ポケモンリーグ。
予選を終えたマサヒロたちは、会場の大きなモニターの前に集まっていた。
「それでは、予選を勝ち抜いたトレーナーを発表します!」
会場にアナウンスが響く。
モニターに、次々と名前が表示されていく。
「……」
マサヒロは自分の名前を探す。
そして――
「……あった!」
そこには、はっきりと表示されていた。
『マサヒロ』
「よし!」
マサヒロは拳を握る。
「これで決勝リーグに出られる!」
イーブイも嬉しそうに跳ねる。
「イーブイ!」
「ここまで来たんだ。絶対に優勝してやるぞ!」
「イーブイ!」
その時。
「……あっ!」
マサヒロの目が別の名前を捉えた。
『サトシ』
「サトシも勝ち上がってる!」
マサヒロは思わず笑顔になる。
「よかった……!」
イーブイもモニターを見る。
「イーブイ!」
「これで、リーグでも戦えるな!」
マサヒロはホッと息を吐いた。
そして、もう一つの名前を探す。
「……リョウは……」
しばらくして。
「あった!」
『リョウ』
「リョウも勝ち上がってる!」
「イーブイ!」
マサヒロは嬉しそうに笑う。
「よかったな……」
予選を突破できるか。
そんな心配は、もう必要なかった。
マサヒロ自身は決勝リーグへの進出を決めている。
だからこそ――
「サトシも、リョウも一緒に進めたんだ」
マサヒロは拳を握る。
「これで、決勝リーグでまた戦える!」
「イーブイ!」
その頃。
少し離れた場所では、サトシとピカチュウもモニターを見上げていた。
「よっしゃあ!」
サトシが拳を突き上げる。
「決勝リーグ進出だ!」
「ピカ!」
そして、その近くにはリョウとサンドの姿もあった。
「俺も進めたな」
「サンド!」
リョウはサンドの頭を撫でる。
「マサヒロとまた戦える」
「サンド!」
三人の目標は、同じだった。
――ポケモンリーグ優勝。
* * *
その後。
決勝リーグの組み合わせが発表された。
「決勝リーグ第一回戦の組み合わせを発表します!」
会場が静まり返る。
モニターに、対戦表が映し出されていく。
「第一試合!」
『マサヒロ VS ゴウジ』
「……ゴウジ?」
マサヒロは知らない名前だった。
「俺の最初の相手か……」
イーブイが隣で鳴く。
「イーブイ!」
「よし!」
マサヒロは拳を握った。
「絶対に勝つぞ!」
「イーブイ!」
* * *
その日の夜。
宿泊施設へ戻る道を、マサヒロとイーブイは歩いていた。
「明日は決勝リーグ第一回戦か……」
マサヒロは空を見上げる。
「相手がどんな奴でも、俺たちは負けないぞ」
「イーブイ!」
その時だった。
「おい」
後ろから声が聞こえた。
「……ん?」
マサヒロが振り返る。
そこには、一人の少年が立っていた。
腕を組み、こちらを見下ろしている。
「お前がマサヒロか?」
「そうだけど……」
「俺はゴウジ」
少年はニヤリと笑った。
「明日の対戦相手だ」
「……!」
マサヒロは身構える。
ゴウジはイーブイを見る。
「お前、そのポケモンで出るつもりか?」
「もちろん」
「やめておけ」
ゴウジは鼻で笑った。
「お前じゃ俺には勝てない」
「……なんだと?」
ゴウジは冷たい目で言った。
「今のうちに棄権した方がいい」
「ふざけるな!」
マサヒロが怒る。
「俺は絶対に棄権なんかしない!」
イーブイもゴウジを睨む。
「イーブイ!」
その時だった。
「……グルルル……」
マサヒロの後ろから、低い唸り声が聞こえた。
「ん?」
マサヒロが振り返る。
モンスターボールから、ウインディが出てきていた。
「ウインディ?」
ウインディはゴウジを睨みつけている。
「グルルル……」
ゴウジの顔が変わった。
「……そのウインディ」
「え?」
ゴウジはウインディをじっと見つめる。
「お前……もしかして、あの時のガーディか?」
「……!」
マサヒロは驚く。
「知ってるのか?」
ゴウジは少し黙った。
そして――
「……ああ」
「昔、俺が持っていたガーディだ」
「!」
マサヒロはウインディを見る。
ウインディもゴウジを睨んでいた。
「じゃあ……」
マサヒロの頭に、あの時の光景が浮かぶ。
傷だらけの身体。
怯えた目。
人間に近づかれることを恐れていたガーディ。
それでも、少しずつ心を開いてくれた。
「……お前だったのか」
マサヒロはゴウジを見る。
「こいつを傷つけたのは……」
「俺は知らない」
ゴウジは冷たく答えた。
「弱かったから捨てただけだ」
「……!」
マサヒロの拳が震える。
「弱かった?」
「ああ」
ゴウジはウインディを見る。
「言うことも聞かないし、バトルでも勝てなかった」
「だからいらなくなった」
「……ふざけるな」
マサヒロが低い声で言う。
「何だと?」
「こいつは弱くなんかない!」
マサヒロはウインディの前に立った。
「こいつと初めて会った時、傷だらけだった」
「人間のことも怖がってた」
「それでも、少しずつ俺たちを信じてくれたんだ!」
ウインディがマサヒロを見る。
「お前は、こいつを信じなかったんだろ?」
「……」
「自分がうまく戦えなかったからって、ウインディのせいにしただけだ!」
ゴウジの表情が険しくなる。
「何を……!」
「こいつの力を引き出せなかったのは、お前の方だ!」
マサヒロは叫ぶ。
「ウインディは、俺たちの大切な仲間だ!」
「ウインディ!」
ウインディが力強く吠える。
「お前みたいな奴に、ウインディを馬鹿にする資格なんてない!」
「……!」
ゴウジは拳を握る。
「そこまで言うなら……」
ゴウジはマサヒロを睨む。
「明日のバトルで思い知らせてやる」
「望むところだ!」
マサヒロも睨み返す。
「俺は絶対に負けない!」
「覚えておけ」
ゴウジは背を向ける。
「明日、泣くことになるぞ」
そう言い残して、ゴウジは去っていった。
「……」
マサヒロはその背中を見つめる。
そして、ウインディを見る。
「ウインディ……」
「ウインディ」
マサヒロはウインディの頭を撫でた。
「もう大丈夫だ」
「……」
「お前には俺がいる」
ウインディが顔を上げる。
「それに、イーブイも、フシギバナも、スピアーも、ギャラドスも、プテラもいる」
「ウインディ!」
「みんな、お前の仲間だ」
ウインディは力強く吠えた。
「明日は一緒に戦おう」
「ウインディ!」
マサヒロは拳を握る。
「絶対に勝つぞ!」
「イーブイ!」
「ウインディ!」
夜の街に、二匹の声が響いた。
明日は――
ポケモンリーグ決勝リーグ、第一回戦。
マサヒロとウインディにとって、因縁の相手との戦いが始まる。