ろくでなしのドナテロ・ヴェルサス・ブランドー 作:クォーターシェル
「ふう……」
「パパは息子相手でも人使いが荒いぜ」
ヴェルサスはオークニー諸島行きのフェリーに乗り込んでいた。
オークニー諸島、イギリスの中でも北方に位置する島々だが、温暖な気候と肥沃な土地があり農業が盛んである。また、隣国であるノルウェーとはヴァイキングの関係で因縁浅からぬ地でもある。というか実際に昔はノルウェー領だったのがオークニーである。
ヴェルサスはそんなオークニーに向かう事になった経緯を思い返す。
(始まりは数日前パパに呼び出されたことからだった)
「ヴェルサス。来たな」
「なんだよパパ?」
「お前に仕事を任せようと思ってな」
「仕事だって?前のノリッジの時みたいに誰かの弱みでも握りたいのか?」
「いや、そうではない」
「実は今、ノルウェーのマフィアとある取引を行っていてな」
「オークニー諸島のメインランド島で金と引き換えにある物を受け取る予定になっている」
「ある物?」
「そうだな、ヴァイキングの宝とでも言っておこうか……」
「へえ、美術品か何かか?金で買うって事は単なる金品じゃないってことだよな」
「まあ、そのようなものだ」
「で、お前にはこれからオークニーまで行ってもらって、その品を受け取り」
「このウインドナイツ・ロットまで持ってくるのだ」
「因みに拒否権は?」
「自分を知れ……、そんな都合の良い選択肢があると思うのか?」
「お前の立場で……」
「はいはい。行くよ」
「しかし、マフィアと取引かよ……」
「一人で誰かの弱みを握る方が簡単そうだぜ」
「お前一人で行かせる気は無い」
「護衛を派遣するつもりだ」
「護衛?どんな奴が来るんだ?」
「護衛の名前はホル・ホース。タロットカードの皇帝の暗示を持つスタンド使いだ」
(で、俺は先ずオークニー行きのフェリーに乗った訳だ)
ヴェルサスはフェリー内を進む。
「話によればこのフェリーにホル・ホースも乗っているそうだが……」
そんな時である。
「よお、お前がヴェルサスだな」
ヴェルサスに声を掛けて来た者が居た。
「ん?」
ヴェルサスは振り向く。そこに居たのはテンガロンハットを被った西部のガンマンの様な格好をした男だった。
「あんたがホル・ホース?」
「そうだ。DIOに雇われて今回お前の護衛をすることになった」
「本当はカワイ子ちゃんを護衛する方がいいんだがよ、給料分の仕事はする気だぜ」
ホル・ホースはそう言った。ヴェルサスは、
「あんたの事はパパから聞いてるよ。拳銃のスタンドを使うんだっけ?」
とホル・ホースに言う。
「ああ。まあ俺のスタンドはシンプルだからな、種が割れてもあまり困らねえ」
「そちらさんの方は何でも地面の記録を使うとかいう……、強力なスタンドを持ってるそうじゃねえか」
「俺のスタンドを知ってるのか?」
「ああ、DIOから聞いたからな」
「へえ……」
「なあ、あんたから見たパパってどんな人だ?」
「なんだ藪から棒に?」
「いや、俺の知ってるパパを知る人間は肉親以外は大体パパの信奉者かパパの敵だったからな」
「あんたはあくまで金で雇われている」
「だからちょっとパパの寸評を聞きたくてな」
「ふうん……」
「まっ、取引まで大分時間がある」
「じゃあ話すよ」
「おう」
ホル・ホースはディオの寸評を始める。
「そうだな、一言で言えば……」
「魔王だ」
「魔王……」
「ああ、息子のお前の前じゃあどんな顔をしているか知らねえが」
「エンヤ婆やヴァニラ・アイスみたいな信奉者なんてDIOの部下の中ではほんの一握りさ」
「大抵は金と恐怖で従わされている」
「俺だってそんなもんだ。奴の力が恐ろしいしなるべく敵対したくないね」
「我が父ながら、散々な言われようだな……」
「寸評を求めたのはお前だろ」
「まっ、そうだがよ」
「お前さんの方は他に何か俺について聞いてるかい?」
今度はホル・ホースがヴェルサスに質問する。
「そうだな、あんたは誰かとコンビを組む事で真価を発揮するタイプの人間って聞いたぜ」
「まあ、大体当たってるよ。一番よりナンバー2が俺の人生哲学だ」
「俺が十全に能力を発揮できるのは誰かと組んでる時だ」
「組む相手はエンヤ婆の息子のJガイルの旦那だったりそうでなかったりと様々だ」
「へー」
ここでヴェルサスはあることに気づく。
「あれ?じゃあ今回は単独じゃないか?」
「相手が一応敵対してないとは言えマフィアだしいいのか?」
その言葉にホル・ホースは、
「ああ?組む相手なら“ここにいる”じゃあねえか」
と言った。ヴェルサスは辺りを見回す。そして、
「えっ、俺?」
と自らを指さす。
「ああ、今回の任務はヴェルサス、お前が俺の相棒だ」
「ええっ?」
「ちょっと待て俺の護衛としてお前が派遣されたんだよな!?」
「ああ、息子の補佐をしろってのが今回のDIOのご意向らしい」
「マジかあ……」
「まっ、現地で交渉が決裂でもしない限り戦闘にはならないだろうし」
