ポケットモンスターブラウン   作:光宙

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6話 激突!幼馴染の相棒対決!

ハナダシティを出発して、しばらく経った。

 

マサヒロたちは、次の目的地であるクチバシティを目指して歩いていた。

 

「次のジムはクチバジムか……」

 

マサヒロは地図を見ながら呟く。

 

「どんなジムなんだろうな」

 

その隣を、イーブイが歩いている。

 

「イーブイ!」

 

元気よく返事をするイーブイ。

 

だが――。

 

マサヒロは、少しだけ違和感を覚えていた。

 

「……なあ、イーブイ」

 

「イーブイ?」

 

「お前、最近ちょっと元気ないだろ?」

 

イーブイの足が止まった。

 

「……」

 

マサヒロも足を止める。

 

「やっぱりか」

 

イーブイは俯いてしまった。

 

マサヒロには、その理由が分かっていた。

 

ハナダジム。

 

あの戦いで、イーブイは初めて公式戦で負けた。

 

相手はスターミー。

 

たいあたりも、にどげりも、かみつくも通じた。

 

最後にはエボルブラストまで使った。

 

それでも――勝てなかった。

 

「……まだ気にしてるのか?」

 

「イーブイ……」

 

「でも、あれは仕方ないって」

 

マサヒロはしゃがみ込んで、イーブイの頭を撫でる。

 

「スターミーは強かった。俺たちだって、まだまだこれからだろ?」

 

「……」

 

イーブイは顔を上げる。

 

「負けたからって、お前が弱いってことじゃないよ」

 

「イーブイ……」

 

「だから、そんな顔するなって」

 

マサヒロは笑う。

 

イーブイも笑おうとした。

 

だが――。

 

その笑顔は、どこか無理をしているように見えた。

 

* * *

 

翌朝。

 

「……ん?」

 

マサヒロはテントの外から聞こえる物音で目を覚ました。

 

「なんだ?」

 

外へ出る。

 

すると――。

 

「イーブイ!?」

 

イーブイが一人で走っていた。

 

森の中を、何度も何度も駆け回っている。

 

木の根を飛び越え。

 

岩をかわし。

 

転んでも、すぐに立ち上がる。

 

「お、おい!」

 

マサヒロが呼びかける。

 

イーブイは一度振り返る。

 

「イーブイ!」

 

そして、また走り出した。

 

「……」

 

マサヒロは、その姿をじっと見つめた。

 

「もっと強くなりたい……ってことか」

 

イーブイが振り返る。

 

「イーブイ!」

 

「分かった」

 

マサヒロは笑った。

 

「じゃあ、一緒に強くなろう!」

 

「イーブイ!」

 

こうして、二人の特訓が始まった。

 

* * *

 

「もっと速く!」

 

イーブイが森の中を走る。

 

「右!」

 

木をかわす。

 

「左!」

 

さらに木をかわす。

 

「ジャンプ!」

 

岩を飛び越える。

 

「よし!」

 

だが――。

 

ドサッ!

 

「イーブイ!」

 

イーブイが転んだ。

 

「大丈夫か!?」

 

「……イーブイ」

 

イーブイはすぐに立ち上がった。

 

そして、また走り出す。

 

「無理するなよ……」

 

マサヒロは心配そうに見つめる。

 

それでもイーブイは止まらない。

 

何度も。

 

何度も。

 

走り続ける。

 

その姿を見て、マサヒロは思った。

 

――こいつ、本当に悔しかったんだ。

 

ハナダジムで負けたこと。

 

自分の力が足りなかったこと。

 

全部、悔しかったのだ。

 

「……だったら、俺も頑張らないとな」

 

マサヒロも走り出した。

 

「よーし! 次はスピアーと競争だ!」

 

「イーブイ!?」

 

「ほら、行くぞ!」

 

「イーブイ!」

 

スピアーのこうそくいどう。

 

その速さを目標に、イーブイは走り続けた。

 

最初はまったく追いつけなかった。

 

それでも――。

 

少しずつ。

 

ほんの少しずつ。

 

イーブイの走る速度は上がっていった。

 

* * *

 

数日後。

 

「そろそろ休憩するか」

 

マサヒロが木の下に腰を下ろす。

 

イーブイも隣に座った。

 

「だいぶ速くなったな」

 

「イーブイ!」

 

「でも、まだまだだ」

 

「イーブイ!」

 

「ははっ、やる気満々だな」

 

そのときだった。

 

「マサヒロ!」

 

聞き覚えのある声。

 

「……え?」

 

マサヒロが振り返る。

 

そこにいたのは――。

 

「サトシ!」

 

「久しぶり!」

 

サトシと、その肩に乗ったピカチュウだった。

 

「ピカ!」

 

「お前、こんなところで何してるんだ?」

 

「俺もクチバシティに向かってるんだ!」

 

サトシは笑う。

 

「マサヒロも旅を続けてたんだな!」

 

「当たり前だろ」

 

「そのポケモンたちも、ずいぶん増えたな!」

 

