ポケモンリーグ準々決勝。
すべての試合が終わった。
スタジアムでは、準決勝へ進む四人の名前が発表されようとしていた。
「これより、準決勝進出選手を発表します!」
会場が静まり返る。
「第一試合!」
スクリーンに名前が映し出される。
「マサヒロ選手!」
「……!」
マサヒロは自分の名前を見つめる。
そして――
「対戦相手は!」
次の名前が表示された。
「リョウ選手!」
「……!」
マサヒロの目が大きく開く。
「リョウ……!」
その瞬間。
反対側の観客席から、一人の少年が立ち上がった。
「マサヒロ!」
「リョウ!」
二人の視線がぶつかる。
リョウは笑った。
マサヒロも笑う。
「やっぱり……こうなったか」
「そうだな」
リョウが頷く。
「俺も、ずっとお前と戦いたかった」
「俺もだ!」
マサヒロは拳を握る。
そして、二人はスタジアムの通路で向かい合った。
「準決勝か……」
マサヒロが呟く。
「ここまで来たな」
「ああ」
リョウはサンドを見る。
サンドもマサヒロをじっと見つめていた。
「俺とサンドは、ここまで来るためにずっと頑張ってきた」
「俺たちもだ」
マサヒロはイーブイを見る。
「イーブイ!」
「それに……」
リョウは少しだけ真剣な表情になる。
「マサヒロ」
「ん?」
「俺、ずっと言おうと思ってたことがあるんだ」
「何だ?」
リョウはマサヒロの目を見る。
「お前は、俺にとって最大のライバルだ」
「……!」
マサヒロは驚いた。
「最大の……ライバル?」
「ああ」
リョウは頷く。
「俺が一番、決着をつけたいと思ってる相手だ」
「……」
マサヒロは黙ってリョウを見る。
「俺たちは最初に会った時から、同じようにバッジを集めてた」
「初めて戦った時も、本気だった」
「それから何度も会って、何度も戦った」
「そのたびに、お互い強くなってきた」
リョウは拳を握る。
「だから俺は、ずっと思ってた」
「いつか必ず、マサヒロに勝ちたいって」
「……リョウ」
マサヒロは少し笑った。
「実は俺もだ」
「え?」
「俺も、お前とは絶対に決着をつけたいと思ってた」
マサヒロはイーブイを見る。
「旅に出たばかりの頃はさ」
「俺にとって、サトシは眼中になかった」
「シゲルは、いつか超えなきゃいけない相手だった」
「……」
「もちろん、今は違う」
マサヒロは笑う。
「サトシもシゲルも、今の俺にとっては対等なライバルだ」
「そうだな」
リョウが頷く。
「でも――」
マサヒロはリョウを見る。
「お前は、最初に会った時からずっと違った」
「……」
「初めて会った時から、俺と同じ場所を目指してた」
「バッジを集めて」
「ポケモンと一緒に強くなって」
「何度だってバトルしてきた」
マサヒロは拳を握る。
「俺にとって、お前はずっと対等なライバルだった」
「……マサヒロ」
「だからさ」
マサヒロは笑う。
「いつの間にか、お前は俺の中でも特別なライバルになってた」
リョウはしばらく黙っていた。
そして――
「……嬉しいよ」
「え?」
「俺も同じ気持ちだから」
リョウは笑った。
「だからこそ、次のバトルでは絶対に負けたくない」
「俺もだ!」
二人は拳を突き合わせる。
「準決勝では、全部出し切ろう」
「もちろん!」
「最後まで、悔いのないバトルをしよう」
「ああ!」
「サンド!」
「イーブイ!」
二匹も互いを見つめる。
「じゃあ、またな」
「うん」
「準決勝で会おう!」
「ああ!」
二人はそれぞれ反対方向へ歩き出す。
マサヒロは何度も振り返りそうになった。
だが――
前を向いた。
「……リョウか」
「ブイ?」
「絶対に負けられないな」
「ブイ!」
マサヒロは拳を握る。
「俺たちも、全力でいこうぜ」
「ブイ!」
* * *
その日の夜。
宿泊している施設の外。
マサヒロとイーブイは、静かに夜空を見上げていた。
「今日は疲れたな」
「ブイ……」
「でも、明日はもっと大変だ」
「ブイ!」
「リョウとの準決勝……」
マサヒロは昼間の会話を思い出す。
「絶対に勝つ」
その時だった。
「マサヒロ!」
「……ん?」
