「俺だって、まだ負けない!」
マサヒロは次のモンスターボールを握る。
残り三匹。
フシギバナ。
プテラ。
そして――
イーブイ。
一方、リョウはまだ四匹を残している。
「次は――」
マサヒロはフィールドを見る。
そこには、ギャラドスを倒したハッサムが立っていた。
赤い身体。
鋭いハサミ。
背中の翼。
「……ハッサム」
マサヒロは拳を握る。
「ギャラドスを倒したこいつを、どうする……?」
ハッサムは静かにマサヒロを見つめている。
そのとき――
マサヒロの頭に一つの考えが浮かんだ。
「……そうだ!」
マサヒロはボールを取り出す。
「虫タイプが相手なら……!」
「飛行タイプだ!」
「行け、プテラ!」
「プテラァァ!」
巨大な翼竜がフィールドへ飛び出す。
「プテラ……!」
リョウは少しだけ笑った。
「やっぱり出してきたか」
「え?」
マサヒロが驚く。
「マサヒロなら、虫タイプのハッサムに有利な飛行タイプを出すだろうと思ってた」
「……!」
「だから――」
リョウがハッサムを見る。
「ハッサム!」
「ハッ!」
「とんぼがえり!」
「ハッサム!」
ハッサムが一気に飛び出す。
「プテラ、避けろ!」
「プテラ!」
プテラが翼を広げる。
しかし――
ドンッ!
ハッサムの身体がプテラへ激突する。
「プテラ!」
「プテラァ!」
プテラが大きく吹き飛ばされる。
「よし!」
リョウが叫ぶ。
「ハッサム!」
ハッサムはそのままフィールドから離れ――
リョウのもとへ戻ってくる。
「戻れ、ハッサム!」
「ハッ!」
ハッサムがボールへ戻る。
「……!」
マサヒロは目を見開く。
「そうか……!」
「とんぼがえりは、攻撃したあとトレーナーのもとに戻っていく技……!」
リョウが頷く。
「その通り」
「だから、プテラを攻撃しながら、次のポケモンに交代できる」
「くそっ……!」
マサヒロは悔しそうに拳を握る。
「うまく利用された……!」
リョウは次のボールを取り出した。
「そして――」
「飛行タイプに強いポケモンを出す!」
「行け!」
「ルージュラ!」
「ルージュラ!」
長い髪。
赤い唇。
独特の姿をしたポケモンがフィールドへ現れる。
「ルージュラ……!」
マサヒロが驚く。
「こいつも初めて見る……!」
リョウは笑った。
「ルージュラは氷タイプだ」
「飛行タイプのプテラには相性がいい」
「なるほど……!」
マサヒロはプテラを見る。
「だったら、速さで勝負するぞ!」
「プテラ!」
「プテラァ!」
プテラが翼を広げる。
「プテラ、つばさでうつ!」
「プテラ!」
一気に距離を詰める。
「速い!」
リョウが叫ぶ。
プテラがルージュラの周囲を高速で飛び回る。
右。
左。
上。
そして背後。
「ここだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「つばさでうつ!」
「プテラ!」
プテラが急降下する。
しかし――
「ルージュラ、トリックルーム!」
「ルージュラ!」
その瞬間。
フィールドの空気が歪んだ。
「な、なんだ!?」
マサヒロが目を見開く。
空間そのものが、ぐにゃりと揺れる。
「これが……トリックルーム!」
リョウが叫ぶ。
「この技が続いている間は、素早さの遅いポケモンほど先に動ける!」
「……!」
マサヒロはプテラを見る。
「つまり……」
「プテラの速さが、逆に不利になる!」
「その通り!」
リョウが頷く。
「ルージュラ!」
「ルー!」
ルージュラが動く。
さっきまでとは比べ物にならない。
「速い!」
マサヒロが叫ぶ。
プテラが方向を変える。
しかし――
「ルージュラ、追え!」
「ルー!」
ルージュラがプテラへ迫る。
「プテラ、逃げろ!」
「プテラ!」
プテラが飛び回る。
だが、トリックルームの影響で、思うように動けない。
「くっ……!」
マサヒロが歯を食いしばる。
「プテラ!」
「プテラ……!」
「まだだ!」
マサヒロは叫ぶ。
「お前の速さなら、絶対に勝てる!」
「プテラ!」
プテラが翼を広げる。
「もう一度、つばさでうつ!」
「プテラァ!」
