「お嬢さん、それはコーヒーかい……?」
おつかいで訪れたコーヒーショップを出ると、ちょくちょく見る顔に声をかけられた。本当に街中で見かけるだけで知人ではない。ピンク髪のふんわりした中学生だ。カフェで見かけた時に飲食物に頭を捻る感じで過ごす様が、私と似ていると思った覚えがある。
「あぁ、コーヒーだともお嬢さん」
返事すると、彼女の纏う雰囲気が変わった。長い髪が謎の風で広がり、緊張感で膨れ上がっている……何の力学がはたらいているのだろう。
何らかの気合を入れた彼女は、少し胸を張り顎を引いて厳かに言った。
「私に、コーヒーのペアリングを教えてくれない?」
見ず知らずの高校生に対してお茶会の誘いとは、なかなか勇気のあることだ。尊敬に値する……
敬意を表して真面目に付き合って差し上げるのも吝かではないが、私も紅茶党のコーヒー素人なので誤魔化して帰りたい所である。一旦様子見に、とりあえず変な事を言ってからかってみようかしら。
「それは、デートのお誘いということでよろしいか?」
これでどうだ、ほんとにこんなの相手で良いのか?
「ふぅむ、甘味、苦味、銃撃戦……これから教えを請うことは、女学生2人の青春に謳われるもので……それは結果論的青春と言えよう、それは…………でも、だからこそのチャンスを追い求めるときめきがある……」
長考しだしたぞ! この子かわいいし話す事が面白そうで良いなぁ。膝に乗せておきたい。
「やっぱり変な感じはするけど、でもノリで話しかけちゃったからって今更引っ込むのも失礼だし……まぁなんとかなるなる」
「失礼、待たせたね。コーヒータイム・デート……お付き合い、してください」
私で良いんだ……
まぁこの子なんか好きだし珍しく楽しめるかも。
まずは出てきた店に入り直そうかね。小っ恥ずかしいな〜!
「おじさま〜、ここに迷えるコーヒー初心者が来たよ〜助けて〜」
犬のおじさまロースターに声をかけると、彼はいらっしゃいませ、とだけ言ってヴィンヴィン機械を動かす作業を始めてしまった。畜生め、親切心が足りないでしょ。トリニティらしくないぞ!
「おじさま〜聞いてる? コーヒー初心者の子がね、ペアリング考えるくらい興味があるんだって!」
真面目に趣味を勧めるなら、まずはプロにぶん投げるのが定石だと思っているのだが、もしやこのおじさまは応えてくれない偏屈なのだろうか……? 知ったかぶりのイキリ学生がまくし立てるよりも、トリニティで生き残っている、趣味沼引込職人にガチ技能と設備と言語化能力で初心者講座をしてもらうのが良かろうものだと思っているのだけれど、今回はアテが外れたのだろうか。
そういう接客こそトリニティの老舗の得意とする所だというのに。
気難しいお嬢様たち相手に歴史を重ねるということは、高貴で紳士で余裕がある態度ができるということ。だから優家様は私のおつかい先にしているわけだけれども……彼が雑な扱いをするのは私だけではなかったということかな。優家様の見る目は、今回は外したのかもしれない。ままあることだ。
ごめんね中学生ちゃん。ナメられに巻き込んでしまったね……
何も考えずにしばらくおじさまを眺めていると、試飲分のコーヒーを作っているっぽいと気づいた。勘違いしてごめんね、職人兼サービス業のプロなだけあって優しいね。
「さぁお嬢さん、そこの犬は放っておいてください。まずは好みの豆を探しましょうか」
「おぉ、ありがとう、サー」
犬はおまえだろがい!!!!
「まず煎り具合の好みを見ましょうね」
「おぉー」
完全に蚊帳の外だ……なんでかな。いっぱい試飲させてもらったのに美味しいのがみつからなかったから? あるいはなんか余計な事でも言ったかなぁ……
おじさまは5種類のコーヒーを出してくれた。好みとやらが、そんなにたくさんの種類をこの場で飲み比べないとわからない程度の差なら、それはもう差は無く同程度だと言って良いのではなかろうか。
「まず香りから確かめてみましょう。お茶と同じく……いえそれ以上に、コーヒーは香りから入る世界ですから。苦手なものは特に、素直に仰ってください」
「ほぉ~……どれがどんな物なの?」
「浅煎りが2つ、中煎りも2つ、深煎りは1つですよ。どれがどれなのか、当ててみてくださいな」
なんか中学生ちゃんが挑戦的な笑みを浮かべてじっくり考えだした。そうやって悠長にしていたら香りが逃げちゃうので、私の分は端からどんどん飲んでしまうぞ。うーん……すっぱい、すっぱい、すっぱい、くさい、にがい!
