ろくでなしのドナテロ・ヴェルサス・ブランドー 作:クォーターシェル
スコットランド地方、ベン・ヴォーリッヒ。標高985mの低めの山だが、今その山に今まで未発見だった洞窟が発見され、エディンバラ大学から調査チームが来ていた。
調査チームは洞窟内を進む。洞窟内の気温はとても低かった。
「寒いですね」
チームの一人の青年がそう零す。
「そうだな。各員防寒はしているな?」
調査チームのリーダーであるエディンバラ大学の教員はチームに確認する。結果は全員防寒済みだ。
「では奥に進むぞ」
リーダーはそう言って先を進む。そんな中、隊列の後方にいた隊員達が話始める。
「宝は眠ってますかね?」
「まあないだろう」
「グロスターでジョン王の財宝が見つかったって噂がありますが……」
「グロスターの病院に担ぎ込まれた奴がそんな戯言を言っていたってだけだろ」
「なんでグロスターでジョン王の財宝なんだよ」
そんな会話をしている内にエディンバラ大学調査チームは洞窟の最深部に到達した。そこにあったのは……
「これは……!」
「嘘だろ……!」
「綺麗……」
氷塊の中に閉じ込められている女性だった。
◇
そのニュースは世界中に駆け巡った。
『イギリススコットランドの山中から氷漬けの女性発見!』
『周囲の放射年代測定から、およそ1万年以上前の人物!?』
『エディンバラ大学調査チーム、発見された女性を発見日が満月だったことからアイス・ダイアナと命名!』
ブランドー邸リビング。
ヴェルサスはテレビを観ていた。
「どのチャンネルを回してもスコットランドの冷凍女の話で持ち切りだな」
「アイス・ダイアナだろ兄貴」
「まあ、1万年前の人間の綺麗な死骸が発見されたってのは驚きだよ」
ヴェルサスはテレビを観ながら言う。
「ヒマラヤだの南極だのならいざ知らずイギリスでそんなものが発見されるなんて驚きだぜ」
「俺達の国はまだまだ神秘の国って事なのかもな」
「速報です」
「エディンバラ大学が『アイス・ダイアナ』を調査の後に大学内で期間限定の一般公開を行う事を発表しました」
テレビではそんなニュースが流れた。
「へー、一般公開……」
「もしかしたら世紀の発見になるかもしれないし、沢山の人がエディンバラに訪れるだろうな」
「なあリキエル、ウンガロ……」
「俺達も見物しに行くか?」
「今からチケット予約すれば見れるだろ?」
「そうだな……、これもまた人類が成長する何かに立ち会えるかもしれねえ!」
「俺もまあ、興味が無いって言ったら嘘になるし付き合うよ」
「じゃあ、そうするか!」
こうして、ブランドー兄弟はアイス・ダイアナを見物しにエディンバラに行くことになった。
◇
エディンバラ。イギリスのスコットランド地方の首都であり世界的名門のエディンバラ大学を擁する。
ブランドー兄弟はアイス・ダイアナの公開が始まる前日にエディンバラに到着していた。
「おっ、見ろよ路面電車だぜ」
「エディンバラ・トラムって奴だな。開通したのは最近なんだってな」
「元々エディンバラには古い路面電車があって廃止されたけど、結局市電が必要になって新しく作られたんだってね」
ブランドー兄弟は目の前を通過するエディンバラ・トラムを見物する。
「さて、目玉のアイス・ダイアナは明日公開だが今日はどうする?」
「エディンバラ城を見に行こうぜ!」
「ロイヤル・マイルも寄って行こう」
ブランドー兄弟はエディンバラ城を目指してエディンバラ市街を進む。
「おっ、バグパイプを演奏してる。イギリスでもウインドナイツ・ロットみたいなイングランド方面ではああいうのはあんまり見ないぜ」
「あっ、オイスターバーだ!後で食べに行こう」
「スコットランドの生カキは小ぶりだが絶品って評判だしな」
そして、ブランドー兄弟はエディンバラ城に来る。エディンバラ城はキャッスル・ロックという切り立った岩の上に立つ、古代からの要塞である。
エディンバラ城の外観を見ながらヴェルサスは、
「あそこに人が住み始めたのが紀元前9世紀頃って話だが、1万年前のアイス・ダイアナに比べればちっぽけな歴史に見えるな」
「まあ、1万年前と言えば石器時代だからな……」
