、コクーンの身体が変化していく。

 

殻が割れる。

 

二本の腕。

 

大きな針。

 

羽。

 

そして――。

 

光が消えた。

 

そこに立っていたのは。

 

「スピアー……!」

 

マサヒロは目を見開く。

 

「コクーンが……スピアーに進化した!」

 

「スピアー!」

 

スピアーが力強く鳴く。

 

「すごい……!」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「スピアー!」

 

「スピアー!」

 

「……お前も戦ってくれるのか?」

 

「スピアー!」

 

マサヒロは笑った。

 

「よし!」

 

最後の一匹。

 

まだ戦える仲間がいる。

 

「スピアー!」

 

* * *

 

「スターミー、いくわよ!」

 

「スタッ!」

 

スターミーが攻撃を仕掛ける。

 

「スピアー、避けろ!」

 

「スピアー!」

 

スピアーが横へ飛ぶ。

 

「速い!」

 

マサヒロが驚く。

 

さっきまでのコクーンとはまるで違う。

 

「スターミー、みずでっぽう!」

 

「避けろ!」

 

スピアーが跳ぶ。

 

水流が地面を叩く。

 

「スピアー、こうそくいどう!」

 

「スピアー!」

 

一瞬。

 

スピアーの姿が消えたように見えた。

 

「えっ!?」

 

次の瞬間。

 

スターミーの横を通り抜ける。

 

「速すぎる……!」

 

マサヒロの目が輝く。

 

「もう一回!」

 

「スピアー!」

 

再び高速で移動。

 

スターミーが追いかける。

 

しかし、スピアーの動きを捉えられない。

 

「スターミー、サイケこうせん!」

 

光線が放たれる。

 

「スピアー、こうそくいどう!」

 

スピアーがかわす。

 

「すごい!」

 

マサヒロは叫ぶ。

 

「この速さなら……!」

 

スターミーが振り返る。

 

「スピアー、後ろだ!」

 

「スピアー!」

 

スピアーが背後へ回り込む。

 

「今だ!」

 

マサヒロは拳を突き出す。

 

「ダブルニードル!」

 

「スピアー!」

 

両腕の針がスターミーへ突き出される。

 

ドドッ!

 

「スタッ!」

 

スターミーが吹き飛ぶ。

 

「まだだ!」

 

スピアーが追いかける。

 

「こうそくいどう!」

 

一瞬で距離を詰める。

 

「ダブルニードル!」

 

ドドッ!

 

「スターミー!」

 

スターミーが地面へ落ちる。

 

「立てるか!」

 

サクラが叫ぶ。

 

スターミーが立ち上がろうとする。

 

だが。

 

その身体は動かなかった。

 

「スターミー、戦闘不能!」

 

「……」

 

一瞬の静寂。

 

そして。

 

「勝者、挑戦者マサヒロ!」

 

「……」

 

マサヒロは呆然としていた。

 

「勝った……?」

 

「スピアー!」

 

スピアーが嬉しそうに鳴く。

 

「やったあああああ!」

 

マサヒロが飛び上がる。

 

「勝ったぞ、スピアー!」

 

「スピアー!」

 

「イーブイ! フシギソウ!」

 

マサヒロは倒れている二匹を見る。

 

「みんなのおかげだ!」

 

「ブイ……」

 

「ソウ……」

 

二匹も嬉しそうに鳴いた。

 

サクラは笑顔でマサヒロへ近づく。

 

「おめでとう」

 

「はい!」

 

「あなたたちの勝ちよ」

 

サクラは一つのバッジを取り出す。

 

「これを受け取って」

 

「これは……!」

 

マサヒロの目が輝く。

 

青いバッジ。

 

「ハナダバッジよ」

 

「ハナダバッジ……!」

 

マサヒロは両手で受け取った。

 

「やったぁ!」

 

バッジを高く掲げる。

 

「二個目だ!」

 

「ブイ!」

 

「ソウ!」

 

「スピアー!」

 

三匹の声が響く。

 

「これで二つ!」

 

マサヒロはバッジを見つめる。

 

「あと六個……!」

 

拳を握る。

 

「絶対に全部集める!」

 

そして。

 

「待ってろよ、シゲル!」

 

マサヒロは笑った。

 

「俺はもっと強くなるからな!」

 

* * *

 

ハナダジムを出たマサヒロたち。

 

街の夕日が、建物を赤く染めていた。

 

「今日は疲れたな……」

 

マサヒロは伸びをする。

 

「イーブイ、大丈夫か?」

 

「ブイ……」

 

まだ少し疲れているようだった。

 

「今日はゆっくり休もうな」

 

マサヒロはイーブイの頭を撫でる。

 

「フシギソウもな」

 

「ソウ!」

 

そして。

 

「スピアー!」

 

「スピアー!」

 

マサヒロは笑った。

 

「お前、すごかったぞ!」

 

スピアーは嬉しそうに羽を動かす。

 

「コクーンのときは全然動かなかったのに……」

 

「スピアー!」

 

「これから頼りにしてるからな!」

 

「スピアー!」

 

マサヒロは三匹を見渡す。

 

今日。

 

フシギダネはフシギソウへ進化した。

 

コクーンはスピアーへ進化した。

 

そして。

 

イーブイは――初めて負けた。

 

「……」

 

マサヒロはイーブイを見る。

 

「イーブイ」

 

「ブイ?」

 

「今日は負けちゃったな」

 

「ブイ……」

 

イーブイが少し寂しそうに俯く。

 

「でもさ」

 

マサヒロは笑う。

 

「負けたからって、終わりじゃないよな」

 

「……ブイ」

 

「次は勝とう」

 

マサヒロは拳を差し出す。

 

「一緒にもっと強くなろうぜ」

 

イーブイが、その拳へ小さな前足を乗せる。

 

「ブイ!」

 

「よし!」

 

マサヒロは笑った。

 

「次のジムも、絶対勝つ!」

 

少年は歩き出す。

 

その後ろを。

 

イーブイ。

 

フシギソウ。

 

スピアー。

 

三匹のポケモンがついていく。

 

二つ目のジムバッジを手に入れたマサヒロ。

 

カントーチャンピオンへの道は――。

 

まだ始まったばかりだった。

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