1時間くらい初心者講座をしてもらった後、ロースターおじさまから紹介されたお菓子屋さんでティータイムと洒落込んでいる。
中学生ちゃんの好みはナッティーな中煎りだったようで、ここでもそういうコーヒーを頼んだ。私には臭くて飲めないヤツだ。
結局私の好みは刺激の少ない物なのだ。クローナル種ダージリンが至高、次点でニルギリ系。リーフの紅茶か青茶しか飲めないし、しかも大概ファーストフラッシュだと飲めないのだ。
そんな私は、きっと素晴らしく美味しいシングルエステートでクローナル種なダージリンのオータムナルのFTGOPの物を低温で出してもらって(サービスが良い!)お供にし、デートのサビに挑もうとしている。お菓子の方は、パティシエの鳥さんにペアリングの教えを請い、ナッツのタルトにふわふわのチーズを添えて用意してもらった。
舞台はもう整っている。さて、デート……デートか……改めて考えると照れちゃうな……何の話からしようか。お揃いにするならどこに付けるアクセサリー? 次どこ行くか? 好きなお腹?
この瞬間を楽しくするために考えを巡らせていると、中学生ちゃんから切り出してくれた。出遅れたー。
「今日は……デー、デート、ありがとう。私はナツだよ。親切なお姉さん、名前を聞かせてくれないかな?」
「…………ぁっ……ハジメです」
コミュ強だ。あざとく照れたふりをすることによって、私をフリーズさせて主導権を取ってみせたぞ。あまりにも可愛いすぎる。
私の手に負えない。私はこんな可愛い子に頼られるのに足る人間ではない。初めからわかっていた事だけれど、ナツさんは優家様目当てのお政治の足掛かりとして接触してきたのだろうな。
本題を聞いて絡め取られる前に、せめて彼女の背景を聞き出して優家様に泣きつく準備をしよう。
落ち着くためにお茶をひとくち。当然砂糖もミルクも入れない。
オータムナルをさらに低温抽出しただけあって渋みや質感は抜けて落ち着いているが、だからこそ余韻の官能的な甘味がキュンと、ずっしりとくる。消えない香りに脳をかき混ぜられ、まるで胸をこねている時のような全身に広がる"甘味"がわいて、ぼーっとなる。しあわせ。
あまい。うぅ あまい あまい
「…………」
「……おぉ、浮彫りに…………生地がジューシーになる……? クリームチーズが……? いろいろな味がするのに……1個になる……? ぜんぜん違うスイーツみたい……3Dメガネ……? 」
やば、集中しすぎて無言タイムになっちゃった。良い茶は人前で飲むものではないな……
ナツさんも集中してお皿に取り掛かってくれているし、今回はセーフだと思っておこう。とりあえずケーキ食べるまでこのままで良いか。
そろそろ頃合いだろうか。まだふわふわする。
「ナツさんは〜……可愛いね。どこの子かな〜?」
ナツさんは眉根を寄せた。情報を抜こうとしているのがバレたのだろうか。
「ありがとう……? 何、急に?」
「五感がウマすぎて馬になっちゃうわねって。ひんひん……」
「うん、美味しかったね。コーヒーはスイーツを立体化してくれて、もはや口で再誕が起こったかのようだった……可塑性を置き去りにしたこの世界観は、それだけ新たなまとまりもあって面白かった」
「さながら私は出荷後刺し盛になった形成肉ってワケ」
「…………どうしてそう、おどけてみせるの? 私、気に障ることをしちゃったかな……?」
うわやった。失敗を選んだ。黙って帰っとけば良かった。今頃シャッキリしてきてさらに嫌。
私がガン萎えしているのを他所に、ナツさんは話し続けた。
「そう、本題はそこなんだよ。どうか教えてほしいんだ……私の何が煩わしいのか」
あぁ本題を聞かされてしまった。お政治も失敗だ。「相談された」事実ができてしまっては、私を通して優家様がそれを受けた事になってしまう。こうなっては……そうだ、徹底的にバカなふりをして「窓口役が仕事しなかった」という事にしよう。
私はバカになると決意したが、ナツさんは容赦無く語り続けた。ご勘弁を~!
