世は夏休み真っ盛り。終業式をとっくに終え、海に山にイベントにと全若者がはしゃぐ時期だ。私もただの生徒とは少しだけ事情は違うが、夏季休暇は予定も役目も無く、実に開放的な気分だ。というのも休暇中、優家様は会談やら何やらが続くので実家の召使いを侍らせると仰って暇を出されたのだ。曰く「おまえはまだ世にお出しできぬ」とのこと。
さすが主人なだけあって私のことをよく見ている。無礼が許されるからと聖園様との面談の場には連れて行かれたが、その度に「おすわりはできて、えらいねー!」等の煽りを受ける程度にしかオサホウはできていない。なんかそれも優家様の策のうちらしいけれど、結構参っちゃうね。
そんな私だから、休暇となれば寮からは離れたい。私も銃に硝煙に爆弾にとはしゃぎたい。皆と同じように、とても普通の女の子らしい欲望で溢れているのだ。皆も同じ衝動を抱えていて、今周りで一緒に弾けさせているのだ。
つまり治安が弾けて治安維持組織はてんやわんやってこと。正実は
ケンカの理由もまぁ下らないもので、限定スイーツがどうのとか服がどうのとかテニスとバドミントンのどちらが強いかとか、些細なものらしい。私が叩き込まれているお嬢様像と現実のお嬢様にギャップを感じる。どちらを信じるべきなのだろうか……
私としてはお嬢様以前にそもそも争うほど拘るべきものなんて無いので、その拘りは実によくわからないところだ……手に入らないのは縁が無いだけ、好みは個人差、比較は多面的であるべき……そんなもんじゃあなかろうか。私には衝突するノリがよくわからない。でも便乗してノリノリする楽しさはよく知るところだ。
つまり寮の外を徘徊しているだけの私は善良で良い子ってこと。だってケンカを発生させていないから。
つまり銃撃戦に参加しているだけの私は悪くないってこと。だって反撃しているだけだから。
御託はここまでだ。
今日のケンカの御題目は「ここで会ったが百年目! キャスパリーグ、今日こそ倒してみせます!」とのこと。声デカ。キャスパリーグさん大変そ~。ていうか名前が厳つい。自称か他称かで香ばしさが変わってくるが、どうなのだろう。
「私はそういうの辞めるってのぉ!」
まだわからないな。キャスパリーグさんの恰好はスケバンに見えるし、そういう二つ名を付ける文化はあると思うんだよなぁ。
一方で襲い掛かった方は普通の中学生に見える。しかも1人。あの2人で日頃つるんでいそうには見えないし、普通さんは周囲のスケバンが呼ぶのを真似しているだけかもしれない。他称説が優位になってきたなぁ。
しかし人物の見た目は「普通 VS 不良」なのに、因縁つけているのは普通な方って、印象がちぐはぐなのが面白い。実は本当に立場が見た目と真逆ってこともあるかも? でもたぶんキャスパリーグさんの方が見た目通り不良かなぁ……「姉御!」って鳴いて若スケバンが集まってきているもの。普通さんは何故あんなのに絡もうとしているんだろう、彼女も中二病のヒーロー気取りなヤツかな? 枯れたお姉さんには眩しい光景だ。
「搦手を使おうと言ったってそうはいきませんよ! キャスパリーグ、子分を呼び寄せたのは見えています! いよいよ後が無いんですね!!」
「ちっが……あんたら来るんじゃないよ! ウッザいってば!!」
そう言ってキャスパリーグさんが撃ち始めた。若スケバンも止せばいいのに追随して各々撃っている。
銃撃戦だ!
