ろくでなしのドナテロ・ヴェルサス・ブランドー   作:クォーターシェル

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第2話 ブランドー邸へようこそ

朝。ヴェルサスは自室のベッドで目覚めた。

 

「ううん……」

 

ヴェルサスは大きく伸びをすると、トイレ、洗面所での身だしなみのセットと朝のルーチンワークを済ませる。洗面所の鏡を前にしたヴェルサスは誰かに自己紹介するかのようにこう思考する。

 

(俺はドナテロ・ヴェルサス・ブランドー。通称ヴェルサス。20歳でルックスはパパに似てイケメンだ。アンダー・ワールドっていう能力も持っている)

 

そして身だしなみのセットが終わったヴェルサスは屋敷のリビングに向かう。

 

「おはよう兄貴」

 

「おはようリキエル」

 

その途中でヴェルサスは同じく起きて来た弟リキエルと遭遇した。

 

(弟のリキエル。高速道路を爆走するのが趣味のスピード狂だ。あとアポロ11号が好きらしい)

 

「この間新車買ってもらったんだって?いいな……」

 

「お前だって前の誕生日にバイクを買ってもらったじゃないか」

 

そんな中、ウンガロも起きてきた。

 

「ふあぁぁぁ……。おはよう兄ちゃん達」

 

「おはようウンガロ」

 

「おはよう。お前またアニメ鑑賞で夜更かししたのか?」

 

(もう1人の弟ウンガロ。本当にパパの血を引いてるのか分からないくらいルックスがブサイクだ。体育会系のリキエルとは対照的にこっちはコミックやアニメが大好きだ。部屋にも美少女のフィギュアが飾られてる)

 

(兄弟は後1人…俺達の兄が居るんだが、今この場にはいないから紹介はまたの機会だ)

 

兄弟三人はリビングに入った。豪勢な内装のリビングだが、朝だと言うのに窓は締め切られており、電灯が灯っている。これはディオが紫外線に当たれない吸血鬼であるためだ。

 

「おはよう……、我が息子達よ」

 

「おはようパパ」

 

(彼は俺のパパディオ・ブランドー。俺と同じくスタンド能力を持っているし金持ちだが、パパは吸血鬼だ。子供の頃はそんなの信じちゃいなかったがマジだった…)

 

ブランドー家の四人は食卓につき、食事を始める。

 

(この館の使用人達も紹介しておこう……)

 

「ヴェルサス坊や、ちゃんと朝ご飯を食べるんだよ」

 

(パパの部下のエンヤ婆。幼少期は彼女が本当の祖母だと思っていた。今でもお小遣いを貰えるのはありがたい)

 

「分かってるよ、婆ちゃん」

 

「ヴァニラ、コーヒー」

 

「承知しました」

 

(パパの部下のヴァニラ・アイス。強面だが俺の言う事は大体聞いてくれる)

 

「砂糖多めな」

 

「……承知しました」

 

(ただ、たまに返事までの間が長い)

 

「ヴェルサス様、本日のご予定はいかがなさいますか?」

 

「予定?特にないけど」

 

「それは結構でございます。予定がない方が、屋敷にとって安全な一日になりそうですので」

 

「……今、俺の事馬鹿にしたか?」

 

「滅相もございません」

 

(ブランドー邸の執事のダービー。子供の頃は彼のゲーム機で遊んだものだが、内心こっちを舐めている気がする…)

 

庭の方では、ケニーGが警備を続けていた。

 

(警備員のケニーG。屋敷の中に泥棒が入らないのは彼のスタンド能力のお陰らしい……。幻覚は凄いが、俺のアンダー・ワールドの方が凄い)

 

「屋敷の敷地内に異常はありません」

 

(……本当か?)

 

「くしゅん!」

 

(ヌケサク。こいつはヌケサクとしか呼びようがない。こいつも吸血鬼らしいが、俺なら一分とかからずこいつを倒せるだろう)

 

「誰かが俺の事でも噂したかな……」

 

(いや、別に)

 

ヴェルサスは部屋の隅に置かれた止まり木へ目を向ける。

 

(ペット・ショップ。パパが飼っているハヤブサだ。おそらくだがヌケサクよりよっぽど頭がいい)

 

「キィィィィッ!」

 

「……ほらな」

 

(因みにパパは犬が嫌いらしい。だからってハヤブサ、それもスタンド使いを飼うのはぶっ飛んでるぜ)

 

ヴェルサスはペット・ショップを見る。

 

ペット・ショップもまた、じっとヴェルサスを見返していた。

 

(……今、睨まれたか?)

