セキエイスタジアム。
ポケモンリーグ決勝戦。
満員の観客席から、大きな歓声が響いていた。
「リョウー!」
「頑張れー!」
「優勝しろー!」
その中に、マサヒロの姿もあった。
「リョウ!」
マサヒロは立ち上がって叫ぶ。
「絶対に勝てよ!」
隣ではイーブイも応援している。
「ブイ!」
フィールドでは――
リョウと決勝戦の相手が向かい合っていた。
二人のポケモンは、すでに最後の一匹を残すのみとなっている。
「残り一匹同士!」
審判が叫ぶ。
「ここで相手のポケモンを倒した方が、ポケモンリーグ優勝者となります!」
観客席が大きく沸く。
「行くぞ、サンド!」
「サンド!」
リョウの最後の相棒。
サンドがフィールドへ駆け出す。
対する相手のポケモンは――
「ニドキング!」
「ニドキング!」
巨大な身体を持つニドキングが立ちはだかる。
「サンド!」
リョウが叫ぶ。
「ここまで来たんだ!」
「絶対に勝つぞ!」
「サンド!」
サンドが力強く頷く。
そして――
サンドが一気に攻撃を仕掛ける。
「ニドキング!」
ニドキングが大きくよろめく。
「今だ!」
リョウが叫ぶ。
「サンド!」
サンドが最後の一撃を繰り出す。
ドォン!!
ニドキングが倒れる。
審判が確認する。
「ニドキング、戦闘不能!」
一瞬。
スタジアムが静まり返る。
そして――
「勝者、リョウ!」
「ポケモンリーグ優勝者は、リョウ選手!」
「うおおおおおお!!」
観客席から、凄まじい歓声が巻き起こった。
「やったぁぁぁ!」
マサヒロも拳を突き上げる。
「リョウ、やったな!」
「ブイ!」
イーブイも嬉しそうに跳ねる。
フィールドでは、リョウがサンドを抱き上げていた。
「サンド……!」
「サンド!」
「俺たち……優勝したんだ!」
「サンド!」
リョウの顔には、嬉しさと驚きが入り混じっていた。
「やったな……!」
サンドも嬉しそうに鳴いた。
* * *
それから――
ポケモンリーグ閉会式。
優勝者として壇上に立つリョウ。
その胸には、輝く優勝トロフィー。
マサヒロは客席から、その姿を見つめていた。
「すごいな……」
「ブイ」
マサヒロは笑う。
「本当に優勝したんだな」
やがて閉会式が終わる。
マサヒロは会場の外へ出た。
そこには、リョウが待っていた。
「マサヒロ!」
「リョウ!」
二人は近づく。
「優勝おめでとう!」
マサヒロが笑顔で言う。
「すごかったぞ!」
「ありがとう」
リョウは少し照れたように笑った。
「正直、まだ実感がないけどな」
「でも、本当に優勝したんだぜ!」
「そうだな」
リョウは手にしたトロフィーを見る。
「サンドと一緒に、ここまで来られた」
「……すごいな」
マサヒロは素直に感心する。
「俺もいつか、絶対に優勝してみせる」
「その時は、俺も応援するよ」
「ありがとう!」
マサヒロは笑った。
そして――
「そういえば、リョウはこれからどうするんだ?」
「俺?」
リョウは少し考える。
「まずは、故郷に帰るよ」
「故郷?」
「ああ」
リョウは頷く。
「リーグで優勝したことを、家族や故郷のみんなに報告したいんだ」
「そっか」
マサヒロは頷く。
「じゃあ、しばらく旅は休むのか?」
「少しだけな」
リョウが笑う。
「その後は、また旅をするつもりだ」
「なるほどな!」
そしてリョウがマサヒロを見る。
「じゃあ、マサヒロは?」
「俺?」
マサヒロは目を丸くする。
「……そういえば、考えてなかったな」
「ははっ!」
リョウが笑う。
「マサヒロらしいな」
「だって、リーグのことでいっぱいいっぱいだったんだよ!」
マサヒロも笑う。
「まあ、俺も少し考えてみるよ」
「そうだな」
二人はしばらく顔を見合わせる。
「でも――」
リョウが拳を突き出す。
「次に会った時は、またバトルしよう」
「ああ!」
マサヒロも拳を突き出す。
「今度は俺が勝つからな!」
「俺だって負けない!」
二人の拳がぶつかる。
「それじゃあな、マサヒロ」
「またな、リョウ!」
「絶対に、また戦おう!」
「約束だ!」
リョウはサンドと一緒に歩き出す。
マサヒロは、その背中を見送った。
「……リョウ」
「サンド!」
二人の姿が少しずつ遠くなっていく。
「俺も……もっと強くならないとな」
「ブイ!」
マサヒロはイーブイを見る。
「さて、これからどうするかな?」
イーブイは首を傾げる。
「ブイ?」
「……まあ、歩きながら考えるか!」
「ブイ!」
マサヒロとイーブイは、セキエイ高原を後にすることにした。
* * *
セキエイ高原。
リーグ会場から続く長い道を、マサヒロとイーブイが歩いている。
「……」
マサヒロは何度も後ろを振り返る。
「終わったんだな」
「ブイ」
「ポケモンリーグ……」
マサヒロは拳を握る。
