かくして、ファイノンの誘いを受けて列車に乗ることになった穹。そして、穹を含む四人は現在……氷の星、ベロブルグに足を踏み入れていた。
「寒~い!! はぁぁ、凍えちゃいそうだよ……!!」
「可能な限りの防寒はしてきたが、それでも寒いな。できる限り早く、街に辿り着きたい」
「……相棒、寒いのはわかるけれど、どうして僕にくっつくんだい?」
穹は何故か、ファイノンにぴったりくっついていた。その理由は単純である。
「ファイノンって、なんかあったかいんだよな。体温が高いだけじゃなくて……奥の方からぽかぽかしてるというか」
「そうなのかい? 自分では気づいてなかったよ」
「そうなの!? ……あ、ホントだ!! 丹恒、ファイノンあったかいよ!!」
なのかと穹がぴったりくっついた。丹恒も少し悩んだが……背に腹は代えられない。結局、丹恒もくっついて歩くことになった。その結果は……
「みんな、ごめん……ものすごく歩きにくいんだけど……」
「しょうがないじゃん!! 寒いんだから!!」
「……裂界造物だ。三月、穹。一旦ファイノンから離れろ」
丹恒がそう言ったが、二人の答えは決まっていた。
「「やだ!! 寒いもん!!」」
「って言われても、これじゃ戦えないし……!!」
「……しょうがない……うぅ、寒いっ!! 可愛い俺が氷像になっちゃう!!」
そんなことを言いつつ、敵を倒したらまた全員でくっつき直す。結局、しばらくその状態で歩くことになった。その道中にて……
「地面が盛り上がってる……何かいるのかな?」
「おーい、出てきなって!! そのままだと寒くて凍え死んじゃうよー!!」
「出てこないか……仕方がない。ここは少し手荒な手段を用いるしかないね」
ヘリオスを取り出したファイノンは、剣の平面の部分でその部分の雪を、思いっきり叩いた。
「いったぁ!? な、何をするんですかぁ!!」
「あ、やっと出てきた!!」
「コソコソと隠れて、お前は何者だ?」
丹恒はその怪しい風貌に警戒を露にしている。だが目の前の男はそのことよりも、ファイノンを気にしているように見えた。
「……何故この人がここに? 脚本を書き直すべきでしょうか……」
「やっぱり怪しいな!! 殴ろう!!」
「あぁぁぁぁ!? 待ってくださいお兄さん、そのバットをしまって!! 僕の名前はサンポ、ただのしがない商人ですよ!!」
サンポと名乗った男は、寒いのに汗だくになりながら答えた。穹はそれを聞いて、一旦バットをしまう。
「あんな格好で街にも行かず、君はここでなにをしていたんだ?」
「あなた達も見たでしょ? あの化け物の群れ!! 僕みたいな一般市民には荷が重い相手ですので、こうして隠れてやり過ごそうと思ったのです!!」
「なるほど、筋は通っているな」
それに少し納得してくれたことを好機と見たのか、サンポは畳み掛けるように言葉を続ける。
「あなた達は私の恩人です!! 是非ともお礼として、この先の街まで案内させてください!!」
「それ、あんたが護衛してほしいだけじゃないの?」
「そんなことありませんって!! それだけで恩を全て返すつもりもありませんし!! 僕を少しくらいは信用してくださいよ!!」
そんな会話をしつつ、結局全員で歩いていくことになった。途中でシルバーメインの者達にサンポの共犯者と勘違いされ、戦うことになってしまう。そして、そんな時に隊長のジェパードが現れる。
「はぁぁっ!!」
「くっ……中々やるようだな。だが!!」
「ぐぅっ!? なんてパワーだ……!!」
ファイノンとジェパード、二人ともが少し吹っ飛んで距離を取る。そこでジェパードが、サンポがいないことに気がつく。
「すみません、隊長!! 奴を見失いました!! 足跡も見つからず……」
「……逃げられてしまったか。まぁいい、仲間が目の前にいるんだ。捕らえれば、奴も行動を起こすだろう」
「彼は一生来ないと思うよ。彼の言葉からは誠実さが感じられなかったからね」
ファイノンが断言する。そして、周囲もそれを肯定した。
「うん、待ってても一生来ないよ!! 信じたウチらがバカだった!!」
「君達にはベロブルグの市民として、自己弁護の権利があるが、それは建創者の前で行うことだ。連行しろ」
「僕達はベロブルグの市民ではない。その証拠はここにある」
