ろくでなしのドナテロ・ヴェルサス・ブランドー   作:クォーターシェル

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第12話 恐竜王ディエゴ

ロンドン塔の屋上にフェルディナンド博士は自らの使役する恐竜に乗って陣取っていた。そして、ロンドンの様子を見る。

 

「私のスケアリー・モンスターズによる“恐竜化の感染”は順調に拡大しているようだな」

「警察が動き出したようだが、無駄だ。恐竜はそのアホ頭を除けば最強の生物、更に私という司令塔が存在することでその弱点は無いに等しくなっている」

 

フェルディナンド博士がこのような凶行に至ったのは理由があった。

 

「王立協会め……。あれからもう7年になるのか、私の学説をことごとく否定した挙句に私が自主的に抜けるように仕向けおって……!」

「貴様らは大地への尊敬を理解できずに滅びた恐竜どもと同じだ!」

「このロンドンを私のスケアリー・モンスターズによって染め上げてやる!」

 

     ◇

 

路地で獣脚類系の恐竜に襲われそうになっていたのは子供連れの母親だった。

 

「止めろ!スカイ・ハイ!」

 

リキエルがロッズを呼び寄せて恐竜に攻撃をさせようとする。しかし、

 

「ガアッ!」

 

グチャッ!

 

なんと恐竜はその動体視力と身体能力を持って接近してきたロッズを叩き落した。

 

「なにいいいぃッ!?超高速で飛行しているロッズを叩き落としやがった!」

 

「だったら、俺が!おい、そこの親子!火傷したくなかったら伏せてろ!」

 

ヴェルサスのアンダー・ワールドが地面を掘る。すると、

 

ゴオオオオオッ!

 

「ギャアアアッ!?」

 

穴から火炎が飛び出した。

 

「ロンドン大火の火炎だぜ」

 

火炎を受けた恐竜はたまらず逃げ出していった。

 

「大丈夫か!?」

 

ウンガロとディエゴが親子に駆け寄る。

 

「はい……、大丈夫です」

 

母親の方はそう答えるが、十歳程の男の子の方は泣いている。

 

「ウエ~ン!」

 

それを見たディエゴは、

 

「おい!泣いてる場合か!?母を助けろとは言わないが、せめて足手まといになるんじゃあないッ!」

 

子供を叱咤する。ヴェルサスは、

 

「おいあんた達、とりあえず狭い建物の中に隠れているか、自動車でもあったらそれに乗ってロンドンを出ろ。見ての通り今この街は危険だぜ!」

 

と母親の方に言う。

 

「は、はい……、ありがとうございました!」

 

親子はお礼を言うとその場から去っていく。

 

親子が去ったあと、ディエゴがヴェルサスを見る。

 

ヴェルサスは特に英雄ぶらない。

 

「……ったく、とんでもないことになっちまったな」

 

(こいつは……)

(さっきから一体、何なんだ?)

 

ディエゴは思う。

 

このヴェルサスという男は当初親の金で遊んでいる男だと思っていたが、危険な状況で冷静に他人を助け、なおかつ自分たちの限界も理解している。

 

(……アンダー・ワールド、か)

(あの男の能力……思っていた以上に厄介だ)

(そしてその能力を使うあの男の精神性自体も……)

 

「さて、俺達もとっとと避難しないとヤバいぜ」

 

「そうだよな……、……ん?」

 

ウンガロはとあるものを目撃する。それは、

 

ドンッ!

