神の手の平から零れた悪心   作:悪役

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未だ神の手の平

 

 

「き、君達は一体何をしているんだ!!?」

 

 

アマルは同じ車両に乗っている典型的なフォーマルスーツを着てる少し白髪混じりの40~50代くらいの年の男性が、銃器を握ってどう見てもヒャッハーしている系の言い訳出来ない犯罪者組に叫んでいるのを見る。

その格好はどう見ても震えており、男達が持つ拳銃という分かりやすい凶器に怯えているのが分かる。

当然の反応だ。

拳銃を見て怯えない人間なんて自殺志願者か、軍人くらいだろう。

こんな世界になっても、だからといって既存兵器の全てが脅威じゃ無くなったわけではない。

どんなに世界が変貌しても人間は弾丸一つで死ぬ───例外は一杯いるけど。

勿論、これが神様相手に向けると途端に拳銃は豆鉄砲にクラスチェンジするが、それは今は関係ない。

 

 

彼は拳銃に怯えている。

 

 

そこに嘘は無いだろう。

なら、最初の質問はそんな拳銃を振り回して何をするつもりだ、と聞きたいのか───きっと違うだろう。

彼が拳銃に怯えているのは嘘ではない───だが、本当に心の底から怯えているのは拳銃ではなく───

 

 

「ここをどこだと思っているんだ───ここは神幹線だぞ! ()()()()()()()()()…!」

 

 

───この列車を操縦している神にこそ怯えていたのだ。

当たり前だが、神とは治外法権。

人間が豚や魚に対して好き放題するように、神もまた人間の事に一々気にして行動なんてしない。

人間の法も力も全て無視してやりたい事を行う。

この神幹線だってそうだ。

完全に越境問題を無視しているし、荷物検査等の検査も行われていない。

早い話、逃亡中の殺人鬼ですらあっさりと乗れるざるの検査しか出来ていない。

その理由は何故か? 簡単だ───どれが神の機嫌を損ねるか分からないから、とりあえず基本許すしかないのだ。

愚かだと思われるかもしれないが、私達人間と神は対等の関係ではない。

 

 

───私達、人間が圧倒的下、総てが神様の言う通りが現状

 

 

だから、私達は何時も神様のご機嫌を伺いながらへこへこと頭を下げているというのに、そんな中で拳銃を振り回す馬鹿を見れば、拳銃が怖くても叫びたくなるのは当然だ。

私達から見たら彼らは拳銃という名の火薬を核爆弾の直ぐ傍で火を付けて遊んでいるレベルの暴挙にしか思えないのだから。

 

 

「あーーー」

 

 

その真っ当な質問に対して大男の方がごきごきと首を鳴らしながら笑う。

 

 

「言いたい事はわかんぜぇ? 神様の手元で不敬な事をしたらどんな神罰が起きるか分かんねぇ、だろう? そりゃ怖い、俺も正直ちょっとびびったやり方である事とは認める」

 

 

うんうん、とわざとらしく頷く仕草にアマルは唇を歪める。

その挙動がどう見ても自分に酔っている者特有の周りに対する優越感に満ちていたからだ。

つまり、事実がどうあれ、男は今、自分がこの列車の中でヒエラルキー上位にいると確信している。

そういった自分が"上"にいると考えている者には周りの"下"として扱っている人の言葉を聞こうとしないだろう───正論であればある程、余計に。

 

 

「だがなぁ、俺は考えたんだよ───神様って奴ぁ、そんな人間の事なんて考えてっかなぁって」

 

 

そんな男から吐き出された結論は、しかし思った以上に同意出来る結論から吐き出された。

 

 

「例えば、だ。俺達人間だって歩く時、地面に蟻がいるかどうか一々確認して歩いているか? 足元に割れた皿みてぇな危険物が落ちてるって知ってるならともかく、そうじゃないのに気を払うか? いーやしないね断言できる。何せ俺様がそうだからよ───じゃあ俺よりも壮大で偉大ででっけぇ神って奴が俺達の事を気にするか? 無理だね!! 断言出来る!! 俺が神ならそんなちまちました事しねえからな!! つまり神様はこんなちまちました泥棒の事なんて気にもしねえ! 現に見ろよ!!! ───俺達は罰せられてねえ」