そう言って、ファイノンはなのかからヤリーロVIの写真をもらって、ジェパードに見せた。
「これが……この星だと?」
「あぁ、ベロブルグの市民にこんな物を撮る力はないはずだ。ましてやこの状況では尚更。これで証明できただろう?」
「……君達の言葉が真実ならば、処遇を決める権利があるのは『大守護者様』のみだ。ついてこい、よそ者達」
そう言われて、ベロブルグの街へと向かうことになった。大守護者のカカリアと一通り話した後に、みんなでホテルに一泊した。と、その前に……
「ゴミ箱からいいゴミの気配がする!!」
「えっ、ちょっと!? 何してるの!?」
「あ、相棒!? ゴミ箱に頭を突っ込むのは不衛生だよ!!」
「いや、そこじゃないでしょ!?」
そんなことがありつつ、ホテルで一泊して外に出ると……突然、ブローニャ率いるシルバーメイン部隊に囲まれることになった。
「やはりか……なにか裏がありそうとは思っていたけど、もう仕掛けてくるとは!!」
「相棒、どうする? 全員ボコボコにするか?」
「そうしたいのは山々だけど、今は多勢に無勢だ。一旦退いて、体勢を立て直そう!!」
というわけで四人は、シルバーメインから逃げた。結局回り込まれてしまい、戦うことになったが……サンポの乱入によって、戦いは中断されることになった。そして、開拓者達が目を覚ますと……そこは地下鉱区の診療所だった。
「うーん……ここは……?」
「相棒!! 目が覚めたんだね!!」
「良かった。私はナターシャ、この診療所で患者さんを診ているの」
そんなこんなでナターシャに出会い、怪しいサンポを問い詰めつつ……地下のことを知るために、鉱区へと向かうことに。そこで色々ありつつ、スヴァローグとクラーラに出会う。
「……白髪の男から高エネルギー反応。警戒レベル上昇」
「僕のことか? 高エネルギーというのは……」
「ファイノンの体が暖かいからか?」
なんだかスヴァローグに警戒されつつ、調査を続けて地下鉱区を進み……真実を知って、現状を変えるための行動を始めることになった。それから力を示してスヴァローグを納得させ、カカリアのところに行くことに。途中でセーバルの協力を受けたり、ジェパードを退けたりしながら、やっと辿り着いた。
「力こそ希望だ!! 誰にも邪魔はさせない!!」
「お母様……なんてお姿に……!!」
「戦うしかなさそうだな、行くぞ相棒!!」
「あぁ、任せてくれ!!」
ファイノンと穹はもう武器を構えていた。そのままカカリアに突撃して、剣とバットを振るう。
「はぁっ!!」
「でやぁっ!!」
「そんなもので、私に勝てるとでも!?」
しかし、カカリアも星核の力で強化されている。氷の刃の嵐が、辺り一帯に吹き荒れる。
「くぅっ……!!」
「まだまだ!! その程度で僕らは倒せない!!」
「そこだ!!」
そう言って穹がバットを振り上げて、飛びかかる。しかし、カカリアもそう簡単にやられてはくれない。叩き落とされてしまう。
「そんなもので倒されるとでも!?」
「ぐっ!?」
「相棒!!」
「これを掴め!!」
そう言って丹恒が槍を投げる。それを握って、大車輪の容量で勢いをつけて、もう一度向かおうとする。しかし……
「うぉぉぉぉっ!! ……ぐはっ!?」
「なっ!?」
「えっ!?」
「……ッ!!」
開拓者は胸を貫かれて、そのまま落下していく。それを見たファイノンの様子が、明らかにおかしくなる。
「ふん、私に敵うとでも思ったか……」
「……ファイノン、どうした?」
「ぬぅあぁぁぁぁぁッ!!!」
ファイノンが怒りの雄叫びを上げて、カカリアへと向かっていく。辺りの気温が急激に上昇し、雪も氷も急速に溶けていく。ブローニャとゼーレはそれを見て、困惑している。
「な、なに!? 雪が溶けて……」
「あいつが熱を発してるの!? ちょっと、あいつ何者!?」
「ウチらに聞かれても……!! というか今はあの子を……!!」
ファイノンの髪が金色に染まった。そのまま、カカリアの猛攻をものともせずに斬り掛かる。
「ぐぁぁっ!? これは……ぐふっ!?」
「だぁぁぁぁぁぁ!!!」
「この星の気温が急激に……まずい、このままではこの星の生態系が……!!」