「それにしても人が多いねえ。俺達みたいにアイス・ダイアナの見物のついでに訪れている人も多いのかな?」
「人間考える事は同じ。平時でもここはエディンバラ観光の要だからな」
そしてブランドー兄弟はエディンバラ城内部に入った。
「あれがワン・オクロック・ガンか」
「日曜日以外の午後一時に放たれる空砲、ここの名物だぜ」
ブランドー兄弟はエディンバラ城を観光していき、頂上の砦のクラウン・スクエアで記念撮影をした後、ホテルに戻るのだった。
そして、エディンバラ大学の『アイス・ダイアナ』公開開始日、ブランドー兄弟はエディンバラ大学の校門前に居た。
「思った通り、混雑しているな……」
「世界中から見物客が来ているんだろうね……」
「はぐれない様に気をつけないとな」
ブランドー兄弟もエディンバラ大学構内に歩を進める。
「アイス・ダイアナを展示している場所はあっちだな」
「女神の名がつけられるくらいだから美人なのかな?」
「さあ……?」
ブランドー兄弟がアイス・ダイアナの展示場に向かう中、アイス・ダイアナの展示を取り仕切っている側は……、
「何!?アイス・ダイアナの展示室の空調に不具合が発生しているだと!」
「は、はい……」
「アイス・ダイアナの氷が解けて中の遺体が損壊する事態になったらどうするつもりだ!?」
「ぎ、業者は呼んでいるのでお待ちを……」
「その間公開を中止する訳には……?」
「今更中止できるか!この公開に世界中の人間が見に来ているのだぞ!?」
「もし公開を中止したら大ブーイングが起こり、事と次第によっては暴動が起きる!」
「とりあえず見物客がアイス・ダイアナに近づきすぎないように注意しろ!」
「は、はい……」
裏でそんなことになっているとはつゆ知らず、ブランドー兄弟はアイス・ダイアナの展示場に足を踏み入れるのだった。
◇
アイス・ダイアナの展示場は広いスペースを取っており、中央に件の氷塊の中の女性が展示されている。既に多くの見物客がその場に来ていた。
ブランドー兄弟も、
「……思ったより大きいな」
「氷の塊そのものが展示物なのか」
「いや、あの中に人がいるんだろ」
と眺める。
するとリキエルが、
「……あれ?」
異変に気付く。
氷の表面に水滴がある。そして、
ポタ……ポタ……
と床に水が落ちる。
ヴェルサスが、
「おい。あれ、本当に大丈夫なのか?」
と職員を見る。
職員は、
「だ、大丈夫です! 現在、空調設備を調整しておりますので……!」
と答える。
その時だ、
ピシッ……
と氷に亀裂が入る。
「あっ!?」
誰かが声を漏らした。
ピシッ、ピシッ……
氷の亀裂はどんどん広がっていく。
「おいおい……、こりゃあいけないんじゃないか……?」
慌てた職員が、
「こっ、こちらアイス・ダイアナ展示場ッ!氷に亀裂が入りましたッ!」
と大学側に連絡している。そうしているうちに氷の亀裂はどんどん広がっていき……、
ガシャーン……ッ!
とうとう氷が砕けて中の女性が床に落ちた。
ざわ……!ざわ……!
演出か何かかと見物客達はどよめく。
「おいおい、どんでもないことになったな……」
ヴェルサスはそう呟いた。しかしとんでもないことが起きるのはこれからだった。
ズッ……
「!?」
なんとアイス・ダイアナはゆっくりとだが、立ち上がったのだ。
「た、立ち上がったーッ!?」
「アイス・ダイアナが生き返ったぞ!?」
見物客に混乱が広がる。
(…………ここは……?)
長い眠りから目覚めた彼女は、まず周囲を観察する。
その様子を見ていたヴェルサス達は、
「なにかの余興かこりゃぁ……?」
「いや、そんな話聞いてないんだけど」
そして、アイス・ダイアナの顔を見たリキエルは、
「美しい……」
と呟いた。
そして、アイス・ダイアナは、
「アイス・ダイアナ……、私の事、か……?」
「そして、私を囲んでいるのは……、人間、か」
と呟く。更に
「腹が、空いたな……」
そう、彼女は長年何も摂取していなかった。故に彼女は、
ダッ!
「!?」
最前列で見物していた者のうち二人の腕を掴んだ。そして、
「うっ……」
「ああ……」
アイス・ダイアナに腕を掴まれた二人はその場に倒れこんだ。
「何ぃ!?」
ワアアアアアア……ッ!
