ハナダシティ。
おつきみやまを抜けたマサヒロたちは、ようやく街の中へ入っていた。
「着いたぁー!」
マサヒロは両手を大きく伸ばす。
「ハナダシティ!」
「ブイ!」
隣ではイーブイが嬉しそうに跳ねている。
「いやー、長かったな」
マサヒロは振り返る。
その後ろにはフシギダネとコクーン。
「フシギダネもお疲れ様!」
「ダネ!」
「コクーンも!」
「……」
コクーンはいつものように動かない。
「……お前、本当に生きてるよな?」
「ブイ」
「なんだよ、その反応」
イーブイが笑ったように鳴く。
「まあいいか」
マサヒロは苦笑する。
そして、街の奥へ視線を向けた。
「次は――」
ポケットから地図を取り出す。
「ハナダジム!」
「ブイ!」
「ダネ!」
マサヒロは拳を握る。
ニビジムで手に入れたグレーバッジ。
それは、マサヒロにとって初めてのジムバッジだった。
だからこそ。
「二個目も絶対取るぞ!」
「ブイ!」
「ダネ!」
「……」
コクーンも、ほんの少しだけ身体を揺らした。
「おっ、コクーンもやる気だな!」
「……」
「……気のせいか」
* * *
ハナダジム。
大きな水槽とプールが設置された、明るい雰囲気のジムだった。
「ここがハナダジムか……」
マサヒロは目を輝かせる。
「ニビジムとは全然違うな」
「ブイ」
「水タイプのジムなんだろ?」
「ブイ!」
マサヒロは頷く。
「だったら、フシギダネの出番だな!」
「ダネ!」
フシギダネが嬉しそうに鳴いた。
そのままジムの奥へ進んでいく。
「こんにちはー!」
マサヒロの声が響く。
すると。
「はーい!」
奥から三人の女性が現れた。
「挑戦者?」
「男の子じゃない」
「かわいい~!」
三人とも、どこか似た雰囲気をしている。
「俺はマサヒロ!」
マサヒロは胸を張る。
「ポケモントレーナーです! ジム戦をお願いします!」
「まあ、元気ね」
真ん中にいた女性が笑う。
「私はサクラ」
右にいた女性が続く。
「私はアヤメ」
左の女性も名乗る。
「私はボタン」
三人は顔を見合わせた。
「私たちはハナダジムの三姉妹よ」
「三姉妹……」
マサヒロは三人を見比べる。
「じゃあ、誰と戦えばいいんですか?」
「もちろん――」
サクラが笑う。
「私たち三人よ」
「え?」
マサヒロの目が丸くなる。
「三人?」
「そう」
アヤメが頷く。
「ハナダジムでは、三対三のバトルをするの」
「三対三……」
マサヒロは自分のポケモンを見る。
イーブイ。
フシギダネ。
コクーン。
「……ちょうど三匹いる」
マサヒロは笑った。
「望むところです!」
「ふふっ」
サクラが笑う。
「それじゃあ、始めましょうか」
* * *
「これより、ハナダジムのジム戦を開始します!」
審判が声を上げる。
「使用ポケモンは三匹ずつ!」
マサヒロはボールを握る。
「よし……!」
サクラたちも、それぞれモンスターボールを取り出した。
「最初は私ね」
アヤメが前へ出る。
「行って、トサキント!」
「トサー!」
水槽から勢いよくトサキントが飛び出す。
「よし!」
マサヒロもボールを投げる。
「行け、フシギダネ!」
「ダネ!」
最初のバトルが始まった。
「トサキント、みずでっぽう!」
「フシギダネ、避けろ!」
「ダネ!」
フシギダネが横へ飛ぶ。
水流が地面を濡らす。
「今だ! はっぱカッター!」
「ダネ!」
背中のつぼみから、鋭い葉が飛び出す。
「トサー!」
トサキントが水中へ飛び込んでかわした。
「水槽を使うのか!」
マサヒロは驚く。
トサキントは水槽の中を自由に泳ぎ回っている。
「なるほど……」
マサヒロは考える。
「だったら、出てきたところを狙う!」
トサキントが水面から飛び出した。
「今だ!」
「フシギダネ、つるのムチ!」
「ダネ!」
二本のツルが伸びる。
しかし。
「トサキント、かわして!」