 

「ギャッ!?」

 

ロンドン市民を追いかけていたが、看板に激突した恐竜の姿だった。

 

「なあ……」

 

「どうしたウンガロ?」

 

「あの恐竜達……、もしかして動いていないものは見えないんじゃないか?」

 

「なに?」

 

「リキエル兄ちゃんが呼んだロッズを叩き落した程の凄い動体視力だったけど」

「今目の前の看板に激突していた……。あいつら高速で動くものは目で追えるけど、逆に動かないものは視認できないんじゃないか?」

 

「……どう思うディエゴ?」

 

「……俺は恐竜についてさほど詳しくないが、恐竜は大昔に絶滅した生物だ」

「その生態について分かっていないことも多い……」

「あり得るかもな……」

 

その時だ、先ほど追い払った恐竜が仲間を連れて戻って来た。

 

「!!」

 

ヴェルサス達は目くばせしてその場から動かない。すると、

 

「ガアアッ……」

 

「ギャッ、ギャッ……」

 

恐竜達はその場を素通りしていった。四人が恐竜達が離れていったのを確認すると、

 

「はあ……!はあ……!」

 

「危なかった……!」

 

「どうやら連中、動かないものが見えないってのは本当みたいだな……」

 

「で、これからどうする?」

 

「自動車の所まで行ってロンドンから脱出しよう……」

 

「パパにはなんて言うんだ?」

 

「パパは吸血鬼だぞ?もしこの惨状に巻き込まれたとして、恐竜になるかは疑問だな……」

 

ディエゴは思う。

(ディオ・ブランドー……、こいつらの父……)

(今まで数える程しか会っていないが、こいつらにこう言われるとは何者なんだ?)

 

「とりあえずだ!『グランドマザーズ・フットステップス(英語でだるまさんが転んだの意味)』作戦でどうにか恐竜をやり過ごしながら行くぞッ!」

 

「ヴェルサス……、なんだその作戦名は……?」

 

     ◇

 

ヴェルサス達は恐竜が蔓延るロンドン市内を『グランドマザーズ・フットステップス』作戦で進んでいく。

 

そんな中、

 

グニュ

 

「ん?」

 

ヴェルサスは何かを踏んづける。それは、

 

「死体か……」

 

恐竜の攻撃によって死亡したのであろう、中年の男の死体だった。

 

「ピンク色に緑の斑点の髪? 何処かで聞いたような……」

 

ヴェルサスはその男の死体になにか引っかかるものを覚えたが……、

 

ズズズ……

 

「ん!?」

 

バキバキバキバキ!!

 

「なにっ!?」

 

「ギャアアアアアアッ!!」

 

死体は恐竜に変身した。

 

「うおおおおッ!? 死体まで恐竜になるのかよ!!」

 

「動きを止めろ!」

 

四人はその場から動かない。だが、

 

「グルル……?」

 

死体が変化した恐竜はヴェルサス達が見えなくなった事に疑問を抱いているようだ。

 

そして、

 

ジョロロロロロ……

 

(!?)

 

(汚ねえッ!?)

 

見えていない筈だが死体が変化した恐竜はヴェルサス達に小便をかける。

 

そして、

 

「ギャッ!」

 

何処かに行ってしまった。

 

「……うえ~、折角の一張羅が……!」

 

「まさか死体まで恐竜に出来るとはな。もしかするとネズミ等の他の生き物も恐竜に出来るかもしれん」

 

「だが、車を駐車した所まで後少しだ!早く行こうぜッ!」

 

リキエルのその言葉に他の三人も頷き、先を急ごうとするが……、

 

ダダダダダダダダダダダダッ!

 

先程の死体が変化した恐竜が仲間を引き連れて戻って来た。

 

「またこのパターンかよ……」

 

「ああ、身じろぎ一つ起こすなよ……」

 

ヴェルサス達は再び動きを止めて恐竜の集団をやり過ごそうとする。しかし、

 

クンクン……クンクン……

 

「?」

 

恐竜達が何かを嗅ぐ仕草を見せた。

 

「ま……、まさか……!」

 

そして真っ直ぐヴェルサス達の所へ向かってくる!

 

「さっき俺達にかけた小便ッ!俺達の位置を臭いで特定する為のッ!」

 

「ギャアアアスッ!」

 

「アンダー・ワールドォッ!」

 

咄嗟にヴェルサスはアンダー・ワールドで地面の記録を掘り起こす。

 

すると掘った穴から煙突が伸びる。そして、

 

モクモクモク……!

