何故か最初からいるファイノン世界線   作:とも667

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Hello World

一方、スクリューガムはその計画と役割を星穹列車に説明していた。

 

「セプター内に突入できるのは、転送装置の容量的に一人だけです。お早めのご決断をお願いします」

 

「……僕が行こう。オンパロス内部のことを、僕はミュリオンの次によくわかっているはずだ。それに、敵がうようよいるとも言っていた。それなら尚更、広域殲滅に長けた僕が行くのが適任だ」

 

「わかった。穹を頼んだぞ、ファイノン」

 

 それに力強く頷いて、ファイノンはスクリューガムを呼ぶ。

 

「予想よりも0.6システム時間も早い決断、感謝します。それでは……ご武運を、ファイノンさん」

 

「あぁ……お願いするよ」

 

「絶対無事で帰ってきてね、あの子を連れて!!」

 

「うん、約束する。みんな、待っていてくれ!!」

 

 ファイノンはそう言ったのを最後に、セプター内部へと転送された。スクリューガムのホログラムも、仕事をするためにその場から消える。そしてなのかは、キュレネに協力してもらうために、永遠の1ページへと向かった。

 

「キュレネ!! いる!?」

 

「あ、なーたん……キュレたんは起きてないです。ホントに、どうしちゃったんでしょうか……」

 

「起きて、キュレネ!! 穹を生き返らせるためには、ウチらも頑張らないといけないの!!」

 

 それを聞いた瞬間、キュレネの目が開いた。涙を流しながら、目の前のなのかに縋り付く。

 

「穹を、生き返らせる……? ホント? ホントに、穹にまた会えるの……!?」

 

「ホントだよ、今ファイノンも丹恒もそのために頑張ってくれてる!! ウチらもやろう!!」

 

「うん、うんっ!! あたし、なんでもするわ……!! 穹にまた会えるなら、なんだってする!! 会って今度こそ、大好きって伝えるの……!!!」

 

 そこにサンデーもやってきて、言った。

 

「ワタシも微力ながら、協力しましょう。記憶の扱いには慣れていますので」

 

「サンデー!! ありがとう、一緒に頑張ろうね!!」

 

「それで、あたしは何をすればいいの?」

 

 キュレネとサンデーに説明をして、三人は今から来るであろう記憶に備えた。そして、セプター内部に突入したファイノンは……キャッシュデータから生まれた、無数のタイタンのコピーに囲まれていた。

 

「そこをどけ、抜け殻共が!! ぬぅあぁぁぁっ!!」

 

 カスライナに変身し、剣を振るう。目の前のタイタンを薙ぎ倒しながら、凄まじい勢いで進んでいく。攻撃の雨霰を物ともせず、穹を探しながら先に進む。

 

「待っていてくれ、相棒……すぐに行くから!!」

 

 そして星穹列車は、全ての知り合い達に連絡をしていた。穹の人脈があれば、様々な人達に助けを求めることができた。

 

「この情報をベロブルグ中に……? うん、わかった。ゼーレは地下鉱区にこれを……」

 

「もうやってるわよ!! 上はアンタに任せるからね!!」

 

「任せて!! 私だけじゃ手が足りない、ジェパードやペラにも協力してもらいましょう……」

 

 連絡を受けた仙舟では、景元や飛霄がもう行動を始めていた。

 

「その情報を広めればいいんだね? わかった、情報をすぐに伝達しよう。他の仙舟にも連絡しておく」

 

「迷ってる暇はないわね、号外を街中にばら撒くわよ!! モゼ、ついてきて!! 細かいことは椒丘に任せた!!」

 

「はぁ、相変わらず人使いの荒い……」

 

 ピノコニーでは、ロビンが歌に乗せて情報を伝えていた。黄金の刻に人々が集まってきている。

 

「おい、ロビンがゲリラライブしてるってよ!!」

 

「嘘だろ!? 早く行こう、見逃したら損だ!!」

 

『これが星穹列車の皆さんと、兄様の助けになるのなら……いくらでも歌うわ。何日かかったとしても』

 

 その頃、スクリューガムやルアン達は、セプターの演算能力向上のために尽力していた。

 

「メインコンピュータの冷却を急いでください!! 不要キャッシュのクリアも急いで!!」

 

