セキエイ高原。
ポケモンリーグ、第四回戦。
マサヒロとシゲル。
二人の幼馴染であり、永遠のライバル。
これまで何度も競い合ってきた二人が、ついにリーグの舞台で激突する。
会場へ続く通路。
マサヒロはイーブイと並んで歩いていた。
「……」
「イーブイ?」
イーブイがマサヒロの顔を覗き込む。
「大丈夫だ」
マサヒロは笑う。
「ちょっと緊張してるだけ」
「イーブイ!」
「昨日、みんなと決めたんだ」
マサヒロは腰のモンスターボールを見る。
フシギバナ。
ウインディ。
プテラ。
「今日は、この三匹で行く」
「イーブイ!」
「みんな、絶対に勝ってくれる」
マサヒロは拳を握った。
「シゲルには負けない」
「イーブイ!」
* * *
岩場をイメージしたフィールド。
観客席から、大きな歓声が響いている。
「マサヒロ!」
「シゲル!」
二人がフィールドの両端へ立つ。
そして――。
二人の視線がぶつかった。
シゲルがニヤリと笑う。
「ついに、この時が来たな」
「……ああ」
マサヒロも拳を握る。
「前のバトルじゃ、決着がつかなかった」
「そうだな」
シゲルは真剣な表情になる。
「だから、今度こそ決めようか」
「俺も、そのつもりだ!」
「ルールは三対三」
「分かってる」
シゲルがフィールドへ目を向ける。
「どっちが強いのか、ここではっきりさせよう」
「ああ!」
マサヒロも岩のフィールドを見つめる。
「絶対に負けない!」
「その言葉、そっくり返すよ」
二人はフィールドを挟んで向かい合う。
審判が中央へ立った。
「第四回戦!」
「マサヒロ対シゲル!」
「使用ポケモンは三匹!」
「先に三匹すべてを戦闘不能にした方が勝者です!」
観客席から歓声が上がる。
「それでは――」
審判が手を上げる。
「バトル開始!」
「行け!」
マサヒロがモンスターボールを投げる。
「プテラ!」
「プテラァ!」
巨大な翼を持つプテラが姿を現した。
「最初はプテラか」
シゲルは少し驚いたように笑う。
「面白いポケモンを選んだな」
「昨日決めたんだ」
マサヒロはプテラを見る。
「お前なら、やれる!」
「プテラ!」
シゲルもボールを構える。
「なら、こいつで行く!」
「出ろ、レアコイル!」
「レアコイル!」
三つの磁石を持つレアコイルが浮かび上がる。
「レアコイル……!」
マサヒロは目を見開く。
「やっぱり、前の戦いで見たことのないポケモンが来たか」
「それはお互い様だろ?」
シゲルが笑う。
「プテラは前のバトルにはいなかったからな」
「……ああ」
マサヒロはプテラを見る。
「プテラ、かみつく!」
「プテラ!」
プテラが勢いよく突撃する。
「レアコイル、でんじは!」
「レアコイル!」
バチバチッ!
電気がプテラへ飛んでくる。
「プテラ、避けろ!」
「プテラ!」
プテラが翼を広げ、横へ飛ぶ。
しかし――。
「レアコイル、狙い続けろ!」
「レア!」
電撃が何度も飛んでくる。
「くっ!」
プテラは必死にかわす。
だが。
「そこだ!」
シゲルが叫ぶ。
「でんじは!」
「レアコイル!」
バリッ!
電気がプテラへ命中した。
「プテラ!」
プテラの身体が大きく震える。
「まひか……!」
マサヒロが歯を食いしばる。
「プテラ、動けるか!?」
「プテラ……!」
プテラは翼を震わせる。
「まだだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「つばさでうつ!」
「プテラ!」
プテラが一気に突っ込む。
「レアコイル、ラスターカノン!」
「レア!」
光の弾が飛んでくる。
「かわして!」
「プテラ!」
プテラが横へ飛ぶ。
しかし、まひの影響で動きが遅い。
光弾が翼をかすめる。
「くっ……!」
「まだだ!」
シゲルが叫ぶ。
「ほうでん!」
「レアコイル!」
バリバリバリッ!!