 

煙突の穴から大量の黒い煙が吐き出された。

 

「ギャッ!?」

 

「……酷い臭いだな。産業革命全盛期のロンドンスモッグ……!」

「これによって大量の死者が出たって話だが、今回は俺達の命を救ったな!」

「今の内に逃げるぞ!」

 

四人は黒煙を吸い込んでむせている恐竜達を背に走り出す。

 

そうして四人は車を停めてある場所へ来た。

 

「動きを止めるのも安全じゃなくなった!」

「不味いぜ兄貴!」

 

「でも車は目の前だよッ!」

 

「ああ!とっととこのロンドンから脱出するぞ!」

 

「正直言ってお前達を俺の車に乗せるのは複雑だが、この非常事態だ」

 

ディエゴは車のドアを開ける。しかし――

 

「キシャアアアアッ!」

 

車から小型の恐竜達が飛び出してきて、ヴェルサス達を襲う。

 

「なにいいいぃッ!?」

 

「アンダー・ワールド!」

 

アンダー・ワールドは小型の恐竜を殴り殺す。すると、

 

「ギャッ……、チュウ……」

 

致命傷を負った小型の恐竜はネズミになった。いや、ネズミに戻ったの方が正しいか。

 

「まさか……、本当にネズミまで変身させられているとは……!」

 

ヴェルサスは三人に確認する。

 

「おい!怪我は無いか!?」

 

「兄貴……、やられちまった……!」

「ほんのかすり傷だがやべえ!俺の体内が徐々にだが変わり始めているのが分かる……!」

 

「俺もだ兄ちゃん……、そのネズミ恐竜に引っかかれた……」

 

「くそっ!早くこの場を離れてこのスタンドの射程距離内から抜け出さねえと……!」

「おい、ディエゴ!お前は大丈夫か!?」

 

「う、うう……!」

 

ディエゴの腕にも傷が出来ていた。そして、ディエゴの肌が傷のある個所からひび割れていく……

 

「何っ!?」

 

「は、早くこの場から逃げろヴェルサス……!身体が熱い……!」

 

ディエゴの体はどんどん変異していく。

 

(なんだ……!?弟達の恐竜化はそんなに進行してないのに何でディエゴはこんなに早いんだ!?)

(スタンド使いにはある程度の耐性はあるが、スタンド使い以外は直ぐに恐竜になっちまうのか!?)

 

「が、ガアアアア……!」

 

ディエゴは半分恐竜で半分人間の所謂恐竜人間といった姿になっていく。

 

「デ、ディエゴが……」

 

「恐竜に……!」

 

「グルル……!」

 

恐竜に変化したディエゴは、ブランドー兄弟に飛び掛かる為の姿勢を取る。

 

その時だ。

 

「ディエゴ!!」

 

ヴェルサスはディエゴに呼びかける。

 

「兄ちゃんなにを!?」

 

「お前、ジョッキーになったって事は勿論才能もあったんだろうけどよ……」

「負けず嫌いなんだろ!?」

「ウンガロが推測してる通りなら、生まれた時から金持ちの俺達なんて大嫌いな筈だ!」

「だがよ……!」

「今のお前はどうなんだ!?」

 

「ガ……!?」

 

「今のお前は思いっきり何かに負けてる!」

「お前そのまま『支配』されたままでいいのか!?」

 

「ガ……、ガグ……!?」

 

恐竜化したディエゴは頭を押さえるような動作をする。

 

そして、

 

「……誰が……」

「誰が……俺を支配すると言った……ッ!」

 

ディエゴの姿が恐竜から人間へと戻っていく。更に、

 

「俺は……、俺はディエゴ・ブランドー……!」

「……世界の騎手の頂点に立ち、いずれは政界にも殴り込む男だあッ!」

 

ディエゴはヴェルサス達に飛び掛かり、

 