「まあ、いいのか?」
「まあ俺としても取引がスムーズに済むならそれで問題ねえ」
「という訳で短い間だがよろしく頼むぜ相棒!」
ホル・ホースは握手を求める。
「分かったよ……」
ヴェルサスも握手に応じるのだった。
こうしてヴェルサスとホル・ホースを乗せたフェリーはオークニー諸島、メインランド島に到着し二人はオークニー諸島の一番の都市であるカークウォールへ向かった。
◇
「オークニーといえばウイスキーだぜ!早速飲みに行こうか!」
「おいおい……、一応仕事で来てるんだぞ?」
「取引の時間までまだ大分あるだろうが。何、1~2杯くらい飲むだけだ」
「まっ、オークニーの名産と言えばウイスキーだしな……」
「俺も興味が無い訳じゃないが……」
「じゃあ決まりだな!」
「適当な居酒屋で飯と酒にしよう!」
そして、二人はカークウォールの居酒屋で食事と酒を頂くことにする。
「おお!ウイスキーもそうだが肉と魚も美味いな!」
「ああ、酒が進むツマミだぜ!」
「ホル・ホース、ツマミが美味いからって飲み過ぎるなよ!」
「分かってるって!」
オークニー諸島。オークニー各地の蒸留所で作られるウイスキーも上等だが、その肥沃な海と大地から獲れる幸も絶品である。肉・魚介類・チーズ等が旅行者を魅了する!
食と酒と共に二人の話も進む。
「でよ、俺には世界中にガールフレンドが居る」
「人は俺が彼女達を利用しているって言うかもしれねえが」
「俺は女に嘘はつくかもしれねえが、女を尊敬しているぜ!」
「だから俺と彼女達は持ちつ持たれつなのさ!」
「ヴェルサス!お前のパパは女性の扱いがなっちゃいない。お前は女性を大切にしろよ」
「えっ、いきなりそんな事言われてもな……」
「お前くらいの歳になればガールフレンドくらいいるだろう?」
「DIOはお前さんの母親を愛してなかったかもしれんが」
「そもそもあいつは人間じゃねえ!」
「だが、お前さんは人間だろう?え?」
「女性への尊敬を忘れなければいつかお前さんの人生のプラスになる筈だぜッ!」
(ソフィアなら話は別だけどよー、そこまで女性に敬意を払う気はな……)
(まっ、ここは肯定しておくか。相手は“エンペラー”の暗示だしな、こうていだけに……)
「ホル・ホースの話は参考になるぜ……!」
「だろう?おい、店員。スモークチーズを追加注文だ!」
こうして、ヴェルサスとホル・ホースは取引までの時間を潰すのだった。
そして、二人は取引場所に向かおうとする。
「ふ~、食ったし飲んだ!」
「おい、ちょっと顔が赤いぞ」
「やっぱ飲み過ぎてるじゃねえか」
「いやいや、大丈夫……」
ホル・ホースは急に
「さ!」
すれ違った通行人の腕を掴む。
「ゲッ!?」
「ん?スリか?」
「みたいだな」
ホル・ホースはスリの腕を捻じる。
「いててて!?」
「おい、今盗ったもんを俺達に返した方が身のためだぜ!」
「わ、分かったよ!」
スリはすろうとした財布を返すと一目散に逃げていった。
「今回はマフィアとの取引が待ってるから許してやったが」
「そうじゃなかったら俺のエンペラーで手か脚を撃ちぬいてたぜ」
「おー、おっかね……」
「じゃあ、今度こそ取引現場に向かうか」
ヴェルサスとホル・ホースは郊外の草原へと向かうのだった。
◇
「海風が強いな」
「オークニー諸島の気候は大体こうなんだと」
「酔い覚ましにはなるかもな」
「あっ」
「どうしたヴェルサス?」
「相手はノルウェーマフィアなんだろ?俺ノルウェー語喋れねえよ」
「まあ流石に相手に英語の分かる奴くらい居るだろ」
「だといいんだがな……」
そうこうしているうちに二人は向こうに海の見える草原のど真ん中に着く。相手のノルウェーマフィアも既に到着していた。
「……なんか酒臭いな?」
「気のせいだと思うぜ」
「あんた達がパパ、ディオ・ブランドーの取引相手だよな?」
「そうだ」
「約束の物(ブツ)は持って来てある」
「そっちはちゃんと料金を持ってきてるだろうな?」
「おう。確認してくれ」
ヴェルサスは持ってきていたアタッシュケースを開けて中の札束を見せる。
「10万ドル分ある」
ノルウェーマフィア達はアタッシュケースの金を確認する。
「全て本物だと判断した」
「約束の物を渡す」
ノルウェーマフィア達は大き目の箱を持ってくる。
「随分と重そうだな」
「何が入っているんだ?」
「お前は知らされていないのか?」
「パパからはヴァイキングがどうとか言っていたが……」
「中に入っているのは“石碑”だ」
「DIOが何故こんなものを欲しがっているのか分からないが」
「確かに代金は受け取ったぞ」
「石碑……」
ノルウェーマフィア達は帰ろうとする。
「おいちょっと待て」
「どうした?」
「まさか俺達二人でこの重そうなのを運ばなきゃならないのか?」
ノルウェーマフィアは呆れた顔で、
「俺達はそちらがもっと人員を寄越すと思っていたよ」
と言う。そして今度こそノルウェーマフィア達が帰ろうとした時だ、
ゴオオオオオオオッ!