プテラがルージュラへ突っ込む。
しかし――
「ルージュラ、かわして!」
「ルー!」
ルージュラが横へ動く。
プテラの攻撃が空を切った。
「今だ!」
リョウが叫ぶ。
「ふぶき!」
「ルージュラ!」
冷気が一気に広がる。
「プテラ!」
「プテラァァ!」
吹雪がプテラを包み込む。
「まだだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「プテラ、飛べ!」
しかし――
「プテラ……!」
プテラの翼が凍りついていく。
「そんな……!」
マサヒロが息を呑む。
「トリックルームで動きが鈍くなったところに、吹雪……」
リョウは静かに言った。
「これが俺の対策だ」
「プテラ!」
マサヒロが叫ぶ。
「もう一度、飛ぶんだ!」
プテラは必死に翼を動かす。
しかし――
動けない。
「プテラ……」
そして。
ドサッ。
プテラが地面へ落ちる。
審判が確認する。
「プテラ、戦闘不能!」
「……!」
マサヒロは拳を握った。
「プテラ……!」
プテラは静かに目を閉じている。
「よく頑張った」
マサヒロはプテラのボールを握る。
「ハッサムを相手に出したのは間違ってなかった」
「でも……」
「リョウは、そこまで読んでたんだな」
リョウは頷く。
「マサヒロの考え方は、もう分かってきたからな」
「……!」
マサヒロはリョウを見る。
「だけど――」
次のボールを取り出す。
「俺たちだって、ここから逆転する!」
「出てこい!」
「フシギバナ!」
「フシギバナァ!」
巨大な花を背負ったフシギバナがフィールドへ現れる。
「フシギバナ!」
マサヒロは拳を握る。
「頼むぞ!」
「フシギバナ!」
ルージュラはまだトリックルームの影響で素早さを上げている。
「ルージュラ!」
「ルー!」
「先に動くぞ!」
リョウが叫ぶ。
「ルージュラ、あくまのキッス!」
「ルージュラ!」
ルージュラがフシギバナへ近づく。
「フシギバナ、かわして!」
「フシギ……!」
しかし――
トリックルームの影響で、ルージュラの動きは速い。
フシギバナは反応しきれない。
「フシギバナ!」
「チュッ!」
あくまのキッスがフシギバナへ届く。
「しまった!」
フシギバナの身体から力が抜けていく。
「フシギバナ……」
そのまま、ゆっくりと目を閉じる。
「眠った……!」
マサヒロが叫ぶ。
「フシギバナ!」
「……」
返事がない。
「今だ!」
リョウが叫ぶ。
「ルージュラ、サイコキネシス!」
「ルージュラ!」
念力がフシギバナを包み込む。
ドォン!
「フシギバナ!」
フシギバナの身体が地面を転がる。
「まだだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「フシギバナ、起きろ!」
「……」
動かない。
「フシギバナ!」
「……フシギ……」
ようやく、少しだけ身体が動く。
「そうだ!」
マサヒロは拳を握る。
「俺たちは、ここまで来たんだ!」
「絶対に諦めるな!」
「フシギバナ……!」
「もう一度だ!」
リョウが叫ぶ。
「ルージュラ、ふぶき!」
「ルージュラ!」
猛烈な吹雪が放たれる。
「フシギバナ!」
フシギバナは眠ったまま。
吹雪が身体を包む。
「フシギバナァ……!」
「フシギバナ!」
マサヒロが叫ぶ。
「起きろ!」
「俺たちはまだ負けてない!」
「一緒にここまで来ただろ!」
「だから――!」
「最後まで、諦めるなぁぁぁ!」
「フシギ……」
その声が届いたのか。
フシギバナの身体が動く。
「フシギバナ!」
目が開いた。
「起きた!」
マサヒロが叫ぶ。
「フシギバナ!」
フシギバナが力強く立ち上がる。
「すごい……!」
リョウも驚く。
「眠りから、自力で……!」
「そうだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「ここから逆転だ!」
「フシギバナ!」
「ハードプラント!」
「フシギバナァァァァァ!」
地面から巨大な植物が一気に伸びる。
「ルージュラ!」
巨大な植物がルージュラを包み込む。
ドォォォォン!!
