次の日。予定通り、ファイノンは紛争の試練に挑戦した。しかし……いつまで経っても、ファイノンが帰ってくることはなかった。
「相棒、帰ってきてないのか……? どうして?」
「わかりません……ですが、戻ってこないということは、手間取っているか……失敗したかのどちらかでしょう」
「そんな!! なら早く助けに行かないと!! どいてくれ、俺が行く!!」
穹はそう言って、創世の渦心へと飛び込みそうな勢いだ。それを後ろから見ていたアグライアが言う。
「開拓者。タイタンの試練に割り込むのは、基本的に禁止されています。もし割り込めば……」
「お前の意見は聞いていない。穹、まずは方法を探そう。見つかったら、すぐ助けに行こう」
「うん、うん!! トリノン先生、何か知らない!?」
丹恒に言われて、助けに行く手段をトリノンに聞く穹。トリノンに言われた手順を踏むと、助けに行けるらしいことがわかった。モーディスもそこにやってきたので、一緒に行くことになる。試練の中は……酷い惨状だった。
「これは……」
「ふん、悪趣味な……」
「相棒、大丈夫だよな……もし死んでたりしたら、俺、俺……」
穹は今にも泣きそうだ。それを見た丹恒とモーディスが励ましの言葉をかける。
「心配するな。あいつの強さは、お前が一番よく知っているだろう?」
「ふん、救世主がそんなに簡単に死ぬはずがないだろう。それを信じているから、俺もここに来ているのだ」
「……だよな、そうだよな」
穹は前に進む。そして、モーディス達とともにファイノンを見つけ出し……試練から脱出。ファイノンのは弱っていたので、部屋で療養することになった。それを見た穹はとても心配そうにして、部屋に行こうとしている。それを衛兵達が必死に止めている。
「離して!! 俺は相棒のところに行ってあげないといけないんだ!!」
「ダ、ダメですよ、ファイノン様は今休んでいますから!!」
「穹。今はファイノンも疲弊している、そっとしておいてやろう」
そう言われた穹は、渋々部屋に戻った。そして次の日……穹は先に行って、トリビーとトリアンが言い争っているのを目にした。どうやら、彼女らの宝物を買うか買わないかで喧嘩していたようだ。結局キャストリスがそれを購入し、後で渡すことになった。
「……なぁ、キャストリス。ファイノンって、どんな人なんだ?」
「えっ? ファイノン様は……えっと、オクヘイマで一番人気の黄金裔で……文武両道、清廉潔白の救世主……と言われていますね」
「そうなんだ……俺の知ってるファイノンはそれだけじゃなかったけど。もっと明るくて、笑顔が多くて……俺と息ぴったりで……」
相棒の隣にいるからテンションが上がっていただけ、とは言えない。キャストリスもそれについて、なんのことやらわからずにいた。それから、丹恒と穹はアグライアに感謝の証として『神血の蜜露』をもらう。そして、同盟を結んで欲しいと言ったが……
「お前は信用ならない。俺はいいとしても、この弱りきった状態の穹にあのようなことを断行するのは、人のやることではない。それに、議院の者たちとのトラブルに巻き込まれる可能性もある。個人的に協力はするが、同盟などごめんだ」
「俺は……相棒に俺のこと、思い出してほしいだけだ。俺たちは親友以上の、一番大切な相棒だったから……相棒の住んでるオクヘイマを守りたい。それだけだ」
「……そうですか」
そこで黄金裔達の治療に来ていたヒアンシーが現れ、険悪極まりないその空気を和らげてくれた。そして三人を仲介して、なんとか同盟を結ぶことに成功する。
「もう一度念押しするが、穹をこれ以上追い詰めるようなことをすれば、俺は容赦しないぞ」
「えぇ、わかっています。穹さんのお願いであるファイノンの経歴も……私の方でできる限り調べておきましょう」
「頼むよ……相棒のこと、少しでも知りたいんだ」