「私は……話が長くて回りくどい所があって……それはもうアビドスにあると噂の奇想天外のように長くて、それで友人を苛立たせてしまうことがあるんだ。それを大袈裟にやり返されてケンカになることもあるけれど、でも私は友人たちのことが好きなんだ……一緒にロマンを追い求められるって信じているんだ……」
ナツさんは指示役で、工作の指示が多すぎて難度を高めているからコンサルタントを求めているということだろうか。
マジであかんやつ。私が絶対に触れてはならないネタだ。今すぐあの小さなお口を塞ぎたい所だが、バカのふりをするのだ。まだその時ではない……
「私はこの気持ちに確信を持っているけれど、私たち、今年受験だから、皆ピリピリしていて……しかも同じ学校に行くかもわからないし、どうもモモフレペロペロチョコみたいな感じ……皆でいるのに同じパッケージに入れない感じなんだ……上流階級の先輩に声をかけられた子なんか、最近様子がおかしくなっちゃって……でも私は煙たがられちゃってなんにもできていないの……」
上流階級って概念はどの学校にでも在るものではないぞぉ……トリニティだ。窓口役は別にいて、ちょっとした規模感のグループで政争の道具として何か仕込まれているんだな……その先輩の派閥次第では、この話の末に聖園様が吹っ飛ぶからマジやばい。今すぐなりふり構わず逃げるべきかもしれない。
でも仮にでもティーパーティー所属な私なので、体面をかなぐり捨てるのは最後の手段でなければならない。お政治難しすぎるよ~!!!
「だから、1年生であのティーパーティーのあなたが、あまりにも日々楽しそうだから、思わず……声をかけちゃった。どうしてそんなに明るくいられるのって。どうしたら友人を守れるのって。どうやってまた同じ時間を過ごせばいいのかなって……訊きたかったの」
「ごめんなさい。初対面なのに、変なこと話しちゃったね」
ナツさんは力の抜けた目を下に向けて肩を落としている。
お政治じゃない気がしてきた。
声色が大変空虚で切実さを感じる。心の在処が目線の先まで落ち込んでいて、手をテーブルの下で握りしめているのだろうか、腕が強張っている。これはきっと
いちいち比喩に出てくるものが比喩になっておらず、それは独自の哲学を見出していると想像できるからだ。そんなん政治の駒に使いづらいし、これ、マジで私に用を見出してくれたヤツではなかろうか?
こんな可愛いことされたら、なんかもう騙されちゃってても良いかも……! なんかあったら優家様に泣きつこう。
関わろう。
「ナツさんや、我々はデートをする仲じゃあないか。水臭い事言いなさんな」
まぁただ私には友人なんぞウイさんくらいしかおらんので、そしてあの人は大変おかしく自立しているので……根拠のある事は言えないけれど。それでも彼女を支えてみたいと思った。久しく触れていなかったカリスマってヤツなのかもなぁ……
「頼れるお姉さんと幾つか道を啓いてみようぜ」
「まずは盾を持て!!」
「い、イェッスマム」
手始めに武器屋に来た。
なぜなら呈された疑問について、まず体感を通してナツさんの哲学がそのビジョンを獲得するということが、理解への近道だからだ。我々の営む思考は体の一機能にすぎず、つまり体をよく使ってこそ思考を引っ張り、深められるのだ。
だから具体的なお悩み「守る」について、盾を使うことも盾を選ぶことも、より具体的なイメージを呼び込むと踏んだワケ。
例えば私が「守る」とすれば、それは対象物を物質的に保つことと確信しているので、盾なら身長に合わせたバリスティックシールドを選ぶし、何でも良いなら金庫とシャベルを選ぶ。私の哲学は"そう"なので、対人関係なんかに適応するならば、とにかく囲いにかかりたくなるわけだ。なお囲われてもらえることを保証しないものとする。そういう"理解"の獲得、自分ルールとしての哲学の自覚が助けになるんじゃないかと思うのだ。
こんな事を言っても響かない気がしたので「ロマンは行動にて掴むべし」「思考は実行の前段階にすぎず、飛んで実行もまた正しい」と言っておいたら、感銘を受けてくれたようで、少し近くを歩いてくれるようになった。コーヒーとミルクのにおいがして大変愛らしかった。
