背後からサプレッサー越しの銃声と普通の銃声が聞こえる。カヨコさんも戦闘しているようだ。6階の爆発からしばらく経っちゃったし警戒態勢になっていたんだな。
とりあえず私は敵を排除できたので、引き続き安全を確保しておく。
「ムツキさん!」
カヨコさんの方を指して声をかける。彼女は即座に私の後ろをすり抜けてカヨコさんの戦闘に加わってくれた。チームなだけあって連携に慣れているようで、ありがたい。
いつもは潜入なら声なんか出さないものだけれど、もう存在も場所もバレているのでこの急造チームでよく連携しないと負けかねない。
加えてD.U.とはいえ夜中は静かで、室内では減衰した音もよく響く。そして当然敵のノーサプ銃声なんかとても大音声なので、声すらちゃんと通るかわからない。あと常に位置バレする。めんどくさい。
一旦静かになったので、今のうちにさっさと進んで良い場所で敵を減らしたいところだ。普通の会社&普通の警備会社なら戦闘要員は10人くらいだから、活動しているのはあと半分くらいかな?
警備会社か何かからの増援が来るまでに目標の破壊ができたら最高、到着時には1人で探しに抜けられる状況にできれば上々だ。だから早く進みたい。前を任せてほしかったなぁ……
まぁ、移動を促しちゃおう。進行方向後ろを警戒しながらカヨコさんの側まで後退りして声をかける。
「後ろはクリアだよ」
「ドアストッパーとか持って無い?」
「無い」
「仕事は丁寧なんじゃなかったの?」
「丁寧にしたいね~」
肩を叩かれた。移動だ。
私は建物の図面を確認し忘れていたので、音によく注意してカヨコさんについて行かねばならない。ドアノブを回す音がする。どういう状況? チラ見しよう。
ここはL字の廊下で、突き当りにある部屋をクリアリングしているようだ。ムツキさんは廊下を曲がった先に銃口を向けて警戒している。射撃しだした。カバーしながら強引で高速な突入をする方針かな? じゃあ私はまだ後ろを向いて動かない方が良いか。ムツキさんが落ち着いたら近くに行こう。あー撃ちてー。
「ワンちゃんおいで! 置いてっちゃうよ!」
さぁ、私も強引に走らねば。ムツキさんは私がモタモタしていたら見捨てる人だろうなぁとわかってきたので、素直に全力で部屋に駆け込みドアを閉める。途中で撃たれた……いていて……
部屋は何の変哲も無い塾の教室みたいだった。ここにはターゲットは無いだろうな。今入ってきたルートは生徒用の導線だったようで、反対側に講師用の扉がある。あの向こうがスタッフ用の領域で、南側っぽい。ここは中間地点らしい。リロードしとこ。
「この先の職員室から探ってみるよ。後ろの警戒はもういいから、窓辺まですぐ行って。敵はすぐ倒して」
おぉ、カヨコさんから戦闘の自由を頂戴したぞ!
「次からアルちゃんも
「任せて」
撃てるんなら長い間撃ちたいもん、絶対くたばってやらない。
そういえば見えているのなら、陸八魔さんから偵察情報的な話は来ていないだろうか。ていうか通信手段が無いのは私だけか……
「ここに敵を集めちゃうとマズいからもう行くよ。ムツキが最後尾。パピーはとにかく私についてきて」
「おっけーついてく」「オッケー!」
あまりにも雑な作戦会議が終わったらしい。まぁ、動くもん撃てば良いか。カヨコさんにだけ当てなきゃ良いんだもんね。
ドア前に集まって、カヨコさんが突入するのを待つ。あ、被弾したくないしフラッシュバンを投げよう。ベルトから外してピンを抜く。
「ちょ……投げるなら左奥ね」
「うい」
レバーはガッチリ握って待つ。
「社長、始めるよ……3. 2. 1. GO」
少し開いた扉の隙間にフラッシュバンを通す。遠くでカランと音がした。最近投げ物が上手くなってきた。
バン
カヨコさんがドアを押し開け走りだした。ついて行かなきゃ。攻撃はされていないようなのでローに構えてパタパタ走る。
すぐに次のドアがみつかって、カヨコさんは肩から突っ込んでいった。動きが速い!