「?」
ガシャンッ!
突如2メートル四方程のキューブが飛来してきて、ノルウェーマフィア達が乗って来た車を破壊した。
「!?」
「なんだ!?」
ヒュンヒュン!
次にはノルウェーマフィア達の所に多数の拳大のキューブが飛来してくる。
「ぐわあッ!?」
「ギャッ!?」
ノルウェーマフィア達はキューブが当たり次々と倒れていく。
「なっ、何だあっ!?」
「ヴェルサス!決まってるだろ!」
「明らかにスタンド攻撃だ!」
「何ぃ!?」
ヴェルサスとホル・ホースは一気に警戒態勢に入る。
「さあどうするヴェルサス?」
「そりゃ決まってるぜ!護衛の役目を果たせよホル・ホース!」
ホルホースは自身のスタンドである拳銃型スタンド、エンペラーを出現させる。
二人はキューブが飛来してきた方向に注意する。
「なんだあのキューブは……、遠くから飛んできたって事は遠隔タイプのスタンドか?」
「いや、そうとは限らないぜ……!」
「あのキューブ見たところ、スタンドではない実体だ……」
「パワータイプのスタンドが投擲しているのかも……!」
「しかし、飛んできてるのがキューブってのがよく分からないぜ!」
「何か意味があるのか!?」
「それがスタンドの条件なのかもな……!」
「例えば石をキューブ状に切り出すスタンドとかな……」
二人はキューブが飛来してきた方向を見やる。
「なんだ?攻撃が止んだ……?」
「油断するなよヴェルサス……!」
「俺達が警戒を解いた所を殺る気かもしれねえ!」
すると、
ドスン!
2メートル四方のキューブが飛んできた。
「やっぱり俺達を油断させての……!」
「いや待て!あのキューブ、今までのと違って文字が彫られているぞ!」
確かに今飛来してきたキューブには文字が彫られていた。
「何々……?」
ヴェルサスはキューブに彫られた文字を読もうとする。
「エラく下手だが、アルファベットで書いてあるな……」
「“せきひをかえせ!”だと……?」
「このスタンド使いの目的はDIOが欲しがっている石碑って事か?」
「どうする、ヴェルサス?」
「理由(わけ)も知らないのに返せと言われてはいそうですかって言えるかよ!」
「“誇り”が失われるし、何よりそんな事パパに報告したらどうなるか分かったもんじゃねえ!」
「しかし、俺達はまだ敵スタンドの本体を発見できていない……」
「これは不利だぜヴェルサス」
「先ずは敵スタンド本体を探るッ!」
「アンダー・ワールド!」
アンダー・ワールドは側の地面を掘り始める。
一方、キューブを投擲してきたスタンドの本体……、フードを深く被ったその人物は双眼鏡でヴェルサス達の様子を見ていた。
「あいつら……」
「さっき投げたキューブのメッセージを見たよな?」
「それにしてもあれは……、スタンド能力かもしかして?」
「車に乗ってきていたマフィア達はやっつけたけど」
「あの二人組は逃げる様子じゃないぞ……!」
そのフードの人物はヴェルサス達を見ている。しかし、
「!?」
「なんだ!?」
「目を少し離したら、あの二人組の姿が無いッ!?」
「逃げたのか!?」
そのフードの人物は慌てて取引現場の方へ向かうのだった。
そしてフードの人物は取引されていた石碑の入っている箱の側に到着する。
「マフィアの連中は倒れたままだけど……」
「あの二人組はやっぱりいない……」
フードの人物は辺りを見回すが、ヴェルサス達の姿を発見できない。
(よし!チビ野郎が!まさかまんまとこっちに来てくれるとはな!)
(目的が石碑とはいえ、不用心が過ぎるぜ!)
ヴェルサス達は穴を掘って地中に身を潜めていたのだ。
(ホル・ホース!容赦は無しだ!ぶち抜いてやれ!)
(アイアイサー!)
ホル・ホースは穴からフードの人物を狙おうとする。
ズギャンッ!
ホル・ホースのエンペラーから弾丸が発射されたが、
「!?」
「あっ!?」
なんとエンペラーの弾丸は、フードの人物の頭をかすめてフードを吹っ飛ばしただけに終わった。
「し、しまった!?」
「ホル・ホース!お前やっぱり酔っぱらって……!」
バサリ……
フードが地面に落ちる。そして、
「……!?」
「なっ、ガキ!?」
「お、女ッ!?」
フードの下の素顔は13歳程の少女だった。
To Be Continued...
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