「ベスト4か」
悔しさは、まだ残っていた。
でも――
「楽しかったな」
「ブイ!」
「リョウとも、本気で戦えた」
「シゲルやサトシとも、いつかまた戦いたい」
マサヒロは前を向く。
「俺、もっと強くなるよ」
「ブイ!」
その時だった。
「……ん?」
前方から、一人の男性が歩いてくる。
赤い髪。
鋭い目。
そして――
背中には、特徴的な赤いマントを身につけている。
「……あの人」
マサヒロは足を止めた。
男性もマサヒロを見る。
「君は……」
その声を聞いた瞬間。
マサヒロの目が大きく見開かれた。
「まさか……!」
「ワタルさん!?」
「……!」
男性が少し驚いた顔をする。
「私を知っているのか?」
「もちろん知ってます!」
マサヒロは一気に駆け寄る。
「カントーとジョウトのチャンピオン!」
「そして――」
マサヒロの目が輝く。
「世界最強の八人のトレーナー、マスターズエイトの一人!」
ワタルは少し笑った。
「よく知っているな」
「当たり前です!」
マサヒロは興奮している。
「俺、ワタルさんにずっと憧れてたんです!」
「そうか」
「握手してください!」
マサヒロが手を差し出す。
ワタルは快く手を握った。
「もちろん」
「うわぁ……!」
マサヒロは目を輝かせる。
「本物だ……!」
「ははっ」
ワタルが笑う。
「そこまで喜ばれると、少し照れるな」
「それと……!」
マサヒロはバッグから紙を取り出す。
「サインもお願いします!」
「サイン?」
「はい!」
ワタルは少し驚いた。
だが――
「分かった」
ペンを受け取り、紙にサインを書く。
「はい」
「ありがとうございます!」
マサヒロはサインを大切そうに受け取る。
「宝物にします!」
「それは嬉しいな」
ワタルは笑った。
その時――
ワタルの視線が、マサヒロの隣へ向く。
「……イーブイ」
「ブイ?」
イーブイがワタルを見る。
「この子が、君の相棒か」
「はい!」
マサヒロが答える。
「ずっと一緒に旅してきたんです」
ワタルはイーブイをじっと見つめる。
そして――
「なるほど」
「……?」
「君たちは、互いに深く信頼し合っているんだな」
マサヒロが驚く。
「分かるんですか?」
「ああ」
ワタルは頷く。
「ポケモンとトレーナーを見れば、なんとなく分かる」
「君がイーブイを見る目」
「そして、イーブイが君を見る目」
「二人の間には、強い絆がある」
「……」
マサヒロはイーブイを見る。
「そっか……」
「俺たち、ずっと一緒だったからな」
「ブイ!」
ワタルは優しく笑った。
「よければ――」
「君たち二人の旅の話を、聞かせてくれないか?」
「俺たちの旅?」
「ああ」
ワタルは笑う。
「君とイーブイが、どんな旅をしてきたのか興味がある」
「……」
マサヒロは嬉しそうに頷いた。
「もちろんです!」
そして――
マサヒロはワタルに、これまでの旅の様子を赤裸々に語った。
ジム戦での勝負。
仲間たちとの出会い。
ライバルたちとの戦い。
ロケット団との騒動。
そして、今回のポケモンリーグ。
話はなかなか終わらなかった。
ワタルは時折頷きながら、最後までマサヒロの話を聞いていた。
やがて――
「……いい旅をしてきたんだな」
ワタルが微笑む。
「そして、君はその旅の中で大きく成長した」
「……!」
マサヒロは嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます!」
ワタルはマサヒロを見つめる。
そして――
「……いい目をしている」
「え?」
マサヒロが顔を上げる。
ワタルは笑った。
「君は、まだまだ強くなれる」
「本当に!?」
「ああ」
ワタルはマサヒロを見る。
「君とイーブイの旅は、まだ終わっていない」
「……!」
マサヒロの目が輝く。
そして――
ワタルは、ゆっくりと拳を握った。
「マサヒロ」
「はい!」
「私と――」
ワタルが笑う。
「勝負してみないか?」
「……!」
マサヒロは一瞬、言葉を失った。
そして――
「……やります!」
「え?」
ワタルが少し驚く。
マサヒロは満面の笑みを浮かべる。
「もちろんです!」
拳を握る。
「ワタルさんと戦えるなんて、最高じゃないですか!」
「俺、絶対に全力で戦います!」
「ブイ!」
イーブイも嬉しそうに鳴く。
ワタルはそんな二人を見て、笑った。
「いい返事だ」
「それでは――」
ワタルは前を向く。
「少しだけ、君たちの力を見せてもらおうか」
マサヒロも構える。
「はい!」
「イーブイ!」
「ブイ!」
セキエイ高原を吹き抜ける風。
ポケモンリーグを終えたばかりの少年の前に――
新たな強敵が現れた。
マサヒロの旅は、まだ終わらない。
むしろ――
ここから、新しいステージが始まろうとしていた。