ドン
カヨコさんがドアに弾き返されてしりもちついた。か、かわいい~~~~~~! イケ女があざとムーブをするのってかわいいんだ!!
オフィスの扉にしては妙に丈夫そうだし、ちょっとした金庫並みの代物なのかもしれない。ギャングの事務所とかでよく見かけるヤツだ。鍵もかかっているようだ。
「……ムツキ、テルミット」
「はいはーい」
ムツキさんが扉のかんぬきがありそうな部分にテルミットグレネードを張り付けて、ピンから紐を伸ばした。離れておこう。どうせ眩しいし元来た道でも見張っていようかな。ピィンとピンの外れる音がして、グレネードがすごい音を立てて燃えだした。燃焼が終わったら、たぶん爆弾で吹き飛ばして突入できるくらい扉を融かしているでしょう。生徒に当てたらどうなるんだろう?
しゅわ~という音を聞いて待っていると、私たちが入って来たドアが蹴飛ばされた。すかさず引金を引く。ショートスコープ越しに揺れるあれは敵ロボットだ。倒れた。吐いた息が硝煙で満たされていき、胸が暖かくなる。
近いしトドメを刺しに行こう。起きられると危ないし、あとついでにブービートラップも仕掛けたいな。
「ムツキさん、罠仕掛けない?」
「ダメー。帰り道どうするつもりなの?」
私は離脱さえできれば救護騎士団に治してもらえるから、隣の建物に跳んだりここから飛び降りたりするつもりだったんだけど、そういえば便利屋はどうするんだろう? 訊きながら倒れた警備員ロボットに銃口を向けて近づく。
「飛び降りるつもりだったんだけど、もしかしてあなたたちはそうじゃなかった?」
「やだ、ケガしちゃうじゃん。ワンちゃんは大丈夫なの?」
「いや骨は砕けちゃう。だから這って帰るか拾われるかって感じかな」
「え……そこまでさせるつもりだったの……?」
警備員ロボットの首にスタンナイフを突き入れてゴム肉を割り広げる。頭がガタガタと震えて大きなビープ音を最後に動かなくなった。刺す場所が甘かったかもなぁ。
「えっちょ何してんの!?」
「壊しといたよ」
引き続きドアを警戒しながら2人の近くに戻ろうと思った。
けれどふと足元に転がった敵の銃が目に入った。
ARプラットフォームのカービンだ。銃身は10インチ弱で持ちやすそう。ハンドガードも細身でカッコいい。グリップはかなり垂直に近く、コンパクトな持ち方がしやすそうだ。マガジンはARにしては細身の一直線で、まるでグロックのようだ。
グロックじゃね????
銃を持って2人の近くに戻る。
「この子ヤバい! 警備員殺した!」
「うそ、ちょっと、まさか……わざとじゃないでしょ? 当たり所次第で偶に壊れるし……」
マガジンリリースボタンを押して銃弾を確かめると、そこには9mm弾が入っていた。やった!!!! これで撃ちまくれるじゃん!? 念のため自分のグロックのマガジンも挿してみると、ちゃんとカチッとはまったし、引っかからずちゃんと抜ける。激アツだ。長物2本目ゲット!!
