ろくでなしのドナテロ・ヴェルサス・ブランドー 作:クォーターシェル
ある日のブランドー邸。
「ふんふんふ~ん♪」
「ルンルンルンッ♪」
ヴェルサスの様子を見ていたウンガロは、
「さっきから兄ちゃんは何であんなに不気味な程上機嫌なんだ……?」
「まさか、ヤバい薬でも打ったんじゃ……」
と呟く。その隣にいたリキエルは、
「いや、今度このウインドナイツ・ロットにソフィアさんが遊びに来るらしい」
「だから兄貴はあんなに上機嫌なんだよ」
と言う。
(ああ!今週末が楽しみでならねえぜ~!)
(まるでイースターとハロウィンとクリスマスが一度に来るような気分だ!)
◇
そして週末、ウインドナイツ・ロットとロンドンを結ぶ駅でヴェルサスはソフィアが列車から降りてくるのを待っていた。
「まだかなぁ……?もうそろそろこの駅に着く列車に乗ってくるはずだが……」
そして、ヴェルサスが待っていた列車がホームに到着し、乗客達が下りてくる。
程なくしてヴェルサスはその人込みにソフィアの姿を見つけた。
「ソフィア!」
「……?」
(なんだ?ソフィアの顔なんかやつれてないか?)
そのうちにソフィアの方もヴェルサスに気づく。
「こんにちは……、ヴェルサス」
取り敢えず二人は駅前のカフェで話すことにした。
「我が故郷ウインドナイツ・ロットにようこそ!」
「しかし……、ソフィア、お前なんか疲れてないか?」
「そうね……、なんと話したらいいのか……」
「それにさっきからお前の後ろにいる女性は誰だ?」
「お前の姉ちゃんか?」
ヴェルサスの目にはソフィアの後ろに立つ、喪服を着て透き通るような白い肌に燃えるような赤い目の美女が見えていた。
「えっ?」
「ヴェルサス……!貴方……、“こいつ”が見えるの?」
「え?」
「……どういうことだ?」
ソフィアの後ろに居る女性は、
「貴方……、平時でも私が見えるタイプの人間?」
「後、私は姉ちゃんじゃないわ」
と言った。
「姉ちゃんじゃない……、じゃあ誰なんだよあんたは?」
「バンシー」
「え?」
ヴェルサスが聞き返すそぶりをする。
「バンシーよ」
「ああ、……泣き女だっけ?」
「その呼び方はあまり好きではないわ」
「ところで……」
「なんだ?」
「貴方、私のおっぱい吸う?」
ヴェルサスがまるでディオのザ・ワールドを喰らったかのように凍り付いた。
「…………は?」
「バンシーの乳を吸うと力を得られるという伝承があります」
「いや、いらねえよ!俺が真っ昼間の往来でそんな変態プレイするように見えるのかよ!?」
「そうですか」
ヴェルサスはソフィアに向き直る。
「ソフィア!何なんだよこの変態女は!?」
「もしかしてやつれてるのはこいつのせいか!?」
「彼女の言ってること……、多分本当よ……!」
「数日前、私が自宅に居る時に突然現れた……」
ソフィアは語りだす。
「何処にでもついてくるし、貴方以外の人に彼女は見えてないみたい……」
「しかも偶に泣き声を出して夜もよく眠れないのよ……」
「それに、それに……、私が、近いうちに死ぬって……!」
「はあ?」
「そうよ、私はバンシー」
「私は今までも人の“死”を見届けて来たの……」
「私が現れたということは」
「ソフィア・ミラー。貴女は近いうちに死ぬ運命にある……!」
ドドドドドドドドド……
「……ソフィアが死ぬだとぉ~?」
「嘘をつくんじゃねぇーッ!」
ヴェルサスはアンダー・ワールドを出してバンシーに殴りかかる。しかし、
スカッ!