それから暗黒の潮の研究、そして理性のタイタン、サーシスの火種について考えるために、神悟の樹庭へとキャストリスとトリノンを送ることになっているという。穹は、それに同行することになった。また、仕事をする上で便利だろうということで、トゥローディをアグライアからもらう。それにヒアンシーもついてくるはずだったが、負傷者の治療で手一杯になり、三人と一匹で行くことになった。
「樹庭が……やけに静かですね」
「みんな寝てるのかな?」
「相棒はここで勉強してたのか……相棒のノートとか、あるかな? なぁキャストリス、相棒の物がある場所知らない?」
暗い顔で見つめられて、キャストリスは少し萎縮してしまっている。
「え、えっと、ファイノン様はあまり物を持っていないので……あったとしても、持ち帰っているかと」
「そうなのか……相棒の手がかりを探さないと……相棒、俺が記憶を戻してやるからな……そしたら、また一緒に開拓しよう……」
「ミュー、お肌、ミュウ!!(もう、そんなに暗い顔してたら、お肌が荒れちゃうわよ?)」
神悟の樹庭を進んでいく。途中で、暗黒の潮の造物達……紫の水晶に侵食された怪物達に襲われたが、難なく倒して進む。そして途中で、謎の女性カリュプソー……ではなく、理性のタイタンのサーシスに出会って、ギミックを突破して進んでいく。どうやら一番奥に、ファイノンとキャストリスの先生であるアナイクスがいるらしい。火種のひとつがアナイクスの中にあるのだとか。
「相棒の先生なら、相棒のこと知ってるかな……」
「ど、どうでしょう……あの方はあまり、生徒一人一人の細かいプロフィールまで覚えるタイプではないので……」
「あ、いたぞ!! グレーちゃん、キャスちゃん!! あそこだ!!」
そこの玉座に、アナイクスが座っていた。だがその目の前にいたのは……黒衣の剣士、フレイムスティーラーであった。穹達を見つけると、一言呟いて襲いかかってくる。
「一、二……三手で、十分」
「危ないっ!!」
「……!?」
虚を突いた一撃だったはずだが、穹に防がれてしまった。なんとなく、剣筋がわかったのだ。いつも見ている剣筋に似ていたからだろう。そのまま戦っていくが、フレイムスティーラーの分身を利用した戦法にやはり苦戦を強いられる。吹き飛ばされたキャスを受け止めながら、なんとか戦う穹。
「くっ……!!」
「開け、百界門ッ!!」
「ッ……グォ……!?」
フレイムスティーラーは百界門によって遠くに吹き飛ばされ、何とかその場を凌いだ。アナイクスを連れて、オクヘイマに戻った一行だったが、トリアンは体調を崩してしまう。学者達の遺した書類によると、ニカドリーを倒したことで暗黒の潮が溢れ出してきているらしい。キャストリスに触れても死ななかった、そのことを疑問に思われながら、丹恒のところに戻る。
「その天空のタイタンって奴のせいで、外と連絡が取れないのか?」
「恐らくはな。ヒアンシーは天空の一族の末裔だと言っていた。彼女ならなにかを知っているかもしれない」
「外に相棒がいるなら、ここのファイノンは別人ってことになるしな!! 早くそいつを倒そう!!」
「落ち着け、エーグルは天高くにいるんだ。倒しに行きたいが、今は行けない」
そんな話をしていた時。外がなんだか騒がしくなってきた。穹と丹恒が外を見に行ってみると……
「あ、グレーちゃん。モスちゃんとファイちゃんがね、今度はお風呂でガマン対決してね……ファイちゃん、倒れちゃったの」
「犯人は、メデイモス……」
「はぁ……何をやっているんだ」
「負けず嫌いなところも、同じなんだな……でも、なら尚更どうして……俺のこと、覚えてないんだ……アグライア、なにか分かった?」
アグライアはその問いに対して、今調べた範疇で答える。