「違う! あの子わざわざ殺しに行ったよ!! 手慣れてたし!! 大人の勢力みーんな敵にまわっちゃうかもよ!? アルちゃん!?」
「あぁ! もう! 良いクライアントだと思ってたのに! 社長どうすんの!?」
これ……これ小説で読んだヤツができる。右手にStinger 9、左手にAR9のデュアルウィールドだ!!! さすがにちょっと重いけれど、そして10インチも無いSMGでは格好つかないかもだけれど……脇を閉めて二の腕にストックをぴったり付ければ安定はするし、腰だめ撃ちもたくさん練習したから大丈夫。うっ撃てる!! AR9は一応チャージングハンドルを噛んで引っ張って弾を送っておく。
「えぇ!? アルちゃんだけなんて無茶だよ! もう今日は良いって、引き上げよ!?」
「いや……社長、こっちのメンバーは顔が割れてる……むしろ全員残った方が後始末しやすいかも。この人とは『かち合った』だけって演出するとか……」
「じゃあここでやっちゃおうよ!」
ムツキさんが私に銃口を向けている。
私は銃口を2つ向け返して引金を絞る。
便利屋はどうしたんだろう。
「だめ! 待って。2人とも待って。私たちで実際にやり合う必要は無いから」
カヨコさんが間に入った。私はなんかの茶番でもやらされているのかな? 銃持ってて状況がわからなくなっちゃった。
「ムツキ、扉を吹っ飛ばして。パピーは私について来て、3人で部屋を制圧するよ。良い?」
「うい」
ムツキさんは無表情で、動かない。私はカヨコさんを盾にして突入の準備をしておこう。
「……ムツキ」
「まぁ、良いよー」
テルミットの炎が収まった。ムツキさんはドアにC4らしきものを投げて距離を取った。
突入するぞ。
「はいドーン!」
気の抜けた掛け声とともにドアを爆破した。ちゃんとカヨコさんの肩の仇を取れて良かった。
中には結構警備員と職員がいた。敵はざっと15人くらいだろうか? そんなに守りたいものがあったのだろうか? そして塾で夜勤の意味は何?
でも、良い。
いっぱい的があるって良い。
撃つぞ!
走りながら両手で9mm弾をバラまく。初弾は狙い通り職員に当てられた。しかし動作サイクルが違うせいで反動を受け止めづらく、続く弾はあまり当たらない。2発だけ当たった敵は隠れてしまった。
こうなると待つか肉薄するかを選ばねばならない……私は普段は楽に待ちにかかるのだけれど、今は状況とテンションがそれを許さない。急げ、いっぱい当てたい! 撃つぞ!!
デスクを踏み越えて向こう側にいる敵の目の前に出て、撃ちまくる。
不揃いな反動が体をゆさゆさと左右に揺らす。
濃い、濃い硝煙がこの空間を形作る。
良い香りだ。
左手のマズルフラッシュがランタンのように行く先を照らしてくれる。
防弾ガラスが近くで爆散する。広がる輝きが炎を映す。
胸を撃たれているが、所詮9mmなので我慢できる。腹じゃなければ大丈夫。
銃口が次を見据える。煙が次なる喜びを描く。
走って近づいて連射する。今度はいっぱい当てられた。脚を撃たれた。まだコケるもんかよ。
次を狙う。
そいつは窓と反対方向に吹っ飛んでいった。外から銃声がした。
「ちょっとパピー、周り見てよ! 社長が狙撃してくれてるから、敵を追い込んで!」
そうだった、没頭しちゃってた。いけない。私が目標物を破壊しないとだったんだ。仲間を頼ってのんびりやろう。
とりあえずデスクに隠れてリロードしよう…………どうやるんだ?? モタモタしている間に、陸八魔さんの狙撃が上手すぎて敵が凄まじい速さで倒れていく! てきがもったいないよぉ。
とりあえず右手からマガジンリリースボタンを押してマガジンを落とす。で、左手が塞がっているので新マガジンが取れない。うーーーーむ……かっこ悪いけど、左手の銃は左の小脇に抱えてしまおう。よし、右はリロードできた。
左も同様にマガジンを替えて、ボルトが開いていたのでボルトリリースボタンを押したい。リロードしたくなったのはボルトキャッチの時の音がしたからだったのかぁ。しかしボタンが
左右逆に持とう。次から右手に15発、左手に30発だ。まだまだ体験する事は多いなぁ。
銃をしっかり持ち直した時、丁度ムツキさんの弾幕に追い立てられた敵が目の前に躍り出てきた。屈んだまま両手で撃つ。
結構ちゃんと当たった。嬉しい。止まっていたら頭も狙えるな。改めて頭を狙って引金を引き直す。敵はもんどりうって動かなくなった。よしよし上手いぞ!
