「一夏って、シャルロットのことニックネームで呼ぶわよね」
「そうだけど」
ある日の夜、部屋に突然尋ねてきた鈴。
「シャルって呼び方使ってるの、アンタだけよね」
「ああ。なんだ、鈴もシャルって呼びたいのか?」
「いや、さすがにそういう空気読めない真似はしないけど」
「?」
「代わりに、あたしにもなんかあだ名つけなさい」
「??」
いまいち要領がつかめない。
「あだ名って……『鈴』は違うのか?」
「そうだけど、その、アンタ専用じゃないし……とにかく新しいのが欲しいのよ」
「けどいきなり言われてもなあ」
「なんでもいいから、ね」
手を合わせてお願いされてしまったので、少し真面目に考えてみる。
「じゃあ、
「えー。なんかチャイナ要素が消えちゃってる気がするから駄目」
「なんでもいいって言ったじゃないか」
というか、
「なら、ひっくり返してインリン」
「別の誰かを思い出すから却下」
「注文多いな……」
面倒くさくなってきた俺の心境を察したのか、鈴は上目遣いでこっちをうかがってくる。
「交換条件として、あたしも一夏のことワンサマーって呼ぶようにするから」
「全然魅力的な案じゃないんだが」
俺の名前を英訳したのか? びっくりするほどかっこよくない……ん?
「いや、待てよ」
「なになに? ワンサマー気に入った?」
「それはないけど、鈴の名前は英訳するとかっこいいかもと思って」
凰鈴音をちょっといじって……
「よし。今日からお前はフェニックス・ベルだ」
「無駄に強そうだけどレディーにつける名前じゃないでしょうが」
「レディー?」
「何か文句がおありで?」
「いえ何も」
額に青筋立ってるので早めに引き下がる。
というか、こんなの呼ぶ方も面倒な上に恥ずかしい。
「他になんかないの?」
「あー……」
思考をめぐらせるも、ちんちく鈴とかしか思いつかない。万一口に出したら殺される。
……そもそも、これ本当に考える必要あるんだろうか。
「というか、やっぱ無理だ」
「え?」
「ずーっと鈴って呼んできたんだ。積み重ねというか、歴史というか……そういうのがあるから、今さら新しいあだ名とかしっくりこない」
鈴が目を丸くする。
「……そ、そっか。それなら、鈴でいいわよ」
「いいのか?」
「うん。幼なじみの特権、危うく手放すとこだった」
目的が果たせなかったのに、なぜか鈴の表情は晴れやかだった。
「なんだよそれ」
「ひーみつ♪」
ネット界隈では「すぶたそ」が一番多いですかね。なんとも絶妙な響きです。