トキワシティ。
最後のジムバッジ、グリーンバッジを手にしたマサヒロは、イーブイと一緒に街を歩いていた。
「これで……八個全部そろった!」
マサヒロはグリーンバッジを見つめる。
「これでポケモンリーグに挑戦できるんだ!」
「ブイ!」
イーブイも嬉しそうに鳴く。
「……でも、その前に」
マサヒロは少し考える。
「一回、家に帰ろう」
「ブイ?」
「お母さんにも報告したいし、オーキド博士にも今までの旅のことを話したいからな」
マサヒロは笑う。
「よし、マサラタウンへ帰ろう!」
「ブイ!」
二人は故郷へ向かって歩き始めた。
* * *
しばらくして。
「……見えてきた!」
マサヒロの目の前に、懐かしい町並みが見えてきた。
「マサラタウンだ!」
「ブイ!」
「ただいまー!」
マサヒロは町の中を走っていく。
そして。
「お母さん!」
家の前に立つと、マサヒロは大きな声で呼んだ。
「まあ!」
家の中から母親が出てくる。
「マサヒロ!」
「お母さん!」
マサヒロは駆け寄る。
母親はマサヒロの姿を見ると、嬉しそうに笑った。
「まあまあ……」
そして、マサヒロの身体をじっくり見る。
「ずいぶん逞しくなったわね」
「そう?」
「出発した頃より、身体つきもしっかりしたんじゃない?」
母親はイーブイにも目を向ける。
「イーブイも元気そうね」
「ブイ!」
「二人とも、ずいぶんたくましくなったわ」
「へへっ」
マサヒロは照れながら笑う。
「ありがとう、お母さん」
「長い旅だったものね」
母親はマサヒロの頭を撫でる。
「どんな旅だったの?」
「え?」
「聞かせてちょうだい」
「もちろん!」
マサヒロの顔が明るくなる。
「いっぱい話すことがあるぞ!」
「じゃあ、中に入りましょう」
「その前に!」
マサヒロは玄関へ向かいかけて、突然立ち止まる。
「お母さん!」
「なに?」
「俺の仲間、紹介するよ!」
「仲間?」
「うん!」
マサヒロは家の外へ出る。
「みんな、出てこい!」
モンスターボールを取り出した。
「まずは――」
マサヒロは一つ目のボールを投げる。
「フシギバナ!」
「バナ!」
大きなフシギバナが姿を現した。
「まあ……!」
母親は驚いて、一歩下がる。
「こんなに大きなポケモン……」
「最初はフシギダネだったんだ」
「オーキド博士からもらったポケモンだよ」
「フシギダネが、こんなポケモンになったのね」
「うん!」
「旅の途中で進化したんだ」
「そうなの」
母親は初めて見るフシギバナを眺める。
「よろしくね、フシギバナ」
「バナ!」
「次!」
マサヒロが二つ目のボールを投げる。
「スピアー!」
「スピアー!」
鋭い針を持ったスピアーが姿を現した。
「今度は……虫ポケモン?」
「そう!」
マサヒロは嬉しそうに説明する。
「こいつはビードルの頃に出会ったんだ」
「ビードル?」
「オニスズメに襲われてたところを助けたら、俺についてきてくれてさ」
「まあ……」
「それからビードル、コクーンって進化して、今はスピアーになったんだ」
「そうだったのね」
母親はスピアーを見る。
「あなたもマサヒロと一緒に旅をしてきたのね」
「スピアー!」
「次は――」
マサヒロは三つ目のボールを投げる。
「ウインディ!」
「ウインディ!」
大きなウインディが姿を現した。
「まあ!」
母親は目を丸くする。
「立派なポケモンね」
「こいつはガーディだったんだ」
「進化したの?」
「うん!」
「セキチクジムで一度負けたあと、再戦する前に進化したんだ」
「じゃあ、苦しい時を一緒に乗り越えたのね」
「そう!」
マサヒロはウインディの隣に立つ。
「今じゃ、すごく頼りになるんだぜ!」
「ウインディ!」
「よろしくね」
母親は笑った。
「そして……」
マサヒロは少しだけ困った顔をする。
「こいつは、ちょっと大変なんだけど……」
ボールを投げる。
「ギャラドス!」
「ギャラァァァァ!」
巨大なギャラドスが姿を現した。
「きゃっ!」
母親が驚いて後ずさる。
「大丈夫だよ、お母さん!」
マサヒロが慌てて言う。
「こいつは保護区で出会ったんだ」
「最初は全然言うことを聞いてくれなくてさ」
「まあ……」
母親は少し離れた場所からギャラドスを見る。
「でも、最近は少しずつ俺の言うことを聞いてくれるようになったんだ」
ギャラドスがマサヒロを見る。
「な?」
「ギャラ……」
「ちゃんと信じて、仲良くなっていくつもりなんだ」
母親はギャラドスを見つめる。
「そう」
そして、優しく笑った。
「それなら、きっと少しずつ仲良くなれるわね」
「うん!」
「最後!」
