The Greatest Pitcher of All Time〜絶望の右腕と史上最高の32年〜 作:晴れのち曇り
**1. 父となる絶対神と、忍び寄る相棒の限界**
プロ10年目の春。28歳となった神楽坂翔のもとに、人生最大の「新変数」がもたらされた。
妻・結衣の妊娠である。
「翔、私……お腹に赤ちゃんができたみたい」
報告を受けた瞬間、神楽坂は眼鏡の奥の目をわずかに見開き、静かに結衣の手を包み込んだ。
その日から、神楽坂の自宅での行動パターンは一変する。分単位での家事分担、徹底された栄養管理、陣痛時の緊急搬送ルートのシミュレーション——。
「翔、ちょっとやりすぎだよ! 野球に集中できなくなっちゃう」
「心配いりません、結衣さん。家庭の精神的安定度は、僕の投球フォームにおける体幹の安定性と完全な正の相関関係にあります。あなたと我が子の安全を管理することは、僕の登板準備そのものです」
愛妻家ゆえの理屈っぽさに結衣が苦笑する中、シーズンが開幕。今季の神楽坂は「救援登板による肘への不確定負荷を排除し、先発に完全専念することで登板間隔と投球回数を極限まで最適化する」という決断を下していた。
しかし、ペナントレースが折り返しを迎えた7月。チームに激震が走る。
長年バッテリーを組み、神楽坂の圧倒的な投球を受け止めてきた38歳のベテラン捕手・橘が、長年の捕手生活による膝の限界で痛恨の戦線離脱を余儀なくされたのだ。
病院から戻った橘は、氷嚢で冷やした膝を擦りながら、ロッカールームで神楽坂にぽつりと漏らした。
「すまねぇな、翔……。今シーズンで、俺の膝は限界だ。今年でユニフォームを脱ぐ」
神楽坂の手から、愛用のデータ用タブレットが滑り落ちそうになった。
「……橘さん。僕の計算では、あなたの捕手寿命はあと2年残されているはずです」
「データを超えた痛みなのよ、これは。……だから頼む、翔。俺がいなくなっても、このチームを勝たせ続けてくれ。若手の古賀に、お前の球を受けるノウハウを叩き込んでやってくれねぇか」
神楽坂は溢れそうになる感情を抑え込むように、深く、深く眼鏡を押し上げた。
「……了解しました。橘さんの意志を継承するアルゴリズムを作成します」
神楽坂は自らの膨大な投球データと橘のリード癖をすべて言語化し、数百ページに及ぶ「古賀専用・神楽坂攻略取扱説明書」を作成。密着指導で若手捕手を叩き上げ、橘不在のライオンズを首位に繋ぎ止めた。
#### **2. 誕生、そしてラストダンス**
秋風が吹き抜ける10月。日本シリーズの開幕直前、都内の病院で結衣が無事に元気な女の子を出産した。
分娩室の外で赤ん坊を抱き上げた神楽坂は、その小さな温もりに胸を震わせた。
「我が子の誕生により、僕のパフォーマンス数値は過去最高値に達しました。結衣さん、ありがとう」
「ふふ、最高の報告を、マウンドで橘さんに届けてあげてね」
迎えた日本シリーズ第7戦。ライオンズが王手をかけた9回裏、2点リードの場面。
膝の注射を打ち、満身創痍でベンチ裏に立っていた橘に、監督が「行くぞ、橘」と声をかけた。地鳴りのような大歓声の中、背番号18の神楽坂と、ベテラン橘の「最後のバッテリー」がマウンドへと向かう。
「橘さん、ラスト15球です。誤差ゼロで投げます」
「おう! 最高の球を叩き込んんでこい、神楽坂!」
神楽坂の投球は、もはや神話の領域だった。橘の構えるミットへ吸い込まれる直球は、自己最速を更新する**165キロ**を連発。最後は落差15センチの極悪なフォークで三者連続三振。
日本一が決まった瞬間、神楽坂はマウンド上で拳を突き上げることなく、一目散にホームベースへ駆け寄り、橘と強く、強く抱き合った。
「橘さん……最高の配球でした」
「ありがとな、翔。お前の球を受けられて、最高の野球人生だったよ」
#### **3. 圧倒的なシーズン成績と、積み上げられた金字塔**
先発に専念した10年目、神楽坂は救援登板をゼロにし、そのすべてのパワーを先発ローテーションの柱として注ぎ込んだ。登板するたびに相手打線を圧倒し、白星を積み重ね続けた神楽坂の成績は、前人未到の領域へ到達した。
* **プロ10年目(28歳)個人成績**
* 登板数:30試合(すべて先発)
* 成績:**30勝0敗 0セーブ**
* 防御率:**0.89**
* 奪三振:312奪三振
1938年のヴィクトル・スタルヒン、1957年の稲尾和久が持つNPBシーズン最多勝記録(42勝)に次ぐ、近代野球における前人未到の「シーズン30勝無敗」という金字塔を樹立。
そして、高卒入団から10年間、ライオンズの絶対神としてマウンドに立ち続けた男の「通算成績」は、圧巻の数字に達していた。
* **神楽坂翔 NPB通算10年間成績(18歳〜28歳)**
* 通算勝利:**153勝**
* 通算セーブ:**181セーブ**
* 通算防御率:**1.21**
