ポケットモンスターブラウン   作:光宙

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5話 ライバル登場!釣り上げたのはミニリュウ!?

ハナダシティを出発して、しばらく経った。

 

マサヒロは道を歩きながら、腰に付けたバッジケースを眺めていた。

 

中には二つのバッジ。

 

ニビジムで手に入れたグレーバッジ。

 

そして、ハナダジムで手に入れたハナダバッジ。

 

「二つか……」

 

マサヒロはニヤリと笑う。

 

「結構集まってきたな!」

 

「ブイ!」

 

隣を歩くイーブイも嬉しそうに鳴く。

 

少し後ろでは、フシギソウとスピアーも歩いている。

 

「フシギソウ!」

 

「スピアー!」

 

「お前たちも頑張ってくれたからな!」

 

マサヒロは二匹を振り返る。

 

「次のジムも、みんなで勝つぞ!」

 

「ソウ!」

 

「スピアー!」

 

「ブイ!」

 

三匹の元気な声が返ってきた。

 

その時だった。

 

「……ん?」

 

道の先に、大きな湖が見えた。

 

湖の周りには何人ものトレーナーが集まっている。

 

「なんだ?」

 

近づいてみると、どうやらみんな釣りをしているようだった。

 

「ポケモン釣りか!」

 

マサヒロの目が輝く。

 

「面白そうだな!」

 

* * *

 

「……あれ?」

 

湖のほとりまで来たところで、マサヒロは見覚えのある後ろ姿を見つけた。

 

茶色の髪。

 

自信満々な立ち方。

 

腰にはいくつものモンスターボール。

 

「まさか……」

 

その少年が振り返った。

 

「……やっぱりマサヒロか」

 

「!」

 

マサヒロは目を見開いた。

 

「シゲル!」

 

「久しぶり」

 

そこにいたのは、幼い頃から何度も顔を合わせてきた少年――シゲルだった。

 

「お前、こんなところにいたのかよ!」

 

「僕だって旅をしてるんだから、どこにいてもおかしくないでしょ」

 

「まあ、それはそうだけど……」

 

マサヒロはシゲルの腰を見る。

 

「……なあ」

 

「何?」

 

「そのモンスターボール、何個あるんだ?」

 

シゲルは得意げに笑った。

 

「気になる?」

 

「別に!」

 

「じゃあ教えない」

 

「なんだよそれ!」

 

シゲルが笑う。

 

「冗談だよ」

 

そして、自分の捕まえたポケモンについて話し始めた。

 

「僕は旅を始めてから、もう何匹も捕まえてるよ」

 

「何匹も!?」

 

「うん」

 

シゲルはボールをいくつか見せる。

 

「水タイプも結構いる」

 

「……」

 

マサヒロは自分のポケモンを見る。

 

イーブイ。

 

フシギソウ。

 

スピアー。

 

三匹。

 

もちろんイーブイは幼い頃から一緒だった。

 

フシギソウも、もともとはオーキド博士から貰ったフシギダネ。

 

そして自分で捕まえたのは、スピアーだけ。

 

シゲルがマサヒロの腰を見る。

 

「マサヒロは?」

 

「俺だって三匹いるぞ!」

 

「三匹?」

 

「イーブイとフシギソウとスピアー!」

 

「……」

 

シゲルは少し考える。

 

そして――

 

「つまり、自分で捕まえたのはスピアーだけ?」

 

「……!」

 

マサヒロの眉がピクリと動く。

 

「そうだけど……」

 

「へえ」

 

シゲルはニヤッと笑った。

 

「少ないね」

 

「うるさい!」

 

「僕はもっと捕まえてるよ」

 

「……!」

 

マサヒロは拳を握った。

 

「シゲル……!」

 

シゲルは昔からそうだった。

 

何をやらせてもマサヒロより先に行く。

 

勉強でも。

 

ポケモンの知識でも。

 

そして今度は、ポケモンを捕まえた数まで。

 

マサヒロはシゲルを追い越したい。

 

いつか絶対に勝ちたい。

 

それは幼い頃から変わらない。

 

だからこそ――

 

「……俺だって捕まえる!」

 

「ん?」

 

「俺だって、もっとポケモンを捕まえてやる!」

 

シゲルは湖を見る。

 

「だったら釣りでもする?」

 

「釣り?」

 

「ここなら水タイプのポケモンがたくさんいるみたいだから」

 

シゲルは釣り竿を持ち上げた。

 

「どっちがたくさん釣れるか勝負しようよ」

 

「……!」

 

マサヒロの目が輝く。

 

「いいぞ!」

 

「後悔しないでね?」

 

「するわけないだろ!」

 

イーブイが二人を見ながら首を傾げる。

 

「ブイ?」

 