「スクリューガムさん、私の生体コンピュータも使ってください。プロトタイプですが、少しは足しになるかと」

 

「ありがとうございます、使わせていただきます!!」

 

 そこに宇宙ステーション『ヘルタ』から連絡が入った。アスターからだ。

 

「宇宙ステーションの謁見システムも使ってください!! 私達も全力で協力します!!」

 

「……見ていますか、ヘルタさん? 今、宇宙全ての力が合わさっているんですよ」

 

「こんな結末では、きっとヘルタさんに怒られてしまいます。絶対にやり遂げましょう」

 

 まだまだ協力者はいる。カンパニー本社、ピアポイントにて。トパーズとアベンチュリンは指示を飛ばしていた。

 

「スターピースラジオとスターピース通信に加入している全ての人に、この情報を流せって……どういう意味なんだ? というか、穹って誰?」

 

「喋ってる暇があったら手を動かせ、やり遂げたら特別ボーナスらしいぞ!!」

 

「トパーズ、もしかして僕の資産を当てにしてるのかい?」

 

 アベンチュリンも手を動かしながら、トパーズに目線を送る。トパーズはそれに対して、即答した。

 

「当たり前でしょ!? 何があったかわからないけど、只事じゃないのは確かだし!! 任された以上失敗は許されないよ!! ほら、さっさとやって!!」

 

「わかってるさ。マイフレンドのためだ、いくらでも出そう」

 

「私達だけじゃ手が回らない……あの人にも、連絡しとかないと」

 

 その頃、宇宙のある星では……巡海レンジャーの二人が走り回っていた。

 

「シルバーガン・修羅サン!! こちらはもう巨大繚乱・忍符を星に描いたぞ、そちらはどうだ!?」

 

「俺もこの星のベイビー共に、アイツの手配書を空からプレゼントしてやった。しかし……手が回りきらねぇな。しょうがねぇ、ボスの手を借りるか」

 

「まさか……ロンリースター・ウルフシャドーサンのことか!?」

 

 そして、二相楽園にて。ブートヒルの連絡は、巡海レンジャーのボス、ラマンチャ……もとい不死途に届いていた。

 

「あぁ、わかったよ。可愛い子供たちの頼みだ、聞かないわけにはいかないな」

 

「それで、どうするつもりなのですか? 不死途様」

 

「語り部くん。今日のこれからの予定、全部明日以降にしといてくれ」

 

 それを聞いて、語り部と呼ばれたバナーネモンキーがため息をついて言った。

 

「はぁ……わかりました。明日以降の予定が倍になりますが、よろしいですか?」

 

「えっ、そんなに!? うぅっ、仕方ないか……」

 

「いつも安請け合いは禁物だと言っているのに……懲りませんね」

 

 別の場所では、トパーズの連絡が二相楽園の十の石心に行っていた。

 

『というわけなの、パールさん。お願いします』

 

「わかりました。こちらからも二相楽園メディアに情報を流しておきます」

 

『ありがとう、パールさん!!』

 

「ナナシビト、穹を検索……ヒット数、0件。何者なのでしょうか」

 

 みんなが真面目に動いている中で、別の遠くの星系では……仮面の愚者の二人が、衝撃を受けていた。

 

「はぁ!? 芦毛ちゃんが死んだってぇ!?」

 

「そんなぁ!! あの人が死んだら、大損じゃ済みませんよ!! 破産してしまいます!!」

 

「花火監督の脚本が死亡エンドなんて絶対ダメ!! ほら行くよ、サンポちゃん!!」

 

 しかし仮面の愚者が真面目にやるわけがない。愉悦の力で、とんでもないことをした。サンポが手配書をばら撒いて言う。

 

「さぁ、皆さんお聞きください!! この街に穹という、オンパロスを完璧に救った上で生還した、開拓のナナシビトが隠れています!! 見つけ出した人にはなんと、今だけ!! 1000万信用ポイント差し上げます!!」

 

「みんなは本物を見分けられるかな~? ゲームスタート~!!」

 

「うわっ!? 似たような顔の人達がたくさん!!」

 

「どれが穹なんだ!? 見分けがつかない!!」

 

 穹に賞金をかけて、偽物を街中にばら撒くことで、嫌でも意識させる。愚者らしいメチャクチャなやり方だ。そして穹を探しているファイノンは今も、オンパロスを進み続けていた。ボロボロになっているが……それでも前へ。

