ポケットモンスターブラウン   作:光宙

7 / 61
7話 クチバジム!電撃のマチス!

クチバシティ。

 

大きな港を持つこの街には、たくさんの人やポケモンが行き交っていた。

 

「すっげぇ……!」

 

街に入ったマサヒロは、目を輝かせながら辺りを見回す。

 

港には大きな船が何隻も停泊している。

 

潮の香りが漂い、遠くから船の汽笛が聞こえてきた。

 

「こんなに大きな街、初めて来たな!」

 

「ブイ!」

 

隣を歩くイーブイも、興味深そうに港を眺めている。

 

「でも、まずはポケモンセンターだな」

 

マサヒロは腰のモンスターボールを見る。

 

ニビジム。

 

ハナダジム。

 

そして――

 

「三つ目のバッジを取りに行くぞ!」

 

「ブイ!」

 

イーブイが元気よく鳴いた。

 

* * *

 

「ここがクチバジム……」

 

大きな建物を前に、マサヒロは息を飲んだ。

 

「よし!」

 

扉を開ける。

 

「失礼しまーす!」

 

「おう! 挑戦者か!」

 

中から大きな声が返ってきた。

 

マサヒロが顔を上げる。

 

そこに立っていたのは、大柄な男だった。

 

黄色い服に身を包み、筋肉質な体を揺らしながらこちらを見ている。

 

「俺はクチバジムのジムリーダー、マチス!」

 

「俺はマサヒロ!」

 

マサヒロも負けじと名乗る。

 

「ポケモントレーナーだ!」

 

「マサヒロ……」

 

マチスは腕を組み、マサヒロを見る。

 

「ずいぶん若いトレーナーが来たネ」

 

「若くても、二つのバッジを持ってるぞ!」

 

マサヒロは胸を張る。

 

「ニビとハナダを勝ち抜いてきた!」

 

「ホウ……」

 

マチスの表情が変わった。

 

「それなら、その実力を見せてもらうネ!」

 

「望むところだ!」

 

二人はフィールドへ向かう。

 

審判が中央に立った。

 

「クチバジム、ジムリーダー・マチス対挑戦者マサヒロ!」

 

「使用ポケモンは一匹ずつ!」

 

「先に相手のポケモンを戦闘不能にした方が勝者となります!」

 

マチスがモンスターボールを手に取った。

 

「行くネ、ライチュウ!」

 

「ライチュウ!」

 

ボールから現れたライチュウが、鋭い目でマサヒロを見る。

 

その頬からは、バチバチと電気が弾けていた。

 

「ライチュウ……!」

 

マサヒロは少し緊張する。

 

今まで戦ってきた相手とは、明らかに違う。

 

強い。

 

そう感じさせる迫力があった。

 

マサヒロもボールを取り出す。

 

「俺の相棒も負けてない!」

 

「行け、イーブイ!」

 

「ブイ!」

 

イーブイがフィールドへ飛び出した。

 

マサヒロはイーブイを見る。

 

ハナダジムでの敗北。

 

その悔しさを乗り越えて、イーブイは新しい技を覚えた。

 

そして先日。

 

サトシのピカチュウにも勝った。

 

「イーブイ」

 

「ブイ?」

 

「今日も一緒に勝つぞ」

 

「ブイ!」

 

イーブイが力強く返事をする。

 

マチスが笑った。

 

「それでは、始めるネ!」

 

「バトル、スタート!」

 

「ライチュウ、でんきショック!」

 

「ライチュウ!」

 

バチィッ!

 

強烈な電撃が飛んでくる。

 

「イーブイ、よけろ!」

 

イーブイが横へ飛ぶ。

 

電撃が地面を焦がした。

 

「今だ! でんこうせっか!」

 

「ブイッ!」

 

イーブイが一気に加速する。

 

「ライチュウ! 迎え撃つネ!」

 

ライチュウも走り出した。

 

「なに!?」

 

ドンッ!

 

二匹が正面からぶつかる。

 

「イーブイ!」

 

イーブイが弾き飛ばされた。

 

「ブイッ!」

 

何とか体勢を立て直す。

 

「大丈夫か!?」

 

「ブイ!」

 

イーブイはすぐに立ち上がった。

 

マチスが笑う。

 

「速さはなかなかネ!」

 

「だったら、もっと速くする!」

 

「でんこうせっか!」

 

「ブイ!」

 

再びイーブイが走り出す。

 

今度は正面からではない。

 

ライチュウの周囲を大きく回り始めた。

 

右へ。

 

左へ。

 

そして後ろへ。

 

「ライチュウ、見失うな!」

 

「ライ!」

 

ライチュウが振り向く。

 

その瞬間。

 

「かみつく!」

 

イーブイが飛び込んだ。

 

ガブッ!

 

「ライチュウ!」

 

ライチュウの腕にイーブイが噛みつく。

 

「今だ!」

 

マサヒロが拳を握る。

 

しかし――

 

「ライチュウ、アイアンテール!」

 

「ライ!」

 

ブンッ!

