ピノコニーでの旅を終えて、サンデーが仲間に加わり、演武典礼が終わったあとのこと。スクリューガムが、星穹列車に通信をしてきた。
「お久しぶりです、スクリューガムさん」
『えぇ、お久しぶりです、姫子さん。そして他の皆さんも』
「俺は久しぶりでもない気がするなぁ、模擬宇宙のテストでいつも会ってるし」
『ふふっ、確かにそうですね。しかし今回は、別件でお力添えを頂きたいと思っています』
スクリューガムは、そう言って続ける。
『私がスリープモードにしていた、ルパート3世が目覚めようとしています。奴は弱体化しているとはいえ、元は絶滅大君。目覚めれば星系に甚大な被害が及ぶでしょう』
「なるほど、そいつをやっつければいいんだね? 簡単だよ、すぐにやっつけちゃおう!!」
「油断は禁物だぞ、三月」
ルパート3世の討伐。それが一筋縄でいかないのは、スクリューガムも理解していた。
『ルパートは外部に強固なエネルギーシールドを展開しています。なので火力だけで倒し切るのは難しい……あなた達には私が開くセキュリティホールから、ルパートのプログラム内部に侵入、それを解除する方法を見つけ出していただきたいのです』
「なるほど、任せてくれ!! ファイノン、今回も俺達の出番だな!!」
「あぁ、やってやろう!!」
相変わらず二人は息ぴったりだ。それを全員が微笑ましそうに見つめる。
『それでは、こちらも準備を進めます。また後でお会いしましょう』
「よし、出発じゃ!! 目標はルパート3世!!」
「今回もファイノンと穹、それからなのかちゃんと丹恒に任せるわね」
いつもの四人が選ばれ、全員が準備を始めた。なのかはカメラを取りに部屋に戻る。
「ルパートの内部……どんな怪物がいたって、俺とファイノンなら無敵だ!! さっさとやっつけて、次の冒険に行こう!!」
「あぁ、もちろん!! さてと、僕も準備を……」
「……ファイノン?」
ファイノンの体が、ぐらりと揺れた。そのまま膝をついて、その場に座り込む。
「す、すまない……体が重くて……頭が痛い……」
「大丈夫か、ファイノン? 少し休む?」
「あぁ、そうさせてもらうよ……すまない相棒、しばらく待っていてくれ」
「わかった、無理するなよ? 辛いなら俺達だけでも大丈夫だからな!!」
穹はそう言ったが、やはり心配そうにしている。そして立て続けに……なのかまで体調を崩してしまった。ブラックスワンによると、この星系の記憶が影響しているそうだ。
「仕方ない、とりあえず今は俺と穹で行こう」
「うん……でも心配だな」
「大丈夫よ、元気になったら連絡を入れるわ」
そう言われて、穹は不安そうに頷いた。そこでスクリューガムからメッセージが来る。
『準備が完了しました。いつでもどうぞ』
「それでは頼んだぞ、二人とも!!」
「行こう、穹」
「……うん」
そうして、穹と丹恒はなのかから託されたカメラを持ち、切り離された車両に乗って、ぴくりとも動かない巨体に近づいていく。
「近くで見ると……ホント大きいな」
「元々は絶滅大君だったと言うし、当然といえば当然か……」
「……あれっ、なんだ? なんか光って……」
次の瞬間。ルパートの腕が動き、杖から紫色の光が放たれた。それは車両を撃ち落とし、真っ逆さまに落下していく。
「なっ……!?」
『スリープモードの解除が二日も早い……!? もう一度ハッキングをかけます、ルアンさん!!』
『はい!!』
残されたヴェルト、姫子、パム、サンデーにブラックスワン……全員がそれを見つめていた。メッセージは圏外になってしまっている。
「……どうなったのだろう」
「心配だけど……なのかちゃんとファイノンも心配ね。なのかちゃんを見てくるわ、ブラックスワンもついてきて」
「俺はファイノンを見てこよう。サンデーさん、ついてきてくれ」
「わかりました」
四人で手分けして、それぞれを見に行く。するとファイノンは……いなくなっていた。
「ここにいない……? どこに行ったかわかるか、サンデーさん?」
「部屋に入った形跡がない……何にも触れていないのか? どうして?」
「……姫子、ファイノンが消えた。なのかはどうだ?」
なのかは消えていなかったが、ベッドごと凍りついてしまっていた。どちらも酷い状況になっている。
「どうなっているの……?」
「なにか、ルパートと関わりがあることなのだろうか?」