しかし今度は銃が両方とも弾切れしてしまった……ちゃんと弱点を狙えないし全弾は当てられないから、無駄弾になりやすい……次はまた飛び込んで思い切り近づいてみよう。
両方のマガジンを落として、マガジン装填とボルトリリースは片方ずつやる。これもなんか手間だな~……カッコ良くない。
顔を出して部屋の様子を確認すると、敵はあと3人だけだった。近くの1人をやったら捜索にかかろうかな。
ターゲットにした敵の近くまで姿勢を低くして走っていく。目立つので当然撃たれるが、頭しか遮蔽から出ていないので当たらない。さぁ大胆に行くぞ。
敵の射線を横切る場所で、床を強く蹴って下肢を投げ出す。ドシンと打ったおしりを、さらに摩擦が痛めつける。でもカッコいいから大丈夫。
スライディングして弾丸を頭上に避け、そして私は流れ行く敵の姿を銃口で追う。撃ちまくる。
AR9が吹いた硝煙をStinger 9のソレが散らす。当たっている。
薬莢は私の足に押し退けられ、あるいは私の腿を伝って熱を残す。耳元でカラカラと音がして、楽しい。
敵が狙いを改めてくるが、私はもう次の遮蔽に入っている。
呼吸を2回挟んで、もう一度飛び出す。
全力で敵に向かって走る。
左右交互にバーストして全弾当てることに集中する。
反撃を食らっても大丈夫。
楽しい。
敵が目の前に迫ってきた。
もうお互い狙わなくても当てられる。
AR9のマガジンを捨てて腰の新しい物に挿し換え、左手でボルトリリースを叩く。
顔に当たって鬱陶しそうだ。
敵はグリップを向けて殴りかかってくる。
銃口で弾く。銃身が曲がった。肩に手が届いた。
重心を高く保って顔を銃口で突きまくる。
ガンガン殴っていたら顔パーツがひしゃげて倒れた。でもまだ動いている。
私の全体重を乗せて、変形した銃口で首を突く。
「ぃ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
仕上げにスタンナイフで刺しておく。0距離戦闘も楽しいなぁ。
さぁ、模試探すかぁ……
「何探してるのー?」
「模試」
塾という空間にはありふれすぎていてキリが無い。でもちゃんと原本を消さないと後で私が嫌な目に合うから、ちゃんと地道に確実にタスクをやらねばならない。
2人は見つめ合っている。またハブかな。
「私たち、模試に紛れた契約書がターゲットって聞いてるんだけど。もしかして違う?」
「え、マジ? 契約書?」
トリニティ生も引っかかる、模試風の同意書と聞いているのに。契約書とはノリが違いすぎる気がする。
コレは嫌がらせを食らったな? 便利屋はきっと説明の時にほんのり嘘をつかれたんだなぁ。ゲヘナ生は上に倣えと暴れる事しかしないから、社会活動のルールとか書類の様式とか知らないと踏んだトリニティの誰かが、依頼を達成不能な物にしたんだ。「とにかくあそこに在る(本当は無い)から壊して!」って内容をそれらしく飾り立てて言って、「そんなこともできないのぉ?」と責め立てる準備をしているんだ。便利屋はまんまと頷いてしまったし、素直に指示通り動いてしまっているのだろうな……彼女らは今から嘘を見破るのも、ターゲットをみつけるのも無理そうだ。
つまり便利屋はここにあるの物の全てか、一部のまとまりがその詐欺道具で、ターゲットはそのうちの1枚にすぎないとは知らない事になる。今回はあからさまな契約書がぴらりと1冊だけ出てくるなんて事は無いので、直接的な助けにはなってくれない。私は1人でターゲットを探さねばならない。
あ、これ私に対しても効いてるんだ。
めんどくさい。
「契約書かぁ……わかった……探す……」
「ホントに知らなかったのー?」
「手を動かして……遅くなったら査定に響くよ」
「えーつまんなーい。お話ししようよー」
つまんないよ。
そうだ、つまんないなぁ。持ち場を離れ、割れた窓に体を預けて夜風を浴びる。デュアルウィールドで銃を撃てたのはかなり良かった。グロックの汎用性というか、流用された物を現場でみつけてすぐ使えた感覚が良かった。あれは何度やっても嬉しい出会いだ。拾ったAR9も質感とサイズは良かった。ただ左右の構えを頻繁に替えるCQBをやるなら、やっぱり操作系は
「ちょっとパピー」
カヨコさんは相変わらず澄ましたイケ顔をしている。サボりすぎて怒られちゃうんだろうか。
「はい、これが調べた分ね。学年とかレベル別に違うだけじゃなくて、こっちとこっちで書式が違うから分けておいたよ」
え、カヨコさん? 嘘と隠蔽に塗れた状況でそのムーブメントは何?
