ポケモンリーグ、準々決勝。
控え室のモニターに、組み合わせ表が映し出されていた。
「……え?」
マサヒロは画面を見つめる。
そこに表示されていた名前は――
マサヒロ。
そして。
「サトシ……?」
「イーブイ?」
イーブイも画面を覗き込む。
「俺の次の相手……サトシなのか!」
マサヒロは拳を握る。
幼い頃から知っている友達。
一緒に遊んだこともある。
そして、今では――
自分と同じようにリーグ優勝を目指すライバル。
「……サトシと戦う」
マサヒロの胸が高鳴る。
* * *
その頃。
サトシも対戦表を見ていた。
「マサヒロ……!」
「ピカ!」
ピカチュウが隣で鳴く。
「ついに来たな」
サトシは拳を握る。
「絶対に勝つぞ、ピカチュウ!」
「ピカ!」
そこへ、マサヒロがやって来た。
「サトシ!」
「マサヒロ!」
二人は向かい合う。
「まさか、準々決勝で当たるとはな!」
「ああ!」
マサヒロは笑う。
「でも、ちょうどいい!」
「……?」
「今まで何度も戦ってきたけど、フルバトルでの戦いは初めてだろ?」
サトシも笑った。
「そうだな」
二人の表情が真剣になる。
「俺、手加減しないからな」
「俺もだ」
サトシが拳を握る。
「本気でいく!」
「俺も本気で挑む!」
二人の視線がぶつかる。
「絶対に勝つ!」
「こっちだって!」
ピカチュウとイーブイも、お互いを見つめる。
「ピカ!」
「イーブイ!」
二匹の声が重なった。
* * *
そして――
試合当日。
ポケモンリーグ、準々決勝。
会場は大勢の観客で埋め尽くされていた。
「すごい人だな……」
マサヒロはフィールドへ向かいながら呟く。
その隣にはイーブイ。
「イーブイ!」
「緊張してるか?」
「イーブイ!」
「俺も少しだけな」
マサヒロは笑った。
そしてフィールドへ出る。
反対側から、サトシも姿を現した。
「サトシ!」
「マサヒロ!」
二人はフィールドを挟んで向かい合う。
審判が中央へ立つ。
「これより、ポケモンリーグ準々決勝!」
「マサヒロ選手対サトシ選手のバトルを開始します!」
「準々決勝からは、使用ポケモンは6匹!」
「先に相手の6匹すべてを戦闘不能にした方が勝者です!」
観客から大きな歓声が上がる。
「それでは――」
「バトル、スタート!」
マサヒロはすぐにモンスターボールを取り出した。
「最初から飛ばしていくぞ!」
「イーブイ!」
「ブイ!」
イーブイがフィールドへ飛び出す。
「いきなりイーブイか!」
サトシが驚く。
「だったら、俺はこいつだ!」
サトシがボールを投げる。
「出てこい!」
「ベトベトン!」
「ベトォォ!」
巨大なベトベトンがフィールドへ現れた。
「ベトベトン……!」
マサヒロは身構える。
ベトベトンの身体は、まるで溶けた泥のように流動している。
「イーブイ!」
「ブイ!」
「いくぞ!」
「ベトベトン、ヘドロこうげき!」
「ベトォ!」
大量のヘドロが飛んでくる。
「イーブイ、でんこうせっか!」
「ブイ!」
イーブイが一気に走る。
ヘドロをかわし、そのままベトベトンへ突っ込む。
「そのまま、アイアンテール!」
「ブイッ!」
尻尾が鋼のように輝く。
ドンッ!
「ベトォ……!」
しかし――
ベトベトンの身体が大きくへこむだけだった。
「……効いてない!?」
マサヒロが驚く。
ベトベトンの身体はすぐに元へ戻った。
「ベトベトン!」
「そうだ!」
サトシが得意げに笑う。
「ベトベトンの身体は柔らかいんだ!」
「だから、物理攻撃じゃ大したダメージにならないってわけか……!」
マサヒロは歯を食いしばる。
「そういうこと!」
サトシは拳を握る。
「そのイーブイでも、簡単には勝てないぞ!」
「……」
マサヒロはイーブイを見る。
「イーブイ!」
「ブイ!」
イーブイが立ち上がる。
「だったら、正面から攻撃する必要はない!」
「かげぶんしん!」
「イーブイ!」
シュッ!
イーブイの姿が一気に増える。
「なっ!?」
サトシが目を見開く。
フィールドに何匹ものイーブイが現れる。
「ベトベトン、どれが本物だ!?」
「ベトォ……?」
ベトベトンが辺りを見回す。
「イーブイ!」
分身たちが一斉に走り出す。
右へ。
左へ。
後ろへ。
ベトベトンが腕を伸ばす。
しかし――
「違う!」
サトシが叫ぶ。
ベトベトンが別の分身を狙う。
「そこじゃない!」
また空振り。
「今だ!」
マサヒロが叫ぶ。
「イーブイ、でんこうせっか!」
「ブイッ!」
本物のイーブイが分身の中から飛び出す。
「ベトベトン!」
ドンッ!