 

(と、まあこんな感じだ。今日は学校もない休日。このまま優雅に過ごすはずだったが……)

 

「キィィィィッ!」

 

「ディオ様、屋敷内に侵入者が出たようです」

 

ペット・ショップが何かに殺気だつ。ダービーが恭しくお辞儀しながらそう発言する。

 

(ペット・ショップが反応したって事は、そうなんだろう……)

 

「ケニーGよ、お前の『ティナー・サックス』は発動中だな?」

 

ディオがケニーGに質問する。

 

「はっ……、今この瞬間も発動中です……」

 

「ケニーG、あんたのスタンドティナー・サックスは幻覚のスタンドだよな?普通の泥棒ならその幻覚に臆して侵入を諦めちまう」

 

「そうですヴェルサス坊ちゃん。しかし、どうやら何らかの算段があってこの屋敷の中に侵入したようで……」

 

控えていたヴァニラ・アイスが立ち上がる。

 

「ディオ様、この私に侵入者撃退の許可を」

 

「待て、ヴァニラ・アイスよ。お前の『クリーム』は破壊力が高すぎる。まだ侵入者の目的も分かっていない段階でお前を向かわせる程ではない」

 

「ははっ……」

 

「しかし、この屋敷への侵入者へ対処しなければならないのは事実……」

 

ディオの視線がヴェルサスに向かう。

 

「ヴェルサス……、お前が今回の侵入者に対処しろ」

 

「えっ、俺?」

 

(なんでそんな面倒くさいことをしなけりゃならないんだ?)

 

「お前のアンダー・ワールドなら直ぐに相手の顔も割り出せるだろう。いけ。ダービー、ヴェルサスと共に侵入者の対処に向かえ」

 

「承知いたしました。ディオ様」

 

「マジかよ……!」

 

「頑張ってくれ兄貴!」

 

「いい所見せるチャンスだぜ兄ちゃん」

 

「お前ら他人事だと思いやがって……!」

リキエルとウンガロの無責任な応援に腹を立てるヴェルサスだったが、ディオの『指令』には歯向かえない。

こうしてヴェルサスとダービーはまず屋敷の庭に向かった。

 

「ほいっと……」

 

ヴェルサスは屋敷の庭の地面を掘り、ついさっき侵入してきた者の軌跡を掘り起こす。

 

「こいつが侵入者か……」

 

掘り起こされたのは黒いタイツのような衣装に身を包んだ背の低い男だった。

 

「妙ですね……、割と派手な動きをしているのに音を立てていない……。ヴェルサス坊ちゃま、手抜きはしておりませんよね?」

 

「するわけねえだろうが」

 

ダービーは自らのスタンド、アトゥム神を出しアンダー・ワールドで掘り起こされた侵入者に質問する。

 

「お前はスタンド使いか?」

 

YES!YES!YES!

 

アトゥム神はYESかNOかを見分ける読心能力がある。アンダー・ワールドによって再現された人物にも可能ということだ。

 

「どうやら、やはりというかスタンド使いのようですね。ヴェルサス坊ちゃま、追跡には注意を」

 

「音を消すスタンド能力って所か?……戦闘だけを考えりゃ、くだらねぇ能力だな」

 

「ですが、屋敷への侵入には非常に厄介な能力です」

 

ダービーは冷静に答えた。

 

「足音がしない。扉を開けても音がしない。何かを壊しても音がしない……。普通なら音で侵入者の居場所を探すところですが、それが出来ない」

 

「分かってるよ」

 

ヴェルサスはアンダー・ワールドを見た。

 

「だからこそ、こいつを使う」

 

アンダー・ワールドが再び地面を掘る。

 

そこには、侵入者が庭を移動していく光景が映し出された。

 

「……こっちだ」

 

「こちらへ向かったようですね」

 

二人は侵入者の軌跡を追って屋敷の方へ向かう。

 

しかし――。

 

「ん?」

 

ヴェルサスが足を止めた。

 

「どうしました?」

 

「おかしい」

 

アンダー・ワールドが掘り起こした過去の映像では、侵入者は確かに目の前にある窓から屋敷へ侵入している。

 

だが、実際のヴェルサス達の目の前には窓など存在していなかった。

 