まずするべきは隠れること。お腹には絶対に食らいたくないので、見繕っておいた建物のスキマに滑り込む。逃げ遅れた人がぺちぺち撃たれながら鬱陶しそうに駆けていくのを横目に、ひとまず状況を観察してみる。
普通さんはガンガン詰めに行ってショットガンを撃ちまくっているが、キャスパリーグさんは引き撃ちしているようだ。引きながらも路地に入らないのは、大通りに近寄らないためだろうか。あるいは近くに足を用意してあるのかもしれない。
若スケバンたちは好き勝手やっていてどう動くかわからない……あれがカオスを呼びそうだし、私が戦況をコントロールするのは無理そうだ。
私は……そうだな、急ぎのお遣い先が、向こうに見える制服の看板の店だという体で、一旦突破を狙ってみよう。ただあんまり長居すると正実に顔を覚えられてしまうので、程々に楽しんだら引き上げなければならない。
よしいける。便乗しよう。
リアの方のチャージングハンドルを引いて初弾を入れる。
最近チャンバーを空けておくようになったのはお上品ポイントが上がってきた感じがするが、やっぱり即応性に欠けるなぁ……まぁ館の中で普通に過ごす状況とかだと長物を構えるより拳銃を抜く方が速いから、発射準備して持ち歩く用途には拳銃の方が良いのは良い。長物はお作法上の都合でガンラックに置くことが多いし、ぶつけやすいし。
まずは
100m無いくらいの距離なのでショートスコープは等倍のまま、セレクターを連射に入れて柱に委託し構える。こっちは9mmの非力な弾だから、頭に10発は当て続けなければならない。
やっと撃てる。
左手でハンドガードを壁に押し付けて
ストックもしっかり右肩に付けて頬付けし
目標がレティクル越しにきた
トリガーを引く
爆音と横に流れるガスを感じる
反動を力で抑え込み続ける
20発当てたところで敵は倒れた。
やっぱ9mmよな~~~~~~! よぉ当たるわ!
薬莢がカラリカラリと通りに落ちきったのを聞きつつ、反撃が来そうなので顔を引っ込める。
直後に目の前でバチバチバチと音が鳴りはじめた。制圧射撃されちゃっているなぁ。短い一定の間隔で着弾音が途切れるので、たぶん撃っているのは1人だけだ。一応超テク連携でバースト射撃の再現をしている可能性も無くはないけれど、たぶん無い。
被弾したくないので一旦相手のリロードまで様子見しよう。
マガジンリリースボタンを押す。良い整備をしてもらっているのでするりと抜けてテンションが上がっちゃう。使いかけのマグは手提げのバッグに放り込んでおき、新しいマガジンを腰吊りホルダーから取って銃に挿しなおした。いろいろ持ち替えはするけれど、やはり自分の銃が一番扱いやすいなぁ。
キャスパリーグさんたちはというと、どうやら遮蔽も取らず走り回って撃ち合っているようだ。元気すぎんか??? 普通さんなんか大して避けるそぶりもせずに耐えている。なんか強くないか??? こんな縦横無尽に動かれては、若スケバンたちでは連携なんて取れないだろう……なるほど制圧射撃が薄いわけだ。
さて、制圧射撃は90発受けた。相手は不良中学生だし、爆発物なんか手榴弾くらいしか用意できないだろうから、投げ物が飛んできていない以上まだ交戦距離は遠いままなのがわかる。流石に100発も撃てばリロードするだろうし、これならまた安全に撃てそうだ。
制圧射撃が止んだ。倍率上げなくてよかった。視野を広くして探せる。
いた。
しっかり頬付けしてトリガーを引きっぱなしにする。
遮蔽に消えつつあるチンピラの頭に弾がベシベシ当たり、引っ込み方の軌道が仰け反るように変わった。隙ができたぞ。
次は通りの、向かいの路地へ駆け込みたいので、フラグを投げてクリアリングしよう。レバーを握ってピンを抜く。私はあまり肩が強くはないけれど、20mくらいなら(慎重に投げれば)狙って投げられる。
「ぃしょっと」
よし、狙い通りに路地の中に転がってった。起爆に合わせて駆け込もう。
3……2……1……
ダッシュ!
まずクリアリングだ。すぐコンバットレディに構えて索敵する。
何かを私の足元に投げ落とした、走り去る猫大人の背が見えた。他にはいない。やばい。
咄嗟にソレを正面に蹴り飛ばすと、ちゃんと遠くまで飛んでった。ラッキー! 焦った~!
せっかくなので後ろを向いて伏せて、炸裂するか待ってみる。インパクトグレネードだったら食らってたなぁ……そんなものディフェンス用に持ち出す人いないだろうから、考慮する価値は無いかもだけど。
バンバンバンバンバンバンバンバンバン
うわ、食らわず済んで良かった。9 Bangだった。
やり過ごせたので、一旦銃を背に回して路地を出よう。戦闘に関わっていそうな人に注意しつつ、さっき制圧射撃してきた若スケの横辺りまで行こうかしら。
如何にも今逃げて来た〜みたいな顔をしてテコテコ小走りする。さて、狙い通り行けるかな〜?
