何故か最初からいるファイノン世界線   作:とも667

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ストーリーの大筋に変化のない部分はカットしていきます、ご了承ください。


ヤリーロIV

かくして、ファイノンの誘いを受けて列車に乗ることになった穹。そして、穹を含む四人は現在……氷の星、ベロブルグに足を踏み入れていた。

 

「寒~い!! はぁぁ、凍えちゃいそうだよ……!!」

 

「可能な限りの防寒はしてきたが、それでも寒いな。できる限り早く、街に辿り着きたい」

 

「……相棒、寒いのはわかるけれど、どうして僕にくっつくんだい?」

 

 穹は何故か、ファイノンにぴったりくっついていた。その理由は単純である。

 

「ファイノンって、なんかあったかいんだよな。体温が高いだけじゃなくて……奥の方からぽかぽかしてるというか」

 

「そうなのかい? 自分では気づいてなかったよ」

 

「そうなの!? ……あ、ホントだ!! 丹恒、ファイノンあったかいよ!!」

 

 なのかと穹がぴったりくっついた。丹恒も少し悩んだが……背に腹は代えられない。結局、丹恒もくっついて歩くことになった。その結果は……

 

「みんな、ごめん……ものすごく歩きにくいんだけど……」

 

「しょうがないじゃん!! 寒いんだから!!」

 

「……裂界造物だ。三月、穹。一旦ファイノンから離れろ」

 

 丹恒がそう言ったが、二人の答えは決まっていた。

 

「「やだ!! 寒いもん!!」」

 

「って言われても、これじゃ戦えないし……!!」

 

「……しょうがない……うぅ、寒いっ!! 可愛い俺が氷像になっちゃう!!」

 

 そんなことを言いつつ、敵を倒したらまた全員でくっつき直す。結局、しばらくその状態で歩くことになった。その道中にて……

 

「地面が盛り上がってる……何かいるのかな?」

 

「おーい、出てきなって!! そのままだと寒くて凍え死んじゃうよー!!」

 

「出てこないか……仕方がない。ここは少し手荒な手段を用いるしかないね」

 

 ヘリオスを取り出したファイノンは、剣の平面の部分でその部分の雪を、思いっきり叩いた。

 

「いったぁ!? な、何をするんですかぁ!!」

 

「あ、やっと出てきた!!」

 

「コソコソと隠れて、お前は何者だ?」

 

 丹恒はその怪しい風貌に警戒を露にしている。だが目の前の男はそのことよりも、ファイノンを気にしているように見えた。

 

「……何故この人がここに? 脚本を書き直すべきでしょうか……」

 

「やっぱり怪しいな!! 殴ろう!!」

 

「あぁぁぁぁ!? 待ってくださいお兄さん、そのバットをしまって!! 僕の名前はサンポ、ただのしがない商人ですよ!!」

 

 サンポと名乗った男は、寒いのに汗だくになりながら答えた。穹はそれを聞いて、一旦バットをしまう。

 

「あんな格好で街にも行かず、君はここでなにをしていたんだ?」

 

「あなた達も見たでしょ? あの化け物の群れ!! 僕みたいな一般市民には荷が重い相手ですので、こうして隠れてやり過ごそうと思ったのです!!」

 

「なるほど、筋は通っているな」

 

 それに少し納得してくれたことを好機と見たのか、サンポは畳み掛けるように言葉を続ける。

 

「あなた達は私の恩人です!! 是非ともお礼として、この先の街まで案内させてください!!」

 

「それ、あんたが護衛してほしいだけじゃないの?」

 

「そんなことありませんって!! それだけで恩を全て返すつもりもありませんし!! 僕を少しくらいは信用してくださいよ!!」

 

 そんな会話をしつつ、結局全員で歩いていくことになった。途中でシルバーメインの者達にサンポの共犯者と勘違いされ、戦うことになってしまう。そして、そんな時に隊長のジェパードが現れる。

 

「はぁぁっ!!」

 

「くっ……中々やるようだな。だが!!」

 

「ぐぅっ!? なんてパワーだ……!!」

 

 ファイノンとジェパード、二人ともが少し吹っ飛んで距離を取る。そこでジェパードが、サンポがいないことに気がつく。

 

「すみません、隊長!! 奴を見失いました!! 足跡も見つからず……」

 

「……逃げられてしまったか。まぁいい、仲間が目の前にいるんだ。捕らえれば、奴も行動を起こすだろう」

 

「彼は一生来ないと思うよ。彼の言葉からは誠実さが感じられなかったからね」

 

 ファイノンが断言する。そして、周囲もそれを肯定した。

 

「うん、待ってても一生来ないよ!! 信じたウチらがバカだった!!」

 

「君達にはベロブルグの市民として、自己弁護の権利があるが、それは建創者の前で行うことだ。連行しろ」

 