トサキントが空中で身体を捻る。
「なっ!」
つるのムチが空を切った。
「まだだ!」
マサヒロは叫ぶ。
「フシギダネ、やどりぎのたね!」
「ダネ!」
口から種が飛び出す。
「トサー!?」
種がトサキントに絡みつく。
「よし!」
「トサキント、振り払って!」
トサキントが暴れる。
しかし、やどりぎのたねが身体に絡みつき、動きを少しずつ奪っていく。
「今度こそ!」
マサヒロは拳を握る。
「はっぱカッター!」
「ダネ!」
無数の葉が飛ぶ。
トサキントは避けようとする。
だが、やどりぎのたねによって動きが鈍っていた。
「トサーッ!」
葉が次々と命中する。
トサキントが水面へ落ちた。
「トサキント、戦闘不能!」
「よし!」
マサヒロが拳を突き上げる。
「フシギダネ、やったな!」
「ダネ!」
アヤメは微笑む。
「なるほど。ちゃんと技を使い分けるのね」
「もちろん!」
マサヒロは胸を張る。
「次も勝つぞ!」
* * *
「次は私!」
ボタンが前へ出る。
「行って、タッツー!」
「シュー!」
小さなタッツーが姿を現した。
「フシギダネ、そのまま行けるか?」
「ダネ!」
フシギダネは元気よく返事をする。
「よし!」
「タッツー、みずでっぽう!」
「フシギダネ、避けろ!」
水流が飛んでくる。
フシギダネが横へ飛ぶ。
「今度は、はっぱカッター!」
「ダネ!」
しかし。
「タッツー、えんまく!」
「シュッ!」
黒い煙が広がる。
「しまった!」
一瞬で視界が奪われた。
「フシギダネ! どこだ!」
「ダネ!」
声だけが聞こえる。
「タッツー、みずでっぽう!」
「ダネッ!」
水流が直撃する。
「フシギダネ!」
煙の中からフシギダネが転がってくる。
「大丈夫か!?」
「ダネ……」
「立てるか?」
「ダネ!」
フシギダネが立ち上がる。
「よし!」
マサヒロは周囲を見る。
煙はまだ消えない。
「だったら……」
マサヒロは考える。
「やどりぎのたね!」
「ダネ!」
種が煙の中へ飛んでいく。
「シュッ!」
タッツーの鳴き声。
「当たった!」
マサヒロは喜ぶ。
「そのまま引っ張れ!」
やどりぎのたねがタッツーの身体へ絡みつく。
「タッツー、振り払って!」
タッツーが暴れる。
「フシギダネ、今だ!」
「ダネ!」
はっぱカッター。
しかし。
「シュッ!」
タッツーが煙の中を移動する。
葉が空を切る。
「くそっ……!」
その直後。
「みずでっぽう!」
「ダネッ!」
フシギダネが吹き飛ばされた。
「フシギダネ!」
「ダネ……!」
「もう一度、はっぱカッター!」
「ダネ!」
攻撃。
しかし、またかわされる。
「だったら、つるのムチ!」
「ダネ!」
ツルが伸びる。
だが、煙の中では狙いが定まらない。
「もう一度!」
「シュッ!」
タッツーの攻撃が直撃する。
フシギダネが地面へ倒れた。
「フシギダネ!」
マサヒロが叫ぶ。
「立て!」
「ダネ……」
フシギダネはゆっくりと立ち上がった。
身体は傷だらけ。
それでも、目だけは諦めていない。
「……そうだ」
マサヒロは拳を握る。
「俺たちは、まだ負けてない!」
「ダネ!」
その瞬間だった。
フシギダネの身体が光り始める。
「え?」
「ダネ……!」
眩い光が広がる。
フシギダネの身体が大きくなっていく。
背中のつぼみも開いていく。
「な、なんだ!?」
光が収まる。
そこにいたのは――。
「……フシギソウ」
マサヒロは目を見開いた。
「フシギダネが……進化した!」
「フシギソウ!」
新たな姿となったフシギソウが、力強く鳴く。
「すごい……!」
マサヒロは嬉しそうに笑った。
「フシギソウ! 行くぞ!」
「ソウ!」
「タッツー、みずでっぽう!」
「フシギソウ、避けろ!」
フシギソウが横へ飛ぶ。
「今だ! はっぱカッター!」
「ソウ!」
大量の葉が飛んでいく。
「タッツー!」