28歳にして通算150勝を突破し、名球会条件である「通算200勝」まであと47勝に迫る。181セーブという数字を残しながら153勝を積み上げた背番号18のデータは、NPB史上最高の投手として永遠に刻まれたのだった。
#### **4. 溢れるライオンズ愛と、苦渋の「決断」**
シーズンオフ。海外FA権を獲得した神楽坂の去就に、全プロ野球ファンが注目していた。
神楽坂にとって、埼玉ライオンズは単なる所属球団ではなかった。高卒で指名してくれた恩、プロの厳しさを教えてくれたスタッフ、どんな無茶な登板日程でも温かく「背番号18」を歌って応援してくれたベルーナドームのファン。この街と球団への愛着は、神楽坂の人生の根幹に深く根付いていた。
秋の夜。神楽坂は誰もいないベルーナドームのマウンドにポツンと立ち、静かに夜空を見上げていた。そこに、私服姿の橘が歩み寄ってくる。
「やっぱりここにいたか、翔」
「……橘さん。僕の計算式が、初めて答えを出せずにバグを起こしています」
神楽坂は珍しく弱々しい声で言った。
「僕は、このライオンズという球団を、このベルーナドームのマウンドを心から愛しています。ここでファンに囲まれ、生涯ライオンズの投手として骨を埋めることが、精神的最適解だと思っていました。……ですが」
「ですが、なんだ?」
「橘さんが引退し、僕の中に新たな『父として』の変数が加わった。生まれたばかりの娘に、世界最高峰の舞台(MLB)で打者をなぎ倒す父親の背中を見せたいという欲求が……ライオンズへの愛着と同等の数値で胸を締め付けるんです。……ライオンズを捨てたくない。けれど、ここで満足してしまう自分も許せない。どう計算しても、感情の帳尻が合いません」
神楽坂の目から、溢れ出た涙が眼鏡のレンズを濡らした。データとロジックで自分を完璧に固めてきた男が、初めて見せた「ライオンズへの深い愛と葛藤」の涙だった。
橘は優しく神楽坂の肩を叩き、力強く笑った。
「バカ野郎。バグなんかじゃねぇよ、それが『葛藤』ってやつだ。お前はもう、俺という相棒の手を離れて、ライオンズという温かい家を出ていく時期が来たんだよ。俺たちはみんな、お前が世界一の投手になる姿が見たいんだ。胸を張って行ってこい、神楽坂」
「橘さん……っ」
相棒の背中に押し出され、神楽坂はついに腹をくくった。
数日後。詰めかけた100人を超える報道陣を前に、神楽坂はFA権を行使してのMLB挑戦を表明した。
「僕はこの埼玉ライオンズという球団を、ファンのみなさまを、心から愛しています。この愛着は生涯変わりません。しかし、僕の唯一無二の相棒であった橘氏の引退、そして我が子の誕生という人生の重大な変数を迎えた今、世界最高峰のMLBという環境で自分の限界値をどこまで高められるか挑戦することこそが、僕のプロ野球人生における『新たな最適解』であると結論づけました。ライオンズで培った10年間は、僕の誇りです」
ライオンズへの深い愛と感謝を噛み締めながら、絶対神・神楽坂翔は海を渡る決意を固めたのだった。
**【朗報】埼玉ライオンズ・神楽坂翔(28)、今季30勝0敗防御率0.89で海外FA行使!会見で涙のメジャー挑戦表明**
1: **風吹けば名無し**
【今季】30勝0敗 0セーブ 防御率0.89(312奪三振)
【通算】153勝 181セーブ 防御率1.21(28歳)
令和の時代に「シーズン30勝無敗」とか正気かよwwww
漫画でも怒られるレベルの成績残してメジャー挑戦で草
2: **風吹けば名無し**
会見見たか?
あの感情を表に出さないロボット神楽坂が「ライオンズを心から愛しています」って声詰まらせて涙流した時、ワイも号泣したわ
3: **風吹けば名無し**
> > 2
> > 「ライオンズへの愛着と、世界最高峰に挑みたい気持ちでバグが起きた」って表現がすごく神楽坂らしくて泣けたわ
> > 本気でこのチームを愛してくれてたんだな
> >
>
4: **風吹けば名無し**
通算153勝181セーブとかいう怪物みたいな実績置き土産にいかれても誰も文句言えんわ
10年間チームを支え続けてくれて本当にありがとう
5: **風吹けば名無し**
日本シリーズ第7戦の9回、橘さんとのラストバッテリーで165キロ連発したの最高に熱かった
最後抱き合ってたの絶対忘れんわ
6: **風吹けば名無し**
橘おじさんの引退と娘さんの誕生が重なったからなぁ
「橘さんが引退して家を出る決意がついた」「娘に世界一の父親を見せたい」は応援するしかないわ
7: **風吹けば名無し**
古賀に渡した「神楽坂攻略取扱説明書(数百ページ)」草
自分が抜けた後の捕手の育成まで完璧にこなして去るとか神すぎんか?
8: **風吹けば名無し**
結衣記者の最新コラム「背番号18が愛したライオンズと、新たな旅立ちのデータ」
涙で画面が見えん模様
9: **風吹けば名無し**
メジャーに行ったら世界中のバッターをデータでボコボコにしてくれ神楽坂!
10: **風吹けば名無し**
ありがとう神楽坂翔!
俺たちの永遠の背番号18!