周囲へ大量の電気が広がる。
「プテラ!」
「避けろ!」
プテラが飛び退く。
だが――。
「動きが鈍い……!」
マサヒロは焦る。
プテラは必死に身体を動かしている。
しかし、まひのせいで思うように動けない。
「このままじゃ……」
マサヒロは拳を握る。
そのとき。
プテラがマサヒロを振り返った。
「……プテラ」
その姿を見て、マサヒロの脳裏にマサラタウンでの特訓の日々が蘇った。
* * *
数週間前。
マサラタウン。
ポケモンリーグに挑むための特訓をしていたマサヒロは、庭に六匹のポケモンを集めていた。
「よし!」
マサヒロが拳を握る。
「リーグに挑戦する相手はみんな猛者ばかりだ!」
「イーブイ!」
「ここから先は、もっと強い相手が出てくる」
「フシギバナ!」
「だから、みんなで特訓をしよう!」
「ウインディ!」
「ギャラドス!」
「スピアー!」
「プテラ!」
六匹が一斉に返事をする。
「特にプテラ!」
「プテラ?」
マサヒロはプテラを見る。
「お前はまだ、戦闘経験が少ない」
「プテラ……」
「リーグを勝ち進むなら、新しく強力な技が欲しいよな」
「プテラ!」
プテラがやる気を見せる。
「よし!」
マサヒロは笑った。
「新しい技を覚えるぞ!」
「プテラ!」
* * *
「つばさでうつ!」
「プテラ!」
プテラが岩へ向かって突っ込む。
ドンッ!
岩が大きく揺れる。
「いいぞ!」
マサヒロが叫ぶ。
「次はストーンエッジ!」
「プテラ!」
地面から無数の岩が突き出す。
「すごい!」
マサヒロは嬉しそうに笑う。
「でも……」
マサヒロは考える。
「もっと強力な近距離攻撃が欲しいな」
プテラが首を傾げる。
「頭を使った攻撃なら……」
そのときだった。
「イーブイ!」
イーブイが前へ出た。
「どうした?」
イーブイは尻尾を振る。
「ブイ!」
イーブイの尻尾が銀色に輝く。
ドォン!
近くの岩を尻尾で叩き割った。
「おおっ! アイアンテールもますます強力になってるな!」
マサヒロが目を輝かせる。
「そういえば、この技……」
マサヒロは思い出す。
以前のバトルでシゲルのドードリオが使っていた技。
「ドードリオのはがねのつばさを見て、覚えたんだよな」
「イーブイ!」
マサヒロはプテラを見る。
「じゃあ、プテラも同じようにできるかもしれない」
「プテラ?」
「イーブイみたいに、頭に鋼の力を集めるんだ」
「プテラ!」
プテラが岩へ向き直る。
「頭に力を集めて――」
プテラが頭を下げる。
「突っ込む!」
「プテラァ!」
ドンッ!
しかし――。
「プテラ!」
岩にぶつかったプテラが弾き飛ばされる。
「大丈夫か!?」
「プテラ……」
「難しいか……」
マサヒロが考える。
「プテラ!」
プテラが悔しそうに鳴く。
「分かった!」
マサヒロは拳を握る。
「何回でもやろう!」
「プテラ!」
何度も。
何度も。
プテラは岩へ向かって突っ込んだ。
ドンッ!
ドンッ!
ドンッ!
しかし、岩は壊れない。
「まだだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「もっと頭に力を集めるんだ!」
「プテラ……!」
プテラが集中する。
頭へ力を集める。
身体全体に力が入る。
「そのまま!」
プテラの頭が、少しずつ銀色に輝き始めた。
「……!」
マサヒロが息を呑む。
「できてる!」
「プテラァ!」
プテラが一気に突っ込む。
ドゴォン!!
岩が大きく砕け散った。
「やった!」
マサヒロが飛び上がる。
「プテラ!」
プテラも嬉しそうに鳴く。
「今のは……!」
マサヒロは笑った。
「アイアンヘッドだ!」
「プテラァ!」
イーブイも嬉しそうに跳ねる。
「イーブイ!」
「お前が覚えたアイアンテールがヒントになったな!」
「ブイ!」
「これでリーグでも戦えるぞ!」
「プテラ!」
プテラは大きく翼を広げた。
新しい力を手に入れたプテラ。
その姿を見て、マサヒロも笑った。
「よし!」
「これで、優勝まで行くぞ!」
* * *
「プテラ!」
マサヒロの声で、プテラが我に返る。
目の前にはレアコイル。
そして、シゲル。
「……そうだ」
マサヒロは拳を握った。
「俺たちは、リーグを勝ち進むために新しい技を覚えたんだ!」
プテラが顔を上げる。
「プテラ!」
「だったら、ここで見せてやる!」
マサヒロは叫ぶ。
「プテラ、アイアンヘッド!」
「プテラァ!」
プテラの頭が銀色に輝く。
そして――。
ドンッ!
