ポケットモンスターブラウン   作:光宙

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50話 完全勝利!因縁のウインディ!

その夜。

 

マサヒロは宿泊施設の部屋へ戻ってきた。

 

「……よし」

 

机の上に、手持ちのモンスターボールを並べる。

 

「明日はゴウジとのバトルだ」

 

イーブイが隣に座っている。

 

「イーブイ!」

 

マサヒロは一つのボールを手に取った。

 

「決勝リーグは、準々決勝までは三対三」

 

「イーブイ!」

 

「だったら……」

 

マサヒロは三つのボールを見る。

 

「最初の一匹は、ウインディだ」

 

ウインディのボール。

 

マサヒロは静かに見つめる。

 

「ゴウジと因縁があるのは、お前だからな」

 

「……」

 

「絶対に勝たせてやる」

 

そして、二つ目のボール。

 

「二匹目はギャラドス」

 

「ギャラ……」

 

ボールの中から低い声が聞こえる。

 

「今の俺たちの手持ちで、最高戦力の一匹だ」

 

マサヒロは拳を握る。

 

そして最後。

 

「三匹目は……イーブイ!」

 

「イーブイ!」

 

イーブイが元気よく立ち上がる。

 

「お前も絶対に出てもらう」

 

「イーブイ!」

 

マサヒロは三つのボールを見つめる。

 

ウインディ。

 

ギャラドス。

 

イーブイ。

 

「この三匹でいく」

 

「イーブイ!」

 

「目指すのは――」

 

マサヒロは拳を強く握った。

 

「完全勝利だ!」

 

「イーブイ!」

 

マサヒロの目に、強い闘志が宿る。

 

「ゴウジには絶対に負けない」

 

「ウインディにも、ギャラドスにも、イーブイにも!」

 

「思いっきり戦ってもらう!」

 

マサヒロはベッドへ入る。

 

しかし――

 

なかなか眠れなかった。

 

「明日は……絶対に勝つ」

 

マサヒロは天井を見つめる。

 

そして、静かに拳を握った。

 

* * *

 

翌日。

 

ポケモンリーグ、決勝リーグ第一回戦。

 

会場には、大勢の観客が集まっていた。

 

「いよいよだ……!」

 

マサヒロがフィールドへ入る。

 

反対側から、ゴウジも現れた。

 

「……」

 

二人の視線がぶつかる。

 

「昨日はよくも言ってくれたな」

 

ゴウジが言う。

 

「今日こそ、お前に思い知らせてやる」

 

「俺だって負けるつもりはない」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「ウインディのためにも、絶対に勝つ!」

 

審判が中央へ立つ。

 

「これより、決勝リーグ第一回戦!」

 

「マサヒロ選手対ゴウジ選手のバトルを開始します!」

 

「使用ポケモンは三匹!」

 

「先に三匹すべてを戦闘不能にした方が勝者です!」

 

「それでは――」

 

「バトル、スタート!」

 

「行け!」

 

「ギャラドス!」

 

「ギャラァァァ!」

 

巨大なギャラドスがフィールドへ現れる。

 

会場がどよめいた。

 

「いきなりギャラドスだと!?」

 

ゴウジも驚く。

 

「だったら、こっちもいくぞ!」

 

「オニドリル!」

 

「オニィィ!」

 

オニドリルが空へ飛び上がる。

 

「飛行タイプか……」

 

マサヒロはオニドリルを見る。

 

「でも、関係ない!」

 

「ギャラドス!」

 

「最初から全力でいくぞ!」

 

「ギャラ!」

 

「オニドリル、つばさでうつ!」

 

「オニィ!」

 

オニドリルが急降下する。

 

「ギャラドス、こおりのキバ!」

 

「ギャラァ!」

 

ギャラドスが大きく口を開く。

 

青白い冷気が牙を包む。

 

「ガブッ!」

 

「オニドリル!」

 

こおりのキバがオニドリルの翼を直撃する。

 

「オニィィ!」

 

翼が一瞬で凍りついた。

 

「なに!?」

 

ゴウジが目を見開く。

 

「オニドリル!」

 

オニドリルが飛ぼうとする。

 

しかし――

 

「無理だ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「翼が凍ってる!」

 

オニドリルは空中へ上がれない。

 

「くっ……!」

 

ゴウジが歯を食いしばる。

 

「オニドリル、地上から攻撃しろ!」

 

「オニ!」

 

オニドリルが地面を蹴る。

 

「今だ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「アクアテール!」

 

「ギャラァァ!」

 

ギャラドスの尻尾が激しく水をまとい、オニドリルを叩き飛ばす。

 

ドォン!

