岩場のフィールド。
プテラが戦闘不能となり、マサヒロは残った二つのモンスターボールを見つめていた。
フシギバナ。
ウインディ。
「……プテラ、よく頑張った」
マサヒロはプテラのボールを握る。
「お前が作ってくれたチャンス、無駄にはしない!」
そして、一つのボールを取り出した。
「次はお前だ!」
「頼む、フシギバナ!」
「フシギバナァ!」
フシギバナがフィールドへ現れる。
「絶対に勝とう!」
「フシギバナ!」
そのときだった。
シゲルがカメックスを見る。
「……カメックス」
「カメ?」
「戻れ!」
「カメェ!」
カメックスがボールへ戻っていく。
「……え?」
マサヒロが驚く。
「カメックスを戻すのか?」
シゲルはニヤリと笑った。
「当たり前だろ?」
「相性が悪い相手と、わざわざ戦わせるわけないだろ?」
「……!」
シゲルは新たなボールを取り出す。
「お前がフシギバナを出すことくらい、予想してたさ」
「行け、ギャロップ!」
「ヒヒーン!」
炎のたてがみを揺らし、ギャロップがフィールドへ現れた。
「ギャロップ……!」
「前のバトルでは使ってこなかったポケモンか!」
「そうだ」
シゲルが笑う。
「だけど、こっちも負けない!」
「フシギバナ!」
* * *
「バトル再開!」
「ギャロップ、こうそくいどう!」
「ヒヒーン!」
ギャロップが一瞬で走り出す。
「フシギバナ、パワーウィップ!」
「フシギバナ!」
太いツルが伸びる。
しかし、ギャロップは素早くかわした。
「みだれづき!」
「ヒヒーン!」
ギャロップが一気に距離を詰める。
ドドドドッ!
「フシギバナ!」
何度も角を突かれ、フシギバナが吹き飛ばされる。
「立て!」
「フシギ……!」
フシギバナは立ち上がる。
「ヘドロばくだん!」
「フシギバナ!」
紫色の弾が飛ぶ。
「ギャロップ、こうそくいどう!」
ギャロップは攻撃をかわし、そのまま地面へ潜った。
「ドリルライナー!」
ズドン!
ギャロップがフシギバナの足元から飛び出す。
「フシギバナ!」
ドンッ!
フシギバナが吹き飛ばされた。
マサヒロはギャロップの動きを見つめる。
「速い……」
ギャロップは高速で走りながら相手を翻弄し、隙を見つけて近距離から攻撃している。
「まるで俺のスピアーみたいだ……!」
シゲルが笑う。
「そうだろ?」
「……!」
「このギャロップを連れてきた理由さ」
シゲルはギャロップを見る。
「こいつは、お前のスピアー対策だよ」
「スピアー対策……」
「前のバトルでは一杯食わされたからね」
「だから、スピアーのように素早く動いて、近距離から攻撃できるポケモンを用意したのさ」
「……!」
マサヒロは拳を握る。
「やっぱり……!」
「ん?」
「俺、そうだと思ってたんだ!」
マサヒロはギャロップを見る。
「お前は前に負けたポケモンを研究して、次のバトルでは対策してくるんじゃないかって!」
「それが本当に当たってたんだってな!」
シゲルはニヤリと笑う。
「そこまで考えてたとはね」
「もちろん!」
マサヒロは胸を張る。
「シゲルは俺に勝つために、本気で考えてくるだろ?」
「ああ」
シゲルは即答する。
「リーグで勝ち上がるなら、相手を研究するのは当然だ」
「……だったら、俺だって負けない!」
「フシギバナ!」
* * *
「フシギバナ、ヘドロばくだん!」
「フシギバナ!」
紫色の弾が飛ぶ。
「ギャロップ、こうそくいどう!」
「ヒヒーン!」
ギャロップが攻撃をかわす。
「ドリルライナー!」
「ヒヒーン!」
ギャロップが地面へ潜る。
「フシギバナ、気をつけろ!」
ズドン!
ギャロップが飛び出し、フシギバナを吹き飛ばす。
「フシギバナ!」
「パワーウィップ!」
「フシギバナ!」
太いツルが伸びる。
だが――
「こうそくいどう!」
ギャロップがかわす。
「みだれづき!」
ドドドドッ!