キャアアアア……ッ!
アイス・ダイアナの展示場はパニック状態となり見物客達は我先にとその場から逃げ出そうとする。
「私の、眠っている間に何があったのだ……?」
アイス・ダイアナは辺りを注意深く見まわしている。
ヴェルサス達はというと、
「なんだあいつは!?パパのような吸血鬼か!?」
「それとも岩人間!?いや、何かが違う気がするぜ!」
「よく見ると、角が生えてるな……」
「少なくともホモ・サピエンスじゃあ無さそうだ……!」
「兄ちゃんと出かけると変な事が起こりやすくないか!?」
職員が大学側に緊急連絡をかける。
「こちらアイス・ダイアナ展示場ッ!アイス・ダイアナが生き返って人を襲ったッ!」
「は!?何を馬鹿な事を言ってるだって!?嘘なんかついてないッ!」
そのうちに騒ぎを聞きつけた警備員が登場する。
「おい!何があった!?」
「大変だ!アイス・ダイアナが生き返った!」
「……疲れているのか?」
「本当だ!」
するとアイス・ダイアナが警備員に話しかける。
「おい、そこの汝」
「なんだ?」
(なんだこの女……、簡素な胸当てと腰布しか着けてねえ。しかも身長は180cmくらいか?顔立ちは美人だがデカすぎて好みじゃねえな)
「汝に聞きたいことがある……、ここには陽の光が入ってきていないようだが、今は昼か?それとも夜か?」
それを聞いていたウンガロは、
「1万年前の人物って話だよな……、とても流暢に英語を喋ってる……」
と呟く。警備員の方は腕時計を見て、
「ああ?今は11時36分……、昼だが?」
と答える。
「そうか……、私の推測が正しければ後数時間はしないと日は沈まぬか」
職員が、
「なにを流暢に喋っているんだ!?そいつが生き返ったアイス・ダイアナだ!」
と叫ぶ。
「えっ?氷漬けになっていた人間が生き返る訳ないだろ?フィクションの読み過ぎだ」
事態を理解していない警備員。そんな時だ、
ブンッ!
アイス・ダイアナは床に向かって腕を振り下ろす。すると、
ドゴオッ!
床に大穴が開いた。
「な、な、な!?」
あまりの自体についていけない警備員。
「なんて怪力だ!やっぱり人間じゃねえ!」
「あの女性の今の質問……、パパと同じ弱点を持つのか?」
アイス・ダイアナは開いた穴に入る。
「なあ兄ちゃん達……、今更だけど俺達も避難した方がいいんじゃ……?」
「じゃあ、ウンガロ。お前は戦えないし先に避難してスピードワゴン財団に連絡を取ってくれ」
「あの女が何者か分かるかもしれん」
「えっ、スピードワゴン財団に?兄ちゃん達は?」
「あの女の後を追ってみる。ここで完全に見逃したら後々大変な事になるかもしれないしな」
「俺もついていくぜ兄貴。さっきからあの女が気になるんだ……」
「分かったけど気を付けてくれよ、あの女どう考えてもパパの様な人外だよ!」
ヴェルサスとリキエルはアイス・ダイアナの後を追って穴に入った。
穴の先はエディンバラ大学の地下階に繋がっていた。ショップや休憩スペース等が存在している。
アイス・ダイアナは休憩スペースのテーブルに置かれていた雑誌を読んでみる。彼女にとっては初めて見る文字だったが、絵や写真の存在で大体の内容は分かった。
「……どうやら人間の文明は大分発展したようだな」
「そうだ……、先ほど目覚めた時は思い出せなかったが……」
「私がここに来る前、意識が途切れる直前……」
「あの時私は地震を感じたと思ったら、地殻変動に巻き込まれたのだ」
「身動きが取れなくなった所に水が流れ込み、凍っていった……」
「あれからどれほど時が経ったのだ?」
アイス・ダイアナがそう自らの過去を思い返していると、
「アンダー・ワールド!」
アイス・ダイアナは鋼鉄製のケージの中にいた。
「よし、捕らえた!」
「兄貴、あんなもので捕らえられるのか?」
ヴェルサスとリキエルだ。
「先ずは様子見だ。このエディンバラ大学で使われていた猛獣を入れる為のケージでな」
アイス・ダイアナは鉄格子を触る。
「これは……、おそらく鉄でできているようだが、檻か」
そして鉄格子を掴んで少し力を入れる。
ミシ……
嫌な音がする。
「おいおい……」
そして、
バキィッ!