「ギャッ……!」

 

「ゲッ……!」

 

ヴェルサス達を背後から襲おうとしていた恐竜二頭を倒した。

 

「ディエゴ!お前正気を取り戻したのか!」

 

「ああ……、そうなるな……!」

「それとヴェルサス……」

「お前の側に立っているもの(アンダー・ワールド)が見えるぞ」

「それがスタンドだな」

 

「……!お前、スタンド使いになったのか!?」

 

「ああ、どうやら今このロンドンを襲っているスタンドと同じタイプにな……」

「お陰でこのロンドンに居るもう一人、恐竜を操る黒幕の存在を感じ取れるぞ……!」

 

その頃、ロンドン塔。

 

「……!?」

 

フェルディナンド博士もディエゴの存在を感じ取っていた。

 

「どういうことだ……?」

「何かを感じる……!今このロンドンに放っている恐竜共に近いようで何かが違うものを感じ取れる……!」

「何が起きたというのだ……!?」

 

場面は戻ってヴェルサス達。

 

「おいヴェルサス。言っておくが」

「勘違いするなよ」

「俺はお前に助けられたわけじゃない」

「俺自身が、自分を取り戻しただけだ」

 

ヴェルサスは、

 

「はいはい、そういうことにしといてやるよ」

 

と流した。

 

「それで、これからどうするんだ?」

 

「なんか知らんがディエゴのおかげでこのスタンドの本体の位置が分かってるんだろ?」

「ならば直接本体の元に出向いてぶちのめすって選択肢が出来たぜ」

「ディエゴは?」

 

「同じ力を持っている奴がこの世に居るのが気に食わん」

「何処のどいつだかは知らないが、退場してもらう!」

 

「そうか。で?本体は何処に居るんだ?」

 

「おそらくロンドン塔の辺りだ」

 

ヴェルサスは車に乗り込む。

 

「じゃあ決まりだ!この恐竜パニックを起こしている本体をぶっ潰すッ!」

 

     ◇

 

ロンドン塔。

 

「……!」

「近づいてきているッ!」

「何者か知らないが、何もしないのはまずい!」

 

フェルディナンド博士は周辺の恐竜達を自身を守らせる為に呼び寄せる。

 

だが、

 

「……?」

「なんだ?恐竜共が同士討ちしている!?」

 

フェルディナンド博士はロンドンに放っている恐竜達の異変に気付く。

 

「馬鹿な!我がスケアリー・モンスターズのコントロールは乱れていない!」

「こんな事が起こる筈は……!」

 

そこでフェルディナンド博士はハッ!と気づく。

 

「まさか……、今感じ取っている存在の仕業なのか!?」

「おのれ!何処の誰かは分からないが、生かしては置けない!」

「我がコントロール下の恐竜共よ!私を守りにロンドン塔に集結せよ!」

 

そんな中、一台の車がロンドン塔に向かってくる。ヴェルサス達だ。

 

「恐竜達が争い始めている……」

「目覚めたばっかりなのに中々スタンドをコントロール出来ているみたいじゃないか」

 

「このディエゴ・ブランドーはスタンドにおいても天才ということだ」

 

「自分で言うかよそれ」

 

「事実だからな」

「手筈は話し合った通りだ!先ずはこのまま本体に接近する!」

 

そして、車はロンドン塔に到着した。

 

「できるだけ早く片付けてくれよ兄ちゃん……。このままだと俺達恐竜になっちまう」

 

「ああ。リキエル。お前は援護を頼む」

 

「了解だ……。依然、恐竜化は進行中だがスタンドは問題なく使えるぜ」

 

ヴェルサスとディエゴは車から降りる。ロンドン塔正面入口にフェルディナンド博士は待ち構えていた。

 

「お前達は……。確かディエゴ・ブランドーに、それとドナテロ・ヴェルサス・ブランドー……」

 

「もしかしてと思ったが、本体はあんただったかフェルディナンド博士」

 