 

「オニドリル!」

 

オニドリルが地面を転がる。

 

そして――

 

「オニドリル、戦闘不能!」

 

「よし!」

 

マサヒロが拳を握る。

 

「まず一匹!」

 

「ギャラドス!」

 

「ギャラァァ!」

 

ゴウジは悔しそうにボールを握る。

 

「……まだだ」

 

そして、次のボールを投げる。

 

「出ろ!」

 

「エレブー!」

 

「エレブー!」

 

黄色い身体のポケモンが姿を現す。

 

「……」

 

マサヒロはギャラドスを見て一瞬考える。

 

「いや」

 

ボールを取り出す。

 

「ギャラドス、戻れ!」

 

「ギャラ……」

 

ギャラドスがボールへ戻る。

 

「次は――」

 

マサヒロは別のボールを投げた。

 

「イーブイ!」

 

「イーブイ!」

 

イーブイがフィールドへ飛び出す。

 

「エレブーか……」

 

マサヒロはエレブーを見る。

 

「よし!」

 

「イーブイ!」

 

「俺たちのコンビネーションでいくぞ!」

 

「イーブイ!」

 

ゴウジが叫ぶ。

 

「エレブー、でんきショック!」

 

「エレ!」

 

電撃が飛んでくる。

 

「イーブイ、かげぶんしん!」

 

「イーブイ!」

 

一瞬でイーブイの姿が増える。

 

「なに!?」

 

電撃が分身を次々と通り抜ける。

 

「今だ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「でんこうせっか!」

 

「イーブイ!」

 

本物のイーブイが飛び出す。

 

「エレブー、かわし――」

 

「遅い!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「そのまま、アイアンテール!」

 

「イーブイ!」

 

尻尾が鋼のように輝く。

 

ドンッ!

 

「エレブー!」

 

エレブーが吹き飛ぶ。

 

「まだだ!」

 

ゴウジが叫ぶ。

 

「エレブー、かみなりパンチ!」

 

「エレ!」

 

エレブーが接近する。

 

「イーブイ、でんこうせっか!」

 

「イーブイ!」

 

イーブイが横へ飛ぶ。

 

「そのまま後ろへ回れ!」

 

「イーブイ!」

 

一瞬でエレブーの背後へ。

 

「かげぶんしん!」

 

「イーブイ!」

 

再び分身が現れる。

 

「どれが本物だ!?」

 

ゴウジが叫ぶ。

 

「こっちだ!」

 

マサヒロが指示する。

 

一匹のイーブイがエレブーへ向かう。

 

「エレブー、攻撃しろ!」

 

「エレ!」

 

しかし――

 

そのイーブイも消える。

 

「なっ!?」

 

「本物はこっちだ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「でんこうせっか!」

 

「イーブイ!」

 

イーブイが一気に飛び込む。

 

ドォン!

 

でんこうせっかがエレブーを吹き飛ばす。

 

「エレブー!」

 

エレブーは地面へ倒れた。

 

「エレブー、戦闘不能!」

 

「やった!」

 

マサヒロが拳を突き上げる。

 

「これで二匹!」

 

イーブイが嬉しそうにマサヒロのもとへ戻ってくる。

 

「イーブイ!」

 

「すごいぞ!」

 

しかし――

 

ゴウジは震えていた。

 

「……こんなはずでは……」

 

「オニドリルも……エレブーも……」

 

ゴウジは最後のボールを握る。

 

「俺が……こんな簡単に追い詰められるなんて……」

 

そして。

 

「くそっ!」

 

最後のボールを投げる。

 

「出ろ!」

 

「カイリキー!」

 

「カイリキー!」

 

四本の腕を持つカイリキーが姿を現した。

 

「カイリキーか……」

 

マサヒロはイーブイを見る。

 

「イーブイ、戻れ!」

 

「イーブイ!」

 

イーブイがボールへ戻る。

 

そして。

 

「最後は――」

 

マサヒロはウインディのボールを握った。

 

「ウインディ!」

 

「ウインディ!」

 

ウインディがフィールドへ飛び出す。

 

「グルルル……」

 

ウインディはカイリキーを見る。

 