「穹さん……丹恒さん、無事だといいのですが」
その頃、ルパートに撃ち落とされた二人は地上に不時着していた。怪物だらけだと思っていたのに、やけに静かな光景が広がっている。
「うぅっ、ここは……丹恒? 丹恒、大丈夫か!?」
「……穹? 大丈夫なのか?」
「うん、なんとか……車両は、完全に壊れちゃったな」
二人は顔を見合わせたあと、とりあえず先に進むことにした。遠くに見えたピンク色のなにかを追って、外に出る。すると、ニカドリーの眷属達がそこにいたので、それらと戦うことに。順調に撃破していっていた、その時。上から青い軌道を描いて、剣と人が降ってきた。二人はそれに、見覚えがあった。
「えっ……?」
「お前は……」
「面白いものを持っているね」
次の瞬間、穹のバットがいきなり奪い取られる。様子がおかしいことに気づいた丹恒が、槍を投げつけたが……弾き飛ばされて、無惨にへし折られてしまった。丹恒は明らかな違和感に気づき、疑念を抱いている。しかし、穹にとってはそんなこと関係ない。
「相棒!! 先に来てたんだな、だったら連絡してくれればいいのに!! 急にバット取って、どうしたんだ? もしかして組手か? いいよ、かかってこい!!」
「……何を言ってるんだい? 君たちと僕は初対面だろう?」
「なにっ!?」
「……えっ? な、何言ってんだよ相棒!! 俺だよ、穹だよ!! 星穹列車のナナシビトの丹恒と、穹とファイノン!! なのはここにいないけど……ずっと一緒に開拓を……」
穹は焦りながら、ファイノンにそう言う。目の前の彼がファイノンであることは、疑いようがない。穹が相棒を見間違えるはずがない。しかし、ファイノンはそれに疑いを深めるばかりだった。
「星穹列車? ナナシビト? なんだい、それは? 全部初耳だよ。それに、初対面でどうして僕の名前を知ってるんだい? ますます怪しいな」
「……お前、ファイノンではないのか?」
「名前はファイノンで合っているよ、エリュシオンのファイノンさ。でも、そのファイノンという人はきっと人違いなんじゃないかな。僕は君たちと初対面だし……相棒と呼び合うような仲でもないよ」
それを聞いて、穹は震えていた。困惑、悲しみ、信じたくない感情。それらが全部ごちゃまぜになって、穹の心の内は今までにないほどに掻き乱されていた。今まで彼が明るく振る舞えていたのは、いつでも相棒がいたからだ。それを失えば穹の心は、誰よりも脆い。
「なぁ、相棒……冗談だよな? 嘘だって、言ってくれよ……俺が相棒を間違えるはずない。銀髪で、剣が上手くて、青い目をしてて、服のセンスが変で、手が両利きで、俺のこと諌めてくれて、列車の料理番で、俺の最高の相棒で……」
「……なにも心当たりがないな。どうしてそんなに僕のことを知ってるんだい? わかるように説明してほしいな」
「穹、落ち着くんだ。よく見ろ、ファイノンは肌身離さずつけていたはずの星軌チケットをつけていない。何かがおかしい、今は様子を見るんだ」
丹恒の言葉は、穹にはもう届かない。相棒が、自分の相棒でいてくれない。目の前にいるのに、他人だという事実が受け入れられない。最初からずっと、相棒と呼んでくれて……自分と思い出を、作ってきたのに。
『相棒、こっちは任せてくれ!!』
『相棒、そっちは危ないよ!!』
『流石は僕の相棒だ!!』
いつも、どんな時でも。ファイノンが隣にいてくれた。だからこそ、穹は強く在ることができていた。どんなに絶望的な状況であろうと、ファイノンの相棒だという矜恃を持って、立ち向かうことができていた。それなのに。
「天外からの客人? そんな人たちに出会うのは初めてだな。天外では、そういう話し方をするのかい?」
「違うよ、俺の相棒は、ファイノンしか……」
「こら!! ファイちゃん、何ちてるの!!」
そこにトリビーが現れて、ファイノンを諌めてくれた。それから二人が自己紹介をした後、バットを返されたが……穹はブツブツと何かを呟いていて、聞いていない様子だ。
「相棒……なんで、どうして……」
「穹……」
「どうちたの、あの人? すっごく暗い顔……」
「僕にもさっぱり……」
そう言われながら、崩壊したヤヌサポリスを抜けていく。謎解きはほとんど丹恒がやった。穹はできるような精神状態ではなかった。そして、トリビーとファイノンがヤヌサポリスの人々を説得している中でも、穹は……
