ポケットモンスターブラウン   作:光宙

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40話 限界を超えろ!メガゲンガーとの最終決戦!

マサヒロとイーブイ。

 

キクコとゲンガー。

 

最後の一匹同士が、野外バトルフィールドの中央で向かい合っていた。

 

「決着の時は、もうすぐそこまで迫っているねぇ」

 

キクコは不敵な笑みを浮かべる。

 

マサヒロは、改めてキクコを見つめた。

 

「キクコさん」

 

「なんだい?」

 

「俺みたいな新米トレーナーに、ここまで全力で戦ってくれて……ありがとうございます」

 

マサヒロは深く頭を下げる。

 

「ギャラドスも、スピアーも、ウインディも……みんな本気のあなたと戦えたからこそ、ここまで来られました」

 

キクコは目を細める。

 

「新米トレーナー?」

 

「はい」

 

「お前さんが?」

 

キクコは鼻で笑った。

 

「何を言ってるんだい。お前さんはもう、いっぱしのトレーナーさ」

 

「えっ?」

 

「六匹のポケモンを率いて、ここまで勝ち上がってきたんだろう?」

 

キクコは倒れたポケモンたちを見る。

 

「仲間を信じて、最後まで戦い抜いている」

 

「……」

 

「そんな奴が、新米だなんて謙遜する必要はないよ」

 

マサヒロは驚いたように目を見開く。

 

「俺が……いっぱしのトレーナー」

 

「そうさ」

 

キクコは杖を地面に突く。

 

「だからこそ、アタシも遠慮はしない」

 

「望むところです!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「イーブイ、行くぞ!」

 

「ブイ!」

 

「ゲンガー、迎え撃ちな!」

 

「ゲンガァ!」

 

二匹が同時に駆け出す。

 

「イーブイ、でんこうせっか!」

 

「ブイ!」

 

イーブイが一瞬で距離を詰める。

 

「ゲンガー、シャドーボール!」

 

「ゲンガァ!」

 

黒い球体が放たれる。

 

「右へ避けろ!」

 

イーブイが身をひねり、シャドーボールをかわす。

 

「そのまま、スピードスター!」

 

「ブイ!」

 

無数の星がゲンガーへ飛んでいく。

 

「ゲンガー、あくのはどう!」

 

「ゲンガァ!」

 

黒い波動が広がり、星を次々と打ち消していく。

 

「まだだ!」

 

マサヒロは叫ぶ。

 

「イーブイ、上へ跳べ!」

 

「ブイ!」

 

イーブイが波動を飛び越える。

 

「今だ、エボルブラスト!」

 

「ブイイイイ!」

 

イーブイの身体から、虹色の光が放たれる。

 

「ゲンガー、サイコキネシス!」

 

「ゲンガァ!」

 

ゲンガーの目が光る。

 

しかし、エボルブラストの勢いは止まらない。

 

二つの技がぶつかり合い、激しい衝撃がフィールドを揺らす。

 

「押し切れ、イーブイ!」

 

「ブイ!」

 

イーブイがさらに力を込める。

 

「ゲンガー!」

 

ゲンガーが少しずつ押されていく。

 

「よし!」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「このままいけば勝てる!」

 

イーブイは攻撃を続ける。

 

「でんこうせっか!」

 

「ブイ!」

 

「ゲンガー、避けな!」

 

ゲンガーが横へ飛ぶ。

 

しかし、イーブイはすぐに方向を変えた。

 

「そこだ!」

 

「ブイ!」

 

イーブイのアイアンテールがゲンガーに直撃する。

 

「ゲンガー!」

 

ゲンガーが地面を転がる。

 

「あと一息だ!」

 

マサヒロは声を張り上げる。

 

「イーブイ、もう一度エボルブラスト!」

 

「ブイイイイ!」

 

イーブイが光をまとい、ゲンガーへ向かって突進する。

 

そのとき。

 

「……ふふ」

 

キクコの肩が震えた。

 

「ふふふ……」

 

「え?」

 

マサヒロは動きを止めずに、キクコを見る。

 

「何がおかしいんですか!?」

 

キクコは顔を上げる。

 

「ふはははははははは!」

 

豪快な笑い声が、フィールド中に響き渡った。

 

「キクコさん……?」

 

「いやぁ、ここまで追い詰められたのは何年振りかと思ってねぇ!」

 

キクコは心から楽しそうに笑っている。

 

「お前さんと同じさ!」

 

「え?」

 

「アタシも、ワクワクしちまったのさ!」

 

キクコの目が鋭く輝く。

 

「こんなに胸が高鳴るバトルは、久しぶりだよ!」

 

「キクコさん……!」

 

その瞬間。

 

キクコの杖に取り付けられていた石が、強い光を放ち始めた。

 

「え……?」

 

マサヒロは目を見開く。

 

「なんだ、あの石……!」

 

キクコの杖に埋め込まれた石。

 

そして。

 

ゲンガーの身体にも、同じような光が集まっていく。

 

「ゲンガー!?」

 