「イーブイ、見てろよ!」

 

マサヒロは釣り竿を握る。

 

「シゲルには絶対負けない!」

 

「へえ」

 

シゲルは笑った。

 

「その意気込み、いつまで続くかな?」

 

* * *

 

二人は湖のほとりに並んで座った。

 

釣り糸を水面へ垂らす。

 

「それじゃあ、始めようか」

 

「よし!」

 

「……」

 

「……」

 

静かな時間が流れる。

 

マサヒロはじっと水面を見つめる。

 

「……」

 

まだ来ない。

 

隣を見る。

 

シゲルもじっと竿を見ている。

 

「……」

 

突然。

 

シゲルの竿が動いた。

 

「来た!」

 

「えっ!?」

 

シゲルが竿を引く。

 

「よっと!」

 

水面から飛び出してきたのはコイキングだった。

 

「コイキングか」

 

シゲルは慣れた手つきでモンスターボールを投げる。

 

「ゲット!」

 

「くっ……!」

 

マサヒロの竿は動かない。

 

「まだだ!」

 

しばらくすると――

 

「また来た」

 

「早っ!」

 

シゲルが竿を引く。

 

今度はトサキント。

 

「ゲット」

 

「……」

 

さらに少しすると――

 

「また来たよ」

 

「また!?」

 

ニョロモ。

 

そして――

 

「これで三匹目」

 

シゲルは余裕そうに笑った。

 

「マサヒロは?」

 

「……まだ」

 

「一匹も?」

 

「まだだ!」

 

「そっか」

 

シゲルは笑う。

 

「釣りって、才能が出るんだよね」

 

「……!」

 

「まあ、頑張ってよ」

 

「言われなくても頑張ってる!」

 

シゲルは釣ったポケモンをボールに戻す。

 

「じゃあ僕は先に行くね」

 

「待てよ!」

 

「何?」

 

「まだ勝負は終わってない!」

 

「でも、もう勝負になってないじゃない」

 

「……!」

 

シゲルは背を向ける。

 

「じゃあね、マサヒロ」

 

「シゲル!」

 

シゲルは振り返る。

 

「次に会った時には、もう少しポケモンを増やしておくといいよ」

 

「……!」

 

「じゃあね」

 

シゲルはそのまま歩いていった。

 

「……」

 

マサヒロはシゲルの背中を睨む。

 

「……絶対に追いついてやる」

 

イーブイがマサヒロを見る。

 

「ブイ……」

 

「まだ終わってないぞ」

 

マサヒロは竿を握り直す。

 

「俺は絶対にポケモンを捕まえる!」

 

* * *

 

時間が経った。

 

太陽が少しずつ傾いていく。

 

「……」

 

マサヒロはまだ釣りを続けていた。

 

「……」

 

一匹も釣れない。

 

フシギソウは途中で眠ってしまった。

 

スピアーも木の枝で休んでいる。

 

それでもイーブイだけはマサヒロの隣にいた。

 

「ブイ?」

 

「大丈夫だ」

 

マサヒロは湖を見つめる。

 

「俺はシゲルに負けたくないんだ」

 

「……」

 

「いつか絶対に、あいつを超える」

 

マサヒロは幼い頃を思い出す。

 

いつも先に行っていたシゲル。

 

そして、もう一人。

 

「……サトシとは違うんだ」

 

「ブイ?」

 

マサヒロは呟く。

 

「サトシはまだまだだよ」

 

幼馴染のサトシ。

 

昔から一緒に遊んできた。

 

けれど――

 

「俺のライバルはシゲルだ」

 

マサヒロは竿を握りしめる。

 

「サトシなんかに負ける気はしないけど……シゲルには絶対負けたくない」

 

その瞬間。

 

竿が大きく動いた。

 

「……!」

 

マサヒロが顔を上げる。

 

「来た……?」

 

竿が大きくしなる。

 

「来たぁぁぁぁ!!」

 

「ブイ!?」

 

マサヒロは立ち上がる。

 

「重い!」

 

竿が引っ張られる。

 

「くっ……!」

 

両手で必死に竿を握る。

 

「逃がすかぁぁぁ!」

 

水面から何かが飛び出した。

 

「うわっ!」

 

ドサッ!