「すみません、彼は多くを語らないもので……故郷のエリュシオンという村が、暗黒の潮によって滅ぼされた……ということくらいしか」
「エリュシオン……ここの相棒が言ってた村か? 相棒はそこから来たの? じゃあ、列車に乗ってた相棒は……?」
「謎が深まっただけ、か……この星はやはり、なにかおかしいな」
それからしばらくして、ケラウトルスが紛争の試練のためにトリノンを誘拐したり、トリアンに限界が来ていることがわかったり、ファイノンが幼なじみの『キュレネ』を殺した黒衣の剣士と、フレイムスティーラーが同一人物だということを確信したり……色々あって、穹と丹恒はヤヌサポリスに向かう。すると、そこにはトリビーとトリノンが倒れていた。どうやら、トリアンは自分を犠牲にしてしまったらしい。
「俺とヒアンシーはここに残ろう。早くトリアンを探さなければ」
「僕たちはアグライアのところに行こう、相棒。僕に考えが……」
「……相棒? 今、相棒って言ってくれたのか!? 相棒っ!! 俺のこと、思い出してくれたんだな!!!」
ものすごい勢いでファイノンに迫る穹。それに気圧されて、冷や汗を流しながら後退するファイノン。
「え、えっ? 思い出した、とかじゃないけど……なんとなく、そう呼びたかっただけでさ」
「……そう、なのか。ごめん。勘違いしちゃった。急に迫っちゃってごめんな。俺……やっぱりおかしくなってる。怖いよな、本当にごめんよ……」
「穹……自分を責めるな。仕方のないことだ」
「……たんたん。グレーたんに、何があったんですか? できれば、教えていただきたいです」
ヒアンシーにそう言われて、少し悩んだあとに丹恒は探しながら話すことに決めた。穹とファイノンとトリビーは、アグライアのところに行って策を練ることに。ファイノンの出した策。それはミュリオンの力を借りて、過去のクレムノスにフレイムスティーラーを閉じ込めることだった。準備は順調に進み、計画が実行される。
「ぬぅぅっ……!!」
「アナイクス先生、もう来ていたのか!! 行こう相棒!!」
「わかってる!! ミュリオン、頼むぞ!!」
「まかせて!!」
そう言って、過去のクレムノスが展開される。アナイクスは戦いの最中に、奪われた歳月の火種を奪還することに成功した。そのままフレイムスティーラーを置いて、世界を閉じたが……それでもフレイムスティーラーは、それを突破してくる。だが、そこにモーディスが加勢。手に入れた紛争の火種の力で、天罰の矛を投げつけて撃破した。
「やったね、相棒!! 僕達の勝利だ!!」
「うん……そうだね」
「話はオクヘイマに戻ってからだ、今は戻ろう」
それからミュリオンの提案で、歳月の火種を開拓者に渡すことになったり、モーディスがフレイムスティーラーと戦い、何とか生還したケラウトルスにクレムノス王朝の終わりを告げたりと、色々あって……モーディスは半神として、暗黒の潮との終わらぬ紛争へと身を投じる前に、穹と丹恒にも挨拶をしに来た。
「……というわけだ。これが今生の別れになるだろう」
「そうか……モーディス、俺からもお前に敬意を表そう」
「……」
「フッ、お前が何を考えているか当ててやろうか? 救世主のことだろう」
穹はそう言われて、辛そうに頷いた。
「ファイノンとは、最高の相棒だったんだ。今日相棒って呼んでもらえて、すごく嬉しかった。思い出してくれたのかって思った。けど、違った……なんでなのかな? 相棒、もしかして……俺のこと嫌いになったのかな?」
「……ふん、HKS(馬鹿者)。あいつが人を嫌いになった程度で、全てを忘れるような薄情者だとお前は思うのか? 最高の相棒と自称する程なら、その程度わからないはずもないだろう」
「モーディス……そうだ、穹。ファイノンにもなにか事情があるんだ。希望を捨てるな」
そう言われて、穹は……少しだけ笑って言った。