 

「イーブイ!」

 

ドォン!

 

尻尾の一撃を受け、イーブイが地面を転がる。

 

「くっ……!」

 

マサヒロは歯を食いしばる。

 

「ブイ……」

 

イーブイも立ち上がるが、少しふらついている。

 

「大丈夫か?」

 

「ブイ!」

 

イーブイはまだ戦えるとばかりに前を向いた。

 

「そうだ……」

 

マサヒロはイーブイを見る。

 

ライチュウは強い。

 

攻撃力も。

 

防御力も。

 

そして、こちらの動きを見てから攻撃してくる。

 

「だったら……」

 

マサヒロは考える。

 

どうすればいい。

 

ただ速く走るだけじゃ、ライチュウには届かない。

 

「ライチュウ、10まんボルト!」

 

「ライ!」

 

バリバリバリッ!!

 

大量の電気が放たれる。

 

「イーブイ、でんこうせっか!」

 

「ブイッ!」

 

イーブイが走る。

 

電撃をかわす。

 

しかし、ライチュウはすぐに追ってくる。

 

「右だ!」

 

イーブイが右へ。

 

「左!」

 

今度は左へ。

 

「後ろ!」

 

イーブイが方向を変える。

 

ライチュウも追いかける。

 

その瞬間だった。

 

「……あれ?」

 

マサヒロが目を見開く。

 

一瞬。

 

イーブイの姿が二つに見えた。

 

「イーブイ……?」

 

イーブイは走り続ける。

 

その動きがさらに速くなる。

 

「ブイ!」

 

また一つ。

 

さらに一つ。

 

イーブイの姿が次々と増えていく。

 

「な、なんだこれは!?」

 

マチスが驚く。

 

フィールドには、何匹ものイーブイがいるように見えた。

 

ライチュウが戸惑う。

 

「ライ……?」

 

「これは……!」

 

マサヒロはすぐに理解した。

 

「イーブイ!」

 

イーブイが振り返る。

 

「新しい技だ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「かげぶんしん!」

 

「ブイィ!」

 

複数のイーブイが、一斉に駆け出した。

 

「ライチュウ!」

 

マチスが叫ぶ。

 

「どれが本物か見極めるネ!」

 

ライチュウが目を凝らす。

 

しかし、イーブイたちはすべて同じように動いている。

 

「すごい……!」

 

マサヒロも驚いていた。

 

イーブイ自身も、自分の新しい力に驚いているようだった。

 

「でも、まだ終わりじゃない!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「イーブイ、いけ!」

 

「ブイ!」

 

ライチュウが一匹のイーブイへ飛びかかる。

 

しかし――

 

その姿は消えた。

 

「違うネ!」

 

別のイーブイが走る。

 

「そこネ!」

 

ライチュウが攻撃する。

 

また消える。

 

「くっ……!」

 

マチスが歯を食いしばる。

 

「速いだけじゃない……!」

 

マサヒロが呟く。

 

「速さを使って、相手を迷わせてるんだ!」

 

そのとき。

 

「ライチュウ! 10まんボルト!」

 

「ライ!」

 

ライチュウが周囲へ向かって電撃を放つ。

 

「イーブイ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

複数の影が一斉に飛び退く。

 

その中から――

 

一匹だけが、ライチュウの懐へ飛び込んだ。

 

「今だ!」

 

「でんこうせっか!」

 

「ブイッ!」

 

ドンッ!

 

イーブイの体当たりがライチュウを吹き飛ばす。

 

「ライチュウ!」

 

ライチュウが転がる。

 

だが、まだ立ち上がる。

 

「まだだ!」

 

マチスが叫ぶ。

 

「ライチュウ、アイアンテール!」

 

ライチュウが突進する。

 

「イーブイ、かげぶんしん!」

 

「ブイ!」

 

再び複数のイーブイが現れる。

 

ライチュウの攻撃が空を切る。

 

「そこネ!」

 

ライチュウが振り向く。

 

しかし、そこにもイーブイはいない。

 

「こっちだ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「でんこうせっか!」

 

「ブイ!」

 

一匹のイーブイが高速で走り抜ける。

 

ライチュウの背後へ回った。

 

「かみつく!」

 

「ブイ!」

 

ガブッ!

 

「ライチュウ!」

 

ライチュウが大きくよろめく。

 

「よし!」

 

マサヒロは拳を握る。

 

だが、ライチュウは倒れない。

 

「まだ終わらないネ!」

 

マチスが叫ぶ。

 

「10まんボルト!」

 

「ライチュウ!」

 

バリバリバリッ!!

 

「イーブイ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

電撃がイーブイを追いかける。

 

イーブイは必死に走る。

 

一度。

 

二度。

 

三度。

 

電撃をかわす。

 

しかし――

 

「そこネ!」

 

ライチュウが攻撃を読んだ。

 

「しまった!」

 

バリィッ!!