「!?」
アンダー・ワールドの拳はバンシーをすり抜けてしまった。
「言っておくけど、偶に私を退治しようとする人が居たけど皆こんな風にすり抜けたわ」
「後、私は別にソフィアを殺しに来たとかじゃない」
「バンシーに死を運んだり他者を害する力はない」
「ただ死を見届ける……。それが私の役割なのよ」
「なんだと~!?」
「落ちついてヴェルサス!」
「落ち着いていられるかソフィア!お前だって死を宣告されて何とも思わないのか!?」
ソフィアはヴェルサスをなだめようとする。
「待ちなさいよ。確かにこのバンシーが現れたけど」
「私が死ぬなんて信じてないわ」
「それならいいんだけどよ……」
「偶然だと思うけど」
「足を滑らせて川に落ちたり」
「頭の上に植木鉢が落ちてきたり」
「私の職場が火事になったくらいよ」
「……やっぱヤバいんじゃないのか?今の状況……」
その時である。
「~~~~~~~~~~ッ!!」
バンシーが突如この世の物とは思えない叫び声を発した。
「なんだ!?」
「これよ!偶にこんな風に叫びだすのよ!」
「なに!?バンシーが泣き叫ぶ、……まさか!」
ヴェルサスは何かに気づく。
「ソフィア!そこから離れろッ!」
「えっ?」
ヴェルサスはソフィアの足元の辺りを思い切り踏みつける。すると、
カサッ……
「あっ!」
ソフィアの足元でヴェルサスに踏みつぶされていたのはサソリだった。
「サソリ!?何でこんな所に……」
すると、
「すみません~!」
「うちのペットショップから逃げ出したサソリを探してるんですけど!」
「知りません?」
ペットショップの店員の男がその場に走って来た。
「危なかった……」
「バンシー、どうやらお前の叫び声は一種の“警報”みたいなものだな!」
「だがどーだ!ソフィアの危機を阻止してやったぜ!」
そう言われたバンシーは、
「そう……」
と、まるでヴェルサス達を養豚場のブタでもみるかのように冷たい眼差しを向ける。そう、かわいそうだけど明日には殺されて食卓に並ぶことになるのね……。とでも言いたげな目で。
「なんだその反応は!」
「言っておくけど、貴方が危機を阻止したからと言ってソフィアの死の運命が変わるわけではないわ」
「そんなの分からねえだろうがッ!」
「まあまあ、ヴェルサス……」
「兎に角だ!ソフィア!今日は俺がお前のボディーガードになるぜッ!」
「えっ!?」
ヴェルサスはバンシーを指さす。
「このバンシーの言ってることが噓っぱちだって分からせるんだよ!」
「嘘ではないわ……。何時からか私も忘れてしまったけど、もう数え切れないくらい繰り返してきた……」
「まあ、今日は最初からヴェルサスに案内してもらう予定だったからいいけど……」
「よし決まりだ!」
ウインドナイツ・ロットのとある料理店……、
ヴェルサス達はそこでランチにしようとしていた。
「今日は俺のおごりだ!」
「ありがとうヴェルサス!」
「後……、癪だがお前も何か頼むか……?」
ヴェルサスは嫌そうな顔をしながらバンシーに言う。
「私の分もあるの?」
「美味いものでも食べてそっちの気が変わってくれればなって思ってな」
「私の気が変わったとしても、それはなんの意味もないわ……」
「じゃあ、コーヒー……。それだけでいいわ」
「頼むのかよ」
テーブルに料理が運ばれてくる。
「新鮮なキノコパスタをどうぞ!」
「いただきます!」
ソフィアがパスタを食べようとする。すると、
「~~~~~~~~~~ッ!!」
「……!また叫び声!?」
「ソフィア!そのパスタを食うな!」
「えっ?」
ヴェルサスはパスタの匂いを嗅ぐ。
「……」
「毒キノコが入ってやがる……!」
「なんですって!?」
ヴェルサスはソフィアが食べようとしていたキノコを窓の外に捨てる。すると、
「カァー」
外に居たカラスがキノコをキャッチしてそのまま食べてしまった。だが、
「カッ……!?」
カラスは痙攣しだし地面に落ちていった。
「油断も隙もありゃしねえ……!この店はダメだ!」
店を出た後、ヴェルサスはソフィアにこう言う。
「ソフィア、悪いが今日は缶か瓶詰の食物や飲料水以外はヤバいから口にしないでくれ」
「なにかが混入する余地のあるものは危険だ!」
「え、ええ……」
◇
ソフィア・ミラーはノリッジに住む21歳の女性だ。別に先祖代々ノリッジに住んでいたとかではない。母方の家系はスコットランドの方から移住してきてなんでも古代のドルイドの末裔だと曾祖母は言っていたが定かではない。
まあどちらかと言えば平凡な人生を歩んでいたが、ソフィアは充実していた。最近はドナテロ・ヴェルサス・ブランドーという奇異な友人が出来た。なにせウェンサム川の畔で声を掛けてきたヴェルサスは、最初は妙な話し方でナンパをしようとしていた。しかし、ソフィアは直ぐにヴェルサスを悪い奴ではない事を見抜いた。
その後もヴェルサスとはどうもフェイクでは無さそうなネッシーの写真をプレゼントされたり、エクスカリバーみたいな剣を探しに一緒にバーミンガムに行ったりした。ソフィア自身はヴェルサスを嫌っていなかった。まだ家族等には紹介はしていないが。
そんな中、数日前にソフィアの前にバンシーを名乗る女が現れた。最初は悪戯か何かと思ったが、家族や友人、職場の人間はついてくるバンシーの事が見えなかった。平静を保とうとしているソフィアだったが、バンシー告げる自分が死ぬという運命の事は気になってしまう。
(なんで私なの?)