タッツーに命中。
「もう一度!」
さらに葉が飛ぶ。
「タッツー、戦闘不能!」
「やった!」
マサヒロが拳を握る。
「勝った!」
フシギソウも嬉しそうに鳴いた。
「ソウ!」
「すごいぞ、フシギソウ!」
マサヒロが駆け寄る。
「ダネ……じゃないな」
「ソウ!」
「ははっ!」
マサヒロは笑った。
「これからもよろしくな!」
「ソウ!」
* * *
「これで最後ね」
サクラが前へ出る。
「行って、スターミー!」
「スタッ!」
巨大な水槽の中央から、スターミーが現れた。
「スターミー……」
マサヒロは息を呑む。
今までの二匹とは明らかに違う。
ただ立っているだけなのに、強い圧力を感じる。
「フシギソウ!」
「ソウ!」
「行くぞ!」
「スターミー、サイケこうせん!」
「フシギソウ、避けろ!」
フシギソウが飛び退く。
しかし。
「速い……!」
スターミーが水槽を利用して移動する。
「はっぱカッター!」
「ソウ!」
葉が飛ぶ。
だが、スターミーは水中へ潜ってかわした。
「なら、つるのムチ!」
「ソウ!」
ツルが水面へ伸びる。
「スターミー!」
サクラが指示を出す。
スターミーが水中から飛び出し、ツルをかわす。
そして――。
「サイケこうせん!」
「ソウッ!」
光線が直撃。
フシギソウが吹き飛ばされた。
「フシギソウ!」
「ソウ……」
「まだだ!」
マサヒロは叫ぶ。
「はっぱカッター!」
「ソウ!」
攻撃。
しかし、またかわされる。
「そんな……」
何度攻撃しても当たらない。
スターミーは強かった。
そして。
「スターミー、みずでっぽう!」
「ソウ!」
水流が直撃する。
フシギソウが倒れた。
「フシギソウ、戦闘不能!」
「……!」
マサヒロは息を呑む。
フシギソウが、ゆっくりとボールへ戻っていく。
「……負けた」
残るポケモンは二匹。
イーブイとコクーン。
マサヒロはイーブイを見る。
「イーブイ……」
「ブイ!」
イーブイが前へ出た。
「……よし」
マサヒロはボールを握る。
「行くぞ!」
* * *
「イーブイ!」
「ブイ!」
イーブイがフィールドへ飛び出す。
「スターミー、いくわよ!」
「スタッ!」
「イーブイ、にどげり!」
「ブイ!」
イーブイが一気に距離を詰める。
「スターミー、かわして!」
スターミーが横へ移動。
しかし。
「追え!」
イーブイが方向を変える。
「にどげり!」
二本の後ろ足がスターミーを蹴り飛ばす。
「スタッ!」
「やった!」
マサヒロは喜ぶ。
「続けて、かみつく!」
「ブイ!」
イーブイが飛びかかる。
しかし。
「スターミー!」
スターミーが身体を回転させる。
イーブイの攻撃をかわした。
「しまった!」
「みずでっぽう!」
「ブイッ!」
イーブイが吹き飛ばされる。
「イーブイ!」
それでも立ち上がる。
「もう一度、にどげり!」
「ブイ!」
接近。
攻撃。
しかし、スターミーがかわす。
「かみつく!」
またかわされる。
「速い……!」
マサヒロは歯を食いしばる。
イーブイの攻撃が当たらない。
それどころか。
「サイケこうせん!」
「ブイッ!」
直撃。
「イーブイ!」
イーブイが地面を転がる。
「大丈夫か!?」
「ブイ……!」
イーブイは立ち上がる。
「よし……!」
マサヒロは拳を握る。
「だったら……!」
エボルブラスト。
それしかない。
しかし。
マサヒロは一瞬、ためらった。
これまでのバトルでエボルブラストを使った後のイーブイが、ひどく疲れていたことを思い出す。
「……」
イーブイを見る。
呼吸が荒い。
「イーブイ……」
「ブイ!」
それでもイーブイは頷く。
「……分かった」
マサヒロは拳を握る。
「でも、これで決めるぞ!」
「ブイ!」
「エボルブラスト!」
イーブイの尻尾が光る。
白いエネルギーが集まっていく。
そして。
「ブイイイイイ!」
ドォンッ!