アイス・ダイアナは鉄格子を破壊した。
「兄貴、やっぱり無理だったじゃねえか!」
「分かってたよ!」
檻から出たアイス・ダイアナは二人を見る。
「おい!アイス・ダイアナ!お前は何をしたいんだ!」
その問いに対して、
「それはこちらのセリフだ。お前たち、私を閉じ込めて何がしたい?」
「それにさっきから私をアイス・ダイアナと呼んでいるようだが……」
「私の名前はメイガンだ」
アイス・ダイアナ、いやメイガンはそう答えた。
「メイガン……!それが貴女の名前か……」
「それはお前が危険そうだからだよ!例えばライオンは人を襲いかねないから檻に入れておく!」
「誰だってそーする。俺だってそーする」
「私が人を襲っただと?」
「しらばっくれるな!お前が触れた人間が倒れていたじゃねえか!」
「私は腹が減っていたから力を分けてもらっただけなのだが……」
メイガンはそう呟く。
「信じられるかよそんな事!」
「アンダー・ワールド!」
アンダー・ワールドは懐中電灯の様な物を掘り出した。そしてヴェルサスは懐中電灯をメイガンに向けてスイッチを入れる。すると、
ジュウウウウ……ッ!
「なにぃ!?体が!焼ける!」
メイガンの光を浴びた箇所が焼け付いていく。
「このエディンバラ大学で実験用に使われる紫外線ライトだぜ」
「俺の身内には吸血鬼が居てなあ!太陽の光、紫外線を含む光が弱点なんだよ!」
「お前もそうみたいだな!」
「ぐっ、まさか人間が太陽の光を再現できるとは……」
その時だ、
「まて兄貴!彼女の言葉信じてもいいんじゃないか?」
リキエルがヴェルサスの紫外線ライトを持っている腕を掴んで光を逸らそうとする。
「リキエル!?何言ってやがる!このメイガスとか言う女、得たいが知れねえ!」
「俺達やパパにとって敵になるかもしれねえぞ!」
「さっき彼女と目が合ったんだが、優しい目をしていた……」
「それに彼女が言っていたように倒れた人は生きてるかもしれないぜ!?」
「メイガンとは話し合ってみるべきだ!」
そんな中、
「くああああああッ!」
メイガンは後方へ飛びのく。そして、
ドンッ!
左右の眼球から高圧で体液を発射し、
ギャーンッ!
「うおっ!?」
ヴェルサスの手元の紫外線ライトを撃ちぬいた。
「い、今の技はッ!」
「パパが偶に使う『空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)』そっくりだッ!」
更にメイガンの周囲の空気が文字通り冷気で凍り付いていく。
ピキッピキッ……
「今度は気化冷凍法ッ!?」
「まただッ!パパそっくりの技を!」
メイガンは、
「さっきから汝の言うパパは私と同じ『闇の種族』なのか?」
と尋ねる。
「闇の種族?何の話だ!?俺達の父、ディオ・ブランドーは吸血鬼だぜ!」
「吸血鬼だと?聞かない言葉だな……」
「いいか、『闇の種族』というのは汝達人間が私達をそう言い表した言葉だ」
「私達は、汝達が猿からそのような姿になる前から地球に暮らしてきた」
「さっき汝が言った様に私達は太陽の光の下では生きられず、洞窟や地下で暮らしていた」
「他にも仲間がいるのか?」
「私がどれだけの間、眠っていたかは分からないがお前達は闇の種族を知らないのか」
「そんな存在聞いたことねえよ!」
「いや待て兄貴、柱の男の話を思い出せ」
「柱の男?」
メイガンは突然出てきた知らない単語に耳を傾ける。
「柱の男……、パパが言っていた石仮面を作ったって連中か?」
「ああ、パパも直接は対峙したことが無いからまた聞きらしいが、その柱の男たちもその闇の種族に似た特性を持っていたって聞いたぜ」
「そういえば昔パパがそんな話をしてたな確か連中のリーダー格の名前は……」
「『カーズ』、だったか?」
カーズ、その名を聞いたメイガンは反応を見せる。
「カーズだと……?」
「知ってるのか?」
「ああ、我が一族の一人だ」
「変わり者で太陽の光を克服したいと言っていた」
「それに何か妙なものを作っていたな」
「奴とよく話をしていたのはエシディシくらいだ」
「そうか……」
「言っておくが、俺がちらりと聞いたカーズとあんたの知ってるカーズが同じ人物かは分からないぜ?」
「そのカーズ達はどうなったのかは知らないのか?」