マサヒロは最後のボールを取り出す。
「行け、プテラ!」
「プテラ!」
大きな翼を広げたプテラが姿を現した。
「まあ……!」
母親は空を見上げる。
「空を飛んでいるわ!」
「こいつはグレンタウンの研究所で出会ったんだ」
「昔の時代にいたポケモンを、研究所で復活させたんだって」
「そんなポケモンがいるのね……」
「うん!」
マサヒロはプテラを見る。
「最初はちょっと警戒されてたんだけど、仲良くなれたんだ」
「プテラ!」
プテラが翼を広げる。
母親は笑顔になる。
「すごい仲間たちね」
「だろ?」
マサヒロは胸を張る。
「そして、最後は――」
マサヒロはイーブイを見る。
「もちろん、こいつ!」
「ブイ!」
母親は笑う。
「イーブイは昔から知ってるものね」
「うん!」
マサヒロはイーブイを抱き上げる。
「俺の一番最初の相棒だよ」
「ブイ!」
母親は六匹を見渡す。
イーブイ。
フシギバナ。
スピアー。
ウインディ。
ギャラドス。
プテラ。
「本当に、たくさんの仲間ができたのね」
「うん!」
マサヒロは笑った。
「みんな、俺の大切な仲間だよ」
「ブイ!」
「バナ!」
「スピアー!」
「ウインディ!」
「ギャラ!」
「プテラ!」
六匹の声が響く。
母親は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、今日はみんなの分もごちそうを作らないとね」
「本当!?」
「ええ」
「やったあ!」
マサヒロが両手を上げる。
「みんな、今日はごちそうだぞ!」
「ブイ!」
ポケモンたちが嬉しそうに鳴いた。
* * *
夕方。
食卓には、たくさんの料理が並んでいた。
「いただきます!」
マサヒロとイーブイは、久しぶりの家の料理を食べる。
「うまい!」
「ふふっ」
母親は嬉しそうに笑う。
「旅の間、ちゃんと食べてたの?」
「もちろん!」
「本当に?」
「……たぶん」
「もう」
母親が笑う。
「それで、旅では何があったの?」
「えっとな……」
マサヒロは嬉しそうに話し始める。
ニビジムでの戦い。
ハナダジムでの戦い。
フシギダネの進化。
ビードルとの出会い。
スピアーへの進化。
サトシやシゲルとの再会。
リョウとのライバル対決。
バルキー、カイリューとの別れ。
セキチクジムでの敗北と再戦。
グレンタウンで知ったイーブイの過去。
ランスとの戦い。
フシギバナへの進化。
そして、最後のトキワジム。
マサヒロは一つ一つの出来事を話した。
母親は途中で口を挟まず、嬉しそうに聞いていた。
「そんなにたくさんのことがあったのね」
「うん!」
「大変だった?」
「大変だったけど……」
マサヒロはイーブイを見る。
「楽しかったよ」
「ブイ」
「それに、俺にはこいつらがいるから」
マサヒロは笑った。
「そうね」
母親も笑う。
「みんながいるから、安心したわ」
* * *
夕食を食べ終えると。
「ふぅ……」
マサヒロは満足そうにお腹をさする。
「食べすぎた……」
「たくさん食べたものね」
その後、マサヒロとイーブイは久しぶりに家のお風呂に入った。
「はぁ……」
湯船に浸かりながら、マサヒロは目を閉じる。
「やっぱり家のお風呂っていいな」
「ブイ……」
イーブイも気持ちよさそうに鳴く。
お風呂から上がる。
自分の部屋。
懐かしいベッド。
懐かしい天井。
マサヒロはベッドに横になる。
「……帰ってきたんだな」
「ブイ」
イーブイも隣で丸くなる。
「なんか……安心するな」
「ブイ……」
マサヒロはイーブイの頭を撫でる。
「今日はゆっくり休もう」
「ブイ」
二人は静かに目を閉じた。
そして。
そのまま眠りについた。
* * *
翌朝。
「お母さん、行ってくる!」
「気をつけてね」
マサヒロは玄関で靴を履く。
「今日はオーキド博士のところへ行ってくるから!」
「ちゃんと博士にも報告してくるのよ」
「分かってる!」
マサヒロは振り返る。
「じゃあ、行ってきます!」
「いってらっしゃい、マサヒロ」
「イーブイもね」
「ブイ!」
マサヒロとイーブイは家を出る。
そして。
懐かしいマサラタウンの道を歩いていく。
「イーブイ!」
「ブイ?」
「オーキド博士、どんな顔するかな?」
「ブイ!」
「八個のバッジを見せたら、驚くだろうな!」
マサヒロは笑う。
「よし!」
「行こう!」
イーブイと並んで、オーキド研究所へ向かう。
故郷で一晩休んだマサヒロ。
次は、旅の始まりからずっと見守ってくれていたオーキド博士へ。
これまでの旅を報告するために――。
二人は研究所へ向かって歩いていった。