「フシギバナ!」
フシギバナが再び吹き飛ばされる。
「立て!」
「フシギ……!」
フシギバナは立ち上がるが、足元はふらついている。
ギャロップはまだ余裕がある。
「……このままじゃ、負ける」
マサヒロはフシギバナを見る。
「フシギバナ、戻れ!」
「フシギ……!」
フシギバナがボールへ戻っていく。
「よく頑張った」
マサヒロはボールを握る。
「ここは交代だ!」
* * *
「次は誰だ?」
シゲルが構える。
マサヒロは最後のモンスターボールを取り出した。
「行け、ウインディ!」
「ウオォォン!」
巨大なウインディがフィールドへ現れる。
「ウインディ!」
マサヒロは拳を握る。
「ここから逆転するぞ!」
「ウオォン!」
マサヒロはギャロップを見る。
そして、ウインディを見る。
「よし……!」
「かえんほうしゃ!」
「ウオォン!」
ウインディの口から巨大な炎が放たれる。
「ギャロップ!」
炎がギャロップを包み込む。
しかし――
「……え?」
炎が消える。
ギャロップは傷一つ負っていない。
それどころか、身体からさらに強い炎が噴き上がっていた。
「な、なんだよ、それ!?」
シゲルがニヤリと笑う。
「知らなかったのか?」
「……何を?」
「こいつの特性は、もらいびだ」
「もらいび……?」
「ほのおタイプの技を受けると、炎を吸収して自分の力にする」
「……!」
マサヒロは言葉を失う。
シゲルが笑う。
「同じほのおタイプなら相性は互角――」
「そう考えたんだろ?」
「……!」
「残念だったね、マサヒロ」
「くっ……!」
マサヒロは拳を握る。
「……だったら!」
マサヒロはウインディを見る。
「炎が効かないなら、別の技で戦えばいい!」
「ウインディ!」
* * *
「ウインディ、しんそく!」
「ウインディ!」
一瞬でウインディが駆け出す。
ドンッ!
ギャロップへ突撃する。
「ギャロップ!」
ギャロップが吹き飛ばされる。
「もう一度、しんそく!」
「ウインディ!」
ギャロップもこうそくいどうで応戦する。
二匹がフィールドを駆け回る。
「みだれづき!」
「ヒヒーン!」
「ウインディ、避けろ!」
ウインディが身体をひねり、攻撃をかわす。
「今だ!」
「かみくだく!」
「ウインディ!」
ガブッ!
ギャロップが大きくよろめく。
「まだだ!」
シゲルが叫ぶ。
「だいもんじ!」
「ヒヒーン!」
巨大な炎が放たれる。
「ウインディ、しんそく!」
「ウオォォン!」
ウインディが炎を紙一重でかわす。
そして――
「かみくだく!」
ドォン!
ウインディの攻撃がギャロップへ直撃する。
「ギャロップ……!」
ギャロップがよろめく。
だが、倒れない。
「まだだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「ウインディ、もう一度しんそく!」
「ウオォォン!」
ウインディが一直線に駆け出す。
ギャロップも同時に走り出す。
「ギャロップ、みだれづき!」
「ヒヒーン!」
「ウインディ、かみくだく!」
「ウオォォン!」
二匹が正面から激突する。
ドォォン!!
「ウインディ!」
「ギャロップ!」
二匹とも吹き飛ばされる。
「立て、ウインディ!」
「ウオォ……!」
ウインディが立ち上がろうとする。
しかし、足に力が入らない。
同じように、ギャロップも身体を起こそうとしていた。
「ギャロップ……!」
シゲルが叫ぶ。
二匹は互いに立ち上がろうとする。
だが――
ドサッ。
ウインディが倒れた。
その直後。
ドサッ。
ギャロップも倒れた。
「……!」
フィールドが静まり返る。
審判が二匹を確認する。
そして――
「ウインディ、戦闘不能!」
「ギャロップ、戦闘不能!」
「両者、戦闘不能!」
「……相打ちか!」
マサヒロが拳を握る。
「ウインディ……!」
マサヒロはウインディのもとへ駆け寄る。
「よくやった!」
「ウオォ……」
ウインディは力なく鳴く。
シゲルもギャロップのもとへ歩いていく。
「よく頑張ったな」
「ヒヒ……」
ギャロップも小さく鳴いた。
シゲルはギャロップをボールへ戻す。
「これで、互いに残り一匹だな」
マサヒロもウインディをボールへ戻す。
そして、二つのモンスターボールを見る。
一つはフシギバナ。
もう一つは――。
シゲルが最後のモンスターボールを取り出した。
「……これで最後だ」
マサヒロもフシギバナのボールを握る。
「俺も、最後の一匹だ」
二人の視線がぶつかる。
「ここまで来たな、シゲル」
「ああ」
シゲルが笑う。
「次で決めよう」
マサヒロも拳を握る。
「絶対に勝つ!」
岩場のフィールドに、再び大きな歓声が響き渡った。
いよいよ、最後の一匹同士の戦いが始まろうとしていた。
ウインディの特性はいかくの為、ほのお技を無効にはできません。