The Greatest Pitcher of All Time〜絶望の右腕と史上最高の32年〜   作:晴れのち曇り

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約束の代護神

**1. 激震と猛反発**

春季キャンプ終盤の3月上旬。埼玉ライオンズの絶対的守護神・陣内恭平が、オープン戦での登板中に右肘内側側副じん帯を断裂。トミー・ジョン手術による今季絶望が確定した。

その翌日、球団から発表された「電撃人事」は、日本中のプロ野球ファンを激震させた。

**『神楽坂翔投手、今季より抑え(クローザー)へ転向』**

前年21勝を挙げ、今季から名実ともにエースナンバー「18」を継承したばかりの24歳。球界最高峰の先発投手を抑えに配置転換するという決定に対し、球団事務所やSNSにはファンからの猛烈な批判と悲鳴が殺到した。

『20勝狙えるエースを潰す気か!』

『フロントの危機管理能力はどうなってるんだ!』

『せっかく「18」を背負ったのに抑えなんてあり得ない!』

ベルーナドーム周辺での街頭取材でも、ファンの怒りは収まらなかった。

しかし、その批判の渦中にいた神楽坂本人は、驚くほど冷静だった。

都内のカフェで、暗い表情の幼馴染・葵結衣と向き合っていた神楽坂は、差し出されたアイスコーヒーを一口含み、淡々と口を開いた。

「結衣さん。先ほどから溜め息の回数が平時の3.4倍に達しています」

「……翔、本当に平気なの? ネットもニュースも、球団への批判で大荒れだよ。『神楽坂の無駄遣いだ』って……ファンみんなが翔の先発登板を楽しみにしてたんだよ?」

結衣は心配そうに神楽坂の顔を覗き込んだ。

「ファンの皆様の反応は論理的です。エースの先発回避による勝利期待値の低下を懸念するのは当然の帰結ですから。……ですが、僕の解剖学的判断に狂いはありません」

「解剖学的判断……?」

「はい。僕のショートストロークと指頭圧コントロールは、1イニング限定の超高出力投球において最も高い再現性を発揮します。そして何より——」

神楽坂は一度言葉を切り、結衣の瞳をまっすぐに見つめた。

「陣内さんが命がけで守ってきた9回という場所を、誰も知らない他の投手に荒らされるのは、僕の計算機(脳)が拒否しています。結衣さん、あなたは僕の選択が間違っていると思いますか?」

静かだが、強い意志を秘めた問いかけ。

結衣は一瞬目を見張ったが、やがて表情から不安が消え、温かな微笑みが浮かんだ。

「ううん。翔が自分で決めたことなら、絶対それが正解だよ。……私、誰よりも近くで翔の思いを言葉にして、ファンのみんなに届けてみせるから」

「感謝します、結衣さん。あなたの記事が、ファンを納得させる一番のデータになります」

言葉を終えると、神楽坂は自分の鞄から小さな箱を取り出し、結衣の前に置いた。

「……? これ、何?」

「疲労回復効果の高い高濃度ビタミンサプリメントと、オーダーメイドの睡眠枕の引換券です。連日の取材と僕の心配で、あなたの睡眠効率が低下していると判断しました」

「えっ……私のために用意してくれたの?」

「結衣さんの体調管理は、僕のコンディショニング管理と同等の優先度です。……無理をして倒れられたら、僕が困ります」

照れくさそうに明後日の方向を向きながら呟く神楽坂。

結衣は箱を大切そうに胸に抱きしめ、顔を真っ赤にしながら目を細めた。

「……ふふ、ありがとう翔。すごく嬉しい。私、翔の『代護神』としての挑戦、全力で追いかけるね!」

 

#### **2. 名コラムと手のひら返し**

翌朝、スポーツ報知の一面には、結衣が万感の思いを込めて書き上げた特別コラムが掲載された。

**【スポーツ報知 特別コラム(3月12日付 1面)】**

**『背番号18の解剖学』**

**なぜ神楽坂翔は「9回のマウンド」に立つのか——批判の渦中で静かに燃えるエースの美学**

**(スポーツ報知・葵 結衣)**

昨日、埼玉ライオンズから発表された「神楽坂翔の抑え転向」。

この衝撃的な決定に対し、ファンやメディアからは怒りと困惑の声が噴出している。「前年21勝のエースを抑えにするなど球団の迷走だ」「背番号18の無駄遣いだ」——そう叫びたくなる気持ちは痛いほど分かる。私自身、彼の登板を毎週楽しみにしていた一人として、一瞬言葉を失った。