しかし、その視線はカイリキーではなく――

 

その後ろにいるゴウジへ向いていた。

 

「ウインディ……?」

 

マサヒロが気づく。

 

ウインディの身体が震えている。

 

「……グルルル……」

 

「おい」

 

マサヒロが声をかける。

 

「大丈夫か?」

 

「ウインディ!」

 

ウインディが勢いよく飛び出す。

 

「待て!」

 

しかし――

 

「カイリキー、かわせ!」

 

「カイリキー!」

 

カイリキーが横へ飛ぶ。

 

「ウインディ!」

 

ウインディは勢いを止められない。

 

「今だ!」

 

「カイリキー、けたぐり!」

 

「カイリキー!」

 

ドンッ!

 

「ウインディ!」

 

ウインディが地面を転がる。

 

「ウインディ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

ウインディはすぐに立ち上がった。

 

「グルル……!」

 

再びカイリキーへ突っ込む。

 

「ウインディ、しんそく!」

 

「ウインディ!」

 

高速で接近する。

 

しかし――

 

「カイリキー、からてチョップ!」

 

「カイ!」

 

ドンッ!

 

「ウインディ!」

 

また吹き飛ばされる。

 

「くっ……!」

 

マサヒロは歯を食いしばる。

 

「ウインディ、落ち着け!」

 

「ウインディ!」

 

だが、ウインディは止まらない。

 

ゴウジを見ている。

 

かつて自分を捨てた人間。

 

その怒りが、ウインディの動きを狂わせていた。

 

「ウインディ、しんそく!」

 

「グルァ!」

 

「カイリキー、かわせ!」

 

「カイ!」

 

またかわされる。

 

「からてチョップ!」

 

ドゴッ!

 

「ウインディ!」

 

ウインディが大きく吹き飛ばされた。

 

「ウインディ!」

 

マサヒロが駆け寄る。

 

「大丈夫か!?」

 

「……ウインディ」

 

ウインディは苦しそうに立ち上がる。

 

「……」

 

マサヒロはウインディを見る。

 

「お前……」

 

ウインディはゴウジを睨んでいる。

 

「まだ、あいつのことを怒ってるんだな」

 

「……グルル」

 

「そうだよな」

 

マサヒロは静かに言う。

 

「悔しかったよな」

 

ウインディが振り返る。

 

「でも――」

 

マサヒロは笑った。

 

「今はバトル中だぞ」

 

「……」

 

「ゴウジに勝つことばかり考えたら、カイリキーが見えなくなる」

 

「ウインディ……」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「リラックスしよう」

 

「……?」

 

「怒らなくていい」

 

「深呼吸して」

 

ウインディはゆっくり息を吐く。

 

「そうだ」

 

マサヒロは笑う。

 

「お前は弱くなんかない」

 

「俺はお前を信じてる」

 

「だから――」

 

マサヒロは前を指差した。

 

「目の前のカイリキーだけを見ろ!」

 

「ウインディ……!」

 

ウインディの目に、力が戻る。

 

「グルル……」

 

そして――

 

「ウインディ!」

 

力強く吠えた。

 

「そうだ!」

 

マサヒロも笑う。

 

「俺たちは一緒だ!」

 

「ウインディ!」

 

ゴウジが叫ぶ。

 

「何をしている!」

 

「カイリキー、クロスチョップ!」

 

「カイリキー!」

 

カイリキーが突っ込んでくる。

 

「ウインディ、しんそく!」

 

「ウインディ!」

 

ウインディが一瞬で加速する。

 

「かわせ!」

 

カイリキーの攻撃を紙一重でかわす。

 

「そのまま――」

 

マサヒロは叫ぶ。

 

「かみくだく!」

 

「ウインディ!」

 

ガブッ!

 

「カイリキー!」

 

カイリキーがよろめく。

 

「まだだ!」

 

ゴウジが叫ぶ。

 

「カイリキー、ばくれつパンチ!」

 

「カイ!」

 

強烈な拳が迫る。

 

「ウインディ、しんそく!」

 

「ウインディ!」

 

ウインディが横へ飛ぶ。

 

パンチが空を切る。

 

「今だ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「かみくだく!」

 

「ウインディ!」

 

再びカイリキーへ飛び込む。

 

ガブッ!