「撃ちます! 関係無い方は離れてくださーい!」
横の方から、バババと銃声がした。見ると正実が2人で駆けて来ていた。ちょっと来るのが早いなぁ……
まぁ、よくあることだ。せっかく暑い中銃撃戦を探して徘徊してたんだから、ぶっ飛ばして寝といてもらおう。彼女たちの近くに庭園があるし、そこに隠しておこっと。
まずテコテコ駆け寄って声をかけに行く。
「そこのあなた、この向こうで銃撃戦になっていると通報があって来ました! 何か知っていますか?」
向こうから声をかけてくれた。うーん警戒が薄くって初々しい。これは1年生かな?
「は~い~! 中学生2人の決闘にチンピラが茶々入れてました。個人携行できる銃ばかりでまだ被害は広がっていませんでしたよ~」
「わかりました! ありが──」
話しながらスタンナイフを胸ホルスターから抜いて、即座に手前の1人の口に突っ込んだ。その子がビクビクになって意識を飛ばしている間に、もう1人に至近距離で
リロードしなきゃ。マガジンリリースレバーを押しながら空マグを抜き捨て、新マグを挿し、最後にフロントのチャージングハンドルを引いて装填完了だ。
「かっハ…………ぇっ!? あなた何を」
まだ元気そうなのでこれも全弾当てておこう。
「うぅぅぅぅぅっぅぅうううぅぅぅぅ…………なんで…………こん…………」
よし、ヘイロー消灯~。
あぁいけない、AR15系の練習をしたかったのに気を抜くと普通の操作でリロードしてしまう。どっちもできるのが
さぁ、目立っちゃったしとっとと行こう。
2人を庭園に放り捨て、ポーチから装填済みマガジンを取り出してホルダーに挿し直す。9mm弾をたらふく食わせたオートローダーを持ってきているので、空マガジンさえあればいくらでも撃てる。弾薬さえ共通化しておけば、マガジン共通化までしなくても長物も拳銃も併用できるし、しかも撃ちまくれる優れモノだ。昔のミレニアム生が作ったらしく、きっとその人を目の前にしたら足を舐めずにはいられないだろうなぁ。
しっかし9mm弾は使いやすいけれど結局非力だなぁ。頭を狙えなかったとはいえ至近距離で60発も使っちゃったよ……そういえば正実の正式銃って.280弾だっけ。
もらお。
片方の銃からはマガジンだけもらって、もう片方の銃はそのまま持って、目標に向かって行く。
結構足止めがあったが、なんとか銃撃戦の横に顔を出せた。まだ普通さんとキャスパリーグさんは派手に撃ちあい走り回っている。よかった~!
では私もつまみ食いするとしよう。
正実の銃、珍しい感じで気になっていたから非常にわくわくしてしまうな。
マガジンを外し中身があるか確かめ、十分ありそうだったので挿しなおす。チャージングハンドルは右側か。ちょっと引いて薬室も確認……弾は入っているな。さぁ撃つぞ。
丁度目の前に若スケが来たので、妙に小さな等倍の照準器で狙い、引き金を引く。
「おうおうんだテメー! んのかテメー!」
引き金、引けない!
ドゴドゴ撃たれながら急いでゴミ箱の陰に隠れる。何をミスったんだろう……セーフティーかな……?