ベトベトンが大きくよろめく。
「そのまま!」
マサヒロは拳を握る。
「エボルブラスト!」
「ブイィィィィッ!!」
イーブイの尻尾から、強烈な衝撃波が放たれる。
ドォォォン!!
「ベトベトン!」
ベトベトンの身体が大きく吹き飛ばされる。
そのまま地面へ倒れた。
「ベトベトン、戦闘不能!」
「よし!」
マサヒロが拳を突き上げる。
「一匹目!」
「イーブイ!」
イーブイも嬉しそうに鳴いた。
サトシはベトベトンを見る。
「……やっぱり強いな、イーブイ」
「当たり前だ!」
マサヒロが笑う。
「俺たちは本気だからな!」
「だったら、俺も本気でいく!」
サトシは次のボールを取り出した。
「行け!」
「ゼニガメ!」
「ゼニ!」
ゼニガメがフィールドへ飛び出す。
「ゼニガメか!」
マサヒロはイーブイを見る。
「イーブイ、まだいけるな?」
「イーブイ!」
「よし!」
サトシが叫ぶ。
「ゼニガメ、みずてっぽう!」
「ゼニ!」
シュッ!
水流がイーブイへ飛んでくる。
「イーブイ、でんこうせっか!」
「ブイ!」
イーブイが水流をかわす。
そのままゼニガメへ向かって突っ込む。
「ゼニガメ、たいあたり!」
「ゼニ!」
ゼニガメも正面から突っ込んだ。
「イーブイ!」
「ゼニ!」
ドォン!!
二匹が正面から激突する。
「……!」
マサヒロが目を見開く。
「イーブイ!」
ゼニガメのたいあたりが、でんこうせっかを止めようとする。
しかし――
「ブイィィ!」
イーブイがさらに加速する。
「なっ!?」
サトシが驚く。
イーブイの身体がゼニガメを押し返していく。
「そんな……!」
ゼニガメが少しずつ後ろへ下がる。
「イーブイの特性――」
マサヒロが叫ぶ。
「てきおうりょくだ!」
「ブイ!」
イーブイの攻撃が、さらに強くなる。
「ゼニガメ!」
ドォン!!
ゼニガメが大きく吹き飛ばされた。
「ゼニ!」
「ゼニガメ!」
サトシが叫ぶ。
ゼニガメが地面へ転がる。
「まだだ!」
サトシが叫ぶ。
「ゼニガメ、からにこもる!」
「ゼニ!」
ゼニガメが甲羅へ身を隠す。
「こうそくスピン!」
「ゼニ!」
ゼニガメが高速回転する。
「イーブイ、でんこうせっか!」
「ブイ!」
イーブイが追いかける。
そして――
「エボルブラスト!」
「ブイィィィィッ!!」
至近距離から衝撃波が放たれる。
ドォォォン!!
「ゼニガメ!」
ゼニガメが大きく吹き飛ばされ、そのまま倒れる。
「ゼニガメ、戦闘不能!」
「……!」
サトシが拳を握る。
「これで二匹目……」
マサヒロはイーブイを見る。
「すごいぞ、イーブイ!」
「イーブイ!」
しかし――
イーブイの呼吸が荒くなっていた。
「……?」
マサヒロが気づく。
「イーブイ?」
「ブイ……!」
イーブイは立っている。
だが、明らかに疲れていた。
「エボルブラストを二回……」
マサヒロは呟く。
連続して使えるようになった。
それでも――
エボルブラストはイーブイの体力を大きく消耗させる。
「無理させすぎた……」
マサヒロは拳を握る。
「大丈夫か?」
「ブイ……!」
イーブイはまだ戦えると頷く。
その時。
サトシが三つ目のボールを取り出した。
「まだ終わってないぞ!」
「出てこい!」
「ピジョン!」
「ピジョー!」
ピジョンが空高く飛び上がる。
「飛行タイプか……」
マサヒロはピジョンを見上げる。
そして、足元のイーブイを見る。
「……」
イーブイは呼吸を荒げている。
「イーブイ」
「ブイ……」
マサヒロは少し考える。
「お前には、まだ戦ってもらわないといけない」
「ブイ!」
「でも……」
マサヒロは優しく笑う。
「今は少し休もう」
イーブイがマサヒロを見る。
「イーブイ……」
「戻ってこい!」
マサヒロが呼びかける。
「ブイ!」
タッタッタッ!
イーブイはフィールドを駆け抜ける。
マサヒロの足元まで戻ってくると、そのままマサヒロを見上げた。
「よく頑張ったな」
マサヒロはイーブイの頭を撫でる。
「少し休んでろ」
「イーブイ……!」
イーブイはマサヒロの隣でじっとフィールドを見つめる。
マサヒロは次のモンスターボールを握った。
「じゃあ――」
一つのボールを取り出す。
「次は、お前だ!」
「行け、プテラ!」
「プテラァァァ!」
巨大な翼を持つプテラがフィールドへ飛び出す。
「プテラ!」
マサヒロが拳を握る。
「ここからだ!」
「サトシ、ピジョン!」
「ピジョー!」
二匹の視線がぶつかる。
準々決勝。
マサヒロとサトシ。
二人の本気のフルバトルは――
まだ始まったばかりだった。