 

「カイリキー!」

 

カイリキーが大きく吹き飛ばされる。

 

「まだ立てる!」

 

ゴウジが叫ぶ。

 

しかし――

 

カイリキーは立ち上がろうとして、膝をついた。

 

「カイ……」

 

そのまま動かない。

 

審判が確認する。

 

「カイリキー、戦闘不能!」

 

「勝者――」

 

「マサヒロ選手!」

 

「……!」

 

会場から大きな歓声が上がる。

 

「勝ったぁぁぁ!」

 

マサヒロが拳を突き上げる。

 

「完全勝利だ!」

 

「イーブイ!」

 

「ギャラドス!」

 

「ウインディ!」

 

三匹の声が響く。

 

マサヒロはウインディへ駆け寄った。

 

「やったな、ウインディ!」

 

「ウインディ!」

 

マサヒロはウインディの頭を撫でる。

 

「怒ってたけど……最後はちゃんと自分を取り戻したな」

 

「ウインディ!」

 

「やっぱりお前は強いよ」

 

「グルル!」

 

ウインディが嬉しそうに吠える。

 

* * *

 

一方。

 

ゴウジは、その場に立ち尽くしていた。

 

「……どうして」

 

拳を握る。

 

「どうして俺が……」

 

ゴウジはウインディを見る。

 

「よりにもよってあの時捨てたガーディに……」

 

「俺が……負けるなんて……」

 

マサヒロはゴウジを見る。

 

「ゴウジ」

 

「……なんだ」

 

「まだ分からないのか?」

 

「何がだ!」

 

ゴウジが叫ぶ。

 

マサヒロはウインディを見る。

 

「俺とお前の違いだよ」

 

「……」

 

「俺はポケモンを信じてる」

 

「だから、ウインディの怒りも、ちゃんと受け止められた」

 

「そして、ウインディも俺を信じてくれた」

 

マサヒロは拳を握る。

 

「今日の勝負は、ポケモンの強さだけじゃない」

 

「ポケモンを信じる気持ちの差だよ」

 

ゴウジは黙り込む。

 

「……信頼の差」

 

マサヒロは頷く。

 

「お前はウインディを弱いって決めつけて捨てた」

 

「でも、本当は違った」

 

「お前がウインディを信じなかっただけなんだ」

 

「……」

 

ゴウジはウインディを見る。

 

ウインディはもう、ゴウジを睨んでいなかった。

 

ただ、マサヒロの隣に立っている。

 

「……俺は」

 

ゴウジが小さく呟く。

 

「ずっと自分が勝つことしか考えてなかった」

 

「負けたら、弱いポケモンのせいだと思った」

 

「言うことを聞かなければ、使えないポケモンだと思った」

 

拳を握る。

 

「……間違ってた」

 

マサヒロは黙って聞いている。

 

「俺がポケモンを信じてなかったんだ」

 

ゴウジはウインディを見る。

 

「……すまなかった」

 

ウインディは少しだけゴウジを見る。

 

そして――

 

「ウインディ」

 

静かに鳴いた。

 

ゴウジは目を伏せる。

 

「……すまなかった」

 

マサヒロは笑った。

 

「これからは、ちゃんとポケモンを信じてやれよ」

 

「……ああ」

 

ゴウジは頷いた。

 

「もう、同じことはしない」

 

そう言って、ゴウジはボールを握り直す。

 

「俺も……もう一度、ポケモンと向き合ってみる」

 

マサヒロは頷いた。

 

「それなら、きっと強くなれるよ」

 

ゴウジは少しだけ笑った。

 

「……マサヒロ」

 

「ん?」

 

「今日は完敗だった」

 

「……ああ」

 

「でも、次に会った時は――」

 

ゴウジは拳を握る。

 

「もっと強くなってる」

 

マサヒロも拳を握る。

 

「俺だって負けないぞ!」

 

二人の拳がぶつかる。

 

「また、いつか戦おう」

 

「ああ!」

 

マサヒロはウインディを見る。

 

「その時は、もっと強くなった俺たちで勝負だ!」

 

「ウインディ!」

 

会場には、まだ大きな歓声が響いていた。

 

マサヒロは三つのボールを見る。

 

ギャラドス。

 

イーブイ。

 

そして――ウインディ。

 

「準々決勝も、絶対に勝つぞ!」

 

「イーブイ!」

 

「ギャラドス!」

 

「ウインディ!」

 

ポケモンリーグ。

 

マサヒロの快進撃は――

 

まだ始まったばかりだった。

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