クチバシティを出発して、しばらく。
マサヒロたちは、次の町へ向かう道を歩いていた。
「いやー、オレンジバッジもゲットしたし、順調だな!」
マサヒロは腰につけたバッジケースを見ながら笑った。
その隣を、イーブイが歩いている。
「イーブイ!」
「お前も嬉しいか?」
「イーブイ!」
イーブイは元気よく尻尾を振った。
少し後ろでは、フシギソウとスピアー、ミニリュウも一緒に歩いている。
「次のジムはどんな奴なんだろうな!」
マサヒロは前を向いた。
「シゲルより先に、もっとバッジを集めてやる!」
その時だった。
「待ちなさい!」
突然、前方から声が聞こえた。
「……ん?」
マサヒロが足を止める。
木の陰から、二人の男女が姿を現した。
黒い服。
その胸には、大きく赤いRの文字。
「……またロケット団か!」
マサヒロが身構える。
「前に会った奴らとは違うみたいだけど……」
男が胸を張る。
「我々はロケット団!」
女も続ける。
「そして、今日の目的はあなたじゃないわ」
「……?」
二人の視線が、マサヒロの隣へ向く。
イーブイだった。
「そのイーブイを渡しなさい!」
「……イーブイを?」
マサヒロは眉をひそめる。
「なんでだよ?」
「それはあなたには関係ないことよ」
「関係ある!」
マサヒロはイーブイの前に立った。
「こいつは俺の仲間だ!」
「イーブイ!」
イーブイもマサヒロの横に並ぶ。
男が笑った。
「ならば、力ずくで奪うまでだ!」
「出ろ、アーボ!」
「私のポケモンも行きなさい!」
女がモンスターボールを投げる。
「ズバット!」
ズバットが空へ飛び出した。
「来い、スピアー!」
「スピアー!」
「フシギソウも頼む!」
「フシギソウ!」
「イーブイは俺と一緒だ!」
「イーブイ!」
戦いが始まった。
「アーボ、ようかいえき!」
「ズバット、きゅうけつ!」
毒液とズバットの攻撃が一斉に飛んでくる。
「スピアー、こうそくいどう!」
「スピアー!」
スピアーが高速で走り、攻撃をかわす。
「フシギソウ、はっぱカッター!」
「ソウ!」
無数の葉が飛び、二匹へ襲いかかる。
「かわしなさい!」
「ズバット!」
ズバットが空中へ上昇する。
アーボも横へ飛び退いた。
「イーブイ!」
マサヒロが叫ぶ。
「でんこうせっか!」
「イーブイ!」
イーブイが一気に飛び出す。
アーボの横をすり抜ける。
「かみつく!」
ガブッ!
「アーボ!」
アーボが吹き飛ばされる。
「よし!」
マサヒロが拳を握る。
「スピアー、ダブルニードル!」
「スピアー!」
二本の針がズバットへ向かう。
「ズバット!」
ズバットは空中で身をひねり、攻撃をかわした。
「なかなかやるわね!」
女が叫ぶ。
「ズバット、ちょうおんぱ!」
「ズバット!」
ズバットの口から音波が放たれる。
「うわっ!」
イーブイが耳を押さえる。
「イーブイ!」
マサヒロが心配そうに叫ぶ。
「大丈夫か!?」
「イーブイ……!」
イーブイは頭を振って立ち上がった。
「よし!」
マサヒロはズバットを見た。
「イーブイ、かげぶんしん!」
「イーブイ!」
イーブイの姿が一瞬で増える。
「なっ!?」
「ど、どれが本物なの!?」
無数のイーブイがズバットとアーボの周囲を走り回る。
「今だ!」
マサヒロが叫ぶ。
「でんこうせっか!」
「イーブイ!」
分身の中から本物のイーブイが飛び出す。
ズバットへ向かって一直線に突っ込む。
「かみつく!」
ガブッ!