サトシはマサヒロの手持ちを見る。

 

「フシギソウにスピアー……それにミニリュウまで!」

 

「昨日捕まえたんだ」

 

マサヒロは少し得意げに言った。

 

「へえ、すごいな!」

 

サトシは笑う。

 

「俺だってピカチュウと一緒に強くなってるぞ!」

 

「へえ」

 

マサヒロはピカチュウを見る。

 

ピカチュウもマサヒロを見る。

 

「……」

 

「……」

 

そして、イーブイとピカチュウも顔を見合わせた。

 

「ピカチュウ!」

 

「イーブイ!」

 

二匹が同時に鳴く。

 

「ん?」

 

「どうしたんだ?」

 

二匹はお互いを見つめている。

 

マサヒロは笑った。

 

「……なるほどな」

 

サトシもニヤリと笑う。

 

「マサヒロ!」

 

「なんだ?」

 

「バトルしようぜ!」

 

「やっぱりそうなるか」

 

マサヒロは立ち上がる。

 

「いいぜ」

 

「よし!」

 

サトシは拳を握った。

 

「俺のピカチュウも、前よりずっと強くなってるからな!」

 

「じゃあ、確かめてみるか」

 

マサヒロはモンスターボールに手を伸ばす。

 

だが――。

 

その前にイーブイが飛び出した。

 

「イーブイ!」

 

「……」

 

マサヒロはイーブイを見る。

 

イーブイは真剣な目でマサヒロを見返した。

 

「……お前がやりたいのか?」

 

「イーブイ!」

 

「分かった」

 

マサヒロは笑う。

 

「じゃあ行くぞ!」

 

「ピカチュウ、頼む!」

 

「ピカ!」

 

こうして――。

 

幼馴染二人の相棒対決が始まった。

 

* * *

 

「ピカチュウ!」

 

「イーブイ!」

 

二匹が同時に駆け出す。

 

「でんこうせっか!」

 

ピカチュウが一瞬で距離を詰める。

 

「速い!」

 

「イーブイ、かわして!」

 

イーブイが横へ飛ぶ。

 

ピカチュウの攻撃をギリギリでかわした。

 

「よし!」

 

「まだだ! ピカチュウ、もう一度!」

 

「ピカ!」

 

再びピカチュウが突っ込む。

 

「イーブイ、たいあたり!」

 

イーブイも正面から突っ込んだ。

 

ドンッ!

 

二匹がぶつかる。

 

「ピカ!」

 

「イーブイ!」

 

互いに弾き飛ばされる。

 

「やるな!」

 

サトシが笑う。

 

「そっちこそ!」

 

マサヒロも笑う。

 

しかし――。

 

イーブイの表情が少し曇った。

 

「……?」

 

マサヒロが気づく。

 

「イーブイ?」

 

その瞬間。

 

「ピカチュウ、10まんボルト!」

 

「ピカチュウ!」

 

電撃が放たれる。

 

「イーブイ、避けろ!」

 

イーブイは飛び退いた。

 

だが――。

 

「追いかけろ!」

 

ピカチュウが一気に接近する。

 

「イーブイ!」

 

攻撃が直撃。

 

「イーブイ!」

 

イーブイが地面を転がった。

 

マサヒロは駆け寄りそうになる。

 

だが、イーブイは立ち上がった。

 

「……」

 

その目には、以前のハナダジムでの光景が浮かんでいた。

 

スターミー。

 

何度攻撃しても倒れなかった。

 

最後のエボルブラスト。

 

そして――敗北。

 

「……イーブイ」

 

マサヒロは静かに呼びかけた。

 

「お前、まだ怖いのか?」

 

「……」

 

「ハナダジムで負けたこと」

 

イーブイは俯く。

 

マサヒロは拳を握った。

 

「……そうだよな」

 

「負けたの、悔しいよな」

 

イーブイが顔を上げる。

 

「でも――」

 

マサヒロは笑った。

 

「だから特訓したんだろ?」

 

「!」

 

「お前はもう、あのときのイーブイじゃない」

 

「イーブイ……」

 

「自分で強くなろうとしたんだ」

 

「イーブイ!」

 

イーブイの目に力が戻る。

 

その瞬間だった。

 

「ピカチュウ、でんこうせっか!」

 

「ピカ!」

 

ピカチュウが迫る。

 

「イーブイ!」

 

イーブイが走った。

 

シュッ!

