ポケットモンスターブラウン   作:光宙

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45話 シゲル対策!選ばれた三匹!

ポケモンリーグ。

 

三回戦を終えた夜。

 

マサヒロは、リーグの宿泊施設にある部屋で一人、机に向かっていた。

 

「……うーん」

 

机の上には、ポケモンリーグの対戦表。

 

そして、シゲルの名前。

 

「シゲルか……」

 

マサヒロは頭を抱えた。

 

今回の四回戦。

 

ルールは三対三。

 

使えるポケモンは三匹だけ。

 

「三匹か……」

 

マサヒロは、自分のポケモンを思い浮かべる。

 

イーブイ。

 

フシギバナ。

 

スピアー。

 

ウインディ。

 

ギャラドス。

 

プテラ。

 

「この中から三匹……」

 

マサヒロは腕を組む。

 

「シゲルは、ポケモンを二百匹以上も捕まえてるんだよな……」

 

シゲルが持っているポケモンは多い。

 

多すぎる。

 

「相手が何を出してくるのか、全然分からない」

 

マサヒロは頭を抱える。

 

「三匹に絞り込めない……」

 

例えば、水タイプを選べば草タイプ。

 

炎タイプなら水タイプ。

 

地面タイプなら――。

 

「いや……」

 

マサヒロは首を振る。

 

「そもそも、シゲルなら俺がそう考えることも分かってるかもしれない」

 

シゲルは強い。

 

そして、頭もいい。

 

以前の六対六の戦いでも、マサヒロの戦い方を途中から見抜いてきた。

 

「相手に有利なタイプで攻める……」

 

マサヒロは呟く。

 

「それも難しい」

 

二百匹以上。

 

その中から、マサヒロの手持ちに合わせてポケモンを選ぶことだってできる。

 

「うーん……」

 

マサヒロはさらに頭を抱えた。

 

「分からない!」

 

椅子から立ち上がる。

 

「考えても考えても、全然決まらない!」

 

机の上の対戦表を見る。

 

「……シゲル」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「絶対に勝ちたい」

 

だが。

 

考えれば考えるほど、頭の中がごちゃごちゃしていく。

 

「……駄目だ」

 

マサヒロは窓の外を見る。

 

「一回、頭を冷やそう」

 

その時。

 

ベッドの横で寝ていたイーブイが顔を上げた。

 

「イーブイ?」

 

「散歩に行くか?」

 

「イーブイ!」

 

イーブイが立ち上がる。

 

「よし」

 

マサヒロは部屋を出た。

 

* * *

 

夜のセキエイこうげん。

 

昼間とは違い、人通りも少ない。

 

静かな道を、マサヒロとイーブイは歩いていた。

 

「……」

 

マサヒロは黙っている。

 

イーブイも隣を歩いている。

 

しばらくすると、マサヒロが口を開いた。

 

「なあ、イーブイ」

 

「イーブイ?」

 

「シゲル、強いよな」

 

「イーブイ……」

 

「前の六対六も引き分けだったし」

 

マサヒロは空を見上げる。

 

「今度は三対三だ」

 

「イーブイ」

 

「三匹しか使えないから、もっと難しい」

 

イーブイがマサヒロを見る。

 

「……」

 

「でも」

 

マサヒロは少し笑った。

 

「お前たちなら、誰が出ても戦えるよな」

 

「イーブイ!」

 

「そうだよな」

 

マサヒロは歩き続ける。

 

やがて、宿泊施設から少し離れた場所にある広場へ着いた。

 

「ここならいいか」

 

マサヒロは立ち止まる。

 

そして。

 

腰のモンスターボールを一つずつ取り出した。

 

「みんな、出てこい!」

 

次々とボールが開く。

 

「フシギバナ!」

 

「バナ!」

 

「スピアー!」

 

「スピアー!」

 

「ウインディ!」

 

「ウイン!」

 

「ギャラドス!」

 

「ギャアアア!」

 

「プテラ!」

 

「グオオオ!」

 

六匹のポケモンが、広場に姿を現した。

 

最後に。

 

「イーブイも!」

 

「イーブイ!」

 

イーブイがマサヒロの隣に立つ。

 

「みんな、今日もお疲れ!」

 

「バナ!」

 

「スピアー!」

 

「ウイン!」

 

「ギャア!」

 

「グオオ!」

 