「僕達はベロブルグの市民ではない。その証拠はここにある」

 

 そう言って、ファイノンはなのかからヤリーロVIの写真をもらって、ジェパードに見せた。

 

「これが……この星だと?」

 

「あぁ、ベロブルグの市民にこんな物を撮る力はないはずだ。ましてやこの状況では尚更。これで証明できただろう?」

 

「……君達の言葉が真実ならば、処遇を決める権利があるのは『大守護者様』のみだ。ついてこい、よそ者達」

 

 そう言われて、ベロブルグの街へと向かうことになった。大守護者のカカリアと一通り話した後に、みんなでホテルに一泊した。と、その前に……

 

「ゴミ箱からいいゴミの気配がする!!」

 

「えっ、ちょっと!? 何してるの!?」

 

「あ、相棒!? ゴミ箱に頭を突っ込むのは不衛生だよ!!」

 

「いや、そこじゃないでしょ!?」

 

 そんなことがありつつ、ホテルで一泊して外に出ると……突然、ブローニャ率いるシルバーメイン部隊に囲まれることになった。

 

「やはりか……なにか裏がありそうとは思っていたけど、もう仕掛けてくるとは!!」

 

「相棒、どうする? 全員ボコボコにするか?」

 

「そうしたいのは山々だけど、今は多勢に無勢だ。一旦退いて、体勢を立て直そう!!」

 

 というわけで四人は、シルバーメインから逃げた。結局回り込まれてしまい、戦うことになったが……サンポの乱入によって、戦いは中断されることになった。そして、開拓者達が目を覚ますと……そこは地下鉱区の診療所だった。

 

「うーん……ここは……?」

 

「相棒!! 目が覚めたんだね!!」

 

「良かった。私はナターシャ、この診療所で患者さんを診ているの」

 

 そんなこんなでナターシャに出会い、怪しいサンポを問い詰めつつ……地下のことを知るために、鉱区へと向かうことに。そこで色々ありつつ、スヴァローグとクラーラに出会う。

 

「……白髪の男から高エネルギー反応。警戒レベル上昇」

 

「僕のことか? 高エネルギーというのは……」

 

「ファイノンの体が暖かいからか?」

 

 なんだかスヴァローグに警戒されつつ、調査を続けて地下鉱区を進み……真実を知って、現状を変えるための行動を始めることになった。それから力を示してスヴァローグを納得させ、カカリアのところに行くことに。途中でセーバルの協力を受けたり、ジェパードを退けたりしながら、やっと辿り着いた。

 

「力こそ希望だ!! 誰にも邪魔はさせない!!」

 

「お母様……なんてお姿に……!!」

 

「戦うしかなさそうだな、行くぞ相棒!!」

 

「あぁ、任せてくれ!!」

 

 ファイノンと穹はもう武器を構えていた。そのままカカリアに突撃して、剣とバットを振るう。

 

「はぁっ!!」

 

「でやぁっ!!」

 

「そんなもので、私に勝てるとでも!?」

 

 しかし、カカリアも星核の力で強化されている。氷の刃の嵐が、辺り一帯に吹き荒れる。

 

「くぅっ……!!」

 

「まだまだ!! その程度で僕らは倒せない!!」

 

「そこだ!!」

 

 そう言って穹がバットを振り上げて、飛びかかる。しかし、カカリアもそう簡単にやられてはくれない。叩き落とされてしまう。

 

「そんなもので倒されるとでも!?」

 

「ぐっ!?」

 

「相棒!!」

 

「これを掴め!!」

 

 そう言って丹恒が槍を投げる。それを握って、大車輪の容量で勢いをつけて、もう一度向かおうとする。しかし……

 

「うぉぉぉぉっ!! ……ぐはっ!?」

 

「なっ!?」

 

「えっ!?」

 

「……ッ!!」

 

 開拓者は胸を貫かれて、そのまま落下していく。それを見たファイノンの様子が、明らかにおかしくなる。

 

「ふん、私に敵うとでも思ったか……」

 

「……ファイノン、どうした?」

 

「ぬぅあぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 ファイノンが怒りの雄叫びを上げて、カカリアへと向かっていく。辺りの気温が急激に上昇し、雪も氷も急速に溶けていく。ブローニャとゼーレはそれを見て、困惑している。

 

「な、なに!? 雪が溶けて……」

 

「あいつが熱を発してるの!? ちょっと、あいつ何者!?」

 

「ウチらに聞かれても……!! というか今はあの子を……!!」

 

 ファイノンの髪が金色に染まった。そのまま、カカリアの猛攻をものともせずに斬り掛かる。

 

「ぐぁぁっ!? これは……ぐふっ!?」

 

「だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「この星の気温が急激に……まずい、このままではこの星の生態系が……!!」

 