「相棒……そうやって、説得するのが上手いところも同じだ……なのに、なんで俺のこと……」
「……ねぇ、ファイちゃん。あの子、なんとかちてあげて? あたちたち、見てられないよ……」
「そう言われても、本当にどういうことなのか……彼は僕と初対面じゃないと言っているんだけど、本当に記憶にないんだ」
丹恒は穹に寄り添って、励ましの言葉をかけているが……丹恒にも原因がわからなかった。そもそも、ファイノンがどうしてここにいるのかもわからない。
「ファイノン、お前は……このオンパロスで産まれたのか?」
「当然だろう? ここは天外との繋がりを持っていない。ここで産まれた人しかこの星にはいないよ」
「……そうなのか」
だとすれば、列車にいたファイノンはなんなのだろうか。丹恒はますます、疑問が深まるばかりだった。それから大地獣に乗ってオクヘイマへと向かうと、オクヘイマはニカドリーの眷属たちに襲撃されていた。穹は落ち込みながらも、バットを振るって倒していく。
「お、お願いします、助けてください!! 狂王ニカドリーが襲ってきたんです!!」
「ニカドリー? なんのことだ?」
「大丈夫だ、みんな!! 僕たち黄金裔がオクヘイマにいる限り、みんなを傷つけさせはしない!! トリビー、トリアン、トリノン先生!! 市民達は任せたよ!!」
「お、同じ顔の人間が三人……!?」
奇妙な状況に困惑する丹恒。一方、穹はファイノンを追いかけてもういなくなっていた。それに気づいて、丹恒も急いで追いかける。
「待ってよ、相棒……なんで俺を置いていくの……? 俺のこと、嫌いなのか……?」
「いや、だから本当に何を言ってるか……」
「敵に背を向けて無駄話をするとは、随分と余裕だな、救世主」
そこに現れたのはクレムノスの王、モーディスだった。タイタンの眷属達はモーディスによって一掃されたようだ。
「いや、この人がずっと付き纏ってくるから……」
「付き纏ってない。ファイノンは俺の相棒だからついていってるだけ」
「どういう意味かは知らんが、ここは戦場だぞ。死にたくなければ気を張り詰めるんだな」
そこに丹恒も追いついてくる。モーディスに後ろを任せて、三人は先に進むことになった。すると、今度は案内役としてキャストリスが現れた。
「私が案内いたします。くれぐれも、私に近づきすぎないようお願いしますね」
「敵がどんどん倒れていく……どうなっているんだ?」
「彼女の死の権能だよ。触れたものや周囲のものの命を奪う、その力でみんなを守っているのさ」
そして、さらにその先に進んでいくと……雲石の天宮、公衆浴場にて。件のニカドリーと戦うことになった。穹はファイノンにくっついて動きつつ、攻撃を仕掛けている。
『この人、言ってることはよく分からないけど……強さは僕と同等レベルだな』
「……急に動かなくなった?」
「止めを」
そう言って空中にいたのは、オクヘイマの統治者にして、『浪漫』の半神のアグライアだった。彼女の協力もあり、ニカドリーを倒すことに成功する。
「天外からの客人、まずは感謝します。オクヘイマはあなた達を歓迎しましょう」
「君たちは思っていたよりも、勇敢で強いみたいだ。僕からもお礼を言わせてくれ」
「なぁ、相棒。なんであの時、攻撃を合わせてくれなかったんだ? 合わせてれば勝ててたと思うぞ。俺のアイコンタクトがなんで届かないんだ? 俺たち、心が通じあった相棒だろ? それなのにどうして……」
その重たい感情に、ファイノンは少し恐怖していた。どうして自分はこんなにも詰められているのだろうか。ファイノンも疑問でいっぱいだ。
「穹、よせ。今は言うべき時じゃない……ところであなた、目が見えていないのか?」
「えぇ、ですがこの金糸で全てを感じ取れるので、視界は必要ないのです。さて、まずはゆっくりと話せる場所に向かいましょうか」
「ファイノンはどこに行くの……?」
「僕はみんなを安心させに行くよ、また後で会おう」
穹はファイノンを追いかけようとしたのだが、丹恒に止められた。それから、丹恒がビーコンを置いたり、ピュエロスに浸かって歴史を聞いたりしながら、先に進む。
「お風呂のことピュエロスって言ってたの、そういうことだったんだ……じゃあ、スマホを伝言の石版って言ってたのも?」
