ろくでなしのドナテロ・ヴェルサス・ブランドー 作:クォーターシェル
少女は、
「お、お前らっ!そんな所に隠れていたのか!?」
「『セリオン』ッ!」
筋骨隆々な頭部が髑髏のヴァイキングといったデザインのスタンドを出した。
セリオンと呼ばれたスタンドは両腕を上げる。すると、セリオンの両手の先から大きな1つのキューブが生成された。
そしてセリオンはそのまま生成したキューブをヴェルサス達に向かって振り下ろした。
「ウラァ!」
「ヤベッ!?」
ヴェルサス達は何とかその振り下ろしを回避する。
「おい!ホル・ホース肝心な所で外しやがって!」
「皇帝の名が泣いてるぞ!」
「いや、ちょっと待て……」
「おい、そこの小さなレディ!」
「お前の名前を聞きたい……!」
「あ?」
「私はアデリーヌ!」
「ヴェルダ村から盗まれた石碑を追ってやって来た!」
少女、アデリーヌの言葉を聞いたホル・ホースは、
「さっきは済まなかったなアデリーヌ」
「危うく君の綺麗な顔を俺のエンペラーで撃ちぬく所だった……」
「えっ?」
「はあ!?何言ってやがるホル・ホース!相手は敵だぞ!」
「ヴェルサス!酒場で言ったよな!俺は女性を尊敬している!」
「その女性をよりにもよってエンペラーで殺す所だった……」
「俺はもうそこのレディとは戦えねえ……」
「なんだと!?」
「なんだか知らないけど喰らえッ!」
「ウララララララララッ!」
アデリーヌのセリオンはラッシュを繰り出す。アンダー・ワールドがそれを捌こうとするが、
「無駄無駄無駄無駄!」
「ウララララララララッ!」
「ぐおッ!?」
ラッシュ対決はセリオンに軍配が上がった。ラッシュに負けたヴェルサスはアンダー・ワールドと共にぶっ飛ばされる。
「ぐううう……!」
『相手は明らかに近距離パワー型だ。パワーもスピードも段違いだ……』
「見なさい!勇敢なるヴァイキングの血を受け継ぐ私のセリオンの強さを!」
「ホル・ホース!てめえ信条の為に死ぬ気か!?」
「このままだとヤバいぜッ!」
ヴェルサスがホル・ホースに呼びかけるが、
「ヴェルサス……、俺はもうそのお嬢さんを傷つけたくないんだ……!」
「いいか……!もし女性を躊躇いなく射殺したらそれはもう俺じゃねえ……」
「クソッ、何の為の相棒だ!もういいぜ!」
「俺は一人で戦う!」
ヴェルサスはアデリーヌと対峙する。
「さっき確かめたが私のスタンドの方がパワーもスピードも上だッ!」
「悪党め!叩きのめしてやるッ!」
アデリーヌのその言葉に対しヴェルサスは、
「悪いが力押しだけじゃ勝負は決まらないんだよ!」
と返す。そして、
「アンダー・ワールド!」
アンダー・ワールドが地面を掘る。
すると、
「!」
ヴェルサスの周囲にヴァイキングの集団が出現する。
「これはッ!?」
「ヴァイキングの血を受け継ぐとか言ってたな」
「記録とはいえ、本物のヴァイキングと戦ってみるか?」
ヴァイキング達はアデリーヌに向かって槍を投擲する。
「セリオンッ!」
アデリーヌの側にセリオンが現れ、投擲された槍を大きなキューブを生成して防御する。
「なんだ今のは!?幻か?」
ここでアデリーヌはあることに気づく。ヴェルサスの姿が消えている。
「いない!また隠れたのか!?」
アデリーヌは周囲を見回す。
「卑怯だぞ!出てこい!」
穴の中からヴェルサスはアデリーヌの様子をうかがう。
(けっ、何が卑怯だ。取引の最中に奇襲を仕掛けてきてよく言うぜ)
(さて、相手は近距離パワー型。迂闊に近づくのは危険だが、離れてもさっきみたいにキューブを投擲される恐れがある……)
(くそっ、ホル・ホースの奴が戦ってくれればもっと楽に奴を倒せるのによぉ)
ヴェルサスはアデリーヌの攻略法を考える。
(沈む船に乗せるか?いや、流石に小学校を上がったくらいの歳の女の子相手にやるのは気がひけるな……)
(だが、パパに頼まれている石碑を持ち帰るにはあのアデリーヌを最低でも再起不能にしなければならねえ……!)