「ありがとう、モーディス。大事なこと、思い出せた」
「礼などいらん。だから救世主に迫るのはやめてやれ、事を急いても結果はついてこないからな」
「……元気でな、モーディス」
「あぁ、お前こそ。達者でな」
本当にほんの少しだけだが、穹は前向きになれたようだ。丹恒は内心、ほっとしていた。それからトリアンを木の下に弔ったあと、過去のヤヌサポリスへと赴き、彼女らの過去を知った。それから、元老院の中に不満を抱えている者がいることなどを知る。そして穹が、決心して立ち上がる。
「決めた、俺は歳月の火種を継ぐよ。ファイノンの住むオンパロスのためにも」
「そうか……わかった。お前の選択なら、俺は尊重しよう」
「そうと決まれば……ん?」
穹がアグライアのところに結論を伝えに行こうとした時だった。こんこんと部屋のドアがノックされる。
「相棒、丹恒。ちょっといいかな? 話があるんだ」
「ファイノンだ!! いいよ、入って!!」
「やぁ、相棒。今日は提案をしに来たんだ」
それを聞いて、丹恒が言った。どうやら丹恒も知っていたらしい。
「ヒアンシーの『昏光の庭』のことか? 予定が取れたんだな」
「え? なんか予約してたのか?」
「うん、君がいつも暗い顔をしているから……ヒアンシーさんに話した人は、誰もがたちまち明るくなると言われているんだ。君も、一度どうかなと思ってね」
「俺からお願いしたんだ、穹。行ってみてほしい」
丹恒にもそう言われては行くしかない。ファイノンに案内されて、穹はオクヘイマに再建された昏光の庭に行く。そこにはヒアンシーがいた。
「じゃあ任せたよ、ヒアンシーさん」
「はい、任せてください!! ……こほん。昏光の庭にようこそ。あなたの悩み、聞かせてもらえませんか?」
「……俺の悩みか。でも、今すぐ解決できるようなものじゃないし……」
「いいんです、話してくれるだけでも……楽になるかもしれませんし。なんでも聞きますよ」
そう言われて、穹は話し始めた。ファイノンと出会った時のこと、一緒に旅をした思い出、仲がよかったエピソードなど……
「……本当に仲がよかったんですね。ファイノン様がそんなことするなんて、信じられません」
「俺は今の相棒の方が、なんか違和感あるなぁ。俺の知ってる相棒と違うし」
「きっとグレーたんと一緒にいるのが楽しかったんですよ。ファイノン様からそう呼んできたなら、間違いありませんよ」
しかし穹は楽しそうな思い出話から一変、顔が暗くなる。
「でも……今、相棒は俺のことを忘れてる。初対面だって言われて……俺のこと、仲間のこと、旅のこと……全部覚えてないって言うんだ」
「……その苦しみは、私には想像もつきませんね……ファイノン様が物事を忘れるだなんて、ただ事じゃありません」
「やっぱり、そうだよな……俺のこと嫌いになったわけじゃないって、モーディスも言ってたけど……それでも辛いよ」
ヒアンシーはそんな穹に、アドバイスをする。
「そうですねぇ……そうだ! ファイノン様は天外のことに興味を持ってますし、名前は出さずに思い出を話してみるのはどうでしょう? そうしたら、思い出してくれるかも!!」
「……なるほど、それいいかも。ありがとう、ヒアンシー。ファイノンを誘って、またやってみるよ」
「少しでもお役に立てて嬉しいです。またいつでもいらしてくださいね」
ヒアンシーのカウンセリングもあり、開拓者のメンタルはかなり回復してきていた。丹恒も開拓者の顔を見て、安堵しているようだ。開拓者は、アグライアのところに向かう途中に旅の思い出を話す。
「それでさぁ、サンポって奴が俺たちを突然全員眠らせてきて……気がついたら地下にいたんだ!!」
「逃げたり不意打ちしたり、卑怯な奴だね。信用ならない」
「うん、ホント信用ならないヤツだ。丹恒もそう思うだろ?」