この星の存続が、今度はファイノンによって危うくなっている。そんな時、開拓者の叫びが響いた。
「炎の槍よ、断ち切れ!!」
「がはぁぁっ!? 貴様……!!」
「相棒……生きてたのか!!」
「待たせてごめんな、これで決めよう!!」
そう言って、炎の槍とヘリオスを合わせる。カカリアも負けじと、巨大な氷の塊を呼び出した。
「邪魔をするな!! 力こそ……希望だ!!」
「こいつで……!!」
「終わりだぁぁぁ!!」
二人の剣と槍が、氷の塊とカカリアを貫いた。致命傷を負って、星核が飛び出す。そしてカカリアは、もう生命を保っていられない。
「ダメ、近づいちゃいけない!!」
「そ、そんな、お母様っ!! いやぁぁ!!」
「……終わったようだな」
戦いは終わった。そして、その場に崩れ落ちるブローニャにファイノンが言う。
「ブローニャさん。こんなことを言っても、慰めにはならないと思うけど……狂気の暴君として討たれるのではなく、あなたの母親として死ぬことができたのは、彼女にとっての救いになったと僕は思うよ」
「……そうね。あいつ、最後笑ってたもの。ほら、立ちなさい。アンタにはまだ、やるべき事があるでしょ?」
「うん、わかってる……ありがとう」
本来なら何の慰めにもならない言葉。しかし、ファイノンの言葉には何故か、重みを感じた。だからこそ、響いた。それからこの事実を隠すことを決めて、彼らは次の星へと向かうことになる。
「初めての開拓にしては上出来だったな!!」
「あぁ、素晴らしい活躍だったよ、相棒!!」
「そういえばアンタのあれ、結局何だったの? 金髪になってたし……」
なのかにそう言われて、ファイノンが首を傾げる。
「えっ? 僕、そんなことになっていたのかい?」
「自覚がなかったのか? 辺りの雪を急激に溶かしながら、カカリアに斬り掛かっていただろう」
「すまない、あの時は怒りに任せて剣を振るっていたからか、何も覚えていないんだ」
そう言って頭を搔く。穹はそれを聞いて、目を輝かせている。
「えっ、マジで!? ファイノン変身したのか!? 超ファイノンってやつ!? どうやったの!?」
「と言われても、全然思い出せなくて……すまない相棒」
「修行すればなれるようになるかも!! 今日から特訓だ、ファイノン!!」
「そうだね、何事も鍛錬あるのみだ!!」
そんな光景を、姫子は微笑ましく見守っている。しかし……ヴェルトは何故か、難しい顔をしていた。
「ヴェルト、どうしたの? 最近何か悩んでいることでもある?」
「いや、なんでもないんだ、本当に……」
「そう? 悩み事があるなら、いつでもコーヒーを煎れるからね」
それに別の意味でゾッとしつつ、ヴェルトは考え込む。
(やはりファイノンは普通の人間ではない……未知数の力を秘めている。もし記憶が戻った時に、我々の敵になったとして……勝てるのだろうか)
「コラーッ!! ここで組手をするでない!!」
「ご、ごめん車掌さん!! 相棒、ここはやっぱり場所が悪いよ!!」
明るい雰囲気の中で、ヴェルトだけがまだ彼がいることに馴染めずにいるのだった。
その頃。宇宙ステーション『ヘルタ』では模擬宇宙プログラムの調整が行われていた。
「ヘルタさんの残したプログラム……やはり、複雑ですね」
「肯定:彼女の頭脳は銀河で唯一無二の物でした。それが失われたことは残念でなりません」
「ルパートのスリープモードは、いつまで持つのでしょう」
ルアンにそれを言われると、スクリューガムは俯いて言った。
「……よく持って数ヶ月でしょう。それに、あれの中にはまだ奴がいる。何もしてこないとも限りません」
「アレはルパートの誕生と共に消えたのでは?」
「通常ならばそうです。しかし、奴は一人目の天才。あれで死んだと考えるのは、いささか楽観的すぎる思考かと」
それを聞いたルアンも、不安を隠せずにいる。
「何とかできる算段は?」
「私のコレクションを持ち出しても、それだけでは決め手に欠ける。時が来たら、星穹列車の手を借りる必要があるでしょう」
「なるほど。それに、模擬宇宙プログラムのテスターにも協力してもらわないといけませんしね」
そう話しつつ、調整を続ける二人。そんな中でスクリューガムは呟いた。
「ヘルタさん。あなたならこんな時、我々に何と声をかけるのでしょう……」