だが、当の神楽坂本人と向き合った時、その狼狽は一瞬で打ち砕かれた。

「僕の解剖学的フォームと指頭圧コントロールは、1イニング限定の超高出力投球において最も高い再現性を発揮します。ファンの皆様の懸念は論理的ですが、僕の計算に狂いはありません」

カフェのテーブル越しに、彼はいつもの冷静沈着な眼差しでそうと言い切った。

データと数値。冷徹なまでの合理性。彼を語る上で欠かせないその言葉の裏に、実は「最も熱い情熱」が隠されていることを、どれほどの人が知っているだろうか。

チームの絶対的守護神だった陣内恭平投手の右肘断裂という悲劇。

崩れかけたチームの窮地に際し、彼が首脳陣に放った言葉はこうだった。

「陣内さんが命がけで守ってきた9回という場所を、誰も知らない他の投手に荒らされるのは、僕の計算機(脳)が拒否しています」

彼は、己の投手生命や個人タイトル、そしてメジャー移籍に向けた数字の「効率」など、最初から一切計算に入れていなかった。

怪我で離脱した先輩が戻ってくるまでの間、ライオンズの聖域である「9回」を、自分の腕一本で完璧に『代護』する。それだけのために、彼は先発エースの座を自ら降りたのだ。

背番号「18」——それはチームの顔であり、すべての責任を背負う者の番号だ。

先発として勝ち星を積み重ねることだけがエースの役割ではない。チームが最も苦しい時に、最も険しいマウンドに立って勝利を告げる。それこそが、神楽坂翔の定義する「真のエース」の姿なのだ。

160キロのストレート、手元で消えるゴースト・スプリット。

1イニングに全エネルギーを注ぎ込む彼が、今季どんな「絶対的絶望」を相手打線に突きつけるのか。

批判を称賛に変える準備は、すでに整っている。

背番号18が降臨する9回のマウンドを、私たちは刮目して待つべきだ。

この記事が出回ると、SNSやネット掲示板の空気は一変した。

「ただの緊急避難じゃない、神楽坂の覚悟なんだ」「結衣記者のコラムで泣いた」と、世間の批判は一気に熱狂的な期待へと塗り替わっていった。

 

#### **3. 9回に降臨する「絶対的絶望」**

シーズンが開幕すると、ファンの期待は現実の圧倒的な絶望感へと変わった。

先発でのペース配分を完全に捨て、1イニングに解剖学的パワーを集中させた神楽坂の投球は、文字通り手も足も出ない「絶対的防波堤」だった。

* 最速**160km/h**に達した直球

* 155km/hで手元で鋭角に曲がる高速カットボール

* 打者の視界から完全に消失する145km/hのゴースト・スプリット

相手打線にとって、9回に背番号「18」がマウンドに上がることは、その時点で完全な敗北を意味していた。

神楽坂が毎試合のように相手主砲を三振に打ち取る姿に、ファンは「絶対的代護神」と呼び、熱狂的な歓声で迎えるようになっていた。

夏場、連投が重なる厳しい日程の最中、神楽坂は病院に入院している陣内の元へ定期的に足を運んでいた。

「神楽坂……お前、本当に50セーブペースで投げてんのかよ……」

ベッドの上で右腕を固定された陣内が、呆れたように苦笑する。

「言ったはずです、陣内さん。僕の計算に狂いはありません。あなたが戻ってくる場所は、僕が完璧な状態で維持し続けます。リハビリだけに集中してください」

「……クソッ、格好つけやがって。早く治してマウンド奪い返してやるからな」

「お待ちしています。ですが、奪い返すのは容易ではありませんよ」

そう答える神楽坂の表情には、確かな誇りと絆が宿っていた。

 

