The Greatest Pitcher of All Time〜絶望の右腕と史上最高の32年〜 作:晴れのち曇り
1. 世界の解剖学
春季キャンプ直前の2月。侍ジャパン(日本代表)のメンバー発表記者会見で、神楽坂翔と橘順平のバッテリーが選出された。
代表合宿の前日、神楽坂は都内のカフェで、スポーツ紙の番記者として自分を追い続けている幼馴染・葵結衣の取材を受けていた。
ノートパソコンに向かって真剣にキーを叩く結衣が、ふと顔を上げて神楽坂を見つめる。
「翔、アメリカ代表のメンバー見た? メジャーで年間50本打つジャスティン・コールとか、MVP経験者が勢揃いだよ……正真正銘の『世界最高峰』だけど、プレッシャーはある?」
「ありません」
神楽坂は淡々とコーヒーを一口含み、タブレット画面をスライドさせた。
「人間の関節の構造、筋肉の収縮速度、そして視覚情報の伝達限界は、日本人だろうとメジャーリーガーだろうと物理的に同じです。相手が誰であれ、僕が投げるべき『最適解』のデータはすでに頭の中にあります」
冷徹とも言えるその答えに、結衣は一瞬呆れたような顔を見せた後、ふっと柔らかく微笑んだ。
「ふふ、相変わらずだね。……でも、翔のその『揺るぎなさ』があるから、みんな安心して背中を任せられるんだと思う。私、WBCの現地取材(マイアミ)にも同行させてもらえることになったの。翔が世界を相手にどこまで通用するのか、一番近くで記事にするからね」
「無駄のない正確な記事を期待しています、結衣さん」
「もう、相変わらず可愛げがないなぁ……でも、応援してるよ。怪我だけは絶対にしないでね」
結衣の温かい眼差しに見送られ、神楽坂は初の世界大会へと足を踏み出した。
#### 2. WBC決勝:対アメリカ戦の激闘
ローンデポ・パーク(マイアミ)で行われたWBC決勝戦。
日本代表はアメリカ代表を相手に、3対2と1点リードで最終回(9回裏)を迎えていた。
地鳴りのような「U-S-A!」コールが響く極限のアウェイ空間。マウンドに上がったのは背番号「68」、神楽坂翔。捕手は橘。
**9回裏、1死一、二塁。**
打席には、MLB最強の主砲ジャスティン・コール。一発が出れば逆転サヨナラ負けの場面。
記者席で固唾をのんで見守る結衣の手は、震えていた。
*(翔……お願い……!)*
マウンド上の神楽坂の耳には、一切の雑音が届いていない。彼の脳内にあるのは、自身が分析したコールの打撃解剖データのみだった。
*(ジャスティン・コール。テイクバック時に左膝のタメが深く、インコース高めの155km/h以上のボールに対して、肘の折りたたみが0.03秒遅れる傾向がある)*
1球目。テイクバックの短いコンパクトなフォームから、白球が弾き出される。
**「ビシッ!!」**
内角ギリギリを切り裂く**158km/hのストレート**。コールは反応すらできず見逃しストライク。
2球目。153km/hの高速カットボール。ストレートと同じ軌道から鋭く手元で変化し、コールのバットが空を斬る。カウント0-2。
そして3球目。橘が要求したのは、神楽坂の代名詞——「ゴースト・スプリット」。
神楽坂の腕が振られる。コールは完璧なタイミングでフルスイングを始動させた。
しかし、ボールはコールのバットの手前で、真下へ消えるように落ち込んでいった。
**「ストライクアウト!!」**
空振り三振。メジャー最強の主砲が膝を折る。続く5番打者も高速カットボールでサードゴロに打ち取り、試合終了。
侍ジャパン、世界一達成。
グラウンド上で歓喜の輪ができる中、記者席の結衣は目頭を熱くさせながら、夢中でカメラのシャッターを切り、原稿を書き殴っていた。
*『世界最高峰の打者すら沈黙させた、背番号68の解剖学的投球。神楽坂翔は今夜、世界の頂点でその完全無欠を証明した——』*
#### 3. 世界への渇望と、立ちはだかる大人の壁
帰国後も神楽坂の勢いは止まらなかった。