「……ああ」

 

ヴェルサスは理解した。

 

「ケニーGの幻覚か」

 

「ティナー・サックスの能力が発動したままですからね」

 

「つまり俺達自身も幻覚の中にいるって訳か」

 

「その通りです」

 

ヴェルサスは少し考え込む。

 

そして、

 

「だったら話が早い」

 

と言った。

 

「ケニーG!」

 

屋敷のどこかにいる警備員へ向かってヴェルサスが叫ぶ。

 

「幻覚を解除してくれ!」

 

「ヴェルサス坊ちゃま!?」

 

ダービーが驚く。

 

「侵入者を探すのに幻覚なんか邪魔なだけだ」

 

ヴェルサスは不敵に笑う。

 

「音を消せるのは分かった」

 

「だがな……」

 

アンダー・ワールドがヴェルサスの背後に立つ。

 

「姿まで消せるわけじゃあねえんだろ?」

 

「ケニーG、幻覚を解除してくれ」

 

「目視さえできれば問題ない相手だぜッ!」

 

数秒後。

 

屋敷を覆っていた幻覚が消えた。

 

「……!」

 

ヴェルサスの視界が一瞬、歪む。

 

廊下の形。

 

壁の位置。

 

扉の場所。

 

それらが次々と変化し、本来のブランドー邸の姿へ戻っていく。

 

そして――。

 

「見つけた」

 

廊下の先。

 

黒い衣装を身にまとった、小柄な男が立っていた。

 

「……チッ」

 

侵入者もまた、ヴェルサス達の姿を確認する。

 

「見つかっちまったか」

 

「見つけたぜ」

 

ヴェルサスはニヤリと笑った。

 

「音の消えるコソ泥さんよ」

 

その瞬間。

 

侵入者の背後に、猫の獣人を思わせる異形のスタンドが姿を現した。

 

「だが、ここからが本番だ」

 

ヴェルサスはアンダー・ワールドを前へ出す。

 

「来い……!」

 

「アンダー・ワールド!」

 

「『パンテラ』!」

 

二体のスタンドが同時に動いた――!

 

     ◇

 

(くそっ!何なんだこの屋敷は!?)

 

スタンド能力パンテラの本体、ジョージ・マッキソンは内心焦っていた。

 

ある人物に雇われこの屋敷の主であるディオ・ブランドーの弱みを握るため、重要書類の類を盗もうとこの屋敷に忍び込んだまでは良かった。

 

しかし、屋敷の中は幻覚か何かか、まるで無限に広がっているように見えた。

 

(明らかにスタンド能力じゃねーか!)

 

まさか屋敷を守るスタンド使いが居るとは聞いてなかったのだ。しかし、幻覚が解除されたと思ったら、本体であろう青年に見つかった。自分の能力は音を消すだけ。目撃者のこいつは殺すとして、出直しせざるを得ない状況なのは明白だった。これ以上ここに居たら自分の命が危ないだろう。

 

『ニャアアアアアッ!』

 

ジョージのスタンド、パンテラが爪を振りかざしてアンダー・ワールドに攻撃を行う。

 

「ぐおっ!」

 

アンダー・ワールドが傷を負った事でヴェルサスにダメージがフィードバックし彼の皮膚が服ごと切り裂かれる。

 

(ちっ、近距離パワー型って奴か……。正面戦闘で制圧できると思ったが誤算だったぜ……!)

 

(音を消す能力で見えてる筈なのに妙に攻撃のタイミングが掴みづらいしよおーッ!)

 

しかしとヴェルサスは思考する。

 

(俺のアンダー・ワールドはそもそも正面から馬鹿正直に戦うタイプのスタンドじゃあねえ……!)

 

アンダー・ワールドとパンテラの格闘戦はパンテラに分がある。パンテラの素早い攻撃にアンダー・ワールドは防戦一方だ。

 

「どうした!? さっきまでの威勢は!」

 

「威勢はある」

「ただし、俺は馬鹿じゃねえ」

 

「何?」

 

ヴェルサスが地面を見る。

 

「この町について調べるのは好きなんだ」

「特に……昔話はな」

 

アンダー・ワールドが地面を掘る。

 

「何をするつもりだ?」

 

「知ってるか?」

 

「このウインドナイツ・ロットには、髪の毛を操ることのできる騎士が嘗て居た……」

 

「は?」

 

「イギリス人なら知ってるよな?」

 

地面の下から現れたのは、一人の男の身体ではない。無数に枝分かれする、異様な量の黒髪だった。

 

「黒騎士ブラフォードだ!」

 

ズバババババッ!