#### **4. 51セーブの金字塔と、約束の抱擁**

神楽坂の圧巻の防波堤により、埼玉ライオンズは接戦をことごとくモノにし、破竹の勢いで首位を独走。

10月初旬、パ・リーグ4連覇を決める全日程終了の最終戦。

9回表、3対2の1点リード。マウンドに上がったのは、もちろん背番号18・神楽坂翔。

スタンド全体が揺れるような大歓声と「神楽坂」コールの中、神楽坂は3人の打者をすべて三振に打ち取り、圧巻のゲームセット。

**埼玉ライオンズ、パ・リーグ4連覇達成!**

神楽坂はマウンド上で静かに右拳を突き上げた。

捕手の橘が駆け寄り、熱い抱擁を交わす。

この日のセーブで、神楽坂のシーズン成績は確定した。

**【62登板 0先発 3勝1敗 51セーブ 防御率0.65】**

プロ野球史上前人未到の**シーズン51セーブ**。NPBの最多セーブ記録を大幅に塗り替える、前代未聞の金字塔だった。

優勝インタビューの後、グラウンドに松葉杖をついた陣内姿を見せると、満員のベルーナドームから割れんばかりの拍手が湧き起こった。

神楽坂は陣内の元へ歩み寄ると、静かに頭を下げた。

「陣内さん。ライオンズの9回、無事に守り抜きました」

陣内は松葉杖を放り投げそうになりながら、右腕一本で神楽坂の首を強く抱きしめた。

「神楽坂……お前、最高のエースで、最高のアニキだよ! ありがとうな……!」

「……痛いです、陣内さん。解剖学的に胸郭が圧迫されています」

呆れ顔を見せながらも、神楽坂の口元には温かな笑みが浮かんでいた。

ベンチ裏の取材エリア。人目がなくなった通路で、結衣が神楽坂を待っていた。

結衣の瞳には、溢れ出そうな涙が光っている。

「翔……! おめでとう! 51セーブなんて……本当に、本当にすごいよ……!」

神楽坂は結衣の前で足を止めると、自分の胸元に手を当て、まっすぐに彼女を見つめた。

「結衣さん。開幕前、僕の選択を信じてくれてありがとうございました。あなたの言葉とあのコラムがなければ、このデータの完成はありませんでした」

「ううん、私は何もしてないよ……翔が、自分の力でみんなを納得させたんだよ」

「いいえ。僕にとって、あなたが一番のデータ分析官であり、理解者です」

神楽坂はそう言うと、結衣の手を静かに、けれど力強く包み込んだ。

不意のスキンシップに、結衣は心臓が跳ね上がるのを感じながら、真っ赤な顔で神楽坂の手を握り返した。

「……翔、これからもずっと、一番近くで翔の投球を見せてね」

「もちろんです。僕の投球の全記録は、あなただけに託します」

二人の間に流れるのは、もはやただの幼馴染ではない、かけがえのない絆と愛しさの空気だった。

先発でも抑えでも日本球界を完全支配した24歳のエース。

世界への扉が、いよいよ本格的に開かれようとしていた。

 

 

 

**【悲報】結衣記者、神楽坂の抑え転向記事で全ライオンズファンを完全論破してしまうwwww**

1: **風吹けば名無し**

朝刊の結衣記者のコラム読んだか……?

フロント叩いてた自分が恥ずかしくなって泣いたわ

2: **風吹けば名無し**

「陣内さんが守ってきた9回を他の投手に荒らされるのは脳が拒否してる」

神楽坂カッコ良すぎて無理なんだが????

3: **風吹けば名無し**

神楽坂「自分のタイトルよりチームの9回を守る」

ワイ「申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁ!!!」

4: **風吹けば名無し**

神楽坂翔(24・6年目):62登板 0先発 3勝1敗 51セーブ 防御率0.65

【獲得タイトル】最多セーブ、最優秀救援投手、パ・リーグ4連覇

手のひらドリルどころか光の速さで回転したわすまんかった

5: **風吹けば名無し**

160キロストレート、155キロカット、145キロ消えるスプリット

1イニング限定の神楽坂とかただの絶望でしかなかった

6: **風吹けば名無し**

胴上げの後に松葉杖の陣内と熱いハグ交わしてて全ライオンズファン号泣不可避

7: **風吹けば名無し**

優勝の裏で神楽坂が結衣記者にオーダーメイド枕プレゼントして手握ってたのバレてて草

相変わらず距離感バグってて最高です

8: **風吹けば名無し**

先発で21勝(防御率1.32)

抑えで51セーブ(防御率0.65)

NPBに神楽坂の敵はおらん模様

9: **風吹けば名無し**

流石に今年でポスティング容認やろ!

来年はメジャーで無双する神楽坂が見たいで!!

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