WBCの疲労を一切見せず、26試合に登板し**21勝2敗、防御率1.32、230奪三振**で**最多奪三振**を獲得。埼玉ライオンズのパ・リーグ3連覇の絶対的立役者となった。
しかし、シーズンが深まるにつれ、神楽坂の胸中にあったのは「激しい渇望」だった。
WBCで対峙したメジャーの怪物たち。もっとあのレベルの打者と対戦し、自分のデータを収集・更新したい——。
11月上旬。神楽坂は単身で球団事務所を訪れ、球団幹部へ直訴した。
「ポスティングシステムを利用した、MLBへの挑戦を許可していただきたいです」
しかし、球団社長の回答は**一蹴・速攻却下**だった。
「答えはノーだ。君はまだ高卒5年目の23歳だ。ライオンズは今、君という絶対的エースを中心に黄金期を築いている。ポスティングは球団の権利だ。まだ出すわけにはいかない」
「僕の肉体年齢とデータの最適化の観点から言えば、今渡米するのが最も効率的です」と食い下がる神楽坂だったが、「契約と球団事情」というデータ通りにいかない大人の壁に阻まれた。
さらに、球団幹部はこう付け加えた。
「それと神楽坂くん。来季から球団のエースナンバーである**『18』**を背負ってくれないか。いつまでも下位指名の印象が強い『68』ではなく、名実ともにライオンズの顔になってもらいたい」
ポスティング却下と、エースナンバー「18」への変更打診。
計算通りにいかない不条理と、背負わされる期待の重さに、神楽坂は答えを出せぬまま球団事務所を後にした。
#### 4. 結衣の温もりと、背番号「18」への決意
球団事務所を出た神楽坂は、ドーム近くの公園のベンチで、一人冷たい秋風に吹かれていた。
いつも冷静沈着な神楽坂が、どこか不服そうに遠くを見つめている。
そこへ、取材を終えた結衣が走ってきた。
「翔!……球団との話し合い、終わったの?」
神楽坂は静かに首を横に振った。
「ポスティングは却下されました。『まだ23歳だから出すわけにはいかない』と。……僕の投球データのピーク管理を考えれば、今渡米するのが最も合理的であるはずなのに。理解できません」
少し拗ねたように理論を口にする神楽坂を見て、結衣はクスッと笑い、彼の隣に腰掛けた。
「翔ってさ、野球のことになると本当に自分のデータばかり見るよね」
「……何か問題がありますか」
「ううん。でもね、球団も、ファンも、そして私も……翔の『データ』だけを見てるわけじゃないんだよ」
結衣はまっすぐに神楽坂の目を見つめた。
「ライオンズのファンはね、翔がマウンドで投げる姿に夢を見てるの。チームを勝利に導いてくれる背番号68を……ううん、これからは新しい背番号になるかもしれないけど、とにかく翔の投球をもっとこの目で見たいって心から願ってる。みんな、翔のことが大好きなんだよ。効率とかデータだけじゃ割り切れない『思い』が、そこにはあるの」
「思い……ですか」
「そう。だからね、焦らないで。翔が世界で通用することは、私が一番よく知ってる。WBCで世界一になったみたいに、この日本で誰も文句が言えない圧倒的な伝説を作って……全員が『行ってらっしゃい!』って笑顔で送り出してくれるまで、ここで投げてみせない?」
結衣の温かく、けれど芯のある言葉が、神楽坂の胸のわだかまりをゆっくりと溶かしていく。
ふと見ると、冷たい秋風のせいで結衣の鼻先が少し赤くなっていた。
神楽坂は無言で立ち上がると、自分の首に巻いていたマフラーを外し、結衣の首元に優しく巻き付けた。
「……え? 翔……?」
不意の出来事に、結衣の顔が一気に真っ赤になる。
「結衣さんの体温が下がると、取材のパフォーマンスが落ちます。……それに、冷たい風に当たらせるのは僕の本意ではありません」
淡々とした口調だが、その手つきは驚くほど優しかった。
結衣はマフラーに顔を埋め、神楽坂の残した温もりと香りに包まれながら、嬉しそうに目を細めた。