凄まじい衝撃波が放たれる。
「スターミー!」
衝撃波がスターミーを直撃する。
「スタッ……!」
スターミーの身体が大きく吹き飛ぶ。
「やった……!」
マサヒロが叫ぶ。
しかし。
「……スターミー!」
スターミーが立ち上がった。
「嘘だろ……」
マサヒロの顔が固まる。
エボルブラストは確かに効いている。
それなのに。
スターミーはまだ戦える。
「イーブイ……」
「ブイ……」
イーブイの身体がふらつく。
「もう一度……!」
マサヒロは言いかける。
しかし。
イーブイは動かない。
「……」
エボルブラストを連続で使えば、イーブイの身体が耐えられない。
それはマサヒロにも分かっていた。
「……そうだよな」
マサヒロは歯を食いしばる。
「無理させちゃ駄目だ」
「ブイ……」
その瞬間。
「スターミー、みずでっぽう!」
「ブイッ!」
水流がイーブイを直撃する。
「イーブイ!」
イーブイが地面へ倒れた。
「立て!」
「ブイ……」
イーブイは立ち上がろうとする。
しかし、足に力が入らない。
「イーブイ……!」
そして。
「イーブイ、戦闘不能!」
「……」
マサヒロは動かなかった。
初めてだった。
イーブイが負けた。
今までどんな相手でも。
どんなに苦しい戦いでも。
最後にはエボルブラストで勝ってきた。
そのイーブイが。
「……負けた」
マサヒロは拳を握る。
悔しかった。
「俺たちの……負けだ」
サクラは静かに頷く。
「あなたたちは強いわ」
「……」
「でも、まだスターミーには届かないみたいね」
「……そうです」
マサヒロは俯いた。
そのとき。
「……?」
後ろから、小さな音が聞こえた。
「カサッ」
マサヒロが振り返る。
そこにはコクーンがいた。
「コクーン?」
いつも動かないコクーン。
その身体が――。
淡く光っていた。
「え……?」
光がどんどん強くなる。
「コクーン!」
「ブイ!?」
倒れているイーブイも顔を上げる。
光の中で、コクーンの身体が変化していく。
殻が割れる。
二本の腕。
大きな針。
羽。
そして――。
光が消えた。
そこに立っていたのは。
「スピアー……!」
マサヒロは目を見開く。
「コクーンが……スピアーに進化した!」
「スピアー!」
スピアーが力強く鳴く。
「すごい……!」
マサヒロは拳を握る。
「スピアー!」
「スピアー!」
「……お前も戦ってくれるのか?」
「スピアー!」
マサヒロは笑った。
「よし!」
最後の一匹。
まだ戦える仲間がいる。
「スピアー!」
* * *
「スターミー、いくわよ!」
「スタッ!」
スターミーが攻撃を仕掛ける。
「スピアー、避けろ!」
「スピアー!」
スピアーが横へ飛ぶ。
「速い!」
マサヒロが驚く。
さっきまでのコクーンとはまるで違う。
「スターミー、みずでっぽう!」
「避けろ!」
スピアーが跳ぶ。
水流が地面を叩く。
「スピアー、こうそくいどう!」
「スピアー!」
一瞬。
スピアーの姿が消えたように見えた。
「えっ!?」
次の瞬間。
スターミーの横を通り抜ける。
「速すぎる……!」
マサヒロの目が輝く。
「もう一回!」
「スピアー!」
再び高速で移動。
スターミーが追いかける。
しかし、スピアーの動きを捉えられない。
「スターミー、サイケこうせん!」
光線が放たれる。
「スピアー、こうそくいどう!」
スピアーがかわす。
「すごい!」
マサヒロは叫ぶ。
「この速さなら……!」
スターミーが振り返る。
「スピアー、後ろだ!」
「スピアー!」
スピアーが背後へ回り込む。
「今だ!」
マサヒロは拳を突き出す。
「ダブルニードル!」
「スピアー!」
両腕の針がスターミーへ突き出される。
ドドッ!