「ズバット!」
ズバットが地面へ落ちる。
「スピアー!」
スピアーも一気に距離を詰める。
「ダブルニードル!」
「スピアー!」
二本の針がアーボへ命中する。
「アーボ!」
アーボが吹き飛ばされた。
「アーボ!」
「ズバット!」
二匹が倒れる。
「まだよ!」
女が何かを取り出した。
「これでも食らいなさい!」
大きな網が飛んでくる。
「イーブイ!」
マサヒロが叫ぶ。
網がイーブイを包み込んだ。
「捕まえた!」
「イーブイ!」
イーブイが必死にもがく。
「離せ!」
マサヒロが網へ駆け寄る。
「イーブイをどうするつもりだ!」
「決まっているでしょう!」
女が笑う。
「私たちのところへ連れていくのよ!」
「なんでだよ!」
「あなたには分からないわ!」
「分からなくても、渡すわけないだろ!」
マサヒロは網を掴んだ。
「こいつは俺の仲間だ!」
イーブイがマサヒロを見る。
「イーブイ……」
「絶対に助ける!」
マサヒロが力を込める。
その瞬間――
「イーブイ!」
イーブイの体から強い力が放たれた。
「な、なんだ!?」
網が大きく揺れる。
「まさか……!」
女が驚く。
次の瞬間。
バリッ!
網が破れた。
「イーブイ!」
イーブイが飛び出す。
「今だ!」
マサヒロが叫ぶ。
「でんこうせっか!」
「イーブイ!」
一瞬で間合いを詰める。
「エボルブラスト!」
「ぐわあああ!」
男が吹き飛ばされる。
「フシギソウ、はっぱカッター!」
「ソウ!」
「スピアー、ダブルニードル!」
「スピアー!」
二匹の攻撃が同時に決まる。
「うわあああ!」
「きゃあああ!」
ロケット団の二人は、ポケモンたちと一緒に空高く吹き飛んでいった。
「覚えてなさい!」
「次こそは必ず、そのイーブイを!」
二人の姿が遠くなっていく。
マサヒロは空を見上げた。
「……またイーブイを狙ってきた」
「イーブイ?」
マサヒロはイーブイを見る。
「おつきみやまの時もそうだったよな……」
イーブイは首をかしげる。
「ロケット団って、なんでお前を狙うんだ?」
「イーブイ……」
イーブイにも分からない。
「……」
マサヒロは少し考える。
先ほどのロケット団の言葉が頭に残っていた。
――やっぱり、間違いない。
「……何が間違いないんだ?」
マサヒロは首をかしげる。
そして、もう一つ。
――その個体。
「……個体?」
マサヒロはイーブイを見る。
「お前のことを知ってるみたいだったな」
「イーブイ……」
イーブイも不安そうにマサヒロを見る。
「……」
しばらく二人は黙っていた。
けれど、マサヒロはすぐに笑った。
「まあ、いいか!」
「イーブイ?」
「今は分からなくてもいい!」
マサヒロはイーブイを抱き上げる。
「お前が何者でも、俺の仲間なのは変わらないからな!」
「イーブイ!」
イーブイが嬉しそうに鳴いた。
「よし!」
マサヒロは前を向く。
「次の町へ行くぞ!」
「イーブイ!」
マサヒロたちは再び歩き始めた。
* * *
その頃。
ロケット団のアジト。
「……E-01」
一人の団員が、報告書を見ながら呟いた。
「間違いない。あのイーブイだ」
別の団員が画面を見る。
そこには、マサヒロと一緒に歩くイーブイの姿が映っていた。
「しかし、以前の記録とは違うようです」
「どういう意味だ?」
「戦闘能力が変化しています。新しい技まで覚えている」
「……あの少年と行動している影響か」
二人は画面を見つめる。
「それでも、E-01であることに変わりはない」
「ならば、どうする?」
しばらく沈黙が続く。
そして――
「いずれ、こちらから迎えに行く」
* * *
「イーブイ!」
「ん?」
マサヒロが振り返る。
「どうした?」
「イーブイ!」
イーブイが前を向く。
その先には、まだ見ぬ道が続いていた。
「そうだな!」
マサヒロも前を向く。
「俺たちなら、もっと強くなれる!」
「イーブイ!」
二人は並んで歩いていく。
まだ知らない。
自分たちの後ろから――
ロケット団の影が、少しずつ近づいていることを。
今回出てきたロケット団はムコニャでは無いんですがムコニャぐらいコミカルなキャラになってしまいました…