「ルー……!」
ルージュラが吹き飛ばされる。
「まだだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「もっとだ!」
「フシギバナ!」
さらに植物が伸びる。
「ルージュラ!」
ルージュラが耐えようとする。
しかし――
力が尽きる。
ドサッ。
「ルージュラ、戦闘不能!」
「……!」
リョウが目を見開く。
「やった!」
マサヒロが拳を突き上げる。
「フシギバナ!」
「フシギバナ!」
フシギバナが嬉しそうに吠える。
「よくやった!」
マサヒロはフシギバナのもとへ駆け寄る。
「まだ戦えるな!」
「フシギバナ!」
フシギバナは力強く返事をする。
「よし!」
マサヒロは立ち上がる。
「次も――」
その時だった。
「次は俺の番だ」
リョウが静かにボールを取り出す。
「……!」
マサヒロの表情が変わる。
「まさか……」
リョウがボールを投げる。
「もう一度、頼む!」
「ハッサム!」
「ハッサム!」
赤い身体のハッサムが再びフィールドへ現れる。
「ハッサム……!」
マサヒロが息を呑む。
「さっきのハッサムが、もう一度……!」
リョウは頷く。
「ルージュラが倒れることも、想定していた」
「だから、次はハッサムだ」
「……!」
マサヒロはフシギバナを見る。
フシギバナの身体は、さっきの戦いですでに大きく消耗している。
眠り。
サイコキネシス。
吹雪。
そしてハードプラント。
それでも――
「フシギバナ!」
「フシギバナ!」
フシギバナはまだ立っている。
「よし……!」
マサヒロは拳を握る。
「ここでも勝つぞ!」
「ハッサム!」
リョウも構える。
「ハッサム、シザークロス!」
「ハッ!」
ハッサムが一気に距離を詰める。
「フシギバナ、パワーウィップ!」
「フシギバナ!」
太いツルが伸びる。
しかし――
「ハッサム、かわして!」
「ハッ!」
ハッサムが身体をひねる。
パワーウィップが空を切る。
「フシギバナ、ソーラービーム!」
「フシギ……!」
フシギバナが光を集める。
しかし――
「ハッサム、バレットパンチ!」
「ハッ!」
一瞬で距離を詰める。
ドンッ!
「フシギバナ!」
バレットパンチが直撃する。
「しまった!」
フシギバナがよろめく。
「今だ!」
リョウが叫ぶ。
「シザークロス!」
「ハッ!」
ガキィン!
鋭いハサミがフシギバナへ叩き込まれる。
「フシギバナ!」
フシギバナが大きく吹き飛ばされる。
「くっ……!」
マサヒロは拳を握る。
「フシギバナ、立て!」
「フシギ……!」
フシギバナがゆっくりと立ち上がる。
「まだだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「ソーラービーム!」
「フシギバナ!」
光が集まり始める。
しかし――
「ハッサム、エアスラッシュ!」
「ハッ!」
鋭い風の刃が飛んでくる。
「フシギバナ!」
風の刃がフシギバナへ直撃する。
「フシギバナ!」
ソーラービームの光が消える。
「まだだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「パワーウィップ!」
「フシギバナ!」
ツルが伸びる。
「ハッサム、バレットパンチ!」
「ハッ!」
ハッサムがツルをかいくぐる。
ドンッ!
「フシギバナ!」
再び拳が直撃する。
「フシギバナ!」
フシギバナが後ろへ下がる。
「ハッサム!」
リョウが叫ぶ。
「一気に決めるぞ!」
「ハッ!」
ハッサムが突進する。
「シザークロス!」
「ハッ!」
「フシギバナ、ヘドロばくだん!」
「フシギ!」
紫色の弾が飛ぶ。
しかし――
ハッサムが横へかわす。
「そのまま突っ込め!」
「ハッサム!」
ドンッ!