「イーブイ!」

 

六匹とも、やる気は十分だった。

 

マサヒロは嬉しそうに笑う。

 

「みんな元気そうだな!」

 

だが。

 

その中でも。

 

特に気合が入っているポケモンがいた。

 

「……」

 

マサヒロはフシギバナを見る。

 

フシギバナは、じっと前を見ていた。

 

「フシギバナ?」

 

「バナ……!」

 

力強く鳴く。

 

そして。

 

ウインディも。

 

「ウイン……!」

 

鋭い目で遠くを見つめている。

 

「ウインディも?」

 

マサヒロは二匹を見る。

 

すぐに理由が分かった。

 

以前。

 

シゲルとの六対六。

 

フシギバナもウインディも、シゲルのポケモンに敗れている。

 

「ああ……」

 

マサヒロは思い出す。

 

「あの時、負けたもんな」

 

「バナ!」

 

「ウイン!」

 

二匹が力強く鳴く。

 

まるで。

 

――今度こそ勝つ。

 

そう言っているようだった。

 

マサヒロは二匹を見つめる。

 

「……そうだな」

 

その時だった。

 

マサヒロの頭に、ある考えが浮かんだ。

 

「待てよ……」

 

マサヒロはゆっくりと顔を上げる。

 

「シゲルなら……」

 

マサヒロは考える。

 

「前の戦いで、自分を倒したポケモンの対策をしてくるんじゃないか?」

 

「イーブイ?」

 

「シゲルが前回倒したポケモンより……」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「倒されたポケモンの方を、徹底的に研究するんじゃないか?」

 

シゲルは、そういうトレーナーだ。

 

負けた相手を、そのままにしておくはずがない。

 

「だったら……」

 

マサヒロは、自分のポケモンたちを見る。

 

「前に負けた二匹を出す」

 

マサヒロはフシギバナとウインディを見る。

 

「フシギバナとウインディだ」

 

「バナ!」

 

「ウイン!」

 

二匹が力強く鳴く。

 

そして、もう一匹。

 

マサヒロの視線が、プテラへ向いた。

 

「それから……」

 

「グオ?」

 

プテラがマサヒロを見る。

 

「プテラだ」

 

「グオオ!」

 

マサヒロは頷く。

 

「プテラは、前のシゲルとの戦いにはいなかった」

 

「グオ!」

 

「それに、古代のポケモンだから、シゲルも今まで戦ったデータがほとんどないはずだ」

 

マサヒロは考える。

 

「二百匹以上もポケモンを持ってるシゲルでも……」

 

プテラを見る。

 

「お前については、対策するのが難しいはずだ」

 

「グオオオ!」

 

プテラが大きく翼を広げる。

 

「よし!」

 

マサヒロは拳を握った。

 

「決めた!」

 

「次の三匹は――」

 

フシギバナ。

 

ウインディ。

 

そして。

 

「プテラ!」

 

「バナ!」

 

「ウイン!」

 

「グオオオオ!」

 

三匹が同時に雄叫びを上げる。

 

フシギバナは力強く地面を踏みしめる。

 

ウインディは鋭い目で前を見つめる。

 

プテラは大きな翼を広げる。

 

その姿を見て、マサヒロは笑った。

 

「うん」

 

マサヒロは三匹を見渡す。

 

「その気持ち、ちゃんと伝わったぞ」

 

三匹がマサヒロを見る。

 

「明日は、思いっきり戦おう!」

 

「バナ!」

 

「ウイン!」

 

「グオオオ!」

 

三匹の声が夜の広場に響く。

 

その一方で。

 

「……」

 

スピアーが少しだけ身体を揺らした。

 

「スピアー?」

 

「スピアー……」

 

どこか残念そうだ。

 

ギャラドスも。

 

「ギャア……」

 

こちらも少しだけ不満そうにマサヒロを見る。

 

「ギャラドス?」

 

二匹はマサヒロを見る。

 

そして。

 

自分たちを指差すように身体を動かした。

 

「……?」

 

マサヒロは首をかしげる。

 

「もしかして……」

 

スピアーとギャラドスを見る。

 

「自分たちも出たいのか?」

 

「スピアー!」

 

「ギャア!」

 

二匹が力強く鳴く。

 

「ははっ」

 

マサヒロは笑う。

 

「そりゃそうだよな」

 