「ゲンガァァァァァ!」

 

ゲンガーが咆哮を上げる。

 

紫色の光がフィールドを包み込む。

 

「何が起こってるんですか!?」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

キクコは杖を掲げた。

 

「教えてあげるよ」

 

「……!」

 

「人とポケモンの絆が、限界を超えたとき」

 

キクコの杖の石がさらに輝く。

 

「キーストーンとメガストーンの力によって、ポケモンは進化を超えた進化をすることができるのさ」

 

「進化を超えた……進化?」

 

「そうさ」

 

キクコはゲンガーを見つめる。

 

「アタシをここまで追い詰めたことへの敬意を表して、見せてあげるよ」

 

光がゲンガーを包み込む。

 

「これが――」

 

ゲンガーの姿が変わっていく。

 

「メガ進化だ!」

 

「ゲンガァァァァァ!」

 

光が弾け飛ぶ。

 

そこに立っていたのは、先ほどまでのゲンガーではなかった。

 

身体から溢れ出す圧倒的な力。

 

地面に広がる巨大な影。

 

そして、さらに鋭くなった目。

 

「これが……メガゲンガー……!」

 

マサヒロは息を呑む。

 

「ブイ……」

 

イーブイも警戒するように身構える。

 

キクコは笑った。

 

「さあ、ここからが本当の勝負だよ!」

 

「イーブイ、負けるな!」

 

「ブイ!」

 

「メガゲンガー、シャドーボール!」

 

「ゲンガァ!」

 

巨大なシャドーボールが放たれる。

 

「イーブイ、避けろ!」

 

イーブイが横へ飛ぶ。

 

しかし。

 

「まだだよ!」

 

メガゲンガーの影が伸びる。

 

「えっ!?」

 

影がイーブイの足元へ絡みつく。

 

「イーブイ、動け!」

 

「ブイ!」

 

イーブイが必死に身体を動かす。

 

「メガゲンガー、あくのはどう!」

 

「ゲンガァ!」

 

黒い波動が放たれる。

 

「イーブイ!」

 

イーブイが吹き飛ばされる。

 

「立て、イーブイ!」

 

「ブイ……!」

 

イーブイは何とか立ち上がる。

 

「まだ戦える!」

 

「ブイ!」

 

「そうだ!」

 

マサヒロは叫ぶ。

 

「俺たちのコンビネーションなら、まだやれる!」

 

「ブイ!」

 

「でんこうせっか!」

 

イーブイが走り出す。

 

「メガゲンガー、サイコキネシス!」

 

「ゲンガァ!」

 

メガゲンガーの目が光る。

 

「イーブイ!」

 

イーブイの身体が宙へ浮かぶ。

 

「しまった!」

 

「そのまま叩きつけな!」

 

「ゲンガァ!」

 

メガゲンガーがイーブイを地面へ叩きつける。

 

「イーブイ!」

 

「ブイ……!」

 

「まだだ!」

 

マサヒロは叫ぶ。

 

「イーブイ、立て!」

 

イーブイはふらつきながら立ち上がる。

 

「ブイ……!」

 

「よし!」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「エボルブラストだ!」

 

「ブイイイイ!」

 

イーブイが虹色の光を放つ。

 

「メガゲンガー、れいとうパンチ!」

 

「ゲンガァ!」

 

メガゲンガーの拳が冷気をまとっていく。

 

「イーブイ、正面から受け止めろ!」

 

「ブイ!」

 

虹色の光と、冷気をまとった拳が激突する。

 

「押し切れ!」

 

「ブイイイイ!」

 

しかし。

 

メガゲンガーの力が、徐々に上回っていく。

 

「イーブイ!」

 

「ゲンガァ!」

 

メガゲンガーのれいとうパンチが、エボルブラストを打ち破る。

 

「イーブイ!」

 

拳がイーブイに直撃する。

 

ドォン!

 

イーブイの身体が大きく吹き飛ばされる。

 

「イーブイ!」

 

地面に落ちたイーブイは、動かなかった。

 

「イーブイ、戦闘不能!」

 

「……!」

 

マサヒロは息を呑む。

 

キクコは静かに口を開いた。

 

「よく頑張ったねぇ」

 

「……」

 

「だがここまでのようだね」

 

マサヒロは倒れたイーブイを見る。

 

「……」

 

キクコは優しく続ける。

 

「もう十分さ。これ以上は無理だよ」

 

しかし。

 

マサヒロは首を横に振った。

 

「まだです」

 

「……何?」

 

「イーブイは、まだ終わってません」

 

「無理だよ」

 

キクコは言い切る。

 

「今の攻撃を受けて、立ち上がれるポケモンなんて――」

 

「イーブイ!」

 

マサヒロは叫ぶ。

 

「立て!」

 

「……」

 

「俺たちは、ここまで一緒に来たんだ!」

 

イーブイの耳が、わずかに動く。

 

「最初に家を出たときも!」

 

「ブイ……」

 

「フシギダネと出会ったときも!」

 

「ブイ……」

 

「ビードルを助けたときも!」

 