 この星の存続が、今度はファイノンによって危うくなっている。そんな時、開拓者の叫びが響いた。

 

「炎の槍よ、断ち切れ!!」

 

「がはぁぁっ!? 貴様……!!」

 

「相棒……生きてたのか!!」

 

「待たせてごめんな、これで決めよう!!」

 

 そう言って、炎の槍とヘリオスを合わせる。カカリアも負けじと、巨大な氷の塊を呼び出した。

 

「邪魔をするな!! 力こそ……希望だ!!」

 

「こいつで……!!」

 

「終わりだぁぁぁ!!」

 

 二人の剣と槍が、氷の塊とカカリアを貫いた。致命傷を負って、星核が飛び出す。そしてカカリアは、もう生命を保っていられない。

 

「ダメ、近づいちゃいけない!!」

 

「そ、そんな、お母様っ!! いやぁぁ!!」

 

「……終わったようだな」

 

 戦いは終わった。そして、その場に崩れ落ちるブローニャにファイノンが言う。

 

「ブローニャさん。こんなことを言っても、慰めにはならないと思うけど……狂気の暴君として討たれるのではなく、あなたの母親として死ぬことができたのは、彼女にとっての救いになったと僕は思うよ」

 

「……そうね。あいつ、最後笑ってたもの。ほら、立ちなさい。アンタにはまだ、やるべき事があるでしょ?」

 

「うん、わかってる……ありがとう」

 

 本来なら何の慰めにもならない言葉。しかし、ファイノンの言葉には何故か、重みを感じた。だからこそ、響いた。それからこの事実を隠すことを決めて、彼らは次の星へと向かうことになる。

 

「初めての開拓にしては上出来だったな!!」

 

「あぁ、素晴らしい活躍だったよ、相棒!!」

 

「そういえばアンタのあれ、結局何だったの? 金髪になってたし……」

 

 なのかにそう言われて、ファイノンが首を傾げる。

 

「えっ? 僕、そんなことになっていたのかい?」

 

「自覚がなかったのか? 辺りの雪を急激に溶かしながら、カカリアに斬り掛かっていただろう」

 

「すまない、あの時は怒りに任せて剣を振るっていたからか、何も覚えていないんだ」

 

 そう言って頭を搔く。穹はそれを聞いて、目を輝かせている。

 

「えっ、マジで!? ファイノン変身したのか!? 超ファイノンってやつ!? どうやったの!?」

 

「と言われても、全然思い出せなくて……すまない相棒」

 

「修行すればなれるようになるかも!! 今日から特訓だ、ファイノン!!」

 

「そうだね、何事も鍛錬あるのみだ!!」

 

 そんな光景を、姫子は微笑ましく見守っている。しかし……ヴェルトは何故か、難しい顔をしていた。

 

「ヴェルト、どうしたの? 最近何か悩んでいることでもある?」

 

「いや、なんでもないんだ、本当に……」

 

「そう? 悩み事があるなら、いつでもコーヒーを煎れるからね」

 

 それに別の意味でゾッとしつつ、ヴェルトは考え込む。

 

(やはりファイノンは普通の人間ではない……未知数の力を秘めている。もし記憶が戻った時に、我々の敵になったとして……勝てるのだろうか)

 

「コラーッ!! ここで組手をするでない!!」

 

「ご、ごめん車掌さん!! 相棒、ここはやっぱり場所が悪いよ!!」

 

 明るい雰囲気の中で、ヴェルトだけがまだ彼がいることに馴染めずにいるのだった。

 

 

 

 その頃。宇宙ステーション『ヘルタ』では模擬宇宙プログラムの調整が行われていた。

 

「ヘルタさんの残したプログラム……やはり、複雑ですね」

 

「肯定:彼女の頭脳は銀河で唯一無二の物でした。それが失われたことは残念でなりません」

 

「ルパートのスリープモードは、いつまで持つのでしょう」

 

 ルアンにそれを言われると、スクリューガムは俯いて言った。

 

「……よく持って数ヶ月でしょう。それに、あれの中にはまだ奴がいる。何もしてこないとも限りません」

 

「アレはルパートの誕生と共に消えたのでは?」

 

「通常ならばそうです。しかし、奴は一人目の天才。あれで死んだと考えるのは、いささか楽観的すぎる思考かと」

 

 それを聞いたルアンも、不安を隠せずにいる。

 

「何とかできる算段は?」

 

「私のコレクションを持ち出しても、それだけでは決め手に欠ける。時が来たら、星穹列車の手を借りる必要があるでしょう」

 

「なるほど。それに、模擬宇宙プログラムのテスターにも協力してもらわないといけませんしね」

 

 そう話しつつ、調整を続ける二人。そんな中でスクリューガムは呟いた。

 

「ヘルタさん。あなたならこんな時、我々に何と声をかけるのでしょう……」

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