それを聞かれたヴェルサスとリキエルは、
「知らねえよ。もしかしたらスピードワゴン財団の連中なら何か知ってるかもしれないが……」
「なあ、メイガン。兄の非礼は詫びる。だから俺達話し合ってみないか?」
「パパの伝手なら貴女の同族を探せるかもしれない……」
「……その言葉を信じろと言うのか?」
「妙な力で太陽の光を浴びせて来た汝達に……!」
メイガンの体から発せられる冷気は収まっていない。
ヴェルサスは慌てて、
「待て! 冷静になれメイガン!」
と、呼びかける。
「冷静でいられるものか! 汝は私を焼いたのだぞ!」
「あれはパパが吸血鬼だからだ! 同じ弱点だと思ったんだよ!」
「私は吸血鬼ではない!」
「だから今それを聞いてんだろ!」
その時リキエルがヴェルサスの肩に手をかけ、
「兄貴、まず謝った方がいいと思うぞ」
と冷静に突っ込む。
「……それはそうかもしれねえ」
そして、ヴェルサスはスタンドを引っ込めて、
「すまない、メイガン」
「俺の方が短慮だったかもしれねえ……」
「本当に人間を襲うつもりはないのか?」
謝ると同時にそう尋ねる。
「私は最初からそのつもりだ」
メイガンの方も冷気を引っ込めた。
そしてリキエルが、
「メイガン、俺は貴女と話がしたい……!」
「貴女がどんな花が好きなのか、どんな音楽を好んでいるとかだ」
と言った。
「おいリキエルそれでいいのか?相手は人間じゃないパパよりも遥かに長生きしている生き物なんだぞ」
何かを察したヴェルサスはリキエルにそう耳うちする。
そして、
「取り敢えずこのエディンバラ大学を出よう……。落ち着いた話はそれからだ」
ヴェルサスはそう言ったが、
「私は昼の間は外に出れないぞ」
「……そうだったな」
◇
その頃、エディンバラ大学の地上の方ではウンガロの連絡を切っ掛けにスピードワゴン財団の特殊部隊が出動する事態になっていた。
何せエディンバラ大学で公開されたアイス・ダイアナの正体が人間ではない人型生命体だったのだ。重装備をした特殊部隊が大学内への突入準備を始めていた。
連絡をしたウンガロは、
「えらいことになってきたな……、兄ちゃん達は大丈夫だろうか?」
そう兄達を心配する。そんな中エディンバラ大学からヴェルサスが出て来た。
「兄ちゃん!?」
「おい、ウンガロ。何の騒ぎだこりゃ?」
ヴェルサスはウンガロに尋ねた。
「何ってスピードワゴン財団に連絡したら特殊部隊が投入されることになったんだよ!」
「……そりゃマズいな」
「えっ?」
「スピードワゴン財団に伝えなきゃよ……」
「アイス・ダイアナ、いやメイガンと一応の和解をしたってな」
「え、ええ~ッ!?」
その後、メイガンから生命エネルギーを吸われた見物客の生存が確認され、メイガンはスピードワゴン財団に投降する形となった。そして、
「汝か、カーズ達の顛末を知っているというのは……」
メイガンはある老人と映像で話していた。
「そうじゃ、こちらもまさかカーズ達の同族が生き残っていて」
「しかもそれが温厚だったというのは驚いたぞ」
老人の名前はジョセフ・ジョースター。半世紀以上前にカーズ達柱の男と戦った事のある人物である。
「しかし、半世紀以上前にカーズと戦ったというのは本当なのか?」
「人間はそこまで長生きできるのか?」
「わしはちょっとばかり特別な技術を使えるからのお」
「それで、先ずは何を聞きたい?」
「そうだな……、先ず、汝と戦ったカーズはどうなった?」
「そうじゃの、奴はエイジャの赤石と呼ばれる石と石仮面という物を使い究極生命体になった」
「究極生命体?」
「お前達、闇の種族がエイジャの赤石と石仮面を使ったことにより進化した姿じゃ」
「あらゆる生物の全ての能力を身に付け、全ての生命を兼ねる……」
「とんでもない相手だったが、わしはそのカーズを地球の外へ追放することで何とかした」
「……そうか」
「次に聞きたいことだが、カーズとその仲間達以外の私の同族は何処で何をしているか知らないか?」
「それについてじゃが……」
「人類史にはカーズ達以外の君達のような生き物が生き残っている痕跡を発見できなった」
「できる限り古代の記録を調べても足跡を辿れるのはカーズにその仲間だったエシディシ、ワムウ、サンタナに関する記録だけじゃった」