「あぁ……俺もそう思う」
明るくなって話を振ってくるようになり、丹恒も喜んでいるようだ。そして、アグライアに歳月の試練を受けるということを伝え、試練に挑む。すると、あっさりと火種を受け継ぐことができた。しかし、オロニクスは『未来を取り戻せ』と告げて、それが試練だと言う。そして、丹恒から衝撃的な事実を聞いた。なんと、穹はルパートに撃ち落とされ、落下した際に致命傷を負っていたらしい。ミュリオンの提案で、それを死の権能を持つキャストリスに聞いてみることにした。
「……あなたの魂は、活路を見い出せずに冥界を彷徨っています。早くしなければ、あなたは消えてしまう」
「やっぱりそうなのか……なんとかならない?」
「すみません、私は死の権能を半分しか持っていないので、魂を探すことまでは……」
というわけで、アグライアがサフェルを呼んでそれについて教えてもらうことになった。そんな時に、悩みの種である元老院がアナイクスと接触したことを知る。急いで半神議院へと向かうと、ヒアンシーと丹恒から連絡が来て、ケファレの神体にアナイクスが何かをしようとしていること、元老院側に与していないことを知る。その上、フレイムスティーラーに復活の兆しがある、という情報まで入ってきた。
「とりあえず、まずはそのカイニスをなんとかしないとな」
「早く行って弁論をしないと、どんどん世論があちら側に傾いてしまいます。急ぎましょう」
「カイニスは火追いの旅を中止させようとしている、そんなことはさせない!!」
アグライアは民衆の前で弁論をしたが、世論はカイニス側に傾いていた。アナイクスとキャストリスも、カイニス側に傾く。そしてファイノンに交代し、弁論を行うも……火追いの旅の中断へと、どんどん話が持っていかれる。その後、キャストリスからその目的を聞かされた。ケファレの神体と一体になりたいことなどを。時間は進み、死の火種を奪うためにスティコシアへと向かう必要が出てきた。そのために、詭術の半神サフェルの力を借りるという。
「その前に、あなたに渡したいものがあります……着いてきてください」
「プレゼント? ありがとう……でも、急にどうして?」
「……歩きながら、私の話を聞いてもらえますか?」
他者と抱擁がしたいこと、しかし死んでしまうので、誰とも抱擁を交わせなかったことなどを、キャストリスは語る。プレゼントのある場所に行くと、そこにプレゼントはなく……サフェルの手紙が残されていた。それを追いかけてみると、そこにサフェルがいた。どうやら、アグライアと元老院のどちらにも取引を持ちかけられたが、どちらも拒否するつもりでいるらしい。しかし、キャストリスの貯金の八割を差し出す約束で、スティコシアまで送ってもらうことに。キャストリスのプレゼントである指輪を受け取って、穹とキャストリスとミュリオンはスティコシアへと赴く。
「……またファイノンと離れ離れかぁ」
「ご、ごめんなさい……早く終わらせましょうか」
「もう、乙女と二人の時に他の人の話しちゃダメよ!! 傷ついちゃったじゃない!!」
「ご、ごめん……気をつけるよ」
ミュリオンに言われて、反省する穹。しかし、それでもファイノンと一緒でないのは落ち着かない。幽霊たちが色んなことを話してきたが、耳に入っていないようだ。先に進むと、暗黒の潮の造物達が立ちはだかった。それらは死んで蘇る途中のモーディスが一掃してくれたので、共に先へと進む。最奥まで行くと、そこにいたトリアンから絵を受け取った。
「はい、これ!! ちゃんと持っていくんだぞ!!」
「ありがとうございます。これはいつかきっと、彼の命を救う鍵となるでしょう」
「俺はお前を急かさない。たとえ決断までに100年かかろうとも、俺はそれまで奴らを食い止めてみせよう」