鋼鉄の頭突きがレアコイルへ直撃した。
「レアコイル!」
レアコイルの身体が大きく揺れる。
「よし!」
マサヒロは拳を握る。
「これが新しい力だ!」
「プテラ!」
シゲルも驚いている。
「アイアンヘッド……!」
「マサラタウンで特訓して覚えたんだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「イーブイのアイアンテールを参考にしてな!」
シゲルは少し笑う。
「なるほどな」
「でも、その一撃だけじゃ終わらないよ!」
「レアコイル、ラスターカノン!」
「レア!」
光の弾が飛ぶ。
「プテラ、避けろ!」
「プテラ!」
プテラが翼を広げる。
まひで動きは鈍い。
それでも、必死に身体を動かす。
光弾をかわす。
「今だ!」
マサヒロが叫ぶ。
「ストーンエッジ!」
「プテラァ!」
無数の岩が地面から突き出す。
「レアコイル!」
レアコイルが逃げようとする。
しかし――。
「逃がすな!」
「プテラ!」
ズガガガッ!
巨大な岩がレアコイルを直撃する。
「レア……!」
レアコイルが地面へ落ちる。
「レアコイル、戦闘不能!」
「やった!」
マサヒロが叫ぶ。
「プテラ!」
プテラが翼を広げる。
「よくやった!」
マサヒロは笑った。
だが――。
シゲルは冷静だった。
「いい攻撃だったな」
シゲルが次のボールを取り出す。
「でも、ここからだ!」
「……!」
マサヒロは身構える。
「行け、カメックス!」
「カメェェ!」
巨大なカメックスが姿を現す。
「カメックス……!」
マサヒロは息を呑む。
前のバトルでも戦った相手。
その強さは、よく知っている。
「プテラ、まだいけるか!?」
「プテラ!」
プテラはまひした身体を震わせながら、カメックスを睨みつける。
「そうか……!」
マサヒロは拳を握る。
「だったら、最後まで頼む!」
「プテラ!」
シゲルが叫ぶ。
「カメックス、こうそくスピン!」
「カメェ!」
カメックスが身体を丸め、高速回転しながら突っ込んでくる。
「プテラ、つばさでうつ!」
「プテラ!」
プテラが翼を振り下ろす。
ドンッ!
しかし、カメックスは回転しながら攻撃を受け流す。
「カメックス、かみつく!」
「カメェ!」
カメックスがプテラへ飛びかかる。
「プテラ、避けろ!」
「プテラ!」
プテラが飛び上がろうとする。
だが――。
「……!」
まひの影響で動きが遅れる。
「カメックス!」
ガブッ!
カメックスがプテラの翼へ噛みついた。
「プテラァ!」
「プテラ!」
マサヒロが叫ぶ。
「ストーンエッジ!」
「プテラ!」
プテラが力を振り絞る。
地面から岩が突き出す。
「カメックス、からにこもる!」
「カメェ!」
カメックスが甲羅へ身を隠す。
ズガガガッ!
岩が甲羅へ次々と命中する。
「カメックス!」
しかし――。
甲羅に大きな傷がついただけだった。
「まだだ!」
シゲルが叫ぶ。
「カメックス、ハイドロポンプ!」
「カメェェェ!」
凄まじい水流が放たれる。
「プテラ、飛べ!」
「プテラ!」
プテラが翼を広げる。
しかし、まひで動きが鈍い。
「くっ……!」
水流がプテラの身体を直撃した。
「プテラァァ!」
プテラが大きく吹き飛ばされる。
「プテラ!」
マサヒロが叫ぶ。
プテラは何とか立ち上がろうとする。
しかし――。
身体が震えている。
翼にも力が入らない。
「もう一度、ハイドロポンプ!」
「カメェェ!」
「プテラ、避けろ!」
「プテラ……!」
プテラは動こうとする。
だが、身体が動かない。
「しまった……!」
次の瞬間。
ドォォォン!!
強烈な水流がプテラを直撃した。
「プテラァァァ!」
プテラが地面を転がる。
そして――。
動かなくなった。
「……」
マサヒロは息を呑む。
「プテラ……!」
審判が確認する。
「プテラ、戦闘不能!」
「……!」
マサヒロは拳を握った。
「プテラ……よく頑張った」
プテラは静かにボールへ戻っていく。
マサヒロはボールを強く握る。
「ここまで頑張ってくれて、ありがとう」
シゲルはカメックスを見る。
「よくやったな、カメックス」
「カメェ!」
マサヒロは残った二つのボールを見る。
フシギバナ。
ウインディ。
「……まだ二匹いる」
マサヒロは顔を上げる。
「ここからだ!」
シゲルも次のボールへ手を伸ばす。
「俺もまだ、二匹残ってる」
二人の視線が再びぶつかる。
「まだ終わってないぞ、シゲル!」
「ああ」
シゲルが笑う。
「ここからが本番だ」
岩場のフィールドに、再び歓声が響き渡った。
――激闘は、まだ終わらない。