そうこうしているうちにアデリーヌは石碑が入った箱の側に陣取る。
「この箱の側に居れば下手な攻撃はできないだろ!」
アデリーヌは周囲を警戒しながらそう言うが、
「ん?」
アデリーヌの前に白と黒のペンギンの様な海鳥の群れが現れた。
「クエッ、クエッ」
「な、なんだ……?ペンギンか?」
「なんでペンギンがこんなところに」
アデリーヌがその海鳥の群れに気を取られた時だった。
「そいつはオオウミガラスだ」
「!?」
「ペンギンに似ているが違う。19世紀に絶滅した生き物だ」
アデリーヌの背後にヴェルサスが回り込んでいた、
「セリオ……!」
「ちょっと待った」
「これ以上俺達を攻撃しようとすれば、石碑を破壊する」
「何ッ!?」
「理由は知らないが石碑が目当てなんだろ?壊されると困るんじゃないか?」
「……ッ!」
ヴェルサスとしても石碑が無くなると困るのでこの脅しはブラフだった。
(お願いだぜ~!これで引いてくれ!)
(そちらが引けばこっちもこれ以上やりあう理由も無いのは本当だからよ!)
一方アデリーヌも動揺しながら考える。
(どうする!?)
(私はこいつの能力の全容を知らない……!)
(私がこいつにパンチを打ち込む前に本当に一瞬で石碑を破壊できるかもしれない!)
(そうなったら意味がないッ!)
「……おい」
「なんだ?」
「お前達は石碑を欲しがっているんじゃないか?破壊したらお前らも困るんじゃないのか?」
(ちっ!痛い所をついてくるぜ!ビビるな俺!)
「確かに俺達も石碑を求めているが、どうしてもって訳じゃない」
「ここでお前に奪われるくらいなら破壊することもこっちのボスは承知って訳よ」
「だが、石碑を持って帰らなかったらお前もそのボスに責任を取らされるんじゃないのか?」
「訳の分からん奴に奪われて舐められたままってよりはマシってことよ」
「……」
「なあ、お前は何で石碑を求めている?」
「……その石碑は私の村から持ち去られたものだ」
「私達の先祖のヴァイキングがルーン文字で書き残したと言われている所謂重要文化財って奴だ」
「だから私はノルウェーからこの地に石碑を取り返しに来た……!」
「……」
(これ悪いのは俺達じゃないか?まあ今更悪って言われても動じないが)
「あんた達こそ何で石碑を持っていこうとする?」
「マフィアまで使って盗ませたのはお前らだろ?」
「そこまでは知らされてねえよ」
「これはマジだ」
「こっちのボスは一々そんな理由を説明しようとしないからな」
「……この距離なら私のセリオンの方が速い」
「お前本当に石碑を一瞬で破壊できるのか?」
「俺のアンダー・ワールドを舐めるなよ」
「石碑如き破壊する方法なんていくらでもある」
「だから身を引け」
「このままだと精々が痛み分けだぜ」
その時である
「てめえらよくもやりやがったな!」
二人に声を掛ける者が居た。
ヴェルサスとアデリーヌが振り向くと、息を吹き返したノルウェーマフィア達が銃を構えていた。
「死ねっ!!」
ノルウェーマフィア達が銃を撃とうとする。だが、
ズギャンズギャンズギャン!
「ぎゃあッ!?」
「げっ!?」
ノルウェーマフィア達の利き腕が撃ちぬかれ、ノルウェーマフィア達は銃を落とす。
「なんだ!?」
「これは……、お前かホル・ホース!」
ヴェルサスがホル・ホースの方を見ると、ホル・ホースがエンペラーを構えていた。
「ニヒヒ、これでも護衛を任されているんでな」
「悪く思うなよ」
アデリーヌが意外そうな顔をして、
「お前、なんで私を助けたんだ?」
と問う。
「そりゃあ俺は女性を尊敬しているからな」
「わざわざ目の前で射殺されそうなのを見ていられなかったのよ!」
ヴェルサスは、
「筋金入りだな……」
と、呟く。そして、
「なあアデリーヌ」
「石碑にはルーン文字が書かれているって言ってたよな?」
「なんて書かれているのか知らないか?」
「何故それを聞くんだ?」
「おそらくこっちのボスが知りたがっているのは石碑そのものより、そのルーン文字の内容かもしれねえ」
「それさえ分かれば石碑をお前に返却できるかもと思ってよ」
「おっ、ヴェルサス。冴えてるじゃねえか!」
「そうすれば俺達はこれ以上アデリーヌと戦う理由が無くなるぜ!」
「そういう事だ。で、分かるのか?」
「分かった……」
「お前らの前で読むよ」
「だから箱を開けさせろ」
「了解だ」