 

 

大男の言う事は余りにも馬鹿げた内容だが、しかし一理は頷くしかなかった。

先程、自分も神は人間の事を気にしていないと思った。

それは法や力に対する事であったが───大男はそこに善悪も含めた。

人間の犯罪や正義に興味があるのか、と大男は命懸けで問いかけた。そして賭けに勝った。

非常に馬鹿らしい思考ではあるが、確かに大男の言う通り、神罰は下っていない。

神は、人間のちまちまとした犯罪に興味を持たなかった───あるいは、この様も含めて愉しんでいるのか。

 

 

「まぁ、それによぉ。仮に駄目だったとしても───神様っていうのは大雑把だろう? じゃあ、そん時はここにいる奴らくらいは一緒に巻き込んで死ぬかと思えば、分の悪い賭けじゃあなかったぜ? くははははははは!!!!」

 

 

訂正、賭けに勝ったとかこの大男に言いたくない。

馬鹿のやり方が偶々噛み合った結果、最悪な事に馬鹿の方に有利に進んでしまった。

頭が痛くなるが、それ以上にどうして今日、この日、私が行動を起こした時にこの列車のこの車両に馬鹿が乗って来てしまったのだと文句を言いたい。

 

 

「おい、白髪女ぁ! 何ぼうっとしてんだ! 金目の物を寄越しな!!」

 

 

嘆きという現実逃避をしている間に大男と一緒にいた小男が拳銃を片手に、空いた手をこちらに伸ばしてくる。

分かりやすく財布でも出せ、という事だろう。

心情的には嫌だが、歯向かう術は少々あっても変に抗って想定外の癇癪を起こされるよりマシと思い、アマルは素直に懐から取り出した財布を小男の手に差し出した。

それだけで済んでくれ、と思ったが

 

 

「───くらぁ! 馬鹿にしてんのか女! その隣にあるデッカイ楽器も金目の物だろうがぁ!!」

 

 

考え無しの癖に変に鋭い言葉にアマルの顔が歪む。

 

 

「こ、これは……安物で……とてもじゃないけど売れない……」

 

言い訳にもならない言い訳を口に出せば返ってくるのは突きつけられた銃口。

それを決めるのはこっちだろう、という分かりやすい意思表示をされる。

だが、こちらとて金を渡す事は許してもこれだけは命と引き換えにしても渡せれない。

その意思が瞳に宿り、鋭い眼差しを小男に対して向け───小男は余りにも軽く引き金を引いた。

 

 

※※※

 

大男は連れの小男が気軽にぶっ放した音を聞いて、おい、と思わず声を掛ける。

こうして占領出来たのはいいが、だからといってこの世界ではそれだけで油断してはいけない。

だから、俺が周りの見張り、小男に金の回収を命じたのだが、早速思いっきりやりやがって、と嘆息する。

こうして神が介入して来ない、という事は思った通り神様とやらは人間の犯罪なんてどうでもいい、と思っているまでは通った。

だが、それ以外も通るか、というのはまた別の話。

 

 

 

例えば、拳銃の音が煩わしいとか───自分が扱う車両に血の汚れが付いたのが不愉快だ、とか思う可能性はある。

 

 

依然として賭けは継続中なのだ。

無駄に刺激するのも、時間を掛けるのも良くない。

神の手の平の上における犯罪し放題とはいえ、この車両分だけで済ますのが吉というもの。

だから、戒めとしておい、と相方に声を掛けたら小男が返り血と片手にでかい楽器ケースを持って椅子の間から出てきた。

 

 

「わ、わりぃ兄貴。で、でもよぉ、女がこの楽器渡すの渋ってよ。うぜぇから撃っちまった」

 

「楽器だぁ? ああいうのはマジでピンからキリの世界だろ。それにそんなデカいの持ち運びが大変で仕方ねぇ」

 

小男よりも大きい楽器ケースを片手でえっちらおっちらと運んでくるのに再び嘆息する。

確かに楽器は高ぇ奴は高いらしいが、そんなデカいのだと降りる時に片手が塞がるし、何より逃げ足に影響が出る。

そこら辺の計算が出来ねえから馬鹿なんだよお前は、と言うと小男は分かりやすくガックリ来る。

いいから仕事しろ、と相方を蹴ろうとし

 