 

「なっ!?」

 

マサヒロも驚く。

 

イーブイの動きが、今までとはまるで違った。

 

ピカチュウの攻撃を紙一重でかわす。

 

そして、そのままピカチュウの横を駆け抜けた。

 

「今の……!」

 

サトシが驚く。

 

マサヒロは目を見開いた。

 

「……でんこうせっか!」

 

イーブイが振り返る。

 

「イーブイ!」

 

「お前……覚えたのか!」

 

イーブイが嬉しそうに鳴く。

 

「すごいぞ!」

 

「ピカ!?」

 

ピカチュウも驚いている。

 

「だったら――!」

 

マサヒロは構える。

 

「ここからだ!」

 

「イーブイ!」

 

「ピカチュウ、もう一度でんこうせっか!」

 

「ピカ!」

 

二匹が同時に走り出した。

 

「イーブイ!」

 

「ピカチュウ!」

 

森の中を二匹が駆け回る。

 

速い。

 

速い。

 

目で追うのも難しい。

 

「すげえ……!」

 

サトシが呟く。

 

マサヒロも集中する。

 

「……」

 

そして――。

 

「今だ!」

 

「イーブイ!」

 

イーブイが急加速。

 

ピカチュウの横をすり抜ける。

 

「ピカ!?」

 

「そのまま、でんこうせっか!」

 

「イーブイ!」

 

ドンッ!

 

ピカチュウが吹き飛ばされた。

 

「ピカチュウ!」

 

サトシが叫ぶ。

 

しかしピカチュウは立ち上がった。

 

「まだだ!」

 

サトシが叫ぶ。

 

「10まんボルト!」

 

「ピカチュウ!」

 

強烈な電撃が放たれる。

 

「イーブイ、でんこうせっか!」

 

「イーブイ!」

 

イーブイが走る。

 

電撃をかわす。

 

そして――。

 

一瞬でピカチュウとの距離を詰める。

 

「でんこうせっか!」

 

「イーブイ!」

 

ドンッ!!

 

ピカチュウが大きく吹き飛ぶ。

 

そして地面に倒れた。

 

「ピ、ピカ……」

 

「ピカチュウ!」

 

サトシが駆け寄る。

 

ピカチュウは目を回している。

 

「……ピカチュウ、戦闘不能!」

 

マサヒロの勝利だった。

 

「……」

 

マサヒロは呆然とする。

 

「勝った……?」

 

イーブイがマサヒロの足元へ駆け寄ってくる。

 

「イーブイ!」

 

「やったな!」

 

マサヒロはイーブイを抱き上げる。

 

「すごいぞ、イーブイ!」

 

「イーブイ!」

 

「でんこうせっか……!」

 

イーブイは嬉しそうに笑っている。

 

マサヒロも笑う。

 

「これでもう、ハナダジムのことなんて気にしなくていいな!」

 

「イーブイ!」

 

「お前はちゃんと強いよ」

 

「イーブイ!」

 

* * *

 

「……負けた」

 

サトシは悔しそうにピカチュウを見る。

 

「ごめんな、ピカチュウ」

 

「ピカ……」

 

しかし、サトシはすぐに顔を上げた。

 

「でも――」

 

マサヒロを見る。

 

「すげえよ、マサヒロ!」

 

「え?」

 

「イーブイ、めちゃくちゃ強くなったな!」

 

「まあな!」

 

マサヒロは胸を張る。

 

「俺たちで頑張ったからな!」

 

「俺も負けてられない!」

 

サトシは拳を握る。

 

そして、マサヒロの目を真っ直ぐ見る。

 

「マサヒロ!」

 

「なんだ?」

 

「俺、お前をライバルにする!」

 

「……」

 

マサヒロは驚いた。

 

「ライバル?」

 

「ああ!」

 

サトシは真剣だった。

 

「今までは幼馴染って感じだったけど、今日のバトルで決めた!」

 

「俺は絶対にお前より強くなる!」

 

「……」

 

マサヒロは少し考える。

 

今までのマサヒロにとって、ライバルと呼べるのは一人だけだった。

 

シゲル。

 

幼い頃からずっと意識してきた存在。

 

いつか絶対に追い越したい相手。

 

サトシは違った。

 

少なくとも、今までは。

 

「……分かった」

 

マサヒロは笑う。

 

「じゃあ、俺も負けないからな」

 

「おう!」

 

サトシも笑った。

 

「でもな」

 

マサヒロは続ける。

 

「俺の一番のライバルは、まだシゲルだからな」

 

「だったら!」

 

サトシが指を突きつける。

 

「俺がシゲルより強くなればいいんだろ!」

 

「ははっ!」

 

マサヒロは笑う。

 

「やってみろよ!」

 

「絶対やってやる!」

 

二人は拳をぶつけた。

 

「じゃあな、マサヒロ!」

 

「また会おうな、サトシ!」

 

「そのときは絶対勝つからな!」

 

「俺だって負けない!」

 

サトシとピカチュウは、先へと歩いていった。

 

マサヒロも反対方向へ歩き始める。

 

「……なあ、イーブイ」

 

「イーブイ?」

 

「今日の勝負、楽しかったか?」

 

「イーブイ!」

 

「そっか」

 

マサヒロは笑った。

 

イーブイはもう、ハナダジムで負けたときのような顔をしていない。

 

その目には、再び自信が戻っていた。

 

「これからもっと強くなろうな」

 

「イーブイ!」

 

マサヒロたちは、クチバシティへ向かって歩き出した。

 

その先に待っているのは――。

 

三つ目のジムバッジ。

 

そして、電気タイプの使い手。

 

クチバジムリーダー・マチスだった。

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