「……ありがとう、翔。すごく暖かい」
距離がふっと近づく二人。幼馴染という関係から、確実に一歩先へと踏み出した瞬間だった。
結衣の言葉と肌に触れた温もりが、神楽坂の脳内に立ち込めていた「ポスティング却下」の不快なノイズを完全に吹き消していた。
データや合理性だけではない。自分を信じ、熱狂し、愛してくれる人々に応えることこそが、己の投球理論を完成させる最短ルートなのだと、神楽坂は前を向いた。
そこへ、ドームから出てきた陣内と橘が歩み寄ってきた。
「おーい神楽坂! 結衣ちゃんイチャイチャしてんじゃねえよ〜!」
陣内がニシシと笑いながら肩を叩く。
「イチャイチャしていません。体温管理のサポートです」と素気なく返す神楽坂に、橘が静かに問いかけた。
「背番号『18』の件はどうするんだ?」
神楽坂は結衣を振り返り、それから自分の手元を見つめた。眼鏡の奥の瞳には、迷いのない意志が宿っていた。
「受けることにします。『68』は僕の原点ですが、『18』を背負うことで球団やファンが求める『絶対的エース』としての責任を果たします。文句のつけようがない圧倒的な実績を作り、このチームを完全な常勝軍団にします」
「ハッ、言ったな! よし、来期もバッチリ後ろを守ってやるから覚悟しろよ!」と陣内が大声で笑う。
結衣もマフラーの中から、愛おしそうに満面の笑みを向けた。
「応援してるよ、ライオンズの新・背番号18!」
世界を知り、現実の壁にぶつかった23歳の冬。
幼馴染の温もりに背中を押され、新たなエースナンバー「18」を胸に刻んだ神楽坂翔の視線は、「日本球界の完全支配」へとまっすぐに向けられていた。
**【祝】神楽坂翔、WBC優勝&21勝&背番号「18」へ変更wwwwww**
1: **風吹けば名無し**
神楽坂翔(23・5年目):26試合 21勝2敗 防御率1.32 230奪三振
【獲得タイトル】最多奪三振、WBC世界一、パ・リーグ3連覇
もう全盛期マイケンと田村将大を足して2で割らんようなバケモンやんけ
2: **風吹けば名無し**
WBC決勝のジャスティン・コール相手の3球三振はマジで鳥肌立ったわ
158キロストレート→153キロ高速カット→142キロゴーストスプリット
メジャー最強の主砲が膝から崩れ落ちてて草生えた
3: **風吹けば名無し**
シーズンでも21勝とか頭おかしい
しかも爪割れたりWBCの疲労あったりしてもフォーム(ショートストローク)のおかげでピンピンしてるの科学の勝利すぎるだろ
4: **風吹けば名無し**
【朗報】神楽坂翔、来季から背番号が「68」からエースナンバー「18」へ変更決定!
5: **風吹けば名無し**
> > 4
> > マ!? 埼玉ライオンズの真のエース襲名か!!
> > ドラ6の育成枠扱いだった68から球団の顔の18へ昇格とか胸熱すぎる
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6: **風吹けば名無し**
シーズンオフにポスティング直訴したらしいけど球団に速攻却下されたらしいなwwそら23歳の21勝エース出せるわけないやろwww
7: **風吹けば名無し**
球団事務所から出てきた神楽坂が結衣記者に自分のマフラー巻いてあげてた目撃情報あって草
あのロボットみたいな神楽坂が幼馴染にはデレデレなの最高に尊いんだが???
8: **風吹けば名無し**
> > 7
> > 結衣記者のコラム読んだか?
> > 「背番号18を背負う彼は、データや数値を超えた『ファンの思い』を胸に、この日本で誰も届かない伝説を作ると誓ってくれた」って書いてあって全俺が泣いた
> >
>
9: **風吹けば名無し**
背番号18になった神楽坂、来年は一体何勝してしまうんや……
10: **風吹けば名無し**
全試合勝利目指すとか言い出してて草
ライオンズ黄金期完全確定ですわ