 

「───」

 

小男の背後。

銀髪の女がゆらりと立ち上がり、幽鬼の如き雰囲気でこちらを見てくるのを見た。

口とこの馬鹿が撃ったであろう腹から血を零しながらも、しかしはっきりとこっちを見て歩いてくる。

痛みを堪えているが、拳銃を受けた一般人にしては足取りはしっかりしている。

背後の足跡に気付いたのか、小男が振り返るとひぃぃ! と情けない声を出して俺の足に縋りついてくる。

 

 

「ひ、ひぃ! あ、兄貴ぃ! ぞ、ゾンビがあああああ!!」

 

「うるせえぇ。邪魔だ阿呆」

 

縋りついてくる馬鹿を蹴飛ばし、冷静に女の方に一歩足を延ばし、その仕草に沿わせる形で片手に持っている拳銃をそのまま女の膝に向け、発砲する。

 

 

「っあ……!!」

 

 

再度の出血と共に足を抱える形で女が倒れる。

その拍子に女の瞳の色が見えた。

それは血のように赤く、それでようやく絡繰りが見えた。

 

 

「あーー成程、お前さん、そういう口か」

 

 

世界は神によって変えられた。

これまで解明してきた物理法則も神がいたら途端に信用出来ない物にされた。

言語学を嗜んでいた者は二度目のバベル崩壊による言語統一によってどれだけ嘆く事になったか。

そしてもう一つ……所じゃねえが、他にも変わった者はある。

やはり、と言うべきか、それは人間だった。

 

 

「神って奴ぁ好き放題して、今の人間じゃ相手にならねえ、そんな風に思ったのか───そしたら人間もバケモノみたいなのが現れるようになった」

 

 

酷い話だよなぁ、と大男は他人事のように思う。

勝手に現れた癖に、勝手に世界を好き勝手改造し、遂には意志ある人間すら魔改造する。

拒否権すらない改造に神が降りた直後の人類の阿鼻叫喚は壮絶だったんだろう。

小悪党なりにだが、同情くらいは覚える、他人事として。

そして、その変貌の一つが目の前の銀髪の女だろう。

 

 

「銀髪、赤目。典型的なイメージだが、あんた、吸血鬼か、それに近しい変異種だろ」

 

人間から変異した種だから変異種、あるいは異形種だの進化種、超越種、超人種とか色々言われてるらしいが、面倒くせぇ。

用は現実は遂にファンタジーも有りとなったというわけである。ファンタジーでいいんだっけな? どうでもいい。

今、必要なのはこの女は俺達に害を為せれるかという事───答えは恐らくNO。

 

 

「そのバケモノ振りも楽器と同じでピンからキリっていうのは知ってんぜ。こんなちんけな弾丸一つでそんだけ苦しんでるって事はちょっと死に難いとか、そんなレベルだろお前さん」

 

「………どうかな? 銀の弾丸があれば一発かもしれないよ」

 

話に乗って来た時点で図星確定だろ。

本当に強者であるならば話し合いに乗る必要なんてない。

暴力で乗り越えればいい、俺達がやったように。

それを最初の選択肢にしない時点でこの女は弱者か、制限付きの一発屋のどちらかだろう。

油断していいわけではないが、大きく見る必要もない。

 

 

「そんな洒落た道具を持てるような金持ちならこんな事はしてねえな。安物の鉛玉で退治されといてくれ」

 

「………別に、貴方達をどうにかしたい、とは思ってないの。ただ……そのケースを返して……」

 

 

改めて突きつけた銃を前の懇願がそれ。

俺達をどうにかしたい、とか助けて欲しい、ではなくこの巨大な楽器ケースを返して欲しいと。

ぶち込まれる前ならまだしも、ぶち込まれた後ですら言うという事は相当な執念───死んでもそれだけは渡せれない、という明確な意思表示。

 

 

「───おい、馬鹿」

 

「……へ? へ、へいなんです? 兄貴?」

 

「その楽器ケース開けろ」

 

 

へっ? と小男が小首を傾げ、目の前の吸血女が痛みとは別の理由で顔を歪めるが構いやしなかった。

誰だってそうだろう? ───命懸けの理由というのは知りたくなるもの。

隠されれば、隠される程、秘密というのは魅力を増す。

だから、分かり易き暴く事を命じ、小男もへい! と頷き、楽器ケースを開け始める。

 