「……ますます、よくわからないな。ファイノンの謎は元々多かったが……」
「じゃあ、アグライアと話してくる」
暗い顔ではあるが、必要なことは果たすつもりらしい。それから嘘をつけない金糸で絡め取られ、天外の情報を漏らさないと約束させられる。そして、二人はオンパロスの情報を集めるために外に出ることになった。途中でオロニクスの祈言を使用したり、丹恒の槍をハートヌスに直してもらったりした。
「改めてすまなかった、丹恒さん。それに穹さんもね」
「さんなんてつけないで、なんでそんな他人行儀なの? 相棒って呼んでくれよ……」
「そ、それはまた今度ね……ははっ」
ファイノンの恐怖も最もだが、穹がこうなるのも仕方がない。心の大きな拠り所がなくなったのだから。丹恒は穹を気遣い、オクヘイマを回ったが……効果は見られなかった。その上、なのかのカメラのデータを見たダミアノスの飛び降り自殺を止めるために、天外の真実を話してしまう。それが原因になって、プライベートルトロに案内されたあと、アグライアから尋問を受けることになってしまった。拘束された穹を見て、丹恒がアグライアを糾弾する。
「今の穹は弱りきっている。それをわかっていてやっているのか? お前には人の心というものがないのか!?」
「そうだとしても、オクヘイマに混乱を齎すかもしれない存在を、野放しで置いておくわけにはいきません」
「……いいよ、真面目に答えるから。大丈夫だよ、丹恒」
「穹さん……アグライア様、やはり……」
明らかにただ事ではない様子を見ていたからか、後ろのキャストリスすら戸惑っている。そこでファイノンがやってきて、アグライアに進言してくれたことで、尋問は中止となった。
「ありがとう相棒、助けに来てくれたんだな!! 俺のこと思い出してくれたのか!?」
「いや、そういうわけではないんだけど……アグライア、彼は嘘をついているかい?」
「いえ、嘘はありません。どうやら本気で言っているようです」
それを聞いて、ますますわからなくなるファイノン。それからファイノンは、タイタンや火種について説明した後、ニカドリー討伐のための遠征に協力して欲しいと言った。
「判断はお前に任せよう、穹」
「もちろん協力するよ。相棒を置いていくなんて有り得ない」
「ありがとう、感謝するよ!!」
二人はこういう流れで、ニカドリー討伐へと向かうことになったのだった。しかし、丹恒はオクヘイマで待機するという。それを聞いた穹が不安そうに丹恒を見た。
「丹恒も、俺のこと忘れるのか……?」
「安心しろ。俺は何があっても、お前のことを忘れたりしない。約束しよう」
「……うん。絶対帰ってくるからね」
穹はファイノンとモーディスと共に、百開門を使用し、クレムノスへとワープした。それから、二人と共にクレムノスを歩いていく。その途中でファイノンとモーディスが喧嘩を始めた。
「それなら、タイタンの眷属を何人倒せるかで勝負だ!! 負けた方は戦利品を相手に渡す、これなら平等だろう?」
「ふん、HKS(愚か者め)……受けて立とう!!」
「……相棒、なんで俺じゃなくて、モーディスと仲良くしてるんだ? 俺の時は苦笑いしてたのに、あんなに楽しそうに……俺の相棒なのに、なんで他の男と……俺の何がいけなかったの……?」
モーディスを見ながら、穹は嫉妬の目線を向けている。それを受けて、モーディスはファイノンに言った。
「だが戦利品は必要ない、それよりも奴を何とかしろ!! 粘つくような視線を向けられて、なにも集中できん!!」
「そう言われても、僕にだってどうにもできないんだよ!! ホントに……どういうことなんだ?」
「モーディスじゃなくて、俺の隣にいてくれよ……俺の相棒なのに……」
ファイノンとモーディスはその視線に苦しんでいたが、穹も穹で精神が崩壊しそうになっていた。自分の相棒が見向きもしてくれなくなっているのは、穹にとって味わったことがない苦痛だった。それから穹はファイノンと共に、タイタンの眷属達を叩き潰していく。
「やっぱり君は強いな、それに僕と息ぴったりだ!! 案外気が合うのかもね!!」
「俺たちは魂で通じあった相棒だから当然だろ」
「そ、そうなのか……嘘をついてはいないみたいだし、どういうことなんだ……未来人とか?」