「だって誰かの模試を探してたんでしょ?」
バレてる~~~~~~
あぁ、何をマズったんだ。
「どうしたのー? あうあう言っちゃってー。当たってた?」
「イタダキマス」
もういいや。直で言わなければ良いでしょ。便利屋の頭が良かっただけだ。
あぁ取った山の3枚目にあった。ビリビリに破いて飲み込む。
「えー……ヤギ? あなたも角あるの?」
「あるわけないでしょ。帰るよ」
帰る前に、カヨコさんに「おまえと便利屋別勢力説」の工作をさせられた。「契約書」を作って塾の社印を押して、銃撃戦ごっこを手早くやるハメになった。
帰り道は陸八魔さんが確保してくれていた。戦闘中に炸裂弾で非常階段を吹き飛ばしてくれていたと聞いたのでエレベーターを落として追手の道を塞ぎ、隣のビルに隣のビルにと繰り返し飛び移って地上に降りた。体中をぶつけまくったのでボコボコに痛い……
戦闘中にちょいちょい爆発してたのは炸裂弾だったのか。銃身を見るに小銃弾の範疇ではありそうなのに、手榴弾並みの破壊力があった。対物ライフルでもないのにこんな威力が出る物を使えるなんて、便利屋の調達力はかなり高いのかもしれない。
回収地点は便利屋と私で違うとのことで、私は便利屋が正しい運転手に連れられるのを確認してから迎えを待つよう指示された。
「パピー、我が社の働きは完璧だったでしょう?」
それはもう文句がつけられてしまうくらい完璧だった。
「完璧だったよ。依頼を出したヤツは悔しがるだろうね」
サンクトゥスの人にでも報告しておこうかな。パテルやフィリウスは排外的な気持ちやそもそも個人の気持ちに素直なので、ほんのりとでも反ゲヘナ感情を持つ人が多い。でもサンクトゥスなら百合園様と派閥をヨイショしておけばそれで良い。機嫌良く便利屋との関係を続けてくれる。
便利屋68は賢く、強かった。使える時には使えるように、敵対する際には無害化できるように、関係性の糸は繋いでおかないといけない。じゃないと優家様におこられる。
「ウチってば大きな組織だから、ナメてるヤツもいるけれど……偉い人に全力でアピールしておくよ。便利屋68は良い仕事をしてくれるからね。報酬は期待しておいて」
陸八魔さんは口角を上げてくれた。機嫌は損ねていないかもな。
「いや、ウチとしては──」
「ねーねーそれよりさ、モモトーク交換しよ?」
イケボが遮られた。
「いやスマホ無いんだって」
「またそんな嘘ついてさー」
立場上噓をつくしかないのだから仕方が無いでしょう。このムツキという人には何故だか頻繫に気持ちを逆撫でされる。滅多に無い事なのに、どうしてだろうか。もっと楽に生きたいなぁ。
そんな思考の逃避が隙になってしまったのかもしれない。ムツキさんに最後のひと言を投げかけられてしまった。
「あなた、何なの?」
これだ。やっとわかった。これがずっと気に食わなかった。ずっと"コッチ"を見てるんだ。そんなの誰も気にしたことが無いのに急にされたら困るし立場上ムリだし知って何をされるのか対策するのもむりだし一方的に覗いて勝手に望まれたらむりでしょう。
「犬だよ」
エロ設定から全体を構想したんだけど、そういうの知りたい?
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知りたい
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いらない