二匹も、このリーグのために戦ってきた。

 

スピアーは素早さを磨き。

 

ギャラドスは、マサヒロとの信頼を築いてきた。

 

「ごめんな」

 

マサヒロは二匹の頭を撫でる。

 

「今回は三匹だけなんだ」

 

「スピアー……」

 

「ギャア……」

 

二匹は少しだけ俯いた。

 

そして。

 

「……」

 

イーブイも動かない。

 

マサヒロが振り返る。

 

「イーブイ?」

 

「……」

 

イーブイは、明らかに落ち込んでいた。

 

耳が垂れている。

 

尻尾も下がっている。

 

「どうした?」

 

「イーブイ……」

 

マサヒロは気づいた。

 

「……お前」

 

イーブイを見る。

 

「自分は出ると思ってたのか?」

 

「……イーブイ」

 

イーブイは小さく頷いた。

 

マサヒロは驚いた。

 

「そっか……」

 

イーブイにとっては当然だった。

 

これまで。

 

大事な戦いでは、いつも自分がそばにいた。

 

ハナダジム。

 

クチバジム。

 

トキワジム。

 

そして。

 

リーグの三回戦でも戦った。

 

「……そうだよな」

 

マサヒロはしゃがみ込む。

 

「お前も頑張ってきたもんな」

 

「イーブイ……」

 

イーブイは俯いたまま。

 

「でもな」

 

マサヒロは優しく笑う。

 

「今回は、シゲルが相手なんだ」

 

「イーブイ……」

 

「だから、俺が考えて決めた」

 

マサヒロはイーブイの頭を撫でる。

 

「ごめんな」

 

「……」

 

その時だった。

 

「バナァァァァ!」

 

突然。

 

フシギバナが大きな声で鳴いた。

 

「え?」

 

マサヒロが振り返る。

 

フシギバナがマサヒロの前へ出る。

 

「バナ!」

 

そして。

 

ウインディも。

 

「ウインディィィ!」

 

プテラも大きく翼を広げる。

 

「グオオオオオ!」

 

三匹が並んだ。

 

大きな雄叫びが夜の広場に響く。

 

「……」

 

マサヒロは目を見開く。

 

三匹の目には、強い決意があった。

 

まるで。

 

――俺たちがやる。

 

――今度こそ勝つ。

 

そう言っているようだった。

 

「……みんな」

 

マサヒロは笑った。

 

「分かった」

 

マサヒロは三匹の前へ歩み寄る。

 

「明日は思いっきり戦ってこい!」

 

「バナ!」

 

「ウイン!」

 

「グオオオ!」

 

三匹が力強く鳴く。

 

その声に。

 

スピアーも顔を上げた。

 

「スピアー!」

 

ギャラドスも。

 

「ギャアアア!」

 

二匹も、三匹を応援するように鳴く。

 

そして。

 

イーブイも顔を上げた。

 

「……イーブイ!」

 

マサヒロはイーブイを見る。

 

「イーブイ」

 

「イーブイ?」

 

「今回は一緒に戦えないけど――」

 

マサヒロは笑う。

 

「お前も俺の大事な仲間だ」

 

「イーブイ……」

 

「だから、みんなでシゲルに勝とう」

 

「イーブイ!」

 

イーブイの目に、少しずつ力が戻っていく。

 

マサヒロは立ち上がった。

 

そして。

 

フシギバナ。

 

ウインディ。

 

プテラ。

 

三匹を見る。

 

「シゲルは、きっと俺たちのことを研究してる」

 

「でも――」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「俺たちだって、何も考えてないわけじゃない!」

 

「バナ!」

 

「ウイン!」

 

「グオオ!」

 

夜空に三匹の声が響く。

 

マサヒロは笑った。

 

「明日、絶対に勝つぞ!」

 

「バナァァァ!」

 

「ウインディィィ!」

 

「グオオオオオ!」

 

そして。

 

その後ろで。

 

「イーブイ!」

 

「スピアー!」

 

「ギャアアア!」

 

仲間たちの声も響いた。

 

マサヒロは六匹を見渡す。

 

誰が戦うのか。

 

誰が戦わないのか。

 

それは違っても。

 

「みんなで戦うんだ」

 

マサヒロは笑った。

 

「俺たちは、仲間だからな!」

 

夜のセキエイこうげんに、七つの声が響いていた。

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