(そりゃあ、人は何時か死ぬものだし、それは頭では分かっているけど)
(私はまだ21歳よ?そんなに早くなんて受け入れられないわ)
(ねえ、ヴェルサス。貴方にはバンシーが見える)
(貴方は本当にバンシーの言う運命を変えてくれるの?)
「悪いなソフィア。折角ウインドナイツ・ロットに来てくれたっていうのに」
「こんなものしか奢れなくて」
ヴェルサスは自販機の飲み物をソフィアに渡していた。
「ええ、大丈夫よ……」
「ありがとう」
「私にも缶コーヒーくれるのね……」
「ああ、さっきコーヒー頼んでただろ?」
「結局さっきは店を直ぐに出てきちまったからな」
「なぜ私に律儀にコーヒーをくれるの?」
バンシーは問う。
「気まぐれってやつだよ」
「それにしてもバンシー。あんたの言う死は避けられると思うぜ」
「なにせあんたの叫び声が警報代わりになるからな」
「……それで死を避けられたら誰も苦労はしてないわ」
「いい?私の覚えている限り、私が見え始めた人間は殆ど数日の内に死んでいるわ……」
「最長でも数ヶ月が限界だった……」
「数ヶ月は持ったの……?」
「ええ、先ほどのあなた達みたいに私の叫びを警報として利用してね……」
「それでも心身ともに疲弊していき、最後にはとち狂って自ら命を絶ったわ」
「……」
「ヴェルサス……」
ソフィアが不安そうな視線を送る。
「今までがそうだったつっても!」
「これからがそうだとは限らないだろ!」
「じゃあ、聞くけど」
「現在人類は死を克服しているのかしら?」
「ッ!」
ヴェルサスは父であるディオの事を想起する。ディオも不老不死を豪語しているが、それには人間の生命エネルギーが多く必要でしかも日光に晒されれば終わる命なのだ。
それにヴェルサスは様々なスタンドと遭遇したりディオからスタンドの話を聞かされたが、死を克服するスタンドや死者を蘇らせるスタンド等聞いたことが無かった。
「人類に不老不死の究極生命体(アルティミット・シイング)にでもなれって言うのかよ……!」
「そうは言っていないわ」
「あなた達は死を受け入れ無さすぎる」
「死に恐怖するなと言わないけど」
「生命は終わるという摂理は変わらないわ」
「……!」
ヴェルサスは拳を握りしめる。
「ヴェルサス……」
「それでも、それでも俺はソフィアを守るぜ……!」
その時である。
「~~~~~~~~~~ッ!!」
またしてもバンシーが叫び声を上げる。すると、
ヴェルサス達が居る側の工事現場の看板や鉄骨と言った建材がソフィアに向かって落下してきた。
「!?」
思わずその場から動けず目をつぶるソフィア。
「アンダー・ワールドォ!」
ヴェルサスはアンダー・ワールドで地面を掘り起こす。地面から出て来たのは、
ブンッ!
身長2メートルを優に超える巨漢の騎士。騎士は大剣を振るい、ソフィアの頭上に落ちる建材を両断した。
「黒騎士ブラフォードの盟友……、共に「77の輝輪(リング)」という試練を成し遂げた騎士タルカス!」
「岩をバターのように斬ることができたっていうのは嘘じゃなかったようだ……!」
ガッシャーンッ!