「ヴェルサス、奴と知り合いか?」

 

「ああ、今日ロンドン自然史博物館でちょっとだけ会話をした」

 

「それだけか?」

「偶然にしては出来過ぎてないか?」

 

「スタンド使い同士はどういう理由か正体を知らずとも知らず知らずのうちに引き合うって話を聞いたことがある」

「もしかしてそういうケースなのかもな」

 

「どちらだ?」

 

「ん?」

 

「我がスケアリー・モンスターズと同じタイプの能力を持っているのはどちらだと聞いている!」

 

「それは俺だ」

 

ディエゴが前に出た。

 

「フェルディナンドといったか……、このディエゴを支配しようとした罪は重い」

「“有罪”だ。お前には消えてもらう……!」

 

「それはこちらのセリフだ!大地への尊敬を知らなそうな貴様がよりにもよって私のスケアリー・モンスターズと同じ能力を持つなど認められないッ!」

 

フェルディナンド博士は控えさせていた恐竜達を前にだす。

 

ディエゴも自らのスタンドで恐竜化する。

 

「何!?スケアリー・モンスターズは自分自身を恐竜化できない筈ッ!?」

 

驚いたフェルディナンド博士はおもわずスケアリー・モンスターズの欠点を言ってしまう。

 

「いくぞ……!」

 

ディエゴが動き出す。

 

「数の上でこちらが圧倒的に有利だ!」

 

フェルディナンド博士は自分のコントロール下にある恐竜達を動かす。

 

大量の恐竜がディエゴに襲いかかっていく。

 

しかし、ディエゴは正面から戦わず、一頭をかわして別の恐竜の進路に入れる。

 

すると、

 

ドゴォッ!

 

恐竜同士が衝突。

 

そこへディエゴが飛び込んで一頭の背中に乗り、首を噛む。

 

その恐竜が暴れて別の恐竜を巻き込む。

 

「な、何をしているッ!?」

 

「貴様は恐竜を『軍隊』として考えすぎなんだよ」

「恐竜は兵士じゃあない」

「自分の本能で動く生物だ」

(それにその物量を相手にまともに戦うかと思ったか?マヌケが!)

 

その後も恐竜達はディエゴに襲い掛かろうとするが、逆にディエゴに翻弄されて統率を失っていく。

 

「おのれぇ……!」

 

その様子を見ながらフェルディナンド博士は歯ぎしりをする。

 

そんな中、一頭の恐竜がそろりとフェルディナンド博士の後方に近づいていく。そして、

 

ボゴォッ!

 

「!?ぐはっ……!」

 

その恐竜の側からアンダー・ワールドが出現し、フェルディナンド博士に打撃を食らわせた。そしてその恐竜の姿が幻の様に薄まっていくと、その中からヴェルサスが姿を現した。

 

「がら空きだな」

 

「きっ、貴様……!どういうことだ!?」

 

「アンダー・ワールドで掘り起こしたお前の操る恐竜の内一頭の記録を、俺自身に重ね合わせて被せた……!」

「注意がディエゴに行ってたから楽だったぜ」

 

「な……なにぃ~!?」

「き、恐竜共よっ!?」

 

フェルディナンド博士は恐竜達に助けを求める。しかし、

 

「無駄ァッ!」

 

「スカイ・ハイッ……!」

 

ディエゴやリキエルの呼び寄せた大量のロッズによって恐竜達はかく乱されていた。

 

「ぐぐっ……!」

 

「チェックメイトかな?とっとと能力を解除したら命だけは助けてやるぜ」

 

「くっ!残念……」

「……だったな」

 

「なに?」

 

フェルディナンド博士の後方から援軍の恐竜達が来ていた。

 

「このロンドンのどれだけの生物が恐竜になったと思っている?」

 

「私の勝ちだ!圧倒的物量にはかなわないのだッ!」

 

ヴェルサスに援軍の恐竜達が襲い掛かろうとする……

 