 

髪がパンテラの腕を絡め取る。

 

「なっ……!?」

 

パンテラが爪を振るう。

 

音のない斬撃は髪の毛の一部を切断したが他の髪の毛が伸びてくる方が速かった。

 

「音を消す能力か?」

 

「残念だったな」

 

「髪の毛には耳なんてねえ!」

 

そして髪が侵入者ジョージの身体に絡みつく。

 

「お、おおおおおおおっ!?」

 

スタンド名パンテラ……、本体名ジョージ・マッキソン……、捕縛。

 

「お坊ちゃま流石です。危なくなったら加勢しようと思っていましたが、その必要はありませんでしたね」

 

ダービーが軽く拍手をする。

 

「そりゃどうも。ダービー、エンヤ婆を呼んできてくれ。拘束し続けるなら婆ちゃんの『ジャスティス』の方がいいだろ?」

 

     ◇

 

「まったく、朝から物騒だねえ」

 

そう言いながらエンヤ婆が現れる。

 

「婆ちゃん、後は頼むぜ」

戦闘を終えて一息つきたいヴェルサスは屋敷の奥に引っ込んでいく。

 

「ケケケケケッ!どれどれ……、傷は出来ているようだねぇ~!」

 

エンヤ婆はジョージの四肢に傷が出来ていることを確認すると、自身のスタンドを発動する。

 

「正義(ジャスティス)!」

 

霧状のスタンドがジョージの傷口に侵入したかと思うと、傷口のあった場所にポッカリとした穴があく。

 

「ぎゃあああ!お、俺の手足がぁー!?」

 

「これでお前は完全に逃げられなくなった訳じゃよ……、ケケケッ!」

 

次にダービーが前に出る。

 

「さて……、私の番ですね」

 

ダービーの背後にアトゥム神が現れる。

 

「な…、何人スタンド使いが居るんだこの屋敷には!」

 

新たなスタンド使いが現れたことに驚くジョージ。

 

ダービーはそんなジョージとは対照的に冷静に振る舞う。

 

「さあ、貴方の事を聞かせてください。先ずは……」

 

ダービーはジョージに質問していく。そして……

 

「ディオ様、今回のスタンド使いを差し向けた人物が分かりました」

 

2時間後……、ジョージへの尋問を終えたダービーはディオに報告していた。

 

「そうか……、それで、どこのどいつだ?このディオにたてつく真似をした奴は?」

 

「はい。依頼主はノリッジ在住のカーティス氏です」

 

ディオは首をかしげる。

 

「……誰だ?」

 

「パパに喧嘩を売った奴だろ?」

 

「そんなことは分かっている。誰だと聞いている」

 

ダービーが補足する。

 

「数年前、あなたと土地取引で揉めた人物です」

 

「……ああ」

 

「知ってるのか?」

 

「いや、今思い出した」

 

ヴェルサスがズッコケる。

 

「どっちだよ」

 

「確か……私が少し土地を買っただけで、異常に怒っていた男だ」

 

ダービーが更に補足する。

 

「“少し”ではありません。彼の事業区域の大半です」

 

「そうだったか?……まあいい、ヴェルサス」

 

「何?」

 

「ノリッジへ行け」

 

「えっ?」

 

ヴェルサスが聞き返す。

 

「えっ?ではない。このディオに喧嘩を売った者の弱みを握りに行け。お前のアンダー・ワールドなら、土地の過去から何かしら掘り起こせるだろう」

 

「何で俺がそんな事しなけりゃならないんだよ!」

 

「屋敷に侵入されたのはお前がいる時だった。ならお前が片を付けろ」

 

「マジかよ……」

 

ヴェルサスはうんざりした表情を浮かべる。

To Be Continued...

 

……人物紹介……

 

・ジョージ・マッキソン

ディオを敵視するノリッジの名士カーティスに雇われたスタンド使い。スタンドを利用してコソ泥やスパイのような事をやっていた。スタンド名はパンテラ。因みにジョージ・ジョースターとは何の関係も無い。

パンテラ

パワー:D

スピード:A

射程距離:D

持続力:C

精密動作性:B

成長性:E

姿:ネコ科の獣人型。

能力:本体及びスタンドが発する音を消す。

 




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