そういうわけで、ナツさんの盾選びをしている。
「このアーマーみたいな素材のと、透けているのとでは何が違うの?」
「可視性と重さかなぁ。透けている方が状況を把握しやすいけれど、周りからも見られるのは欠点かも。ギミックとか仕込んでもバレるし。重さは委託射撃とか爆風に耐える時とかあると嬉しいね~。でも重すぎると使いづらいよ」
「防弾性能はどうなの?」
「あんま変わらないね~。ミレニアムさまさま」
「ふむ……」
ナツさんはあれも違うこれも違うと、手に取っては戻しを繰り返していた。
「えっとこの……バックラーなんてどうかな? 大きさ、丁度良くない? しかも急所を華麗に防ぎきる技量がいるというのは、賞味者を選ぶようで気高さがあるよね」
「いやいやそれで何を守りますの……? 使用者を選ぶ道具なんかゴミだよ。立場がわかっていない……ほら見てこの宣伝文句、バイタルゾーンって、ロボット向けの話じゃんか。私らなら頭以外どこ当たっても大して効かないし、そんなちっちゃい物じゃあどうせ頭しか守らなくなるよ。メットで良いでしょ。持つならこんなお盆じゃなくって全弾防ぐために持ちましょ〜」
そう言ってバックラーは取り上げた。良い店なだけあって、金持ちロボットも客層に据えているんだなぁ。
「む……でもここの自治区には伝説の道具の逸話があるじゃない? あるいは通向けの、チョコミントみたいな日用品だってある。私たちだって選ばれるって、選ばれし者になれるって、そんな可能性もほしいよね?」
「それはロマンと言うより妄想で現実逃避だよ、ナツ君。まずそれらを作ったのは人で、人はキャパと要求に合う物こそ使うんだ。だから伝説級にスゴい物とかマズい物は、伝説級な人のキャパに合わせて作られた、という順番があるのだよ……つまり物が相応しいと感じた時には、君が伝説に謳われるような人に"既になっている"ワケ」
「相応しいならば、伝説……それはつまり選ばれし者への道は、逆にゴールが見えていると考えても良いんだ? どうやったら目の前のスイーツをすっごくあまーく食べられるか考えるみたいな、結論から逆算して辿る方法もまた相応しいということ?」
「そだね。計画的で賢明なやり方だ。一方で目の前の"すんごい"一線を越えられるかが困難なんだから……そうだな、お茶が最も美味しい温度は何度か、"冷めちゃった"にならない温度は何度からか、それこそ"すっごくあまーい"ってどこからだみたいな、逆算の準備のために実証し難い根拠……偶然の産物を待つメソッドだとも思うよ」
「ふむ……幾度も挑戦して、偶然なんか必然にしてみせようじゃないか。追い求めてこそのロマンで、実行は人の意義なんでしょ?」
「カッケェなぁ……」
この子とのお話楽しいな。
あんまり脱線するとこの瞬間がもったいないので、語っている間にも私のオススメをアレコレ押し付けてみたが、ピンと来なかったらしい……まぁちょっと持つくらいで選べと言うのも無理があろう。
やはり装備は試すに限るか。
「レンジで試そう。バリスティックとライオットの違いは解るかもしれないよ」
ナツさんを引っ張って行って、料金を支払って試し撃たれレーンに入った。5.56mm弾100発で8000円だ。タレットの制御スイッチは私が持とう。
まずはバリスティックシールドを試してもらう。とりあえず繊維素材の大盾に窓が付いたヤツ、6kgだ。
とりあえず身を守りながら銃を突き出すのを教えて、タレットの前で構えてもらった。ぎこちないけれど結構サマになっている。これでプレキャリ着てたらカッコイイんだろうなぁ……銃だって、MicroUZIは弾幕で強く立ち回れそうだし、このスタイル結構アリかも? 問題は低威力な9mmなのに反動制御が難しいせいで、よっぽど上手く当ててみせなければ脅威にならないことかしら。サイトを覗こうと盾を傾けると頭が出たりもっさりするのも、1人で戦いづらくて不便かも?