そして箱が開けられる。箱の中に入っていたのは日本の一般的な墓石程の大きさの石碑だった。
「確かに何か書かれているな……」
「よし、頼むぜアデリーヌ」
「うん」
「……現代語に要約するとこうだよ」
「『妻に浮気された。身を投げたい』」
アデリーヌは真顔でそう言う。
「……」
「……」
耳を疑うヴェルサスとホル・ホース。
「ちょっと待て、本当にそんな内容なのか?」
「本当だ。嘘をついても後で揉めるだけだ」
ヴェルサスは頭を押さえて、
「……分かった、連絡してみる」
スマフォでディオに連絡する。
「……もしもしパパ?」
「なんだヴェルサス?時間的に取引は終わっている筈だが」
「それなんだがよ、石碑に書いてあることが分かったんだ」
「……ほう?」
「いいか……」
ヴェルサスは石碑の書かれたルーン文字の内容をディオに話す。
「……」
「……それは本当なのか?」
「本気中の本気だぜ!?」
「俺だって否定してえよ!」
「……分かった」
「そのルーン文字の内容は何か価値あるものだと思っていたが」
「それならばもう要らん」
「石碑の方は捨て置け」
「俺が聞くのもなんだけど、それでいいの?」
「くどいぞ。石碑の処分はお前達に一任する」
そうして通話は切れた。
ヴェルサスはアデリーヌに振り返り。
「石碑は好きにしていいとよ……」
と言った。
「いいんだな?」
「ああ、もう俺達がその石碑を持っていく意味がねえ」
「そうか、じゃあ持っていくぜ」
「あばよ、おかしな二人組」
アデリーヌはセリオンに箱を担がせて去っていくのだった。
◇
その後、ヴェルサス達は救急車を呼んだ。最終的に敵対することになったとはいえ、負傷したノルウェーマフィアに最低限を筋を通そうとしたからだ。
ノルウェーマフィアが救急車で搬送されるのを見送る二人。
「これで許してくれるか?」
「いや、根に持つだろ俺達がやったという確証は向こうは持っていないとはいえな」
「まっ、そうなるよな」
「それにしてもホル・ホース」
「仕事前に飲んだのは失敗だったな」
「いや、お陰で女を撃ち殺さずに済んだから怪我の功名だぜ」
「まあ、飲み過ぎたのは反省するけどよ」
「やれやれ……」
「じゃあ、これで任務は済んだ形になるし俺達も帰るか……」
「そうだな」
二人は帰りのフェリーに乗ることにした。イギリス本土行きのフェリーでホル・ホースはまたも酒を飲んでいた。
「またかよ……」
「いや、任務も済んだしこれくらいはいいだろ?」
「こりねえな……」
「まあ今度の仕事はトラブルはあったが無事に終わって良かったぜ」
「そうだな……」
ヴェルサスとホル・ホースはオークニーの海風に当たる。
「それにしてもあのアデリーヌのお嬢ちゃん、一人でよくやるもんだぜ」
「俺はコンビで仕事するタイプだから真似はできねえけどよ」
「ああ、あいつがまともに俺達を殺す気でかかってきたらヤバかっただろうな」
「……そういえば、本土に着いたらこのコンビも解消か」
「寂しいか?」
ホル・ホースが茶化すように言う。
「馬鹿言え」
「しかし、今回はお前がいて助かったよホル・ホース」
「まっ、給料分の仕事はしたってことだ」
その後……、ノルウェーのとある村。
帰って来たアデリーヌは村人たちの出迎えを受けていた。
「パパ!ママ!ただいま!」
アデリーヌは石碑を取り返した事を褒められたが、それと同時に勝手に一人で村を抜け出した事をとても怒られたという。
To Be Continued...
……人物紹介……
・アデリーヌ
ノルウェー出身の13歳の少女。勝気な性格。曰く、勇敢なヴァイキングの血を引いているらしい。故郷の村にあった“宝物”がオークニー諸島の方に持ち去られたと聞かされ、そこに向かった。そして、取引の場を襲撃しヴェルサスとホル・ホースと戦うことになる。スタンド名はセリオン。
セリオン
パワー:A
スピード:A
射程距離:D
持続力:B
精密動作性:C
成長性:C
姿: 頭部が髑髏のヴァイキングの戦士の様な姿。
能力: 近距離パワー型のスタンドでその分類通りのパワーとスピードを併せ持つ。能力としては掌から石英岩でできた立方体を生み出す。生成できる立方体の大きさは様々で、ルービックキューブくらいの大きさからピラミッドの石くらいのサイズまでいける。一度に生成できる立方体は1つだが、1つを生成し終えればすぐに別の立方体を生成できる。
駄文閲覧ありがとうございました。ご感想等をいただけたら幸いです。