イーブイの前足が、地面を掻く。

 

「ニビジムでも!」

 

「ブイ……!」

 

「何度負けても、俺たちは立ち上がってきた!」

 

マサヒロの声が震える。

 

「だから、ここでも立ち上がろう!」

 

イーブイの身体が、ゆっくりと動く。

 

「ブイ……」

 

「イーブイ!」

 

「ブイイイイ……!」

 

イーブイは震える足で、立ち上がった。

 

「そんな……!」

 

キクコが目を見開く。

 

「まだ立つっていうのかい!?」

 

イーブイは、マサヒロを見つめる。

 

「ブイ!」

 

マサヒロもイーブイを見つめる。

 

「そうだ!」

 

「ブイ!」

 

「俺たちは、まだ終わってない!」

 

キクコはしばらく二人を見つめていた。

 

そして。

 

「……ふふ」

 

口元が大きく歪む。

 

「ははははははは!」

 

キクコは高らかに笑い始めた。

 

「いいねぇ!」

 

「キクコさん……!」

 

「それでこそ、アタシが認めたトレーナーだよ!」

 

キクコは杖を掲げる。

 

「さあ、最後の一撃をぶつけてきな!」

 

マサヒロはイーブイを見る。

 

「イーブイ!」

 

「ブイ!」

 

「俺たちの全部を込めるぞ!」

 

イーブイの身体が、再び虹色の光に包まれる。

 

「エボルブラストォォォォ!」

 

「ブイイイイイイイイ!」

 

キクコも叫ぶ。

 

「メガゲンガー、あくのはどう!」

 

「ゲンガァァァァァ!」

 

巨大な黒い波動が放たれる。

 

虹色の光と黒い波動が、真正面からぶつかる。

 

「押し切れ、イーブイ!」

 

「ブイイイイイ!」

 

「メガゲンガー、負けるんじゃないよ!」

 

「ゲンガァァァ!」

 

二つの技が激しくぶつかり合う。

 

フィールド全体が光と闇に包まれる。

 

「うおおおおおお!」

 

「ブイイイイイイ!」

 

やがて。

 

ドォォォォォン!

 

大爆発が起こった。

 

煙がフィールドを覆い尽くす。

 

「イーブイ!」

 

「ゲンガー!」

 

マサヒロとキクコが、それぞれのポケモンの名を叫ぶ。

 

煙の中から、少しずつフィールドが見えてくる。

 

「……」

 

マサヒロは目を凝らす。

 

「イーブイ……!」

 

フィールドの中央。

 

そこには、倒れているイーブイの姿があった。

 

そして、その向かい側には。

 

「ゲンガー……」

 

メガゲンガーもまた、倒れていた。

 

審判が二匹を確認する。

 

「イーブイ、戦闘不能!」

 

「ゲンガー、戦闘不能!」

 

審判は声を張り上げた。

 

「両者、戦闘不能!」

 

「この勝負、引き分け!」

 

「……引き分け」

 

マサヒロは呆然と呟く。

 

キクコは倒れたゲンガーを見つめ、ゆっくりとボールへ戻した。

 

「よくやったねぇ、ゲンガー」

 

そして、マサヒロのもとへ歩いてくる。

 

「イーブイも、よく頑張ったよ」

 

マサヒロはイーブイを抱き上げる。

 

「ありがとう、イーブイ」

 

「ブイ……」

 

キクコは懐から、一つのバッジを取り出した。

 

緑色に輝くバッジ。

 

「これは……?」

 

「グリーンバッジさ」

 

キクコはマサヒロへ差し出す。

 

「受け取りな」

 

マサヒロは驚く。

 

「でも……俺は勝っていません」

 

「引き分けでした」

 

「そうだねぇ」

 

キクコは頷く。

 

「だが、お前さんはアタシのゲンガーを、最後まで追い詰めた」

 

「……」

 

「そして、最後まで諦めなかった」

 

キクコはマサヒロの目を見る。

 

「お前さんには、ポケモンリーグに挑む資格がある」

 

「本当に……?」

 

「ああ」

 

キクコはバッジをマサヒロの手に握らせる。

 

「このグリーンバッジは、その証さ」

 

マサヒロはバッジを見つめる。

 

「……やった」

 

「ブイ!」

 

イーブイが嬉しそうに鳴く。

 

「やったぞ、イーブイ!」

 

マサヒロはイーブイを抱きしめる。

 

「八個目のバッジだ!」

 

「ブイ! ブイ!」

 

キクコは二人を見ながら、満足そうに笑った。

 

「さあ、行きな」

 

「はい!」

 

「ポケモンリーグで、もっと強い奴らが待っているよ」

 

マサヒロはグリーンバッジをしっかりと握る。

 

「絶対に勝ち上がります!」

 

「ブイ!」

 

トキワジムでの最後の戦いは、引き分けに終わった。

 

しかし。

 

マサヒロとイーブイは、確かに最後のバッジを手に入れた。

 

そして今。

 

二人の前には、ポケモンリーグへの道が開かれていた。

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