 

※※※

 

───どこかおかしい流れ。

アレほど、時間と油断を敵と考えていた大男の思考が逸れたような一幕(シーン)

勿論、そんな事を指摘出るような余裕のある存在はこの場におらず。

(アマル)が封じたくないと思いながら、心の底では封じていたかった物が暴かれた───

 

※※※

 

 

「───」

 

不覚にも、アマルは開け放たれる楽器ケースの正面にいるからこそ、楽器ケースの中にあるモノを直視し、見惚れた。

既知であるからこそ、魅了されたとは言わないが、それでも思わず、思考が綺麗、という単語を連想するレベルには瞳が焼き付いた。

そう、側は楽器ケースだったが、その中までは律儀に楽器ではない。

そこにいたのは───少女だった。

 

 

 

「───」

 

 

まず目に刻まれるのは蒼い髪。

まるで空の色を落とし込んだかのように美麗で、見ているだけで涙を誘うような色を髪に宿していた。

美しくて、どこか魔的。

女の髪には魔が宿る、と古来言われていたが、ここまで美しければ魔的というよりどこか神々しい。

最も、神々しさもある種の魔の側面と取れば、結果は同じなのだが。

少女の目立つ髪を除けば、造形の美麗さを除けば、見た目の年齢的には9から13くらいの幼い少女の形。

初見の者にとっては、まるで今直ぐにでも動き出しそうな、眠れる少女にしか見えないだろう。

事実、小男は大分目の前に現れた少女に見惚れていたが、理性が戻った瞬間、

 

 

「あ、兄貴ぃ!! ───もしやこの女、俺達と同じ犯罪者ですかい!?」

 

「───阿呆、よく見ろ。これは作り物だろうが。こんな出来過ぎた幼女が現実にいてたまるか」

 

 

小男の阿呆な言い分にゴツンと拳銃のグリップで叩いて嘆息する。

そう、大男の言う事は正しい。

この少女は、私の手で作った作り物だ。

私が生み出した機械人形(マシンドール)………だけど、私が手掛けた時はこんな()()()()()()()()()()()

その事実に痛みを覚えながら、どうにか声を震わせずに言葉を作る。

 

 

「………これで分かったでしょ? 楽器じゃなくて出所不明の機械人形。クオリティ自体はいいかもしれないけど、貴方が言ったようにこの子、機械人形なだけあって重量が無いとは言えないわ。貴方達にとって無用の長物でしょう?」

 

 

嘘は言っていない。

ただ、男達が望んでいる金になるかどうかという点だけは避けて喋った。

何も知らなければ、神秘的で生きているようにしか見えない躍動感を感じさせるこの子を売れない、と言うのは余りにも無理があるというのは私でも思うから。

だから、通って欲しいという願いを素直に目に宿して男たちの返事を待っていると……

 

 

「………確かに。こんなでけぇ荷物を背負って逃げるのは現実的じゃねえな」

 

 

その言葉にアマルは心底ホッとする。

とんでもない馬鹿な事をした割りには、変に冷静な部分があったのでそれを願っての嘆願だったが、成立して良かった。

そうであるなら、金銭は痛いが、どうせほぼ意味が無くなるものだ。

それで済むなら不幸中の幸いだ、と安堵の吐息を吐き───

 

 

「おい、馬鹿───ちょっとこの作り物の()()()()()()()

 

 

続く言葉の意味が余りにも訳が分からなさ過ぎて、小男がへい! と頷くまで停止してしまった。

おいこら、このクソ野郎共───自分の脳をかち割って自分達が正気かどうかを証明してみろ。

 

 

「何を……!?」

 

「必死過ぎなんだよ女ぁ。確かに出来はいいし、凄ぇんだろうけど、言ってる通り今みたいな状況で盗むにはあってねぇ。だっていうのに、そんな腹に鉛玉受けてまで持って行かないでだぁ? おいおい、この状況で俺達にそんなに必死に縋りつくあんたのメリットはなんだぁ? ()()()()()()()()()()()()()()()()この作り物にあるって言ってるもんだろ」

 

「それは……っ!」

 

 