聞き覚えのある声。
マサヒロが振り返る。
「……シバさん!」
そこには、四天王のシバが立っていた。
そして、その隣には――
「バルキー!」
「バルキー!」
バルキーがマサヒロを見るなり、嬉しそうに駆け出した。
「バルキー!」
マサヒロも駆け寄る。
「久しぶりだな!」
「バルキー!」
バルキーがマサヒロの足元へ飛びつく。
「元気だったか?」
「バルキー!」
「そうか、そうか!」
マサヒロは嬉しそうにバルキーの頭を撫でる。
その隣では、イーブイも嬉しそうに鳴いていた。
「イーブイ!」
「バルキー!」
二匹も久しぶりの再会を喜んでいる。
「シバさん、どうしてここに?」
マサヒロが尋ねる。
シバは腕を組み、笑った。
「お前の試合を見ていた」
「え?」
「予選リーグ突破だけでも大したものだ」
シバは真剣な表情になる。
「だが、そこからさらに勝ち上がり、ついに準決勝まで来た」
「……」
「よくここまで成長したな、マサヒロ」
「ありがとうございます!」
マサヒロは嬉しそうに笑う。
シバは頷いた。
「だが、ここから先は今まで以上に厳しい戦いになる」
「分かってます」
「ならば――」
シバは拳を握る。
「最後まで悔いを残すな!」
「自分の力を、すべて出し切れ!」
「はい!」
マサヒロも拳を握る。
「絶対に、最後まで全力で戦います!」
「それでこそ、ポケモントレーナーだ!」
シバが豪快に笑う。
「バルキーも、そう思うだろう?」
「バルキー!」
バルキーが力強く拳を突き上げる。
「バルキー?」
マサヒロがバルキーを見る。
バルキーは自分の拳を見つめた。
そして――
マサヒロへ向かって拳を突き出す。
「バルキー!」
「……」
マサヒロは笑った。
「もっと強くなるってことか?」
「バルキー!」
「シバさんのところで?」
「バルキー!」
シバが頷く。
「こいつは、まだまだ強くなれる」
「だから、俺のもとで更なる修行を続けるつもりだ」
「そっか……」
マサヒロは少し寂しそうに笑う。
「でも、お前ならもっと強くなれるよな」
「バルキー!」
「俺も負けないぞ」
「バルキー!」
イーブイも前へ出る。
「イーブイ!」
「バルキー!」
二匹が拳を合わせる。
「次に会う時は――」
マサヒロが言う。
「誰にも負けないくらい強くなってろよ!」
「バルキー!」
「俺たちも、もっと強くなってるからな!」
「イーブイ!」
バルキーが大きく頷く。
「バルキー!」
そして、マサヒロへ拳を向ける。
「その時はまた一緒に戦おうって?」
「バルキー!」
マサヒロはその拳に、自分の拳を合わせた。
「約束だ!」
「バルキー!」
イーブイも二人の間に入る。
「ブイ!」
「ははっ!」
マサヒロは笑った。
「じゃあ、それまでお互い頑張ろうな!」
「バルキー!」
シバが満足そうに頷く。
「いい顔になったな、マサヒロ」
「え?」
「出会った頃のお前とは、目が違う」
「……」
「強くなったのは、ポケモンだけではないようだな」
マサヒロは少し照れながら笑う。
「俺も、まだまだですよ」
「そうだ」
シバは頷く。
「だからこそ、最後まで戦え」
「はい!」
「準決勝も、その先もな」
「……はい!」
マサヒロは夜空を見上げる。
明日は――
リョウとの準決勝。
そして、その先には決勝戦が待っている。
「イーブイ」
「ブイ?」
「明日は、全部出し切ろうな」
「ブイ!」
マサヒロは拳を握る。
「俺たちの旅は、まだ終わってない!」
「ブイ!」
その隣で、バルキーも拳を突き上げる。
「バルキー!」
シバが笑う。
「それでいい!」
三人と二匹の声が、静かな夜に響いた。
やがてシバとバルキーは、マサヒロのもとを離れていった。
「またな、バルキー!」
「バルキー!」
「次に会う時は、もっと強くなってろよ!」
「バルキー!」
バルキーは振り返りながら、何度も拳を突き上げた。
マサヒロも拳を握る。
「俺たちも負けないぞ!」
「イーブイ!」
明日は、宿命のライバルとの決戦。
マサヒロとリョウ。
二人の旅人が、ついに準決勝の舞台で激突する。