「……」
「ここからはわし等の推測になるのじゃが……」
「君の同族は既にこの地球から消え去っている可能性がある」
「……つまり、絶滅したと」
「お前の種族に何があったかはわし等にも分からん」
「事情を知っているかもしれないカーズ達も結局はそれに関しては何も言わなかったからのお……」
「……そうか」
「こちらからも質問したいが、メイガンという名前じゃったか」
「お前は今後どうするつもりじゃ?」
「そうだな……、私は嘗ての通り太陽の光が差さない場所でひっそりと生きていきたい」
「同族と戦った汝達に思う所はないという訳ではないが」
「私はカーズの様に究極の生命などは求めない」
「草木や動物達の様に生きて死にたいのだ」
「そうか……」
「スピードワゴン財団もお前が人類の脅威でないと証明できたのなら、協力をしてくれるじゃろう」
◇
ジョセフとの対話を終えたメイガンは、別室で待機していたブランドー兄弟に会う。
「メイガン、どうだった?」
「……私の同族は全滅している可能性があるそうだ」
「……そうか」
「メイガンはこれからどうするんだ?」
「私は……」
「メイガン!」
リキエルが話を切り出す。
「貴女とはこれっきりになりたくない!」
「さっきも言ったが、俺は貴女の事をもっと知りたいんだ!」
「リキエル……」
「私は……、1万年も眠っていた」
「その間に人間は地上に溢れかえり、この地球は様変わりしている」
「私の様な者がそれに馴染めるとは思えん」
「それでもっ!」
「俺はもっと貴女と仲良くなりたい!」
メイガンは少しだけ雰囲気と表情を和らげ、
「……変わった男だな、リキエル」
と言う。
「何故そこまで私に興味を持つのだ?」
するとヴェルサスが横から、
「そりゃ惚れてるからだろ」
と平然と言う。
「兄貴!?」
「惚れる……?」
「……あ」
「つまるところ、汝は私を好いている」
「という事か?」
「あっ、そ、それは……!」
リキエルは顔を真っ赤にする。
「いいのか?言ってみればスズメがワシに、アジがサメに欲情しているようなものだぞ?」
「言い方!?」
ウンガロが思わず突っ込む。
「で、でも俺は貴女と仲良くなりたい!」
「それは確かなんです!」
するとメイガンは、
「汝は本当に変わっているなリキエル……」
「私もお前は嫌いではない……!」
「ええっ!?」
「と、いう事は!?」
「1万年経った世界の友人よ、これからよろしく……」
「まあ先ずは友人からってことだなリキエル!」
「頑張れよ兄ちゃん!」
「あ、ああ……!こちらこそよろしく頼む!」
こうしてメイガンは1万年後の世界に降り立ち、そこで生きることになった!
To Be Continued...
……人物紹介……
・メイガン
エディンバラ近郊の洞窟内で氷の中に閉じ込められていた女性。その正体は太古の昔、人類とは異なる進化の果てに生まれた知的生命体である闇の種族の一人。太陽の下では生きられないが、動植物からエネルギーを吸い取ることで長い年月を生きることが出来る。種族の特徴として頭に角が存在する。つまる所ジョジョ2部に登場したカーズ達柱の男とは同種族であった。今から1万年以上前に事故で氷の中に閉じ込められ現代に発見された。その為カーズやエシディシが自分の同族であった者達を壊滅させた事は知らない。知能は他の闇の種族の例に漏れず、かなり高く短時間で現代人の言語を学習する。身体能力も石仮面で強化されたカーズ達柱の男には及ばないものの、石仮面で人間が変じた吸血鬼くらいなら上回っている。性格は嘗ての闇の種族がそうであったように温厚で争いは好んでいないが誤解からヴェルサス達と戦うことになる。能力としては柱の男のような細胞単位で相手を捕食する能力は持っていないが、ジョジョ1部のディオが使った自分や相手の汗を気化することで肉体を冷凍する気化冷凍法や体液を空を裂くような勢いで眼から出して攻撃する空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)を使うことが出来る。
今作のジョセフは波紋の呼吸で原作よりは老化を抑えている設定です。
駄文閲覧ありがとうございました。ご感想等をいただけたら幸いです。