セーフティーどれだ……? トリガーガードに謎のレバーがついている。たぶんコレだ。コレが前後に動くのだろう。試しにつまんでテキトーに動かしてみると、トリガーガードの外側にスチャっと出てきた。一旦これで撃つ。
「中坊から逃げんのか? あんた1人でおうちまで逃げ帰れんのか? ん? 送ってってやろうか? ん?」
寄ってきた彼女を銃口だけ出して撃つ。
バン
「オイ何すんだテメー!!」
単発かよ! セレクターは……あった。こっちは普通のでよかった。セレクターボタンを押し込んで改めて全弾撃つ。ちゃんと連射できた。
しかしまだ威力が足りないようで、彼女は怒って向かってくる。
リロードだ。どうせ狙って撃たないのでハイで持って、よく見ながらマガジンリリースレバーを押してマガジンを交換する。ブルパップだからちょっと入れづらいがなんとか間に合いそうだ。
もう敵はすぐ近くだ。身を隠しきれない。
さぁチャージングハンドルを引こう、と思ったら勝手にボルトが閉まった。便利~! いざまた撃つべし。隠れたまま引き金を引く。
「あだだだだぁ……」
今度は仕留められた。この銃結構よかったなぁ。造りが良いのにチャージングハンドルがボルトと一緒にガシャガシャ動くのが、古くささも味わえておトクだった。
今倒した若スケの銃と持ち替える。これはBARかな? 抱えてみると、やっぱり重い……マガジンの中身は半分くらい使ってある。10発くらいか……これはさっさと撃って捨てよう。
次の敵を探してちらりと顔を出すと、ちょうど普通さんの散弾を浴びてひっくり返ったのがいたので引き金を引く。ドドドドドと重い音と反動がお腹からつま先まで走り抜け、フルサイズ小銃弾ならではの甘い喜びが体を満たす。ちゃんとトドメもさせた。さすがの威力だ。重いから欲しくはないけれど。
また次を探していると、戦闘自体はかなり落ち着いてきているのが見てとれた。これは潮時かな? まぁまぁ良い遊び場だったのでこの場は永遠にあってほしかったけれど、正実の増援が来る前に遊び終えなければならないのもあるし……歯がゆいな~。
一方主役たちはと言うと、キャスパリーグさんが割と余裕そうに普通さんを伸していた。
「宇沢……もう突っかかって来るんじゃないよ。私は普通になるから」
「杏山……カズ……」
「じゃ!」
キャスパリーグさんは油断無く頭に2トリガー撃ってトドメを刺してから、制服屋さんに入っていった。なるほどー、この場で戦っていたのは自信と用事があったからかぁ。
あそこに行くのが私の口実だったし、優家様にお土産でも買ってこうっと。
「っ!」
キャスパリーグさんは、私が店に入るなり身構えてみせた。そんな目立ってたかなぁ?
「何よ」
「買い物です~」
「ふん……」
こっちを一睨みしてから試着室へ消えていった。お楽しみの邪魔はしてないと思うんだけど、何が気に障ったのかな。
まぁ私にとっちゃあ、キャスパリーグさんなんかよりも優家様とかティーパーティーの気に障る方がマズいから…………マズいんだよなぁ…………今日はなんかハイペースな戦闘でテンションが上がってしまった。よく考えずに正実を正面から倒したのは悪手だった……ふつうに躱すとか、その後で流れ弾で処理するとか、穏便に対処できたはずだ。やる度に揉み消してはもらえるけれど、そろそろ顔が割れかねない。しかも、あぁ、こんな現場の通りで事件直後に買い物しているのは如何にも関わりましたと言うようなモノじゃあないか……バカがよ……今からでも店変えるか……でももうダルいんだよなぁ……割と撃ったし、変な事してるせいでテンション下がるし……でもこういう時なんにもしないのも後でダルい事になるのがな……せめて優家様に泣きつくために貢物を用意しなくちゃなんだよな……これ以上何を捧げろってんだよ……てか正実もティーパーティーもそろそろ勘付く頃だろうし、沙汰はどうなるのかな……あぁご機嫌伺い、あぁ……ダル
優家様に外出用の手袋でも贈っとこうかな。白のシルクで……いやシルクっぽい化学繊維のがあるな……すごい、超滑らかで光沢が上品だ。レースもきれいでめちゃ大人っぽいなぁ……優家様はこういう新技術モノ好きだし、これに滑り止めでもつけてもらおうかしら。そうしよう。寸法はわかるけど、見本用だしザックリ合わせて済ませよう。ご機嫌取れると良いな~。
手直ししてもらっている間にキャスパリーグさんが出てきた。とてもお清楚な出で立ちになっている。が、とても険しい顔で私に背を見せず、店を出て行った。なんだったんだ。
手袋は気に入ってもらえた。今度店まで連れて行くことになったのは億劫だけれど、まぁ良かった。
手持ちがUMP、グロック、ガバだけなもんで、他の銃のことはさっぱりわからず、書きづらかったです。メジャーな銃はとても良くできていて操作もシンプルなので食指が伸びませんが、せめてなんかギミックが面白いSMGかPCCのガスブロをば手に入れて知見にしたいですね。
みんなもガスブロ ほしがってね!