 

「でぇやぁぁっ!!」

 

「グォォォッ!!」

 

「ッ……!?」

 

 タイタンの攻撃に四方八方から囲まれて、押し潰される。だが、ファイノンはそれを中からぶち破って逆に押し返した。

 

「ギャアァァァ!?」

 

「ガァァァァァ!?」

 

「相棒、どこだ……どこにいるんだ!?」

 

 その頃……記憶を安定させる役割の三人は、宇宙から降り注ぐ記憶を一点に集中させていた。サンデーが、あまりの負担に膝をつく。

 

「くっ……ここまでの量は、エナの夢の時以来ですね」

 

「大丈夫、サンデー? 少し休んでてもいいよ!!」

 

「いいえ……大丈夫です。目の前にいる一人の仲間を救えずして、楽園はない……!!」

 

「あたしが生きてても、あなたがいないと何にも意味ないわ……!! お願い、ファイノン……早く穹を連れて帰ってきて……!!」

 

 一方、スクリューガム達の計算は膠着していた。演算対象があまりにも難しすぎるのだ。

 

「進捗率の上昇、急速に鈍化しています!!」

 

「くっ……冷却と最適化を急いでください!!」

 

「……待ってください、また宇宙ステーションから連絡が……」

 

 ルアンが音声メッセージを開くと、衝撃的な事実が聞こえてきた。

 

『宇宙ステーションヘルタより連絡!! ヌースがオンパロスに、視線を……!!』

 

「なんですって!? 其が……!?」

 

「進捗率、再び上昇しています!!」

 

 全ての人にとって、それは嬉しい誤算だった。ヌースはオンパロスで起きていることに、手を貸すつもりのようだ。

 

《演算対象:アキヴィリの生存・オンパロス新生》

 

《確率:8589869056分の1》

 

《演算開始》

 

 ヌースがこの宇宙で最大の難題に手をつけた。宇宙の全てが、開拓を助けるために動いている。

 

「なぁ、穹って誰なんだ?」

 

「わかんないけど、すごい人っぽいぞ!!」

 

「それだけのことして、生きて帰ってきたのか……一回会ってみたいな!!」

 

 宇宙の認知がセプターに集まっていく。そしてファイノンは……オンパロスの最奥、デミウルゴス・マトリクスに辿り着いていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁっ……!! ぐぅあぁぁぁぁ!!!」

 

 ボロボロになったそこを走り抜けた先にあったのは……ある意味、信じられない光景だった。暖かな光の差し込む、麦畑が目の前にある。

 

「ここは、エリュシオン……? いや、違う……」

 

「また会えたわね、ファイノン♪」

 

「……キュレネ?」

 

 そこにいたのは、ファイノンのよく知る、あのキュレネ……モモだった。そして、麦畑の中には、もう一人横たわっている人がいた。穹だ。

 

「ずっと見てたわ、ホントに無茶する子ね……でもだからこそ、あなたやあの子が夢中になるのもわかるわ。欲しかったプレゼントは待った時間が長いほど、もらえた時の喜びが大きいものだもの」

 

「相棒のことを助けてくれたのか?」

 

「えぇ。この子が力尽きて、闇の中に落ちていってたとき……あたしがこの子を見つけてね。消えないようにここに置いておいたの。きっとあなたが来ると思ってね♪」

 

 完全に破損していたらしい穹は、綺麗な状態で安置されている。

 

「ありがとう、キュレネ……君のおかげだ」

 

「いいのよ、だってこの物語は誰かの涙で終わるべきじゃないもの。ほら、早く行ってあげて?」

 

「あぁ、わかった……」

 

 そう言って、ファイノンは穹を抱き上げた。そんなファイノンに、モモは何かを思い出したような顔をして、あるものを差し出した。

 

「あ、それと……これも持っていって。あの時渡し忘れてたの」

 

「これは……リボン?」

 

「あの時は渡し損ねちゃったから、今度こそね。未来に歩き出すあなた達への、私からの贈り物。今度こそ、離れ離れにならないようにって願いを込めたわ。大事にしてね?」

 

 それを聞いたファイノンは、自分の胸に手を当てて言った。

 

「あぁ、約束しよう。今度こそ……ケファレは決して忘れないと」

 