モーディスにそう言われ、キャストリスがトリアンの絵を触媒にして、ボリュクスを蘇らせる儀式を始めた。すると、キャストリスの母親代わりであるアミュネッタが現れて、スティコシアの過去を語ってくれた。そして、死があるからこそ愛が生まれたということも。キャストリスはそれを聞いて決意を固くし、ボリュクスとの決戦に挑むことになった。
「こいつがボリュクスか……!!」
「行きましょう、穹さん」
「よし、絶対に勝つ!!」
戦いは苛烈を極めたが、キャストリスの一撃が止めになって、地面に倒れ込む。そしてボリュクスの正体である少女……ボリュシアに、火種のある場所まで案内してもらう。開拓者の体調が悪化し始めたため、キャストリスは迷わず冥界へ向かった。穹はミュリオンに手を引かれて、冥界から脱出し……完全な死のタイタンとなったキャストリスが、最後の抱擁を交わす。
「最後にもう一度だけ……あなたの温もりを借りても?」
「いいよ、キャストリス……」
「ありがとうございます。短いですが……これは、私が『生きた』証です」
そう言って、竜に乗って彼女は去っていった。一方その頃、15日目の民会が始まる。アナイクスは『世界の輪廻』を唱え、自分の最後の民会へと挑む。そして、弁論担当のファイノンは語る。自分の故郷エリュシオンが、暗黒の潮に飲まれたこと。カイニスの言う災厄の3タイタンが滅べばいいという理論は偽りであること、そしてオクヘイマの平和を黄金裔が守っていることを訴える。
「オクヘイマの悠久の歴史を背負ってきた元老院、かつて誇りに思っていた民会はもはや、腐敗しきっている!! このままではオクヘイマに未来はない!! みんな、よく考えてくれ!!」
「お、おい、やめさせろ!! 全部デタラメだ!!」
「相棒の言ってることはデタラメなんかじゃないぞ、お前の言うことこそデタラメだ」
「なっ、なんだと!? 部外者のくせに偉そうに……!! まぁいい、あと一票なんだ、アナイクスが中止に票を投じれば……!!」
あと一票で勝負が決まる。そこでアナイクスはキャストリスからの声を聞き、輪廻の証明とともに火を追う旅の継続に票を投じた。それを見たライコスが叫ぶ。
「神霊の観衆の名において、私は見ました。火を追う旅の継続が決まった瞬間を!!」
「この場の皆さんに語りましょう……タイタンと、黄金裔の真実を!!」
「ふ、ふざけるな!! こんなこと有り得てたまるか、不正をしたんだろう!?」
「私の話を遮らないでください!!!」
アナイクスはカイニスを一喝、火追いの旅の真実を語った。火種を背負うタイタンは過去の黄金裔であり、同じ火種を背負う黄金裔が未来のタイタンとなる。そして「世負い」のタイタンは、その記憶をもとに新世界を再構築するのだと。そして、ケファレと一体になるという冒涜を告白したアナイクスには死刑判決が下された。それを黙認した元老院も罪に問われ、政治的立場を失うことになった。
「みんな、ただいま。その様子だと上手くいったみたいだな」
「あぁ、相棒もお疲れ様。死の火種を持ち帰ってきてくれたんだね」
「あとはこれを創世の渦心に返還するだけだな」
創世の渦心に向かい、サーシスとアナイクスが最後の会話を交わす。生物は記憶の種から産まれたこと、人々の記憶でみんなは存在していられることなどを語った。ファイノンに世負いの火種を継ぐように伝え、最後にサーシスは理性の試練の突破を告げて、火種をアナイクスに託した。そして最後の問いとして『最初の記憶の種は、誰から産まれたのか』という問いを遺し、アナイクスは胸から火種を引き抜く。
「ぐぅっ……は、はははっ、フハハハハハハ!!!」
「消えちゃった……この火種も、返還しないとな」
「あぁ、火種を返還したら少し休もう。火種は、あとひとつ……天空の火種だけだ」
こうしてみんなは、次の火種を目指してひとまず休息を取ることになったのであった。