ソフィアの周囲に落ちる建材。
「……?」
ソフィアは何が起こったか理解してないようだ。
「……」
タルカスは無言でソフィアの方をチラリと見ると、そのまま消滅する。
「……どうしてそこまでして、この娘を死なせたくないの?」
バンシーはそう呟いた。
「……当たり前だろうが! 俺はソフィアに死んでほしくねえんだよ!」
「……ヴェルサス」
◇
ヴェルサス達は自然公園に来ていた。天気はソフィアの不安を表すかのように曇っている。
「取り敢えず開けた場所なら危機が迫っても気づきやすい筈だ」
「ヴェルサス……」
「ソフィア、心配するな。説明は省くが俺には不思議な力がある」
「それを持ってすれば……」
「ヴェルサス、今までは何とかなってきたけどこのままヴェルサスも巻き込まれたりしたら……」
「だから心配すんなって!」
「この状況を何とかする方法は必ずある筈だ!」
「俺はそれを絶対に見つけてみせる!」
それを聞いていたバンシーが呟く。
「……よくもそこまでポジティブにいれるものね」
「人間ポジティブなくらいがちょうどいいと思うぜ」
「危機管理はしっかりするとしてよぉー!」
そんな中、公園でサッカーをしていた少年達が蹴っていたボールがヴェルサス達の所に転がっていた。
「おーい!」
「ボールを蹴ってよー!」
「やれやれ……、こっちが大変だってのにいい気なもんだぜ」
そう言ってヴェルサスは転がってきたボールを蹴り返す。
その時だ、
ゴロゴロ……
「~~~~~~~~~~ッ!!」
バンシーが叫び声を上げた。
「なっ!?」
ヴェルサスが周囲を警戒しようとした時、
ピカッ!
ドォォォン!!
雷が落ちた。ソフィアの立っている場所に。
「……」
目の前で起こった事に一瞬ついていけずに呆然とするヴェルサス。
そして、ソフィアが倒れた。
「馬鹿なッ!ソフィアァアアアアアアアアッ!?」
倒れたソフィアに駆け寄るヴェルサス。
「……」
バンシーはそれを静かに見ている。
「ソフィアッ!」
ヴェルサスはソフィアの胸に耳を当て、音を聞く。
「心臓が……、止まっているッ!」
「不味いッ、救急車をッ!」
「おいッ!そこのガキ共ッ!」
「人が倒れた!今すぐに救急に通報してこいッ!」
ヴェルサスはソフィアを抱きかかえながら先ほどサッカーをしていた少年達にそう言う。
「は、はいっ!」
ただ事ではない雰囲気を感じた少年達はその場を離れていく。
「救急車ッ!間に合うのか!?」
「俺が出来ることは……、ハッ!」
そんな時、ヴェルサスはある話を思い出していた。あるスタンド使いが心配停止していた人間の心臓をスタンドで直接マッサージして蘇生した話を。
「アンダー・ワールドォ!」
「ソフィアを心臓マッサージしろ!今すぐにだッ!」
『俺達は医者でも救命士でも無いよ?』
『やるの?』
「やれと言ったらやるんだよぉーッ!」
『了解……』
アンダー・ワールドは自身の手をソフィアの胸の中にすり抜けさせて、心臓を触る。
そしてソフィアの心臓が自力で動き出すように心臓マッサージを行う。
それを見ているバンシーはその赤い目にヴェルサス達の姿を映しながら、
「……もうやめなさい」
「貴方……、無意識のうちに分かっているんじゃないの?」
「ソフィアの死は止められない……」
「貴方の能力は過去の記録を掘り起こす。でも、その記録が迎えた結末を変えることはできるのかしら……?」
ヴェルサスにそう言う。
「うるせぇぞてめぇええーッ!」
「黙ってろこのアマ!」
そう怒鳴るヴェルサスにバンシーは言葉を続ける。
「何度も言うけど私は昔から人の死を見届けて来た」
「おそらく、運命というものは変えることはできない……」
「地面に記録された過去と同じように最初からそう決まっているのよ……」
そう言い放つバンシーにヴェルサスは、
「うるせぇって言ってるだろ!」
「いいか!俺の兄貴の受け売りだが!」
「人は皆『運命の奴隷』らしいッ!」
「しかし、同時に目覚める事が出来れば何か意味のある事を切り開くことができる『眠れる奴隷』なんだとッ!」
「俺はソフィアが今日死ぬ運命だっつっても諦めねーぞッ!」
と言い返す。
「……貴方の言ってること、無茶苦茶よ……」
バンシーは呆れたような表情をする。彼女としては今ここでソフィアの蘇生に成功したとしても、ソフィアには更に苛烈な死が待ち構えているかもしれないのだ。
そんな中、
「ごほっごほっ!?」
『やった!成功だ!』
アンダー・ワールドの心臓マッサージが功を奏したのか、ソフィアの心臓は再び動き出した。
「ソフィア!」
「ヴ、ヴェル……、サス……」
「いいか!動こうとするな今救急を呼んでる所だからな!」
だが、
「~~~~~~~~~~ッ!!」
バンシーは今までにない音量の叫びを出す。
「……!またかっ!?」
ゴロゴロゴロゴロ……!