「スタッ!」
スターミーが吹き飛ぶ。
「まだだ!」
スピアーが追いかける。
「こうそくいどう!」
一瞬で距離を詰める。
「ダブルニードル!」
ドドッ!
「スターミー!」
スターミーが地面へ落ちる。
「立てるか!」
サクラが叫ぶ。
スターミーが立ち上がろうとする。
だが。
その身体は動かなかった。
「スターミー、戦闘不能!」
「……」
一瞬の静寂。
そして。
「勝者、挑戦者マサヒロ!」
「……」
マサヒロは呆然としていた。
「勝った……?」
「スピアー!」
スピアーが嬉しそうに鳴く。
「やったあああああ!」
マサヒロが飛び上がる。
「勝ったぞ、スピアー!」
「スピアー!」
「イーブイ! フシギソウ!」
マサヒロは倒れている二匹を見る。
「みんなのおかげだ!」
「ブイ……」
「ソウ……」
二匹も嬉しそうに鳴いた。
サクラは笑顔でマサヒロへ近づく。
「おめでとう」
「はい!」
「あなたたちの勝ちよ」
サクラは一つのバッジを取り出す。
「これを受け取って」
「これは……!」
マサヒロの目が輝く。
青いバッジ。
「ハナダバッジよ」
「ハナダバッジ……!」
マサヒロは両手で受け取った。
「やったぁ!」
バッジを高く掲げる。
「二個目だ!」
「ブイ!」
「ソウ!」
「スピアー!」
三匹の声が響く。
「これで二つ!」
マサヒロはバッジを見つめる。
「あと六個……!」
拳を握る。
「絶対に全部集める!」
そして。
「待ってろよ、シゲル!」
マサヒロは笑った。
「俺はもっと強くなるからな!」
* * *
ハナダジムを出たマサヒロたち。
街の夕日が、建物を赤く染めていた。
「今日は疲れたな……」
マサヒロは伸びをする。
「イーブイ、大丈夫か?」
「ブイ……」
まだ少し疲れているようだった。
「今日はゆっくり休もうな」
マサヒロはイーブイの頭を撫でる。
「フシギソウもな」
「ソウ!」
そして。
「スピアー!」
「スピアー!」
マサヒロは笑った。
「お前、すごかったぞ!」
スピアーは嬉しそうに羽を動かす。
「コクーンのときは全然動かなかったのに……」
「スピアー!」
「これから頼りにしてるからな!」
「スピアー!」
マサヒロは三匹を見渡す。
今日。
フシギダネはフシギソウへ進化した。
コクーンはスピアーへ進化した。
そして。
イーブイは――初めて負けた。
「……」
マサヒロはイーブイを見る。
「イーブイ」
「ブイ?」
「今日は負けちゃったな」
「ブイ……」
イーブイが少し寂しそうに俯く。
「でもさ」
マサヒロは笑う。
「負けたからって、終わりじゃないよな」
「……ブイ」
「次は勝とう」
マサヒロは拳を差し出す。
「一緒にもっと強くなろうぜ」
イーブイが、その拳へ小さな前足を乗せる。
「ブイ!」
「よし!」
マサヒロは笑った。
「次のジムも、絶対勝つ!」
少年は歩き出す。
その後ろを。
イーブイ。
フシギソウ。
スピアー。
三匹のポケモンがついていく。
二つ目のジムバッジを手に入れたマサヒロ。
カントーチャンピオンへの道は――。
まだ始まったばかりだった。