ナツさんは銃については、9mmグロックのロングマガジンを使うように改造しているし、明らかに継戦能力とマガジンの入手性を意識している。いやMicroUZIのヤケクソ発射レートで継戦できるかはちょっと疑問だけれど、UZIよりもグロックの方が装填済みマガジンを置く店が少し多いし、コピー品やSMG、PCCにも使われるからそこそこ転がっているし、グロックなら多弾マガジンも多く出回っているしで便利なのは間違いない。
普段から戦闘で勝つというより戦闘でヘタらないのを目指しているっぽい。「守りたい」のアプローチが、彼女の本質から出てきた追加パーツであるのがわかるなぁ。
「ハジメ? もういいよ」
忘れてた。タレット役だったわ。まだ据わりが悪そうだけれど、心地の良さは体感から得るものなので撃たれてもらいましょ。
準備はできているようなので合図せずにスイッチを押す。まずは単射だ。
バン、バンと音がして盾から弾が落ちる。着弾したとき火花が散って、良い眺めだ。
ナツさんは盾から響く音に少し驚いたようだったけれど、衝撃によろめいた感じはしない。一旦様子を聞こうかな。
「どんな感じ〜?」
「傘みたい」
ま、最初はそんなもんか。
「5発くらいで撃つよ〜。当てる場所変えて試してみて〜」
頷かれたのでバーストを試す。射撃間隔は長めにとってみよう。連射の音と止めている時の圧のコントラストが心地良い。
ナツさんはいろいろ場所や向きを変えてみていて、表情は難しげな感じだ。キマる感じがしないのだろうか? 弾が減ってきたので、フルオートで撃ち切ってバリスティックの方を終えよう。
「全部撃つよ〜」
「ばちこ〜い」
連射を始めると、タレットの音もさることながら、盾もなかなか良い音を奏でた。着弾が生む火花が、菊が咲くのを倍速にしたかのようで美しい。アガる〜!!
撃ちきったので、一呼吸置いてから声をかける。
「どうだった?」
「うーん……視界が悪いしちょっとモタつく、のかなぁ……? 火花はどうにかならないの?」
「コーティングしてあるヤツは出るみたい」
「火花でなんにも見えなかったし、こんなの構えても歩く石像が良いところな気がする……」
唸りながらアレコレ構え直しているが、こういうものは比較しないとわからないものだ。とりあえずライオットシールドも試してもらおう。透明な樹脂製で2kgくらいのヤツだ。
「ほいコレ」
「うん…………おぉこれは……」
構えてもらうと、これまたかなりしっくりくるビジュアルになった。軽装な分、バリスティックシールドよりも丁度良い感じかも。ナツさんも盾を透かしてあちこち視線を走らせてみている。そんなに盾持ちながら見るものなんか有るかぁ? フラッシュバンとか来たらひとたまりもなさそうだけど。
私には見た目しかアドが感じられないけれどナツさんはだいぶアガっているようで、撃つのを急かされた。進歩があるのは望ましいので、私もノリノリでタレットにワンクレ追加し、まず単射のスイッチを押す。
バキンバキンと音がして弾が盾から落ちる。盾が軽くなった分、衝撃を地面に逃がしづらくなるハズだけど、特にふらつく様子はない。結構ムキムキなのかな?
「良い感じ」とのことなので、バースト射撃をしてみる。やはりドッシリ構えて弾を受けきっているし、盾を寝かせて跳弾までさせてみせた。器用だけどそんな事する機会は無いんじゃあなかろうか……
「ちょっとあの辺立って。バーストね」
ナツさんの斜め前くらい、射線に被らない所に立たされた。ナツさんは銃を背に回して盾越しにガン見してきているけど、何するんだろう。
とりあえず言われた通りにスイッチを押してみると、バババっと盾を鳴らしながらナツさんが迫ってくる。なんだなんだ制圧されるんか……?
ちょっと圧を感じるので弾数を増やしてみる。
「大丈夫……届く……!」
火花を纏って向かって来る。スイッチを押しっぱなしにして走る。
彼女は歩調を乱さずずんずん迫ってくる。
何のつもりなんだ。
火力が足りない。
もっと撃たないと。
けたたましい音と炎が近づいてくる。
スイッチを押し続ける。
感覚が静かになった。
タレットが止まっている。
盾越しに、私と同じ高さの目が見ている。
「どうしたの、待っていてくれれば良かったんだけど」
わかるはずがない
「ほら……追われるとホラさぁ……」
「石像じゃなくて盾になれるか試したかったんだけど……ふふ……まぁ、相応しそうじゃない?」
いけない、逃げ癖が出てしまった。
ナツさんは盾を下げてこっちへ歩いて来る。もうレンジを出るようだ。
「こっちにする。もうちょっと選ぶの手伝ってほしいんだけど、都合は大丈夫?」
頷いて、構えてしっくりくる物をみつけるまで付き合った。
買い物が済んだら、モモトークを交換して解散した。
武器屋に投げーやイキリ語りすんな
ナツの包容力はまたこんど語りましょうねェ……