 

地面に落ちたポケモンを見て、マサヒロは固まった。

 

「……え?」

 

そこにいたのは――

 

青い体。

 

白い腹。

 

長い身体。

 

大きな耳。

 

「……ミニリュウ?」

 

マサヒロは慌てて図鑑を取り出す。

 

図鑑がミニリュウの情報を表示する。

 

「ミニリュウ……ドラゴンタイプ……」

 

マサヒロは目を見開いた。

 

「ドラゴンタイプ!?」

 

「ブイ!?」

 

二人とも驚く。

 

「す、すげえ……!」

 

マサヒロはミニリュウを見る。

 

「俺、ミニリュウを釣ったのか!?」

 

しかし――

 

ミニリュウは動かなかった。

 

「……ん?」

 

マサヒロはしゃがみ込む。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「ミニ……」

 

ミニリュウの声は弱々しい。

 

「……」

 

マサヒロは心配そうにミニリュウを見る。

 

すると――

 

ぐぅぅぅ……。

 

「……」

 

マサヒロは目を丸くした。

 

「腹減ってるのか?」

 

「ミニ……」

 

ミニリュウは恥ずかしそうに顔を背ける。

 

「なんだよ」

 

マサヒロは笑った。

 

「だったら、早く言えよ」

 

マサヒロはバッグを開ける。

 

「ほら」

 

ポケモンフーズを取り出し、ミニリュウの前に置く。

 

「食べていいぞ」

 

ミニリュウは少し警戒する。

 

「大丈夫だって」

 

マサヒロは少し離れて座る。

 

「俺は何もしないから」

 

ミニリュウはゆっくり近づく。

 

そして――

 

パクッ。

 

「!」

 

次の瞬間。

 

パクパクパクッ!

 

ミニリュウは夢中になってフードを食べ始めた。

 

「お、おい!」

 

マサヒロは思わず笑う。

 

「そんなに腹減ってたのかよ!」

 

「ブイ!」

 

イーブイも安心したように鳴く。

 

やがて、ミニリュウはフードを全部食べ終えた。

 

「もうないぞ」

 

「ミニ……」

 

ミニリュウはマサヒロを見つめる。

 

そして――

 

トコトコ。

 

マサヒロの足元まで歩いてくる。

 

「……?」

 

ミニリュウはマサヒロの足に身体を寄せた。

 

「お前……」

 

マサヒロは驚く。

 

「俺についてくるのか?」

 

「ミニリュウ!」

 

ミニリュウは嬉しそうに鳴いた。

 

「……そっか」

 

マサヒロはミニリュウの頭を優しく撫でる。

 

「じゃあ、一緒に来るか?」

 

「ミニ!」

 

ミニリュウは嬉しそうに頷いた。

 

「よし!」

 

マサヒロはモンスターボールを取り出す。

 

「それじゃあ――」

 

ボールをミニリュウに向ける。

 

「これからよろしくな!」

 

マサヒロがボールを投げる。

 

ポンッ!

 

ミニリュウがボールの中へ入る。

 

ボールが地面に落ちた。

 

コロッ。

 

コロッ。

 

そして――

 

カチッ。

 

「……!」

 

マサヒロは目を見開く。

 

「やった……」

 

ボールを拾い上げる。

 

「やったぞ!」

 

マサヒロは大きく拳を突き上げた。

 

「ミニリュウ、ゲットだ!」

 

「ブイ!」

 

「ソウ!」

 

「スピアー!」

 

仲間たちも嬉しそうに声を上げる。

 

マサヒロはボールを見つめる。

 

「俺が……自分で捕まえた二匹目のポケモン……」

 

しかもミニリュウ。

 

偶然とはいえ、とんでもなく珍しいポケモンだ。

 

「へへっ……」

 

マサヒロは嬉しそうに笑う。

 

「これでシゲルにも――」

 

そこまで言って、マサヒロは少し考える。

 

「……いや」

 

そして、前を向いた。

 

「次に会った時に見せてやればいい」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「シゲル!」

 

「俺は絶対にお前を超えてやる!」

 

「ブイ!」

 

イーブイが元気よく返事をする。

 

「もちろん、お前も一緒だからな」

 

「ブイ!」

 

マサヒロはイーブイの頭を撫でる。

 

「ミニリュウも仲間になった」

 

腰には四つのモンスターボール。

 

最初から一緒だったイーブイ。

 

博士から貰ったフシギソウ。

 

自分で捕まえたスピアー。

 

そして今日、新たに仲間になったミニリュウ。

 

「よし!」

 

マサヒロは歩き出す。

 

「次はクチバシティだ!」

 

「ブイ!」

 

夕暮れの道を、マサヒロたちは歩いていく。

 

* * *

 

その頃。

 

少し離れた道を歩いていたシゲルは、ふと足を止めた。

 

「……そういえば」

 

シゲルは後ろを振り返る。

 

「マサヒロ、まだ釣りしてるのかな?」

 

少し考える。

 

「まあ、あいつのことだから、意地になって続けてそうだけど」

 

シゲルは小さく笑った。

 

「次に会った時、何匹増えてるか楽しみだな」

 

そして再び歩き始める。

 

幼い頃から続いてきた二人の競争はまだ始まったばかりだった。

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