ファイノンはとんでもない予想を始めていた。思い出してはくれないが、一緒に戦えているので少しは精神状態がマシになってきたようだ。それから先に進み、勝負はファイノンと穹の勝利で終わった。それからモーディスについて知りながら先に進み……ついにニカドリーと対峙する。
「こいつがニカドリーか……いいところ見せれば、相棒も俺のこと思い出してくれるかな?」
「戦いに集中しろ、死ぬぞ!!」
「どうやら心配はいらないようだぞ、モーディス。喋りながらでも攻撃を全て防いでいる、達人の動きだ」
自分が穹を育てたとは露知らず、ファイノンはそう言った。しかし途中で、ニカドリーの不死を破れないことを知って、モーディスが時間稼ぎをしている間に、不死を破る方法を探すため歳月のオロニクスの力を借りに行くことになった。全員で協力して、神殿の奥に進むと……オロニクスが、言った。
「母上……?」
「えっ、母上……? どういうことですか?」
「母上って……俺はファイノンの相棒だけど?」
「そういうことではないと思うが……」
丹恒に軽くツッコミを入れられながら、歳月のオロニクスに祝福を受けることに。そこで星核ハンター時代の幻を見て、記憶の星神の一瞥を受けて、不思議な生物ミュリオンに出会う。
「ミュ~?」
「なに……? 誰? 相棒じゃないのか……」
「ミュ、しつれい、ミュ~!!」
自分を見て、残念そうにされたことに憤慨しているのか、ミュリオンは不満そうな表情だ。それから、目の前にカフカとホタルの記憶が現れる。穹は少し悩んだあと、カフカに近づいていく。
「どうしたの、穹? 浮かない顔ね」
「……相棒が俺のこと、忘れちゃったんだ。大事な相棒で、さっきまで仲良く話してたのに……相棒がいたから頑張れたのに……ファイノンは俺のこと、嫌いになっちゃったのかな?」
「そう……私には、今のあなたがどうなっているかはわからない。でも……『聞いて』、穹」
記憶の中のカフカは、穹の頬に手を添えて話しかけてくる。
「あなたの道にはこれから、想像を絶する苦難が待っているわ。だけど、それだけ多くの出会いと幸せも待っている……心配しないで。あなたが後悔しない選択を続ける限り、きっとあなたには幸せな結末が待っているはずよ」
「カフカ……」
「だから、どうか諦めないで。悲しまないで。下を向いていたら、大切な選択の機会を見逃してしまうわ。私はあなたのことを、いつでも見守っているから」
「……ありがとうカフカ。行ってきます」
記憶の中のカフカは、笑顔で穹に手を振っていた。目覚めた穹は、少し暗い表情が明るくなっていた。それからミュリオンと共に、クレムノスの痕跡を集めて、ニカドリーの不死を破るために過去のクレムノスへと行くことになった。ファイノンはニカドリーのところへと今一度向かい、穹とミュリオン、そしてキャストリスは過去のクレムノスに向かうことに。
「ファイノンと一緒に行けないのか……残念だな」
「え、えっと……私では力不足でしょうか……?」
「いや、そういうわけじゃないんだ……ごめんな」
それからゴーナウスと出会って、ギミックの全てをクレムノス式で解決していく。
「力ずくで解決するのはいいが……お前は、なにか急いでいるのか?」
「俺の相棒と、その友達が戦ってるんだ。早く、行ってあげないと」
「なるほど、それならば……気合いを入れんとな」
彼らは破竹の勢いで前に進んでいく。それからゴーナウスがニカドリーの不死を破る最後の鍵であったことを知り、三人に別れを告げて雷を受けた。そして、時間は現代へと戻る。
「頼む、私に栄誉ある死を……!!」
「相棒!! ニカドリーを倒せるようにしたぞ!!」
「本当かい!? よし、あとは倒すだけだ!!」
そして、一同は死闘の末にニカドリーを撃破。火種を持ち帰り、創世の渦心に火種を返還することになった。ルトロに帰ったあと、丹恒が穹を心配する。
「穹……大丈夫か?」
「ファイノン……なんで、俺のこと忘れちゃったんだろうな」
「わからない……だが諦めるな。きっと思い出してくれるさ。お前とあいつの仲の良さを、星穹列車で知らない者はいない」
「……うん」
穹はそう言って、ルトロのベッドで天井を見つめ続けた。ミュリオンはそれを、心配そうに見つめていた。
「ミュミ~……」
「お前も穹が心配なんだな? 俺もそうだ」
「メミ……」
相棒がいつ自分を思い出してくれるか。穹は、それで一日中頭がいっぱいだった。