「あっ、兄貴ッ!?」

 

「それはどうかなぁ?」

 

ヴェルサスはあるものを取り出す。それを見たフェルディナンド博士は目を見開く。

 

「なっ!?それは……!」

 

「俺のアンダー・ワールドが掘り起こした、第二次世界大戦時にドイツ空軍が落とした不発弾だ」

 

「まさか起爆させる気か!?お前ごと吹き飛ぶぞッ!?」

 

「多分そうだな。ほいっと……」

 

ヴェルサスはフェルディナンド博士に不発弾を投げつける。

 

「正気か貴様ぁあああッ!?」

 

ドッグォオオオンッ!

 

不発弾が起爆し爆発した。

 

「あっ、兄貴いぃーッ!?」

 

「兄ちゃん!?」

 

「……」

 

だが、爆心地にいたヴェルサスは頑丈な壁に囲まれていた。

 

「今掘り起こしたのは、冷戦時代にロンドンの金持ちが作らせたシェルターだぜ!」

「核爆発ならともかく、古いタイプの爆弾の爆発を防ぐには十分だったみたいだなあ~!」

「まあ、死んでたらそれまでだったけどな」

 

「あ、兄貴……!無茶やりやがって!」

 

「兄ちゃんが吹っ飛んだかと思ったぜ……」

 

「ふん……!」

 

すると、ディエゴの相手をしていた恐竜達の変身が解け、もとの人間等に戻っていく。

 

「本体が死んだしスタンドが解除されたか……」

 

ヴェルサスの言葉にディエゴは

 

「いやまて」

「フェルディナンドの奴はまだ生きているぞ」

「俺はまだ奴の存在を感じる……!」

 

そう否定した。

 

「はあ……!はあ……!」

 

フェルディナンド博士はなけなしのスタンドパワーで生き残った恐竜に引きずられながら夜のロンドンを敗走していく。

 

彼は爆発が起こった際に恐竜達を盾にして生き残ったのだ。しかし、少なくないダメージを負っていた。

 

「こんな……、こんな馬鹿なはずは……」

 

フェルディナンド博士は自分が敗北した事を受け入れられなかった。

 

「ほんの30分前まではロンドンは私の支配下にあったのだ……!」

「それをあんな大地を敬わない若造どもに崩されただと……!?」

 

そんな中、ヴェルサス達の乗った車が後方から追ってきた。

 

「見つけた!どうする!?奴さん大分弱っているみたいだぜ?」

 

「勿論潰す。容赦はしない」

 

「……ッ!」

 

フェルディナンド博士を引きずる恐竜は近くに居たカラスを傷つけ、翼竜に変える。そして翼竜達はヴェルサス達の元へ突っ込んでいく。

 

「キシャアアッ!」

 

「翼竜か……、だが!」

 

「!?」

 

ヴェルサス達に接近した翼竜は鳥かごの中に閉じ込められる。アンダー・ワールドが掘り起こした物だ。

 

「来るな!」

 

フェルディナンド博士は今度は進路上の猫を恐竜に変えてヴェルサス達に差し向けるが、

 

「良い子だ……!」

 

「ギャ!?」

 

恐竜化した猫はディエゴにあっさり捕らえられる。

 

「おのれ……、おのれえ……!」

 

フェルディナンド博士は何とかこの追跡を振り切る気でいた。しかし、彼の命運は数秒後尽きることになる。

 

ザシュ!