貴方が思っているような、貴方達に()()()()()()()()()()()()()()()()()()

その言葉を吐こうとした瞬間、腹から逆流した血液が言葉の代わりに吐き出されてしまう。

最悪なタイミングでの吐血に絶望する。

口は止まっても眼は動く。

見れば、小男はろくに考えずにナイフを取り出し、構えている。

止めろ、と口調も投げ捨てて叫びたい言葉が血で絡まって吐けない。

吸血鬼が血に邪魔されるなんて洒落にもならない。

大男の言う事自体は実は正しい。

確かに、私は彼らに気付かれてはいけない一心で言葉を紡いだ───だけど、それは金とかカードとか、そういった誰かに利を齎す様な物ではない。

 

 

───貴方達は、()()()()()()()の前で火遊びしていたのだと。

 

 

そんな私の警句を知らないまま、小男はまるで運命を切り開くかのようにナイフを逆手に握り───自らの運命に幕を引いた。

 

 

※※※

 

小男は自らを馬鹿だと認識している。

頭が足りない馬鹿である彼は、だからこそ自分より力と頭がいい兄貴を基準に世界を回してきた。

今だって、綺麗な作り物だぁ、と惹かれた少女の形をした人形にナイフを突き立てる事に躊躇いを覚える事は無かった。

 

 

だから、びっくりした───ナイフを突き立てようとした少女が急にパチクリと目を開き、ナイフを突き立てようとする俺に対してとても綺麗に微笑んでそしてくるりと()()()()()()

 

 

「───あえ?」

 

小男の視界では作り物だと言われた少女が上下逆になっていた。

それと同時に首から下への命令が出せなくなっていた。

 

 

まさか、兄貴を信じ過ぎて遂に俺は本当に世界を回せるようになっちまったのか!? 

 

そんな正に馬鹿な思考を回していると知らないであろう、唯一、小男が自由に出来る目に映る空色の少女が遂に口を開く。

それは外見には似合わない穏やかで大人っぽい声色で告げられた。

 

 

「どうもありがとう知らない人間さん。よく分からないけど、どうにも起き辛くてね。だから、分かりやすく、起きる為の殺意(ねんりょう)が欲しかったの」

 

 

その音色は慈愛に満ちながら、愛が欠けていた。

その声色は喜びに満ちながら、楽が欠けていた。

その呟きは語り掛けながらも、人を不要とした。

 

 

「こういうの、人間はお寝坊さんって言うんだっけ? いい体験だった、っていうには意識が曖昧過ぎたけど……でも、とても新鮮な感覚だったわ」

 

髪の色と同じ、空色の瞳を薄っすらと開け、唇を妖艶な形に歪め微笑む。

それだけで小男はドキン、と心臓が高鳴る! ───筈がおかしな事にならない。

その事にアレぇー? と普段以上に舌が回らない舌で滑稽な音が鳴るのを少女はくすり、と微笑む。

 

 

───その笑みは屠殺場に運ばれていく家畜を見る無関心(笑み)にそっくり

 

だから、少女は気まぐれに手に取ったそれに対して、気まぐれのままにお別れを告げた。

 

 

「じゃあ、最後までありがとう目覚まし時計(人間)さん。丁度いいくらいの低脳でとても助かったわ」

 

最初から最後まで変わらない笑みを向けられた小男はその後、ひゅんと視界が飛ばされる。

うぉおぉうぉおぉぉぉぉおぉぉぉぉーーーーー!!? と未だに自分が首だけになっている事に気付かず、血の一滴も首から漏らさないまま投げ捨てられた。

 

 

※※※

 

舞台が破壊される。

人の営みを綴っていた形から無遠慮に偉大さを隠さないまま、()()は睥睨する。

この惑星にとって最も偉大なる生命。

星の形にして星の命。

天体は彼女であり、法則は彼女であり、大地は彼女である。

故に形容出来る単語はただ一つ───少女の形をした容器に宿るモノは神であった───

 

 

 




何だか変にチンピラが頭回った気がする。
そんなつもりは無かったけど、しょうがないので良しとする。
ようやくタイトル通り、神を一柱、表現出来ました!
文字数もなるべく、これくらいで無理なく投稿していきたいです!!

感想・評価等よろしくお願いいたします!!
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