シザークロスがフシギバナへ直撃する。
「フシギバナ!」
「まだだ!」
マサヒロが叫ぶ。
フシギバナは何とか立っている。
しかし――
その身体は、もう限界に近かった。
「フシギ……」
呼吸が荒い。
足も震えている。
「フシギバナ……」
マサヒロは心配そうに見る。
「まだ戦えるか?」
「フシギバナ!」
フシギバナは力強く頷いた。
「……分かった」
マサヒロは拳を握る。
「だったら、最後まで一緒に戦おう!」
「フシギバナ!」
「ハッサム、バレットパンチ!」
「ハッ!」
ハッサムが突っ込む。
「フシギバナ、避けろ!」
「フシギ……!」
フシギバナが身体を動かす。
しかし――
「速い!」
ハッサムの拳が迫る。
「フシギバナ!」
その瞬間だった。
フィールドに差し込んでいた光が、フシギバナの身体を包み込む。
「……え?」
マサヒロが目を見開く。
フシギバナの葉が、大きく揺れる。
「これは……!」
リョウも驚く。
「まさか……!」
フシギバナの身体から、今までとは違う力があふれ出す。
「フシギバナ!」
「ようりょくそ……!」
マサヒロが叫ぶ。
「そうか!」
「この光……!」
「フシギバナの特性が発動したんだ!」
フシギバナの動きが変わる。
さっきまで重かった身体が――
一気に軽くなる。
「速い!」
マサヒロが叫ぶ。
フシギバナがハッサムの横をすり抜ける。
「ハッサム!?」
リョウが驚く。
「フシギバナ、今だ!」
「フシギバナ!」
マサヒロが拳を突き出す。
「ハードプラント!」
「フシギバナァァァァァ!!」
地面から巨大な植物が一気に伸びる。
「ハッサム!」
ハッサムが逃げようとする。
しかし――
フシギバナの動きが速い。
植物がハッサムを追い詰める。
「ハッサム!」
「もっとだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「全部の力を出せ!」
「フシギバナァァァ!」
巨大な植物がハッサムを包み込む。
ドォォォォォン!!
「ハッサム!」
ハッサムが大きく吹き飛ばされる。
「まだだ!」
マサヒロが叫ぶ。
「もう一度!」
「フシギバナ!」
さらに植物が地面から伸びる。
「ハッサム!」
リョウが叫ぶ。
「耐えろ!」
ハッサムは必死に立ち上がろうとする。
しかし――
その身体から力が抜ける。
ドサッ。
「ハッサム、戦闘不能!」
「……!」
リョウが目を見開く。
「ハッサム……!」
「やった!」
マサヒロが拳を突き上げる。
「勝ったぞ、フシギバナ!」
「フシギバナ!」
フシギバナが嬉しそうに吠える。
しかし――
その直後。
「……フシギバナ?」
フシギバナの身体が大きく揺れた。
「どうした!?」
マサヒロが駆け寄る。
「フシギ……」
フシギバナの足が震える。
「まさか……」
マサヒロは気づいた。
ルージュラとの戦いで受けたダメージ。
そして――
ハッサムとの激戦。
何度も攻撃を受けながら、それでも戦い続けた。
最後には、ようりょくその力まで使った。
「フシギバナ……!」
マサヒロが手を伸ばす。
「もう限界だったんだな……」
フシギバナはマサヒロを見つめる。
そして――
「フシギ……」
ゆっくりと身体を倒した。
ドサッ。
「フシギバナ、戦闘不能!」
「……!」
マサヒロは拳を握った。
「フシギバナ……!」
マサヒロはフシギバナのもとへ駆け寄る。
「よく頑張った」
「本当に……よく頑張ったぞ」
フシギバナは目を閉じている。
それでも、その表情はどこか満足そうだった。
「ハッサムを倒してくれて、ありがとう」
マサヒロはフシギバナの頭を優しく撫でる。
「ゆっくり休んでくれ」
フシギバナは静かに目を閉じた。
「……」
マサヒロは立ち上がる。
残りは――
「イーブイ……」
最後のモンスターボールを握る。
マサヒロの残りは一匹。
そして、リョウの残りは二匹。
「……」
リョウも残り二つのボールを見る。
その表情は真剣だった。
「ここまで来たな」
「ああ」
マサヒロも頷く。
「あと少しだ」
「でも、ここからが一番厳しい」
リョウが構える。
マサヒロも最後のボールを握り直す。
「絶対に負けない」
「俺もだ」
二人の視線がぶつかる。
準決勝。
ついに――
戦いは最終局面へ突入した。