 

電撃がイーブイを直撃する。

 

「イーブイ!」

 

イーブイが地面に倒れる。

 

「ブイ……」

 

「立てるか!?」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

イーブイはゆっくりと立ち上がった。

 

「ブイ……!」

 

その目には、まだ戦う意思がある。

 

マサヒロは拳を握った。

 

「そうだ……」

 

ハナダジムのときとは違う。

 

あのときは、負けた。

 

でも、そこで終わらなかった。

 

イーブイは強くなった。

 

そして今も、また新しい力を手に入れた。

 

「俺たちは、まだ強くなれる!」

 

「ブイ!」

 

マサヒロは前を向く。

 

「最後まで行くぞ!」

 

イーブイが頷く。

 

ライチュウも構える。

 

「いくネ!」

 

「いけ!」

 

二匹が同時に走り出した。

 

「ライチュウ、アイアンテール!」

 

「イーブイ、かげぶんしん!」

 

「ブイ!」

 

複数のイーブイがフィールドを駆ける。

 

ライチュウの尻尾が空を切る。

 

「今だ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「でんこうせっか!」

 

一匹のイーブイが飛び出した。

 

ライチュウが反応する。

 

「そこネ!」

 

しかし――

 

それは影だった。

 

「なっ!?」

 

本物のイーブイは、ライチュウの横をすり抜けていた。

 

「イーブイ!」

 

マサヒロが叫ぶ。

 

「かみつく!」

 

「ブイ!」

 

ガブッ!

 

ライチュウが大きくよろめく。

 

「今だ!」

 

マサヒロはイーブイを見る。

 

「エボルブラスト!」

 

「ブイィィィィッ!!」

 

イーブイの尻尾から、強烈な衝撃波が放たれた。

 

ドォォォォン!!

 

ライチュウが吹き飛ばされる。

 

土煙がフィールドを包む。

 

「ライチュウ!」

 

マチスが叫ぶ。

 

しばらくして――

 

土煙の中からライチュウが姿を現した。

 

しかし、その目にはもう戦う力が残っていなかった。

 

ライチュウはゆっくりと倒れる。

 

ドサッ。

 

審判が確認する。

 

「ライチュウ、戦闘不能!」

 

「勝者、挑戦者マサヒロ!」

 

「……」

 

マサヒロは一瞬、言葉を失った。

 

そして――

 

「やったぁぁぁぁ!!」

 

「ブイィ!」

 

イーブイがマサヒロへ飛びつく。

 

「勝ったぞ!」

 

マサヒロはイーブイを抱きしめる。

 

「やったな、イーブイ!」

 

「ブイ!」

 

マチスはライチュウのもとへ駆け寄る。

 

「よくやったネ、ライチュウ」

 

ライチュウをボールへ戻すと、マチスはマサヒロへ向き直った。

 

「見事だったネ」

 

「本当!?」

 

「最初はスピードだけのポケモンかと思ったネ」

 

マチスは笑う。

 

「しかし、違った」

 

「……?」

 

「お前とイーブイは、戦いながら答えを見つけたネ」

 

マサヒロはイーブイを見る。

 

「俺たちが……?」

 

「そうネ」

 

マチスは頷いた。

 

「その強さを認めるネ」

 

マチスがポケットから何かを取り出す。

 

それは黄色く輝くバッジだった。

 

「クチバジム、オレンジバッジ!」

 

「オレンジバッジ……!」

 

マサヒロは両手で受け取った。

 

「三つ目だ!」

 

イーブイが嬉しそうに跳ねる。

 

「ブイ!」

 

マサヒロはバッジを空へ掲げた。

 

「ニビ、ハナダ、そしてクチバ!」

 

三つのバッジが揃った。

 

「カントーリーグまで、あと少しだ!」

 

「ブイ!」

 

マサヒロとイーブイは笑い合った。

 

* * *

 

夕方。

 

クチバシティを歩くマサヒロたち。

 

マサヒロは、手の中のサンダーバッジを眺めていた。

 

「今日のイーブイ、すごかったな」

 

「ブイ!」

 

「でんこうせっかを使って、あんな戦い方ができるなんて……」

 

イーブイが得意そうに胸を張る。

 

「でも、まだまだだぞ」

 

「ブイ?」

 

「次のジムもあるし、シゲルだって待ってる」

 

マサヒロは前を見る。

 

「俺はもっと強くなる」

 

「ブイ!」

 

「一緒にな」

 

「ブイ!」

 

夕焼けの街を、少年とポケモンたちは歩いていく。

 

三つのバッジを胸に。

 

しかし、その旅の先には――

 

まだ知らない出会いと、さらなる強敵が待っていた。

 

そして、イーブイを巡るロケット団の影もまた、少しずつ近づいていた。

 

「次はどこへ行こうかな!」

 

マサヒロの声が、夕暮れの街に響いた。




イーブイ 現在の技
エボルブラスト でんこうせっか
かげぶんしん かみつく
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。