(くそっ!また雷かよ!?)
(アンダー・ワールドで避雷針を掘り起こせば……)
(いや……、それじゃあおそらく直ぐに“次”が来るだけだ!)
「俺がすべきことは……」
ヴェルサスはソフィアを見る。そしてある事を思いついた。
「正直言ってあんまり気分のいいやり方じゃあねえが……」
「背に腹は代えられねえ、やってやる!」
「この雷は止めねえ……ッ!」
「俺が変えるのは――雷が落ちる“相手”だッ!」
ヴェルサス達の頭上の曇天は今にも雷を落としそうである。そして、
ゴロゴロゴロゴロ……!
「運命を切り開くぞアンダー・ワールドォッ!!」
ヴェルサスはアンダー・ワールドで穴を掘る。
「……それは……!?」
掘り返されたのは雷が落ちる直前のソフィアの「過去の記録」だった。
ヴェルサスは急いでソフィア抱きかかえてその場から離れる。そして、
ドォォォォォン!!
先ほどよりも威力の増した雷がソフィアの記録へと落ちた。雷の威力か、それとも能力を解除した為か雷を受けたソフィアはそのまま消えていく。
それを見届けたヴェルサスは、
「目の前で愛した人を失うってのは、胸くそ悪い気分だな……」
と呟く。そんな中、
「……?」
「これは……!」
バンシーの体が透けて、薄れていく。
「おい、バンシー。その身体……」
バンシーは驚いた表情を見せる。
「まさか、まだ対象が生きているのに私が消えていくなんて……」
「こんな事、覚えている限りでは初めてだわ……」
「うう……!」
ソフィアが身体の痛みにうめく。
「ソフィア!」
「だ、大丈夫……、私、生きてるわ……」
「ああ……!良かったぜ……!」
ヴェルサスはソフィアの体を優しく抱き留める。
そして、身体が薄れていくバンシーは、
「まさかこんな事になるなんてね……」
と呟く。
「残念か?」
「……まさか。おそらくソフィアが死ななくなった訳じゃないわ」
「……でも」
「今回はあなた達の“勝ち”よおそらく」
バンシーは今までの陰気だった表情から、陰のとれたような微笑みを見せる。
そして、
「ヴェルサス、貴方のさっき言っていた訳の分からないこと」
「ちょっと分かった気がしたわ」
「そしてソフィア・ミラー」
「今度はできれば、貴女がお婆さんになった時に会いましょう」
それを聞いたソフィアは、
「……うん。その時まで会いたくないわね」
と言い、ヴェルサスは、
「……ああ。そうしてくれ」
と返した。
「次に誰の死に私が呼ばれるのかは分からないけど……」
「今日起きたことは忘れられそうにないわね……」
そう言ってバンシーは透けていき、見えなくなった。
「……」
「……」
サイレンの音が公園に近づく。
「救急車が来るぜ……」
◇
翌日。ソフィアはウインドナイツ・ロットの病院の病室に寝かされていた。診察した医師曰く、落雷の直撃を受けていくら心臓は蘇生したとはいえ、後遺症が残らなさそうなのは奇跡だそうだ。
そしてヴェルサスはソフィアのお見舞いに来ていた。
「さっきお前の家族に会ったぜ。ちゃんと見舞いに来てくれるいい人達だ」
「うん。私もそう思うわ」
「それにしても全治一か月か……」
「本当に後遺症が残らなさそうなのは良かったわ……」
「しばらく入院しなきゃだけど……」
「ああ、守り切れなくて悪かったなソフィア……」
「折角俺の故郷に遊びに来てもらったのにこんな事になるなんてよ……」
ベッドの上のソフィアは、
「ううん、気にしないでヴェルサス」
「正直よく分からない事もあるけど、バンシーが消えたってことは」
「貴方が助けてくれたおかげでしょ?」
と、言う。そして、
「私は今生きてる……」
「ちょっとくさい台詞だけど、生きてるって素晴らしいって実感するわ」
と続けた。
「でも」
「ヴェルサス。私、あなたに言っておきたいことがあるの」
「なんだ?」
「……私、あなたに死んでほしくないから」
「……俺も長生きしたいよ」
「ところでさ、ソフィア」
「なに?」
「退院したら、デートに行かないか?」
「今度はオカルト絡みじゃない感じでよ」
それを聞いたソフィアは微笑み。
「……そうね」
「エクスカリバー探しとかじゃない方向でいきましょ」
と、返すのだった。
To Be Continued...
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