 

「なに!?」

 

いきなりフェルディナンド博士を引きずっていた恐竜に複数のナイフが突き刺さり、フェルディナンド博士は道路に投げ出される。

 

「ぐわぁッ!?」

 

「……随分と騒がしい夜だな」

 

そして、フェルディナンド博士の前に現れたのは。

 

「あれは……、パパ?」

 

「な……誰だ貴様は!?」

 

「ふむ。イギリスに居てこのディオ・ブランドーを知らないのか?」

 

その内にヴェルサス達の車が追い付く。

 

「ディオ・ブランドー……」

 

「やっと来たのかよ、パパ」

 

「遅くなったな」

 

「何してたんだ?」

 

「私にも色々ある」

 

「……まあ、深くは聞かないぜ」

 

親子の会話をよそにフェルディナンド博士は、

 

「私は……この大地を……!」

 

とまだ抵抗しようとする。

 

「くだらん」

 

ズブッ。

 

ディオの腕がフェルディナンド博士の体に突き刺さる。そして、

 

「ああ……」

 

ズキュンッ!ズキュンッ!

 

ディオが血を吸ったことにより、フェルディナンド博士の体は瞬く間にミイラの様に干からびた。

 

「本来なら屍生人(ゾンビ)にすることも出来るが……」

「この男には、その価値はなさそうだ」

 

ディオはフェルディナンド博士の亡骸を放り捨てる。そして、

 

「ヴァニラ・アイス」

 

「はっ!」

 

「搾りかすの後始末をしろ」

 

「お任せください……」

 

ディオの側に控えていたヴァニラ・アイスはクリームを発動する。

 

ズズズズズ……、ガオンッ!

 

フェルディナンド博士の亡骸はヴァニラのスタンド、クリームの口に存在する暗黒空間にばら撒かれて消滅した。

 

その様子を見ていたディエゴは

 

(……これが、あの男の父親……いや)

(こいつこそが、ブランドー家の頂点にいる男か)

 

内心戦慄を感じるのだった。

 

そしてディオはディエゴを一瞥して、

 

「……君がディエゴか」

 

と言った。

 

「……そうだ」

 

「なるほど。確かに聞いていた通りだ」

 

(この男は俺を警戒していないのか?それとも、警戒する必要すらないと思っているのか?)

 

ディエゴはディオの真意を図りかねていた。

 

そんな中、ヴェルサスは

 

「パパ、ディエゴとの会食は結局どうするよ?」

 

と言う。

 

「流石に日を改めることになるだろう。このディオの息子が世話になったようだなディエゴ・ブランドー」

 

「ああ……、まあ、そうかもな……」

 

ディエゴは疲れた様な表情でそう言う。

 

かくして、フェルディナンド博士が起こしたテロは表向きは集団幻覚&ヒステリーとして処理され、事件の裏を知る者達は首謀者の行方を追ったがそれは無駄になるのだった。

 

     ◇

 

事件から数日後、イギリス某所の霊園。

 

ディエゴは母親の墓参りに来ていた。墓に花を添えるディエゴ。

 

「母さん……。俺は新たなる力を手に入れた」

「この力も利用して俺は必ず世界一のジョッキーになって、いずれは政界にも進出するからな」

 

そんな時である。

 

「ここがディエゴの母さんの墓か」

 

「お前……!何故ここに……!」

 

ディエゴの他に霊園にやって来ていたのはヴェルサスだった。

 

「なに。そういえば礼を言い忘れた事に気づいてな」

「マネージャーさんに聞いたら多分ここに居るって」

「先日はお前がいなかったらヤバかったぜ」

「表ざたには出来ないだろうが、ロンドンを救ったヒーローって事になるのか?」

 

「ふん……」

「そんな世辞はいい」

 

ヴェルサスは手に持っていた花束をディエゴが添えた花の横に置く。

 

ディエゴはしばらく黙っていると、

 

「……ヴェルサス」

 

「ん?」

 

「次に会う時は、俺のことを“パパの親戚”としてではなく、ディエゴ・ブランドーとして見てくれ」

 

そう呟くディエゴにヴェルサスは、

 

「最初からそう見てるけど?」

 

と返す。

 

「……なに?」

 

「あんたは俺にとってディエゴ・ブランドーだ」

「そうだろ?」

 

「……」

(母さん……、俺に奇妙な関係の知人が出来た)

To Be Continued...

 




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