「ふふっ、ほら。早く行ってあげて? みんな、この物語の結末を楽しみにしてるわ」

 

「わかってる」

 

 そう言って、ファイノンはボロボロの羽を羽ばたかせて、穹を抱いたまま空へと飛び立った。それを見届けて、モモが言う。

 

「『ルールは破るためにある』……ふふっ、最高にロマンチックな言葉ね♪」

 

 ファイノンは飛んでいた。みんなの元へと早く行くために。天井を突き破って、オンパロスの外へと飛んでゆく。

 

「うおぉぉぉぉーっ!!」

 

 時間は、刻一刻と迫っていた。タイムリミットまで、あと30分もない。天から襲いかかる、タイタンの形すら保てなくなった化け物達を叩き潰しながら、進んでいく。そんなファイノンの前に、比べ物にならない程の凄まじい気配が現れる。

 

「お前は……!!」

 

『……』

 

「邪魔をするな、ナヌークゥゥゥ!!!」

 

 壊滅のナヌークとの謁見。ファイノンはそれを受けても怯まず、天に向かって飛んでいく。

 

「ダァァァァァァァ!!!」

 

 空間を突き破って、ファイノンが天外……みんなのいるところへと飛んでいく。突き破られた空間の破片が、ナヌークの頬に掠って……傷がついた。それを受けて細まったナヌークの目を見た者は、誰もいなかった。その頃、スクリューガムは時間を気にしていた。

 

「タイムリミットまであと10分……ファイノンさん、急いでください」

 

「進捗率、99%……あとは最後に、穹さんの体があれば……」

 

「……ヘルタさん。どうかもう一度だけ、我々に力を貸してください」

 

 そして、祈っているのは永遠の1ページ内部の三人も同じだった。目の前に浮かんだ巨大な憶泡を見つめて、呟く。

 

「はぁ、はぁ……完成で、いいんだよね?」

 

「えぇ。十分な、はずです……」

 

「ファイノン、お願い……穹を連れて帰って……」

 

 そこで轟音が響いた。セプター内の空間を突き破って、ファイノンが飛び出してきたのだ。その腕の中には、穹がいる。

 

「みんな、相棒はここだ!! 早く!!」

 

「ファイノン、ナイス!! キュレネ!!!」

 

「わかってるわ!! なのか、お願いね!!」

 

 キュレネとなのかが、目の前の巨大な憶泡に飛び込む。宇宙中からの記憶を受けて、キュレネの無漏浄子としての力が全て解放された。光輪が頭の上に浮かんで、頭の後ろには透明で美しい装飾が現れる。彼女の服もさらにその美しさを増していた。十三番目のタイタン、鉄墓の『真我』デミウルゴスとしての姿。その手には、巨大な弓と矢が握られている。

 

「うん、ぶっつけ本番で行くよ!!」

 

『え? ウチみたいに弓を使いたいの?』

 

『うん。あなたの弓の使い方とか、穹の記憶から見たの。すっごく可愛くて、かっこよくて……あたしも使ってみたいなって。でも、使い方が分からないから……教えてくれる?』

 

『もちろん、ウチが教えてあげるよ!! 穹を助けたあと、ビシバシ鍛えてあげるからね!!』

 

 キュレネは穹の記憶から見たなのかに憧れて、弓を使いたいと思っていた。なので、記憶をぶつけるためにイメージした武器も弓矢だった。しかし使うのが初めてなキュレネは、なのかに頼んで一緒にやってもらうことにしたのだ。二人で弓に巨大な光の矢を番える。狙うのは穹と、その後ろにある壊れかけのセプター。

 

「穹、ウチらはアンタがいないと絶対嫌だよ……!! アンタがあの結末を受け入れなかったなら、ウチらだって絶対に受け入れない!!」

 

「あたしがいなくなる時は、あんなに悲しんでくれてたのに……どうして自分からいなくなるの? あなたがいないと、あたしは生きていけないのに……!!」

 

「「だから、帰ってきてっ!!!」」

 

 二人が引き絞った光の矢が、二人の魂の叫びとともに放たれる。それはセプターと穹を貫いて、辺り一帯を激しい光で包んだ。

 

『これは……今までとは違うロマンチックな物語、だったでしょう? ふふっ♪』

 

《進捗率:100%》

 

《演算終了》




ルールは、破るためにある。
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